2013年04月24日

◆ 残業税を導入せよ

 サービス残業という不当労働行為をやめさせるには、残業税を導入するのが最善だ。 ──

 ユニクロ(など)では、サービス残業がひどい。ユニクロに限ったことでなく、多くの企業でサービス残業が行なわれている。
 これを取り締まるのは厚労省だが、あまりうまく行っていない。次の報道がある。
 関東にある従業員200人のメーカー。…(中略)…どうも怪しい。
 そこでこの監督署では、夜間の張り込みを行い、時間外労働を行っている労働者がいることを確認。調査結果を示したところ、会社はサービス残業の存在を認め、不払いになっている割増賃金を支払った。
 厚労省監督課の担当官によると、事案の重大性、悪質性などを勘案し、監督署の判断でこのような積極的な調査を行うことがあるという。
 「臨検(会社への立ち入り検査)の際に、書類や経営者の説明の中に矛盾があり、ウソをついていることが分かる場合があります。企業が騙そうとしているのに、監督官が黙って引き下がるわけにはいきません」
( → j-cast
 この例では厚労省が頑張っているが、こういうことは例外的なことにすぎない。たいていは見逃されるばかりだ。
 なぜ? それだけ多くを監督するだけの人員がないからだ。

 ── 

 そこで提案したいのが「残業税」だ。これには次の効果がある。
  ・ 残業の多さに従って、国の税収が増える。
  ・ 残業手当を払わないと、脱税になる。
  ・ 脱税した経営者は逮捕される。懲役刑。
  ・ 脱税した企業は、重加算金を追徴される。

 
 このうち、最後の「重加算金」が重要だ。このことで、脱税を摘発する捜査官(国税庁のGメン)を、どんどん登用できる。
 なぜなら、捜査官を登用すると、その人員の人件費が増えるが、それを上回る額の税収が見込めるからだ。(追徴課税と重加算金の合計額。)
 これが「残業税」の効用である。(この効用は、厚労省の摘発のときにはなかったものだ。)

 というわけで、従業員のサービス残業は減るし、国の税収は増えるし、いいことずくめ。
 おまけに、残業手当を支払わない経営者は、脱税犯として逮捕して、刑務所にぶち込んでしまえる。いい気味。

 誰のことを言っているかというと……それは、言わぬが花か。 (^^);

 ここで一句。

  柳さえ 首に手を当て ひんやりと

  


 [ 蛇足 ]
 「逮捕」というのは、誇張表現です。マジではありません。
 一般的には、脱税した人は、逮捕されません。追徴課税があるだけです。ただし、特別悪質な場合には、逮捕されます。基準は、故意であって、脱税額が億円単位である場合。
 どこかの**黒企業ならば、該当しそうだが。
 


 [ 付記 ]
 実を言うと、残業税には立派な法的根拠がある。次のことだ。
 「残業手当以外の本給には、社会保険料の賦課金が課されている。なのに、残業手当についてはその分が免除されうるので、残業手当については実質的に減税になっている。だから、その減税の分を、きちんと取り戻す効果がある」

 むしろ、次の追徴課税をした方がいい。
 「企業が残業を増やすと、過労死などの労災の支払いが増える。ゆえに、残業については、労災料や医療料などの名目で、追加の料金を追徴する」
 これが残業税の意味を持つ。理由も正当だ。
      厚生年金保険料と健康保険料は、4、5、6月の給料によって決められている。
      → All About
     したがって、この3カ月の残業をなくせば、他の9カ月の残業手当にについては社会保険料の課金がまったく免除される。



 【 関連項目 】
 
 残業税については数年前にも書いたことがあるはずだ……と思い出した。下記にいくつか記述が見つかる。
  → Google 検索 1 (泉の波立ち) 
  → Google 検索 2 (泉の波立ち)
posted by 管理人 at 19:47 | Comment(11) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大賛成です。

サービス残業という名の奴隷労働が無くなれば、雇用も増大するでしょう。

それにしても、こういう社会問題を放っておいた政治の怠慢には呆れます。

Ifの話ですが、サービス残業問題を放置していなければ、雇用も増え、家庭の時間もできていたはず。

結果として少子化はここまでひどくならなかったと思います。

そう考えると私たち有権者の責任も大きいですね。
Posted by 独文院生 at 2013年04月24日 20:16
「裁量労働制」

小泉内閣時代に取り入れられようとした労働制度が
ここにきて再び議論されようとしています。

残業という概念そのものを無くし、不払い残業を合
法化されるのでは、と危惧します。
Posted by 反財務省 at 2013年04月24日 21:56
いつも楽しく拝見させていただいております。

今回のサービス残業を犯罪にするアイディア、なかなか面白いと思いますが、次の事が気に掛かりました。

・ サービス残業ではなく、まっとうな残業をお願いしている企業にとっては、負担増になるのでは?
ということです。

というのは、仕事の量に時期的なバラつきがある中小企業の場合、雇用人数は閑散期に合わせ、繁忙期は臨時増員+残業で仕事をこなすところは少なくありません。
また基本給は少ない(法定内)けれど、残業を日常的に行わせることで人並みの給料とする企業も多いはずです。
これらの企業の是非は置いておいて、サビ残を違法化しつつ、まっとうな残業を行わせている企業への負担を少なくする方法はあるのでしょうか?

一つ思うとすれば、やはり税率のコントロールでしょうか?0.1%の税率でも、未申告であれば脱税容疑になるのですよね?追徴課税との差額を大きくし、払うが得と思わせることですかね。

なんにせよサビ残は、百害あって(経営陣への)一利のみ。
Posted by ハム野郎 at 2013年04月25日 09:26
> まっとうな残業をお願いしている企業にとっては、負担増になるのでは?

