( ※ 当り前に思えるが、当り前ではない。) ──
温暖化ガスについては、ガスの排出減少ばかりが着目される。典型的な例は、
「化石燃料の使用を減らして、太陽光などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)を使うべきだ」
という主張だ。こう語る人たちは、自分が正しいことを言っていると思い込んでいるのだろう。
だが、温暖化ガスの排出を減らしたとしても、それは「増加のペースが落ちる」というだけであり、「減少」をもたらさない。そして、ガスの「減少」をもたらすものは、ガスの排出減少ではなくて、ガスの吸収なのである。
ガスの吸収とは? もちろん、植物による炭酸ガス吸収だ。ところが、これがないがしろにされている。
以下で詳しく述べよう。
──
まず、アマゾンの熱帯雨林は、大幅に減少しつつある。
近年、アマゾン地域の熱帯雨林は減少が増加傾向にあり、2004年は過去最悪だった1994年に次ぐ面積の27,429平方km(四国の面積の約1.5倍/東京都の約12倍)の森林が破壊されました。(INPE調べ)この破壊は拡大しており、このままではアマゾンは数十年で消失してしまいます。
( → 破壊の現状 )
今(1998年)から約8000年前、地球上には約60億ヘクタールの森が存在していたと言われています。それが、現在30億ヘクタールまでに減少しています。このままだと8000年後に森が無くなると考えられがちですが、実際は森が無くなる早さは近年加速していて、現在の早さで森が無くなると38年後に森が無くなってしまいます。とすれば、「太陽光発電の推進」なんていう焼け石に水のような微量な効果のために努力するよりは、「現在の森林を維持する」ということにこそ、最大限の努力を払うべきだろう。
熱帯雨林については、特にひどく、1960年〜1990年の間に約4.5億ヘクタール(熱帯雨林全体の5分の1に当たる)が消滅したと言われています。
( → 消えゆく熱帯雨林 )
ところが、それができていない。京都議定書などの先進国の規定では、(ガス排出量や森林量について)「現状より増えるか減るか」という点だけが着目され、「現在の水準を維持する」ということの重要性はほとんど無視されている。
吸収源活動とは、1990年以降の植林などで CO2 の吸収源が増加した分を、温室効果ガス排出量削減に換算し算入するもの。緑被率の比較的高い国である日本、カナダが主張して、ようやく既存の森林についても考慮するようになった。それまではまるきり考慮していなかった。
これに加え、マラケシュ合意では「森林管理」「放牧地管理」「植生の管理」を利用することも許容された(京都議定書 3条4項)。このため、既存の森林についても 1990年以降に適切な管理を行うことで、その森林を吸収分として算入できるようになった。これは、義務達成を難しいと考え、しかも緑被率の比較的高い国である日本、カナダが主張し、採用されたものである。
( → 京都議定書 - Wikipedia )
また、考慮するとしても、ちょっとは考慮するというだけであり、重視などはしていない。それだからこそ、アマゾンの熱帯林が大量に破壊されていくのを放置して、太陽光発電なんていう微小な量にばかり努力することになる。頭隠して尻隠さずというか、馬鹿丸出しというか。
──
では、どうして、こういう愚かなことをなすのか? 彼らは物事を数字で理解できないのだろうか? 「炭酸ガスを減らす具体的な量」を見ずに、単に太陽光発電というお題目ばかりを唱えている阿呆なのだろうか?
違う。彼らはあまりにも打算的なのだ。環境保護を口にしているが、その本心は「自分の金が大事」ということなのだ。
そのことは、欧州の現状を見るとわかる。
→ 欧州の衛星写真 (Google マップ)
これで拡大・縮小などをするとわかるが、欧州の森林はほとんどが伐採されてしまっている。ところどころに「刈り残し」みたいな箇所で森林または人工植林が残っているが、(東欧はともかく)西欧のほとんどすべてで森林がない。
かわりに何があるかというと、住宅地か、耕作地である。たとえば、これ。
→ フランスの郊外 (ストリートビュー)
これほどにも森林がないからといって、昔からそうだったわけではない。昔は欧州も森林だらけだった。前にも述べた図を再掲しよう。
( GFWより転載。)
* 8000年前

* 現在

欧州も昔は森林が豊かだった。ところが今では森林を開墾し尽くしてしまった。だから今では森林がろくに残っていない。
そして、そういう過去があったことを隠蔽するために、「過去の破壊行為」を無視できるように、「現在の森林量」という絶対値を無視しようとするのだ。
「過去のことなんかどうだっていいでしょ。今から増やすかどうかが問題なんです。あんたの国がいかに大量の森林を保全していて、緑豊かな国であったとしても、そんなことは無意味です。むしろ、あんたの国は、豊かな緑が少しずつ減っています。それこそ言語道断の悪だ。一方、過去では森林を刈り尽くしてしまったとしても、今からあちこちで植林している私たちは、すごく偉い。白人の欧州こそ偉いんだよ。黄色い猿なんかは下卑ているんだよ。だから、現在の森林量なんかは算入しないで、現在からの増減量だけを考えればいいんだよ。わかったか、この猿どもめ。おまえたちは森林で遊んでいればいいんだ」
