センター試験はあまりにも弊害がひどいので、廃止・縮小するべきだ……と思うのだが、この意見はもちろん、私の独創ではない。あちこちで言われている。そのことはネットを検索すればすぐにわかる。
→ Google 検索
そこで、この線に沿って、話を進めたい。
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前項では、次のことを述べた。
「センター試験は、東大入試では、足切りの点数が極めて高い。この場合、不得意科目でのみ点差が生じて、得意科目では点差が生じにくい。そのせいで、得意科目と不得意科目のある受験生は不利であり、平均的にバランス良く点数を取る受験生ばかりが有利になる。こういう入試は好ましくない。平均点が 50点になるような試験にするべきだ」
→ 東大推薦入試は有効か?( 前項 )
簡単に言えば、センター試験とは、二流大学の入試に特化した試験であり、それを東大のような難関大学の入試に使うのは不適切なのだ。
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また、前に次のことを述べた。
「 2012年、2013年のセンター試験・国語は、非常に悪問である。正解のない問題や、どうしようもない悪文など。問題そのものがイカレている。このような悪問に正解する能力を測ったところで、それは学力とは何の関係もないものを測っているだけだ」
→ 2013年センター試験・国語は悪問
→ 2012年のセンター試験・国語は愚問
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また、ネットを探ると、次のような見解も見つかる。
(1) 国語
国語の試験。80分のうちで、現代文の評論、小説(今じゃ、ほとんどセンターでしか扱わない代物)の現代文計100点。さらに古文、漢文(今は、私立ではほとんど出さない)のそれぞれ50点。合計200点満点。これをやることになっています。第1に、小説というジャンルを扱うことが不適切である。(センター試験以外では論説文を使っている。)
ところが、私大では、「現代文100点」しか得点として必要としない入試が、圧倒的に多い。だから、受験生は、80分でじっくり?問題に取り組める。まともにやる受験生は、大問・一問につき、20分しかない。「国語」だけが、こういうおかしな試験時間になっています。
一番の問題点は、センターは、マークシートだということ。国語の問題も当然、すべてマークで答えます。……迷って、えい、これにしちゃえ!とマークしても、じっくり考えてマークしても、○は○、×は×となります。
( → 大学入試センター試験廃止論 )
第2に、私大と国立大で異なる教科数の受験生をいっしょに扱うのもおかしい。(たとえば東大理1と早大の双方を受験する受験生は古文を受験するが、私大だけを受験する受験生は古文を受験しないので現代文に専念できる。ゆえに、私大だけを受験する生徒ばかりが有利である。
第3に、五つからの選択なので、ヤマカンでもけっこう点が取れる。運の介入する量が大きすぎる。)
(2) 英語
(ここでは)問われているのは一つの単語の意味にすぎない。他にもいろいろとあるだろうが、このように、センター試験というのは、愚問・悪問がそろっている。
なぜ大学受験生にこんな単語クイズを課すのだろうか。単純な記憶力の問題だから、たまたま知っていればラッキーだし知らなければアウトだ。無数にある英単語のなかからadoptを問うだけで受験生の語彙力など計れるはずはない。そもそも単語の意味など、知らなければ辞書を引けばすむことであり、大学で学ぶ知性とは何の関係もない。
( → センター試験の廃止を )
これはつまり、「センター試験を縮小する」という案だ。試験そものを縮小するのではなく、試験の役割を縮小する。あくまで「一次試験」のような役割だけをにない、肝心の試験は二次試験で行うことになる。ただ、全員に二次試験を行なうのは大変だから、その前に、二次試験の対象を大幅に狭める。そのために、センター試験を使うわけだ。
以上とは別に、次のことも指摘して起きたい。これが本項の本題だ。
センター試験というものは、そもそも、大量の受験生の受験が処理しきれないことが理由となってできたものだ。ならば、センター試験をやたらと利用せずに、次の形に特化すればいい。
・ 一定以下の低レベル者を不合格にする「足切り」
・ 一定以上の高レベル者を 合格 にする「逆足切り」
この二つを組み合わせることで、受験生の範囲を大幅に縮小できる。そこで、縮小した範囲の受験生に対してのみ、ちゃんとした入試を課すればいい。(東大の二次試験のようなもの。)
また、センター試験のレベルそのものを、2通りか3通りぐらいにするといい。たとえば、現状では東大の足切りレベルが 8割ぐらいだから、これが5割か6割ぐらいになるように、試験のレベルを大幅に上げる。そういう「難易度の高い試験」も、別途用意するといい。次のように。
・ 高レベルセンター試験
・ 中レベルセンター試験
東大受験生の場合は、中レベルセンター試験では高得点者ばかりになるので、中レベルセンター試験の受験を免除して、高レベルセンター試験の点数のみで、「足切り」および「逆足切り」をする。
・ 50%未満 → 足切りで不合格
・ 70%以上 → 逆足切りで合格(全体の2割程度)
こうして受験生の範囲を絞ったあとで、残りの受験生に対して、二次試験を課すればいい。いや、正確に言えば、二次試験を採点すればいい。つまり、二次試験を実行したあとで、受験生に対して、「足切り」および「逆足切り」で一定部分を採点対象からはずし、残りの部分についてのみ採点すればいい。この残りの部分のみが、合否の判定の対象となる。(それ以外の部分については、すでにセンター試験だけで不合格または合格が決まっている。)