  [ 付記 ]を参照。
 まっとうな残業をしていても、まっとうな税金を払っていないんだから、まっとうな税金を払ってもらうのが当然です。
 現状では、残業以外の分(定時就業の分)だけに社会保障料がかかっており、残業しない人ばかりに負担がかかりすぎています。
 残業手当のお金をもらったら、払うべきものを払うのは当然です。
 ただ、払う人が会社か従業員かという違いはある。従業員の側が払うことにしてもいい。会社は天引きすればいい。
 それと同時に、残業手当の加算金も増やす必要がありますね。現状の 25%は低すぎる。35%ぐらいの加算にして、天引きを 25%ぐらいにするとよさそう。手取りは 10% 増える。(時給換算)
 ただ、それでも、ボーナス込みの定時勤務の時給よりも、会社の払う金は少ないだろう。
 現状では、残業をさせればさせるほど、会社の払う時給は安上がりになります。制度設計が「残業だらけにして、こき使え」というふうになっている。だから過労死も増える。
Posted by 管理人 at 2013年04月25日 12:34
どうも私が読み間違いをしていたようで、私が想像した残業税は、残業代の有無、額にとらわれず、残業量(時間)に対して企業にペナルティー的な税金を払わさせるものと想像しておりました。つまりは「みなし残業」にも対応するのかと。

>まっとうな残業をしていても、まっとうな税金を払っていないんだから、まっとうな税金を払ってもらうのが当然です。
 現状では、残業以外の分(定時就業の分)だけに社会保障料がかかっており、残業しない人ばかりに負担がかかりすぎています。

現行の標準月額報酬以上の報酬に対する負担のことをおっしゃっているのですね?つまりは定量制の社会保険費を所得税同様従量制にするということですか?
おっしゃるとおり、現行ではやり方によっては残業代分の社会保険料を大幅にカットすることができます。3,4,5月に残業しなければいいだけです。もちろんそれでも所得税はかかってますが。

サービス残業を脱税対象とした場合、彼らは「固定残業代」や、「みなし労働時間制」はたまた「年収制」を使ってこないでしょうか。

長文すみません。仕事がら非常に興味がある話題だったので。
Posted by ハム野郎 at 2013年04月25日 16:09
いいアイデアだと思います。
仕事の効率が悪い(生産性が低い)のを個人の責任におしつけサービス残業で補完させる、という悪しき慣例を打ち破るには、このくらいの荒療治をしないといけない気がします。
ただ、企業からの激しい反発は必至なので、実現性は難しいですね。

生産性を上げるために、業務フローをシステム化/効率化するとか、効率の悪い作業(無駄な会議とか)を極力減らすとかの努力をほとんどしてこず、サービス残業を含む個人の努力でなんとかしてきた日本の多くの会社の仕組みもそろそろ限界にきているので、1つきっかけがあれば大きく変わる可能性はあるので、実現したら本当に面白いんですが。
Posted by T.M. at 2013年04月25日 16:21
残業の問題は、企業が36協定を濫用していることなど、そもそも違法もしくは脱法の要素が大きいと考えます。
これを是正する役所は、警察、労基局などがあるべき姿ですが、南堂様は税務署とおっしゃる。
過労死や鬱など、人の命に関わっている現状を考えると、労基局の権限を強化して、しっかり摘発し、罰金を取れば南堂様の主張と同じ効果となりますが、如何?
(税務署には無限の人員が居るわけではないので、結局、増員することは同じですね)

まあ、労基法の罰金は300万程度なので「税」という名目で増額するというのも手ですが、罰金の増額も、法改正という手間は同じですね。
Posted by 西麻布夢彦 at 2013年04月25日 21:17
> 警察、労基局などがあるべき姿ですが、南堂様は税務署とおっしゃる。

 あるべき姿はそうなんですが、それができるほど賢明な政府ではないし。あっちこっちから骨抜き策が入りそうだし。(「小さな政府のために人件費を削減しよう。そのことで国の財政赤字を減らせる」……という詭弁。)

 その点、税務署がやれば、文句を言う会社には、税務査察を入れてやる。おっかないぞ。おまけに、下手をすると、懲役だ。
 
 あるべき姿よりは実効性、という現実主義。
Posted by 管理人 at 2013年04月25日 21:39
> 「裁量労働制」

> 残業という概念そのものを無くし、不払い残業を合法化されるのでは、と危惧します。

これってもう実際起こっているのでは?
大学の教員は法人化後に裁量労働制を導入していて、大学祭とかで土日に出勤したけど授業や教授会で結局振り替えが取れない&時間外手当なし、という「実質ただ働き」の話は聞いたことがある。
Posted by みちのくで独り at 2013年04月26日 00:29
>これってもう実際起こっているのでは?

それはサービス残業の違う形であって、今回の提案である程度カーバできるはず。

以下を参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/裁量労働制
みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合には労使で36協定の締結が必要であり、超過分の時間外労働に対する手当は支給される。また、深夜および法定休日の勤務に対しては深夜労働および休日労働に対する手当は支給される。

例に挙げていただいた時間外手当なしは、今回の提案で追徴課税の対象となります。
Posted by T.M. at 2013年04月26日 15:05
> 警察、労基局などがあるべき姿ですが、南堂様は税務署とおっしゃる。

 この件については、あとでデータを得た。違法残業の監督は、労基署がやるのが標準だが、実際には、労基署の人員が圧倒的に不足しているそうだ。おおざっぱに言って、きちんと監督するのに必要な量の百分の1ぐらいしか職員がいないらしい。苦情の受付だけで仕事が終わってしまい、実際の調査に割けるための人員がない。
 ま、予算不足ですね。財源不足と言ってもいい。
 その財源のために罰金を徴収すればいい、というのが、本案。
Posted by 管理人 at 2015年08月06日 21:39
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