2013年03月13日

◆ EV 電池の劣化(実証)

 「太陽光発電の電力を電気自動車に充電する」というアイデアがある。だが、この方式では電池の劣化という問題が起こる。それが実証された。 ──

 スマートグリッドの一種として、次のアイデアがある。
  ・ 太陽光発電の電力を電気自動車に充電する
  ・ 夜間の余剰電力を電気自動車に充電する


 これはうまいアイデアに思える。自動車会社がしばしば宣伝する。(検索すればいっぱい見つかる。 → Google 検索

 だが、これはまずい。というのは、電池の劣化という問題があるからだ。この件は、前に何度か指摘した。
  → EV や PHVを蓄電池にする
  → EV蓄電と太陽光発電

 ここまでは、すでに述べた話だ。あくまで概念的な話だった。

 ──

 ところが、EV 電池の劣化という問題が、具体的に実証された。それは、長距離を走る EV タクシーの事例だ。運転手の証言がある。
 「とにかく電池の劣化が激しい。新車時は1回の充電で100km以上走行できたのに、2年後の今はわずか50kmほど。
 電池劣化とともに、急速充電にかかる時間も増えた。電池容量半分の充電で約15分から約40分と、倍以上になってしまった。
 しかも、頼りの急速充電スタンドは大阪市内に8ヵ所しかない。そこまでの所要時間を足すと、充電に1時間以上もかかってしまう。充電は一日に6、7回は必要なので、それだけで計7時間近い時間がロスとなる。やってられませんよ」(運転手)
 一日の走行距離が 50km以内で済むような一般ユーザーならまだしも、年間 10万km走行もざらのタクシーに EVを投入すること自体、無謀だったのかも。
 導入から3年後の来年2月、EVタクシーは大阪の街から姿を消してしまいそうな雲行きだ。
( → 週プレニュース
 EV が実用的使えるのは、一日の走行距離が 50km以内で済むような一般ユーザーの場合だけだ。それをはるかに上回るようだと、電池の劣化が著しくて、もはや使い物にならなくなる。
 このことは、メーカーの保証期間を見てもわかる。
 「バッテリーの性能低下をカバーする保証を、5年間/走行6万マイル (約9万6000km)に拡大する」(日産自動車)
( → 転載サイト
 保証期間は「5年間または 10万km」。この数値は、一般ユーザーの利用が基準となる。
 一方、ここに「毎日スマートグリッドで充電」なんてことをしていたら、どうなるか? 毎日、100%の充電と放電をしていることになる。日産リーフの1回の走行距離は 200km だから、200×365 = 73000 で、年間7万キロ走行したのと同じことになる。つまり、1年半でバッテリーの保証期間に達してしまう。

 結論。

 スマートグリッドとして EV の電池に充電すると、1年半で充電池の保証期間に達してしまう。2年もすれば、使い物にならなくなる。それほどにも劣化がひどい。
  EV の電池は、運転用途だけで精一杯だ。スマートグリッドのためにやたらと充電なんかしていたら、EV としての能力自体が損なわれてしまう。本末転倒とはこのことだ。
 結局、「 EV の蓄電池を頼りに、太陽光発電の発電量の変動を解消しよう」という発想は、成立しないのである。



 [ 余談 ]
 比喩。
 「素晴らしい発明です。化石資源を一切使わず、再生可能な生物資源だけで発電する方法を見つけました。それは、1万円札を燃やして、発電することです。1万円札は、紙でできていますからね。これで発電すれば、すごくエコです。素晴らしいでしょう? ね?」
 愚劣ですね。  (^^);

 1万円札というのは、本来の用途がある。その用途のために使えば、立派な価値を持つ。しかるに、本来の用途とは別のことに使えば、本来の用途が消えてしまう。たとえ別の用途に使えるとしても、本来の用途が使えなくなってしまったら、元も子もないのだ。
 このことを理解できない連中が、「 EV でスマートグリッド充電を」なんて言い張っている。「自分はすごいアイデアを思いついた利口だ」というつもりらしい。しかしそれは、「一万円札を燃やして発電する」というのと、同様なのである。