これがまあ、欧州人の発想であろう。でもって、現在の森林量をまるきり無視するから、アマゾンでどんなに熱帯雨林の破壊があっても、また、アフリカでどんどん森林の減少が起こっても、まったく考えようとしない。彼らはただひたすら「太陽光発電」と唱える。
ま、それも、彼らのエゴイズムだと思えば、思考に合理性はある。
とはいえ、欧州本位の「太陽光発電重視」を、森林豊かな日本が支持するなんて、馬鹿げている。それは日本人が欧州人を崇拝しようとする、一種の奴隷的な欧米崇拝主義にすぎない。
そんなことをやっているから、黄色い猿と馬鹿にされるんだが。
( ※ 特に朝日新聞がそうだ。)
──
結論。
温暖化ガスの重視という問題の是非はともかく、温暖化ガスを重視するならば、「排出の削減」よりも「吸収」に着目するべきだ。
それには、森林量の増減ではなく、森林量の現在水準という絶対量に着目して、それの維持を最優先するべきだ。
そのためには、各国が自国内で努力するだけでなく、地球規模で森林の保全に努力するべきだ。
一方、自国だけで太陽光発電を推進しても、そんなことにはほとんど意味がない。金ばかりが莫大にかかって、効果はスズメの涙でしかない。ただの無駄。
そんなことにも気づかずに、「太陽光発電の推進」なんて唱えている連中は、欧米崇拝の猿にすぎない。
【 関連項目 】
森林の保全の大切さについては、前に詳しく論じた。そちらも参照。
→ 森林減少と温暖化
→ 開墾による森林消失
※ 本項は、上記2項目から派生した話題を扱っている。
「現在森林の維持が大切だ」ということを、欧州の
森林破壊と絡めて、論じている。
──
あとで気づいたが、本項とほぼ同趣旨の話題は、下記でも論じていた。
→ 薪と森林破壊
→ http://openblog.meblog.biz/article/15667432.html
過去40万年の気候変動(CO2、気温)が解析されている。
エクセルなどを使って、自分でグラフに描くことができる。
1)地球は10万年周期で気候変動してきた。
2)温暖な期間は短く(1万年)、寒冷な期間は長い(9万年)。
3)最近500年程度の気温を基準(0)とすると、
−4〜−8℃と厳寒となる期間が安定期(7万年程度)?
4)気温急降下が先行し、かなり遅れてCO2減少が続いてきた。
特に、過去13万年前〜11万年前では、CO2が高い値を
キープしていたにもかかわらず気温は急降下していった。
なぜか? その理由は、いまだ不明で誰も分っていません。
推測的にいえることは、
1)今の温暖期はできるだけ続いてくれた方がありがたい。
CO2を排出することで、温暖期が維持できれば、ありがたいが、
CO2に、それほどの能力はなさそう。
2)酸素が減ることの方が恐ろしい。
森林を過剰伐採し沙漠化が進み人口増なら、酸素は減っていく。
海洋中のバクテリアが酸素を生成しているから、救われている?
ひどく海洋汚染していくと海洋異変が起き、困った事態になる?
ドイツが、太陽光発電に真剣に取り組んでいるのは、100年先を
見ているから。人類は、化石燃料を猛烈に消費。一層消費増となる。
50年先には不足もしくは高騰する。
そうなると、残されるエネルギーは太陽エネルギーしかないと。
たとえば、50年ぐらい前にコンピュータを発達させるために必要なことは、真空管式コンピュータを補助金で増やすことではなく、半導体を技術開発することです。
太陽光エネルギーの促進のために必要なのは、補助金ではなくて技術開発だ、というのが本サイトのポリシーです。
ドイツはその点、全然ダメです。方向があっち向いてホイです。新技術開発に努力しているアメリカの方が正しい。
それでソーラー発電が瓦解してる状況だけニュースで仕入れていたなんて、進歩がないOTZ
ドイツのフランフォーファ研究機構が、太陽エネルギー変換効率を高める基礎研究をやり、40%を超える
素子を開発した。それに刺激され、世界的に研究開発が進み、変換効率10%程度だった太陽電池セルが、
今では20%程度になった。
フランフォーファ研究機構がやった波長別吸収層のアイディアが取り入れられ、NEDOは高変換効率である
37.7%太陽電池セルを開発した。先端研究がカスケード効果で浸透していくことの意義は大きい。変換効率
30%のセルが発売されるようになる。
現時点でも、高断熱・高気密住宅に広めの太陽光発電パネルを載せれば、消費電力量と発電量が同じ、
ゼロエネルギー住宅の時代に入っている。これは、素晴らしい進歩です。
パナホームは屋根全面をPVとしたスマートハウス発売した。一条工務店の「夢発電システム」は、太陽光発
電システム設置費用を全額立替え、売電収入から分割払い方式を実施。
エネルギー資源の乏しい日本において、正味のエネルギー消費量が20%程度削減できる分野があり、
それが浸透しつつあることの意義は大きい。
補足: 売電価格を42円/1kwhと異常に高く設定したのは、素人のやり過ぎ。もっと適正な売電価格に修正し
て、無理なく円滑に普及させればよい(そうなりつつあるようですが)。