読売の朝刊に詳しい記事があるが、ネットにも簡易版の記事があるので、引用しよう。
《 政府「10万円介護ロボ」普及へ…成長戦略の柱 》リンク先の図を見てもわかるが、単体のロボットではなくて、上肢や下肢に添える機材みたいなものが念頭になっている。
政府は、安価な新型の介護ロボット普及に乗り出す。
要介護者が歩くのを支えたり、高齢者を抱える介護職員の負担を軽くしたりするなど、機能を絞った10万円程度のロボットの開発を促す。さらに、介護保険の対象を広げ、これらのロボットを月数百円でレンタルできるようにする。政府は、普及策を6月にまとめる成長戦略の柱と位置づけ、介護職員不足の緩和や新産業の育成につなげる方針だ。
政府が普及を促すのは、
〈1〉介護する人が高齢者らを抱え上げる時の負担を減らす
〈2〉高齢者らが自分で歩くのを支える
〈3〉排せつ時の支え
〈4〉認知症の人を見守るシステム
――の4分野のロボットだ。政府は今年度から、これらのロボットを開発する企業などに開発・研究費の半額〜3分の2程度の補助金を出す。補助金総額は今年度だけで約24億円。
( → 2013年4月28日 読売新聞 )
たとえば、これ。
→ ロボット・スーツ HAL - CYBERDYNE
→ 介護支援ロボットスーツHALについて
→ 介護用スマートスーツ・ライト
→ パワードスーツ - Wikipedia
→ ホンダ、生活支援用のロボットスーツ
以上からわかるように、これは「ロボット」じゃなくて、「パワー・スーツ」もしくは「パワード・スーツ」だ。
この件は、私も前に論じたことがある。「どこだっけ?」と思って本ブログを検索してみたら、「泉の波立ちを見よ」というリンクが記してあった。
そうそう。前にも書いたが、その記事は、ずっと昔(本ブログの開設以前)なので、泉の波立ちに書いてあったのだ。
本ブログにはないので、ここに転載しておこう。
(以下、転載。)
● 泉の波立ち (2004年5月31日)
「ロボットとサイボーグ」について。
ロボットについては、二足歩行に関して、先日も話題にした。「現在の二足歩行ロボット開発の方向は間違っている」と。( → 5月14日b )
しかし、本項では、より根源的な話をしよう。そもそも、「ロボットを開発する」という方針からして、根本的におかしなところがある。むしろ、「サイボーグを開発する」とするべきなのだ。その理由を示す。
ロボットには、次の二つのタイプがある。
・ ヒューマノイド(鉄腕アトムタイプ。人工頭脳を持つ。)
・ リモコンロボット(鉄人28号タイプ。遠隔操作する。)
このうち、どちらをめざすべきか? 実は、どちらも駄目である。
第1に、ヒューマノイド(鉄腕アトムタイプ)は、人工頭脳の開発が非常に困難だ。マンガの世界では、実現されているが、これが現実化するのは、百年たっても無理だろう。人工頭脳というものがどういう概要をもつかさえ、まるきり判明していない。単に「人間の脳そっくり」と、漠然と考えているだけだ。
第2に、リモコンロボット(鉄人28号タイプ)は、操作性が悪い。遠隔操作が非常に困難だ。「遠くから見ながら操作する」というのでは、とうてい、まともな動きはできない。「まともに動けなくてもいいから、とりあえず、遠隔操作したい」という場合ぐらいにしか、利用法がない。つまり、「人間がそこには到達できない」という場合だ。(例。惑星探査。深海探査。原子炉内の探査。)
結局、前者は、実現困難。後者は、実用性が不足。かくて、いずれにしても、駄目だ。となると、残りは、次の二つだ。
・ パワー・スーツ(ガンダム・タイプ。着ぐるみロボットに人間が入る。)
・ サイボーグ(サイボーグ009タイプ。脳は人間で、ボディはロボット。)
この二つならば、操作するのは、機械的な肉体と組み合わさった、人間の脳だ。(前者は分離可能だが、後者は生体的に合体している。)
いずれにせよ、これらなら、「人工頭脳」を必要としないから、開発はずっと容易だ。
実を言うと、サイボーグは、すでに実現している。それは、「身障者に対する、可動型の義肢」などである。単純な機械タイプもあり、電動タイプもあり、神経と結合しているタイプもある。
これらのうち、高度なものは実験レベルだが、簡単なものは実用化されて販売されている。その例は、新聞でも紹介されている。「指を失った人が、機械の手指で、箸をもって食事をできる。箸で豆腐をつかんだり、スパゲッティをフォークで食べたり」と。(朝日・週末版 be ・赤色版 2004-05-22 )
ここで紹介されているのは、障害者が自力で開発したものだ。「これで人に優しくなれた」と開発者は語る。これを読んで、涙が出そうになった。「立派だ」と感激したのではない。「情けない」と呆れたからだ。
日本の自動車会社や電器会社は、何をやっているのだ? 莫大な利益を出して、「1兆円の利益が出ました」「6000億円の利益が出ました」と威張っている。そのくせ、何一つ、社会貢献をしていない。上記のような機械的な義肢のようなものは、自動車会社や電器会社ならば、かなり高度なものが作れるはずだ。にもかかわらず、自社の技術を出し惜しんで、ちっとも社会貢献をしない。まったく、情けない。
私としても、「情けない」とばかり感じていないで、できればお手伝いをしたい気持ちもある。しかし、そう思っても、私にはできない。機械や電器の技術はないからだ。そういうことができるのは、自動車会社や電器会社だけなのだ。なのに、これらの会社は、そろいもそろって「バスに乗り遅れるな」とばかり、人まねで、ロボット開発に熱中している。ホンダが最初にやったのはいいが、ソニーなどはホンダの物真似で、「ダンス・ロボット」などを作って、遊び半分で喜んでいる。
