プロがまた負けた。しかしシリーズ中では一番見応えがあった。 ──
棋譜はこれ。
→ http://www.shogiblog.com/denou/215/
中盤ではプロがうまく指しており、プロの圧倒的な優勢と見えた。コマの損得でも王の囲いでもそうだ。だけど、コンピュータのポイントでは、先手がそこそこ有利なだけで、圧倒的有利とは言えない状況だとわかった。
107手目▲7二竜では、4五桂打ちの方がいいんじゃね? と思ったのだが、コンピュータの判定ではポイントがかえって減ってしまった。(少しだけ。)
かわりの手を指してみたが、なかなか良い手が見つからない。私には無理。ちょっといじっているうちに、コンピュータに負けてしまった。つまり、代案はなし。
終盤は泥仕合になった感じで、時間切れでプロの側が負けてしまった。これは仕方ないね。上記ページでも「時間不足は人間に厳しい」となっていたが、その通り。「時間切れで負ける」というのは、一番、人間にとってつらい。時間を増やしてもらわないと。
今回の総評は:
「コンピュータが人間よりも強い」とまでは言えないし、途中までは人間の方がはっきりと優勢だったのだが、コンピュータは決め手を与えないまま粘っていて、そのうち人間が攻めあぐねている間に、うまく詰み筋を見つけてしまった。
何だか、劣勢のときの羽生さんみたいだ。
結論としては、コンピュータはずいぶん強くなった、ということだ。「頭の出来が人間以上」とまでは言えないが、「勝負に関しては人間以上」と言えそうだ。その理由は「劣勢でも人間を時間切れのなかで考えさせなくするから」。
考える力で上回っていたというより、考えさせなくする時間切れ制度のなかで、人間が負けてしまうわけだ。これは、「ソフトは終盤に強い」というのとほぼ同義。あるいは「単純なシラミつぶし探索はコンピュータの方が上」というのとほぼ同義。
当り前ですかね。
ただ、それ以前の序盤・中盤で、コンピュータはプロに大差で負けるのが以前の状況だった。そうでなく、序盤・中盤でも崩れなくなった、というのが、コンピュータの進歩かな。
《 オマケ 》
船江五段の言葉。
「結果については残念としか……。途中は優勢になったと思いますが、終盤逆転を許したのは自分という人間の弱さが出てしまいました」( → マイナビニュース)
人間の弱さというのは、精神的な弱さというよりは、夕食休憩もなく10時間半という、体力面の問題が大きい。次回は、時間を増やして、しかも、夕食休憩を入れてほしいものだ。
船江五段に対しては、「立派な棋譜を残してくださってありがとう」と感謝して激励したい。ミスらしいミスもなく、これほどの熱戦をなし遂げたとは、本当に立派だったと思う。何も恥じることはない。本当の将棋ファンならばみんな観戦後に拍手していると思う。スポーツの好試合を見たあとに似ている。勝敗に関係なく、どちらの側にも拍手を贈る。
それにしても、船江五段は強いですねえ。これで五段なんだから。若手というのは強い人が多い。ネットで調べたら、
「2011年度の第70期順位戦では初参加にしてC級2組で10戦全勝の成績」( Wikipedia )
とのことだ。さすが。
【 追記 】
79手目で、飛角4枚とも先手が独占した時点で、先手の圧倒的有利かと思ったのだが、コンピュータのポイント判断は先後互角。
「そんな馬鹿な」
と思って、私が先手を持って指したら、コンピュータにあっさり負けてしまった。 (^^);
いやはや。形勢判断で私よりも圧倒的に上だ。
今回の将棋は、すごく面白そうだ。名局と言っていいかも。どっちにとっての名局というより、面白さの点で。
なお、私のかわりにコンピュータにやらせたら、飛角4枚を得た先手が有利に変わっていって、ついには後手を詰ませてしまった。
→ den-ou-03.kif (棋譜ファイル)
うまい詰み筋を見つけたというよりは、大量のコマを手持ちにしてから強引に敵王を詰ませてしまう、というコンピュータらしい手法。最終的には自王は裸王で、自分の駒台にはコマがたっぷり、という形。
なんか、めげる。
( ※ 利用ソフトは K-Shogi 。こいつ、無料のくせに やたらと強いんで、かわいげがない。)
【 関連サイト 】
渡辺明竜王の感想。
双方にチャンスがある大熱戦でしたが、これでコンピューター側が2−1と勝ち越しました。
ここまでの3戦で棋士側が2敗したこと、若手の中でも上位に位置する船江五段にも勝ったことから現役棋士約160人の半分(80)、いや3分の1以上(50)に相当する力がある、という見方をせざるを得ないと思います。第2戦、第3戦の内容から見ても「相当する」であって「超える」ではありませんけども。最終戦でA級棋士の三浦八段が負けるとこの数字がグッと減るのでここは大注目の一戦になります。
( → 渡辺明ブログ )
【 関連項目 】
過去記事。
→ 将棋電王戦 第1局
→ 将棋電王戦 第2局
→ 将棋ソフトの紹介 (無料ソフト)
【 関連サイト 】
ツツカナについての情報。
→ 電王戦第3局に出場するツツカナについて
→ プログラムの特徴 (開発者のサイト)
「ツツカナは今回の第二回電王戦に出るソフトの中では一番ハードのスペックが低い。何故なら、ツツカナは一般的なハイスペックPC一台で動かしている」( → 出典 )
とのことなので、このソフトを発売してくれたら、けっこう売れそうだ。
このソフトは、私としてはけっこう好きですね。今回の将棋でも、良い将棋を指した。感心した。
> 電王戦第3局、先手が一気に駒得したところは△ツツカナのポカなんでしょうけども
http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/d9c62d1bd362bbe83acb054c4b6b2f53
実はポカではなくて、裏には複雑な事情があったと判明。
> http://www.hageatama.org/wp/1851
ソフトはもはや竜王を上回っているのかも。
ここがポイントだったのかも。
ただし、先手が勝ちきるには、妙手を連発する必要がある。それでも船江五段なら可能だったかも。
棋譜
→ http://j.mp/Xx5c05
これもまた名局という感じです。泥仕合にならないだけ、こっちの方が後半はきれいです。
印象的だったのは、終局直後の船江五段の表情です。
ソフト側代理指しの三浦初段に何か話しかけながら笑顔を見せたのでした。
局後の佐藤慎一四段が悲壮感たっぷりだったのに比べるとその違いが際立ちます。
敗れはしたが後悔100%ではないというような心境だったのでしょうかね。
次回の電王戦がもし行われるのなら、人間の生理的不利を減らすようにルールを整えた上でタイトルホルダーに出てきて欲しいです。
一番観たいのは羽生さんですが、渡辺竜王も観てみたいですね。
日本将棋連盟の若手は、対ベスト4PC
戦の電王戦に出てこないのではないか?
つまり、日本将棋連盟の未来が暗いと
言う事。これは大変な事だ。
>(船江公平五段)「2011年度の第70期順位戦では>初参加にしてC級2組で10戦全勝の成績」
→ http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/137/137345/
まちがいました。訂正いたします。