センター試験というものが良問になるのであれば、このような形でセンター試験を残すのも、悪くはないだろう。
[ 付記 ]
現状では、センター試験は悪問ぞろいである。ただ、これはまだ改良の余地がある。
・ まともな出題者に変更する。
・ 択一問題は、5つからの選択ではなく、もっと高度な形に。
たとえば、「5つからの選択を二つ噛み合わせた形の選択」
例。正解となる文章を決めたあとで、そこに二つか三つの
空欄を付けて、空欄に補充する後を選択させる。
空欄が二つならば、選択肢は5の2乗で、25通り。
例題。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本のヒロインのモデルになった女性は AKB48 の一員である [ (1) ] である。彼女はのちに [ (2) ] でも話題になった。
(1)
a 前田敦子
b 柏木由紀
c 峯岸みなみ
d 板野友美
e 小嶋陽菜
(2)
a お持ち帰りだっこ
b お天気キャスター
c 坊主刈り
c 大規模整形
e 下着モデル
※ (1)(2) どちらも正しい場合のみ、配点5点。
※ 正解は書きません。
「1と2」
「3と5」
「1と4」
「正答なし」
みたいな感じです。5択のうち1つですから、デタラメでも20%は当たる、組み合わせ成分の1つくらいは正しい、あるいは間違っているとわかるから、あとは適当でも半分くらいは正答できました。
ところが、近年、選択肢を独立して選ぶ方式に切り替わったもんだから、一気に難易度が上がりました。
「以下の5つの中から正しいものを一つまたは二つ選べ。」
という問題でした。これでまぐれ当たりがかなり少なくなるみたいです。
(しかも、個々の設問自体がかなり難しい)
あの試験の問題はマーク形式の試験問題としては非常によくできてると思いますよ。
国語に関しては、評論小説ともに論理的に正解を絞りきれない問題は滅多に出ません。小説は一部の京大など国立大学でも出題されています。
英語に関しても、文法や語法の知識を問う問題は配点が低いので、暗記力を試すような試験にはなってません。
他の科目に関しても、いわゆる「悪問」はほとんどないのが、少なくとも私が試験問題を解いてみた印象です(というか、さすが年に1回の試験のために数年かけて問題を作ってるだけあって、大手予備校の予想問題や私大のマーク形式の問題なんかと比べると違いは一目瞭然だと思いますが。大学で学ぶための知性がどうの言うなら尚更です)
もちろんマーク形式である以上、正確に受験生の学力を計るのに限界はあるとは思いますけどね。
あと、確かに東大等の一流大学受験者からすれば簡単なのは同意しますが、それならこの程度の試験を突破でぃなければお話にならないかと。。
センター試験は、国語に関しては全然ダメだ、と指摘済みです。そちらを読んでください。
→ 2013年センター試験・国語は悪問
http://openblog.meblog.biz/article/13920620.html
→ 2012年のセンター試験・国語は愚問
http://openblog.meblog.biz/article/13961870.html
→ 国語と文学を区別せよ
http://openblog.meblog.biz/article/13964362.html
> 他の科目に関しても、いわゆる「悪問」はほとんどない
> 正確に受験生の学力を計るのに限界はある
確かに「悪問は少ない」と言えます。その点は同意します。
しかしセンター試験で問題なのは、そのことじゃない。「問題のレベルが低すぎるので、東大のような難関校では平均点が非常に高くなって、合否の判定をするには適さない」という点です。「難関校での入試には向いていない」ということです。ここが肝心です。
本項の本文中(上記)に、次のように記してあります。
> 前項では、次のことを述べた。
(中略)
> → 東大推薦入試は有効か? (前項)
> http://openblog.meblog.biz/article/14719893.html
ここに説明が記してあります。
> センター試験廃止へ 文科省、複数回の新テスト検討
> 90年にスタートしたセンター試験は共通1次と同様に年1回の実施。受験生を1点刻みでふるい落とす手段として使われ、基礎学力を測るという当初の目的が薄れているとの批判があった。
> 難易度の異なる3種類程度のテストを用意する案が浮上しており、受験者は卒業後の進路などに応じてテストを選ぶ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0505N_V00C13A6MM8000/
「難易度の異なる3種類程度のテスト」ということであるから、「センター試験は容易すぎる」(そのせいで難関校では合否のラインが高くなりすぎる)という欠陥は、いくらか解決することになるだろう。
とはいえ、「3種類程度のテスト」では、東大の試験には全然向いていないと思う。東大の試験に使うなら、最低でも「東大・京大専用」というぐらい、難易度が高くなる必要がある。「3種類程度」ぐらいじゃ、全然足りないでしょう。
……と思ったが、あとで本文を読み直したら、本文の最後で「3種類」という提案をしていましたね。 (^^);
「3種類にして足切り」という提案だが、これならば「あり」だと思う。少なくとも現状よりはマシだ。「3種類」というのは、選抜試験としては物足りないが、「足切り」に使うぐらいならば、そう悪くもない。