 [ 付記 ]
 それとは別の話になるが、次の事実もある。
 「仮に、電気自動車が普及して、すべての乗用車が電気自動車になったとしても、それによって電気自動車が占める割合は、電力需要全体の 2.5% にすぎないという。換言すれば、すべての電気自動車を止めて、ただの蓄電池として利用するとしても、そのリチウム電池でまかなえる量は、電力需要全体の 2.5% にすぎない」
 ( → 前出項目

 日本全体では、莫大な量の電力を使っている。特に産業用電力の使用量は大きい。そういう莫大な電力に対して、電気自動車が蓄電できる量など、たかが知れている。ほとんど誤差の範囲にすぎない。無視していい量だ。

 太陽光発電は、晴れた日中しか発電できない、という致命的な難点がある。その難点を解消しようとして、EV の蓄電池に頼ろう……というアイデアは、一応は自然だ。しかし、数値を考えてみると、EV の蓄電池はあまりにも能力不足なのである。絶対量も少ないし、また、使えばすぐに使い物にならなくなる。ゆえに、「 EV の蓄電池に頼ろう」というアイデアは、成立しないのだ。

 以前には、「量が足りない」ということを指摘した。
 本項では、「すぐに劣化する」ということを指摘した。
( ※ EV が実用的に使えるのは、一般ユーザーの家庭向けの用途だけだ。EV はまだまだ、性能は不十分なのである。)
 
( ※ まとめふうに付言しよう。日本全体の発電量から見ればスズメの涙にすぎないような量を蓄電することを目標とするが、それではろくな効果がない。しかも、肝心の EV は1年半で使い物にならなくなる。400万円の EV が1年半でゴミになる。……一方、普通の LNG 発電をすれば、あらゆる費用が激安で済む。炭酸ガスの削減量からしても、LNG 発電の方がずっと優れているのだ。前項を参照。)
  


 【 関連項目 】

 後日、次の記事を新たに書いた。
  → SCiB 電池

 劣化という問題を解決したリチウムイオン電池がある。SCiB 電池というものだ。ただしこれには、「高コスト」という難点も付随する。
posted by 管理人 at 20:53| Comment(10) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちょっと古い記事ですが、今日(2014/2/7)このブログを拝見しました。
思い込みが強いようなので一言!
EVのバッテリーの劣化は、充電回数のみではありません。劣化を早めるもう一つの原因はバッテリー温度です。ゆっくり充電し、ゆっくり使う家庭への供給は殆ど殆ど劣化しないのです。
タクシーで劣化が早いのは、頻繁に急速充電をするためです。その都度局所的にはかなり温度を高めてしまっているのです。またタクシードライバーにありがちが急加速もバッテリー温度を高めています。特に少ない電池残量での急加速は禁物です。局所的に温度を急激に高めるためです。
参考にして頂ければ幸いです。
Posted by rt at 2014年02月07日 20:11
> ゆっくり充電し、ゆっくり使う家庭への供給は殆ど殆ど劣化しないのです。

 すぐ上の SCiB 電池 というリンクの項目を読んでください。メーカーの説明で、次の記述があります。
 「従来のリチウムイオン電池の寿命は、充放電の繰り返しサイクルで長くても1,000回です。これを越えると交換が必要になります。しかし、SCiBでは6,000回は十分に使用できます。」

 1,000回というと、1日1回で3年弱です。「殆ど劣化しない」どころじゃなくて、「3年弱で使えなくなる」となります。
 一般の自動車の寿命は 10年ですから、3年弱というのはあまりにも短い。
 
 というわけで、SCiB を使う三菱 i-MiEV ならともかく、他の EV では寿命の問題はあります。
 車種しだいで違う、ということですね。
Posted by 管理人 at 2014年02月07日 20:28
リーフオーナーですが、納車25ヶ月走行距離72,000km毎日100%充電+急速充電を行っています。
充電回数は既に1000回を軽く超えていますが、車として使えなくなるような事態にはなっていませんよ。

どっかで見かけた記事をコピべして論じるだけの手法が流行ってるのですか?(笑)実につまらないブログでした。
Posted by 通りすがり。 at 2014年04月19日 20:06
> by 通りすがり。

 あなた、本項を読んでないでしょ? ちゃんと読んでから書きましょう。
 72,000km なら、保証期間( 10万km )内だから、問題がないのは当たり前です。ちゃんと本文中に 10万km と書いてあるのに。読めないの? 

