2013年04月25日

◆ ユニクロの問題の真実

 ユニクロは労働者を酷使するブラック企業だ、という問題があるが、この問題の奥には大きな真実がひそんでいる。 ──

 ユニクロは労働者を酷使するブラック企業だ、という問題がある。先に述べた通り。
  → ユニクロ社長の詭弁

 ここで示したように、ユニクロの社長は、次のように述べている。
 「グローバル化の時代だから、賃金もグローバル化するべきだ。賃金を世界で統一するので、日本の賃金は途上国の賃金にまで下げるべきだ」

 具体的には、次の発言がある。
 「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」
( → 朝日新聞
 このような話を聞いて、それをそのまま信じたあげく、「ユニクロはグローバル化をめざしているんだな」と思う人が多いようだ。

 しかし、それは正しくない。ユニクロの社長が狙っているのは、グローバル化なんかではない。では、何か? その真実を探ろう。

 ──

 推理小説でもそうだが、犯罪の真相を探るには、
 「誰が利益を得たか?」
 を考えると、真実がつかみやすい。そこで、利益を得たのが誰かを考えると、あっさりわかる。ユニクロの社長だ。
 2012年は推定資産100億米ドル(約8100億円)、世界ランク88位の日本富豪ランク1位。
 2013年にも推定資産133億米ドル(約1兆2369億円)で世界66位の日本1位となっている。
( → Wikipedia
 日本一の大金持ちである。その資産はどこから来たか?
2010年8月時点での株主構成を見ると
「柳井正 26.7% 長男・一海 4.5% 次男・康治 7.9% 妻・照代 6.7%となり、一家四人で 45.8%」
これには驚きました。株の大半を一族で押えているのです。
( → 「ユニクロ帝国の光と影」の解説
 一家四人といっても、息子や妻がものすごく有能であるわけではないから、単に柳井正が自分の財産を生前贈与したようなものだろう。実質的には、45.8%のすべてが柳井正のものだ。(名義はどうであっても。)
 現時点ではどうかというと、次の数値がある。
 柳井正  21.67%   ( → 株式の状況
 比率で見る限りは、少し減っているようだ。合計では、一家四人で 40%程度だろう。

 ここで、ユニクロの時価総額を見ると、下記の数値だ。( → 出典
     3,617,112百万円
 3兆6千億円だ。その 40%は、1兆4千億円だ。これが柳井正の資産である。(先に述べた Wikipedia の推定値にほぼ等しい。)

 【 追記 】
 40%と書いたが、これは不正確だったようだ。
 実は、株式の一部は減少したのではなくて、海外に資産を移転させただけだった。名義を(家族でなく)ダミー会社の所有に書き換えている。その理由は? 相続税の課税を免除されるようにするため。
  → 531万株を海外へ売却 ユニクロ柳井社長の「狙い」
 つまり実際には、45.8%という比率はほとんど変化していないのだろう。
  
 ──

 さて。ここで、次の情報がある。
 「ユニクロの社長の報酬は年4億円である」
( → 朝日新聞 ) 

 年4億円の年俸なのに、1兆4千億円の資産を持つとは、どういうことか? 次のことだ。
 「柳井社長にとって、年俸などは、スズメの涙にすぎない。それよりも重要なのは、会社の株式総額(時価総額)を増やすことだ」


 ここで、「株式総額を増やす」ということは、「1株あたりの利益率を高める」ということと等価である。
 そして、「1株あたりの利益率を高める」ということは、次の二つから成立する。
  ・ 品質を向上させる(売価を高める)  ……(1)
  ・ コストを下げる           ……(2)

 後者の「コストを下げる」というのは、次のことで成立する。
  ・ 途上国で生産して生産コストを下げる ……(2a)
  ・ 販売国で販売の人件費を下げる    ……(2b)


 これらのうち、(1) と (2a) は問題ない。問題は(2b) だ。
 販売の人件費というものは、本来ならば、どの企業でも同程度であるはずだ。ところが、ユニクロでは「従業員の大半が耐えきれずにやめてしまう」というような過酷な労働環境を強いる。払う金は他社と同程度でも、働かせる時間が他社を圧倒するほどの長時間である。(つまりブラックである。)……こういう形で、人件費を下げる

 ──

 結局、以上のすべてをまとめると、次のようになる。
 「ユニクロは、ブラック企業になって、(違法な長時間労働を強いる形で)人件費を徹底的に切り詰める。そのことで、多大な利益を上げる。そして、その巨額の利益によって増やした資産の 40%を、柳井正がほぼ独り占めする