というわけで、私は、「他社の物真似でロボットばかりを作るな」と叫びたい。「むしろサイボーグを作れ」と訴えたい。そして、これこそが、実用化・商業化の可能な、唯一の道なのだ。
ロボット開発会社は、「何年たったら二足歩行ができるかわからない」と述べている。正解を教えよう。「二足歩行ロボットは、永遠に不可能」なのである。なぜなら、たとえ技術的に可能になったとしても、そんなものが街中を歩行したら、危険だから、禁止するしかないからだ。まともな人工頭脳が開発されない限り、二足歩行ロボットは、人間にとっては危険で迷惑であるがゆえに、許容されない。たとえ技術的には可能でも、社会的には受容されないから、実用化は無理なのだ。(仮に、街中を歩いたら、「人間に危害を加える恐れあり」ということから、ロボット三原則に抵触するので、ただちに叩き壊される必要がある。)
結局、実用可能なのは、サイボーグだけだ。そして、これには、多大な市場が開けている。たとえば、車椅子になった高齢者のための「機械下肢」とか、介護者のための「パワー・アーム」(力を補助する腕)などだ。……そして、これらを実用化するための技術の開発は、あまり高度ではない。実用化は、すぐ先だ。というか、初歩的なものはすでに実用化済みだ。また、高度なものは、以下に例を示す。
・ 百メートルを5秒で走る。買物もひとっ走り。
・ 百メートルを平泳ぎで30秒で泳ぐ。遠泳も楽々。
・ ゴルフなら常にホールインワン、野球なら常にホームラン。
・ ピストルやライフルを使うと、百発百中。
こういうパワー・スーツができれば、売れるだろう。市場は自動車産業より大きくなるかも。だから、まともな技術者は、ロボット開発なんかをやめて、サイボーグ(およびパワー・スーツなど)を開発しよう。
( ※ 以上の例は、荒唐無稽に思えるかもしれないが、基礎技術はすでに開発されている。とりあえずは、あちこちの文献を調べてみることをお勧めする。また、あなたが大学の研究者であれば、「サイボーグ学会」または「メカ・ボディ学会」というのを設立して、新規分野を切り開くといいだろう。あなたが商業技術者なら、うまく行けば、ビル・ゲイツのようになれるかも。……ついでに言うと、現在、ファイナルファンタジーなどを作ってボロ儲けしている会社は、25年ぐらい前はボロい一部屋ぐらいの規模でしかなかった。何事も、先駆者は、急成長できるのだ。)
( ※ ついでに言うと、ホンダのアシモは、百年たっても、街中を歩けません。なぜなら、人に危害を与える可能性があるから。たとえば、人とぶつかって、人を傷つけたり跳ね飛ばしたりする可能性がある。それを避けるためには、アシモを生体として作る必要があるが、こうなると、もはやアシモではない。)
【 追記 】
次のことも記しておく。
(1) 殺人ロボット
通常のロボットは人間に危害を加える可能性があるがゆえに実用化は困難だが、逆に、人間に危害を加えることを目的としているロボットならば実用化は容易だ。たとえば、巡航ミサイルというのは、一種のロボットと見なせる。その他、無人飛行機とか、無人走行戦車とかも、ロボットと見なせる。
( ※ 米国政府はメリットとして「ロボット兵器ならば人的損失がない」と述べている。しかし相手国にとっては「人的犠牲がすごく多大だ」となる。米国政府の頭がすでに非人間的になっている。ロボットよりも非人間的かも。ロボットには殺意はないから。)
( ※ なお、似たものに、探査用の無人探査車がある。ただし、これは、人のいないところで自立走行するので、人間に害を加えない。)
(2) 自動走行システム
自動車の自動走行システムというのも、一種のロボットと見なせる。「荒地を自分で判断して走行する」という米国政府のコンペがあったが、これにパスしたものは皆無だった。ただし、日本の自動車会社では、舗装道路に限って有効なシステムをすでに市販している。「高速道路における自動操作システム」だ。さらには、「自動ブレーキシステム」も近く市販されるらしい。……とはいえ、「ハンドル・アクセル・ブレーキ」をかなり低レベルで調整するだけだ。そんなものさえ、今になってようやくできる程度。「荒地を自分で判断して走行する」というのは、かなり先のことだろう。
ロボットのサッカー選手権というのを見たことがあるが、これは、飛行機でいえばライト兄弟以前であり、ゴムひもの模型飛行機のレベルだ。ロボットが最低限の実用レベルに達するのは、はるか先のことになりそうだ。
( ※ ソニーの AIBO は、実用品ではなくて、愛玩品であるにすぎない。「動くお人形」だ。これなら、糸で動かす「操り人形」を、ハイテクで動かすだけだから、技術的には容易。)
( ※ どちらかと言えば、「バウリンガル」という犬語翻訳機の方が、はるかに実用性がある。人工頭脳みたいに見えなくもない。 AIBO よりもマシかも。 AIBO が吠えたときに、バウリンガルで翻訳すると、どうなるんでしょうかねえ?)
( ※ それで思いついたが、一番売れそうなのは、「女房翻訳機」と「亭主翻訳機」だ。前者は女房の本音を明かす。後者は亭主の浮気の嘘を明かす。)
http://www.minnanokaigo.com/news/N17807023/
それでまた読み返したが、なかなか いいこと書いてあるね。