 あと、本項は「リーフは駄目だ」なんて、一言も書いてありませんよ。「スマートグリッドとして EV の電池に充電する」のが駄目だ、と書いてあるんです。読めないの?
Posted by 管理人 at 2014年04月19日 20:22
>電池劣化とともに、急速充電にかかる時間も増えた。電池容量半分の充電で約15分から約40分と、倍以上になってしまった

普通劣化で電池容量減ったらその分充電時間も減るもんじゃないのかな? ネガキャン記事で考察しても意味がないと思うのだが
Posted by リチウムサイダー at 2014年04月26日 12:41
> 劣化で電池容量減ったらその分充電時間も減るもんじゃないのかな?

充電池とガソリンタンクは違います。
充電池には内部抵抗というものがあります。

「内部抵抗は電池が劣化するほど大きな値となり、その分負荷にかかる電圧は低下します。」
http://www.laslon.com/qa/qa_31.html
Posted by 管理人 at 2014年04月26日 12:58
週刊誌の記事のタクシー
走行距離の記載がないのが気になりますね
仮に2年でも走行15万キロだったらもう寿命でしょう
何も目くじら立てるほどでもない。
以下の例はどう説明されるでしょう?
http://minkara.carview.co.jp/userid/1706458/blog/32736639/
何セグメント残って50キロとか申すのか?も不明
リーフの走行可能距離は運転が荒い(出力が多い)と記憶して低く算出されますその証拠に
エアコンのスイッチを入れると表示が減ります。
携帯の1セルでなく100セル以上搭載するリーフでは
セルバランスの不良と劣化を混同している可能性もありますね
Posted by リチウムサイダー at 2014年04月26日 16:19
15万キロというのは、自家用車の場合の走行距離です。
 タクシーの場合には、50万キロぐらいが寿命です。以下、引用。

> 一般的に50万kmくらいまで使用されるようです。
http://221616.com/car-topics/a_0000030817.html

 タクシーのように過酷な走行には、EV はあまり向いていないようです。というか、普通の充電池のEVは。(長寿命型の充電池を乗せた EV は別。たとえば i-MieV  → http://openblog.meblog.biz/article/14841394.html )

 一方、プリウスのタクシー、累計走行距離100万km達成、という記事もある。
  → http://response.jp/article/2013/12/27/213890.html
 ただ、私の想像では、これは充電池を何度か交換していると思う。(あくまで想像だが。)
Posted by 管理人 at 2014年04月26日 21:59
15万キロというのは、自家用車の場合の走行距離です。
 タクシーの場合には、50万キロぐらいが寿命です。

仮に控えめに二年何ヶ月で30万キロとしても
とっくにメーカー保証外です
10万キロまでに8セグになれば無償でバッテリーの交換ができます国や自治体から補助金も結構でているはずです
燃料(電気)代もかなり低く
会社が自費で交換しても良さそうですけどね




> 一般的に50万kmくらいまで使用されるようです。
 タクシーのように過酷な走行には、EV はあまり向いていないようです。というか、普通の充電池のEVは。(長寿命型の充電池を乗せた EV は別。たとえば i-MieV  → http://openblog.meblog.biz/article/14841394.html )

アイミーブは軽規格なのでそもそもタクシーには向いてないですね
あと新車時でもバッテリーの容量がすくないので
劣化無しでも冬場は50キロしか走れないとユーザーは言ってます
http://bbs.kakaku.com/bbs/K0000287261/#tab
Posted by リチウムサイダー at 2014年04月27日 11:06
http://bbs.kakaku.com/bbs/K0000099959/#17730564 家庭用充電をメインにしても 早く劣化します。不要があるとかで・・・・・。ニッサンの 5年10万k保障は パフォーマンスです。みんなで声を上げましょう
http://blog.livedoor.jp/toshi_792t/archives/1004561001.html
Posted by kurumi at 2014年07月16日 19:12
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