2013年04月02日

◆ 研究開発のデフレ

 日本の論文数の低下が著しい。これは研究費の集中・重点化のせいらしいが、そこにはデフレとの共通性が見られる。 ──
 
 日本の論文数の低下が著しい。報道から引用しよう。
 10年前に比べ、日本の論文数は3%の伸びだったが、中国は約4.6倍になった。日本のシェアは10年前は米国に次ぐ2位だったのが、中国、ドイツ、英国に抜かれ5位に下がった。
 分野ごとに引用された回数が多いトップ10%やトップ1%に入る論文数でみても、日本はトップ10%が4位(シェア7.6%)から7位(5.8%)、トップ1%が5位(6.4%)から8位(5.8%)に、順位やシェアを落とした。いずれも中国やカナダなどに抜かれた。
( → 朝日新聞 2013年03月30日
 これに対して、「研究費の集中・重点化のせいだ」という見解がある。
 もう長らく続いている日本の研究費の集中、重点化、5年おきに生まれる新研究分野への研究費特化による研究者の先鋭化による結果に違いありません。
研究者といういきものはニッチ的なもので、たとえ年間 50万円の研究費でもひとたび頂ければ一生懸命論文になるようなだれもやってないトピックを探して研究をするのです。
論文を書こうとする研究者の数が減ればとうぜん論文数も減るでしょう。こう推測します。
わたくしが研究費をひろく浅くばらまかなければ大変なことになると要職の人に会えば常にいっているのもこういうことをおそれてきたからです。
( → 日本発の論文数の低下
 これはまあ、ごもっとも、とも思う。どうせ金がないのならば、特定の金食い虫に集中して他を全滅させるよりは、特定の金食い虫を諦めて他の全部を息のこらえた方がいい。なぜなら、研究開発というものは、投資額には比例せず、アイデア(知恵)に比例するからだ。「金をかければいい」という発想は、研究開発には成立しないからだ。
( ※ この点、企業の人には、わかりにくいだろうね。企業の生産量は、投資額に比例する。……そういう発想に慣れていると、研究開発というものの実態を理解しにくい。「金さえかければできる」と思い込みやすい。「太陽光発電に莫大な補助金を」という馬鹿げた発想が、その一例だ。)

 で、その結果が、「一将功成りて万骨枯る」ふうの状況だ。スパコンの「京」は一時的に成功したが、他の大部分は大負けする。それが冒頭の「論文数の低下」である。

 ──

 ただし、である。私としては、次のことを指摘しておきたい。
 「そもそも日本では、研究開発の総額が不足している。ここが最大の問題だ」


 さらに、次の類似性を指摘したい。
 「日本のデフレ経済も、同様の状況になっている。日本経済全体の総額が足りないなかで、一部の金持ちに金が集中する一方で、国民の大多数は非正規雇用や失業で貧しくなっている。一将功成りて万骨枯る、ふうだ」


 似ていますね。
 で、大多数の国民は、極貧家庭になって、結婚できなくなり、出生率が低下。その一方で、ブラック企業として利益を得るユニクロの創業者は、ボロ儲け。
 
 日本というのは、こういう国なのね。
 嘘みたい。



 【 関連項目 】
 この件は、私も前に指摘したことがある。
 研究というものは、一点集中で巨額の金をかけて、建物や設備を買えばいい、というものではなくて、幅広く人材のために研究資金を投入するべきだからだ。(基礎研究ではそうだ。)
( → スパコンを買うべきか?
 巨額を一点集中で投入するより、広く浅くという方針を推奨している。つまり、今回の結果が出る前に、私はきちんと指摘していた。「論文数の低下」という結果までは具体的には予測していなかったが、推して知るべしというところか。



 【 関連サイト 】
 朝日の記事(社説)から、一部転載。
 経済協力開発機構(OECD)の統計などによると、各国の大学部門の研究開発費は00年代、日本が実質5%増だったのに対し、欧米諸国は30〜60%増、中国は335%増、韓国は134%増。論文数の伸びとうり二つなのだ。
 絶対額の水準も、国内総生産(GDP)比でみると、日本は米英独などを下回っている。
 日本の場合、ほかの先進国と違い、研究開発費の約半分を家計が負担している。私立大学では、ほとんどが授業料などでまかなわれているためだ。
 国や自治体から大学への投資は少ない。奨学金などを含めてもGDPの0.8%で、OECD平均の1.4%を下回り最低水準だ。
( → 朝日新聞 2013-03-31
posted by 管理人 at 23:55| Comment(1) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「論文は数である」と昔から言われている。 どの世界も数の倫理!? それでは・・・

 論文には査読制度がある。査読する側のグループにいると有利。また、1つの論文を3分割し、膨らませて、
(A,B,C)、(B,C、A)、(C、A,B)の著者名で発表し、それぞれ引用しあう。論文数は3倍になり、各論文は、
少なくとも引用数2件になる。同じ手口で論文を生産すれば・・・、

 中国の論文数が335%増は、中国流のやり方ではないかと想像する。最近、中国人留学生が、論文不合格
にした英国の教授の机の上に5000ポンドの現金を積み上げて「私に合格点をくれたらこの金を取ってよい」と
言ったという。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130502/chn13050208060001-n1.htm

 トムソン・ロイター社は、論文引用度(サイテーション)の充実したデータベースを持っている。上記のような、
仲間内水増し作戦については、そのような情報も添付する必要が出てきているのではないだろうか。

補足: 中村修二氏は、青色発光ダイオードの論文原稿を日本の学界に出したら、事情により握りつぶされた。
米国へ出したら一発で通った。結局、米国へ流出された。
Posted by 水増し作戦 at 2013年05月02日 21:48
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