 こうしてわかっただろう。
 ユニクロの真実とは、グローバル化による高収益ではない。長時間労働を通じた人件費の切り詰めによって利益を増やし、その利益をまわりまわって柳井正のポケットに入れることだ。
 こうして彼は、労働者を酷使することで得た巨額の金を、自分のポケットに入れてしまうことができた。だから彼は日本一の大金持ちになれたのだ。

( ※ これはイメージ的には、鵜飼いに似ている。たくさんの鵜を利用して、鵜に魚を捕らせる。だが、鵜には魚を与えず、鵜飼いが魚を独り占めする。)

ukai-1.gif

 
 ──

 以上のことは、実は、ずっと昔から一言で要約されている。こうだ。
  「搾取」

 つまり、マルクスの指摘した「資本家による、労働者の富の搾取」である。
 「搾取」なんていう言葉は、とっくに時代遅れになったかと思えた。ところがどっこい、今の日本では堂々とまかり通っているのだ。「デフレ社会における労働者の虐待」というような形で。

 ここに、ユニクロの問題の真実がある。ここに着目するべきだ。



 [ 付記 ]
 真実に着目したあとは、解決の方法もわかる。
 「労基署や警察がしっかり摘発しろ」
 なんていう意見もあるが、そんな他人任せの方法よりも、直接的な方法がある。
 それは、マルクス(およびエンゲルス)が指摘した通りだ。
 「労働組合の結成」
 これである。これによって組合をつくったあとは、スト権で対抗できる。

 具体的には、全国の店長がみんなで団結して、組合を結成して、ストを決行すればいいのだ。
( ※ 管理職だから労組を作れない、ということはない。 → 検索
( ※ 「労組を作れ」という話は、別項でも示したことがる。 → 該当項目

 なお、どうやって労組を結成するかについては、次項 で示した。
posted by 管理人 at 20:34 | Comment(7) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関連するニュース。

  → 法人税、35%から中韓なみの「20%台」に 自民党が参院選公約
  http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130425/fnc13042509470004-n1.htm

 法人税率が下がれば、企業利益が上昇し、株価はますます上がって、資本家の資産価値は大幅増。ユニクロの社長の資産は2兆円になるな。

 で、その分、税収が減るから、消費税増税で、大衆から金をかき集める。

 野田が消費税増税して、自民党が法人税減税。そのすべてを合わせると、
    一般国民 → 資産家
 という富の流れができる。ますます鵜飼いふう。
Posted by 管理人 at 2013年04月25日 21:44
決定では無いですが4月からは消費税8%ですよね。庶民には厳しいです。消費税分を還元する小売に対し、政府による消費税還元NGに柳井さんは反対してました。これって結局出来レースで還元OKになるんじゃないだろうか。株価は既に割高だけど、飛ぶかも知れないですね。
Posted by タコライス at 2013年04月25日 23:20
おお まさに時代は廻る なんですか  この虚ろな澱んだ時代に ナロードニキが 大塩中斎が 生まれてくるんだろうか 起こるべき変革の時代が始まり新しい希望が 生まれてくるんだろうか  

 こんどは間違えないようにしなくてはいけない か!

 最良の世界がシステムが ひとつしかないとしたら 其処への最短距離を進むべきですよね

 私の生きている内に また時代が 人間の苦しみととも 変わっていくんですね

 管理人さん
Posted by k at 2013年04月25日 23:55
ウォルマートの従業員を搾取して巨額の利益を上げるモデルをユニ黒もまねているわけか。
従業員にも配慮した米国のコストコや日本のトリドールのような会社が多く輩出してほしいものだ。
Posted by passerby at 2013年04月26日 10:48
創業者にとって会社を大きくする(時価総額の最大化を目指す)のは当然の志向でしょう。

ユニクロにかぎらず上場をめざす全ての株式会社は
そこから始まってます。

非上場の同族会社よりはよほど風通しがまともだと思いますね。
Posted by 通りすがり at 2013年04月27日 14:02
柳井さんって、著書が結構あるんですが
古本は1円から売っているようです。
これは読む価値無しだね
Posted by mugu at 2013年04月27日 23:38
グローバルに展開するには社員を甘やかしてはダメだ
…その要件に足る者がそれだけいるという経営者の期待
これこそが一番の甘え

経営を論ずる前に売場に立て。
顧客の望む物がそんなにあるのか?
Posted by ユニアカ ユニシロ ユニムラサキ at 2013年06月10日 15:18
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