2013年03月04日

◆ 食品廃棄でコストアップ

 食品廃棄を減らすために、納入期限を延ばす、という方針がある。しかしこれは根本的に狂っている。そのせいでコストが莫大になる。 ──

 現状では食品について、「納入期限は全体の3分の1まで」という慣習がある。「3分の1ルール」と呼ばれるものだ。


third.gif


 この期限を「3分の1」から「2分の1」へ延ばそうという方針がある。
 加工食品の返品や大量廃棄の要因とされる、流通業界の納品ルールについて、大手スーパーやメーカーなど 16社でつくる検討チームが、近く一部商品で試験的にルールを緩和し、小売店への納品期限を延ばすことで一致した。
 6月にも菓子や飲料などを対象に始める計画で、実施する小売業者やメーカーをとりまとめる。
( → 2013年3月4日 読売新聞
 一見、好ましい動きに思える。しかし、根本的に方針が狂っている。(物足りない。)

 ──

 この方針に従えば、期限が1カ月ぐらい延びることになる。しかし、そのくらい延びたところで、大量の食品廃棄が生じるという問題は、ほとんど変わらない。大量の廃棄物が2割ぐらい減るという程度のことにすぎない。
 
 では、どうすればいいか? 食品廃棄を、すべて完全になくせばいい。2割ぐらい減らすのではなく、完全になくせばいい。では、どうやって? 
 それは、こうだ。
 「返品をなくす」

 つまり、こうだ。
 「売れ残り商品を生産者に返品させるのではなく、販売店への買い取り制にする」


 この件は、前にも詳しく述べた。
  → 食品廃棄の無駄
  → 食品廃棄物と返品

 ──

 では、買い取り制にすると、どうなるか? それについても上記項目で記している。つまり、衣料品と同様になる。衣料品では、こうだった。
  ・ 従来 ……
    売れ残りは問屋に返品 → その分、価格は高い
  ・ 現在 ……
    売れ残りは返品なし  → その分、価格は低い


 従来は、委託販売だったので、返品があるかわりに、価格は高かった。たとえば、1万円で仕入れて、1万5000円で売る。売れ残れば、返品して、1万円を返してもらう。(メーカーは返品されたものをすべて裁断して廃棄する。)
 現在では、買い取り制となり、返品がないので、価格は低くなった。たとえば、上記と同じ商品を 7000円で仕入れて、1万円で売る。同じ商品でも価格が安いので、たいていが売り切れる。それでも少しだけ売れ残りが生じたら、値引き販売する。3割引、5割引、というふうに。最終的には8割引ぐらいまで下げて、全部売り切る。

 というわけで、返品制をやめて買い取り制にすれば、「廃棄」という無駄がなくなるだけでなく、価格も大幅に引き下げられる。そのことはすでに衣料品で証明済みだ。

 ここで本質的に考えよう。買い取り制では、なぜ価格が下がるのか? 
 それは、基本的には、廃棄という無駄がなくなることの効果だ。逆に、廃棄という無駄が生じれば、その分、価格が高くなるのは当然だ。

 ──

 こう述べても、「ほんとかね?」と疑う人も多いだろう。そこで、実際の値を示す。
 一般的に言えば、米国に比べて、日本では加工食品の価格が著しく高い。その理由は? 関税か? いや、関税は、 15% 〜 35% 程度にすぎない。下記のように。
  → 関税率表 (目次)
  → 加工食品の関税率表

 一方、現実の価格を見ると、日本は米国に比べて2倍ぐらいの値段だという例は、ざらにある。下記の事例を見て、じっくり味わってほしい。
( ※ 一部抜粋して、縮小画像で示す。引用元のページには、大きな画像でたくさんの例がある。)


prices.gif

出典:GIGAZINE    .



 ──

 これだけの価格差がある。(日本に比べて。)
 その理由は、関税だけではない。同じ商品を日本に輸入しても、この価格では買えず、ぐっと高くなってしまうのだ。なぜ? その理由が、本項に記してある。
 つまり、流通過程で莫大なコストがかかるのだ。その理由は、「返品制」である。
 
( ※ 引用元のページでは、「円高のせい」と述べているが、円高の影響は2割程度に過ぎない。それよりも圧倒的な価格差がある。……というか、円高ならば、輸入すれば解決する問題だ。そもそも、一部の食品はもともと日本でも輸入品だ。)
 


 [ 付記1 ]
 簡単に言えば、あなたがカップラーメンを1個買うとき、同時に、売れ残りになって廃棄されるカップラーメン1個のコスト(および返品のためにかかる手間賃やガソリン代)も払うことになる。だから価格が大幅に上昇してしまう。

 [ 付記2 ]
 実を言うと、スーパーなどのプライベートブランドだと、買い取り制になるので、本項で言う無駄はなくなるはずだ。……たぶん。

 [ 付記3 ]
 ただし、小麦などの高率の関税は、別途かかっている。その意味で、たとえ流通の無駄をなくしても、米国並みにはならない。関税の引き下げは、TPP によるしかないだろう。

 [ 付記4 ]
 返品制が問題だということは、価格が高いのが食品に限られていることからわかる。
 一方、返品制ではない普通の商品なら、日本でも十分に安い。たとえば、オモチャとか、日用雑貨とかの、輸入品がそうだ。


  
 【 追記 】
 小売業者が、「納入業者から購入した商品の全部又は一部を当該納入業者に返品することは独禁法違反である、と公取委が示している。
 以下、引用。(http://www.jftc.go.jp/dk/daikibokouri.html

 ──

 本項は、大規模小売業者が、「納入業者から購入した商品の全部又は一部を当該納入業者に対して返品すること」を原則として禁止するものである。
 例えば、次のような返品を行うことは、第一号又は第三号に該当する場合を除き、本項の不当な返品に該当する。
 ○ 大規模小売業者がメーカーの定めた賞味期限とは別に独自にこれより短い販売期限を定め、この販売期限が経過したことを理由として返品すること(注1)。
 ○ 大規模小売業者のプライベート・ブランド商品を返品すること。



 【 関連項目 】

 → 食品廃棄の無駄
 → 食品廃棄物と返品
 → ゴミ促進税制をやめよ
 → 廃棄食品と省エネ
 → コンビニの食品廃棄
posted by 管理人 at 19:58| Comment(5) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
女房は返品しにくいので飼い取りとなる。そのせいで無駄な出費が増えるが、意を決して離婚すれば長い目では安く上がるかも、などとほざいていたが返品されたのは自分だった。(バツイチ)
Posted by passerby at 2013年03月04日 21:53
書籍も同じやり方をすると、値段が下がってよさそうですね。
Posted by 北海道の人 at 2013年03月04日 23:04
不良品なら兎も角、本来、賞味期限切れの商品を返品するなど、おかしい事だし、もってのほかだと思います。
売れなかったのは、問屋やメーカーが悪いのではなく、仕入れた方が悪いのです。それを他人のせいにするなんて・・・・。

PBについては、工場の生産ラインを借り切って、
買取返品無し、広告費が原価に反映されない(当たり前ですが)ので安く提供できます。売る方も
比較的利益が取れますし・・・・・。

ただ、期限切れ間近の商品を納入されても困りますし、メーカーや問屋もしっかり在庫調整してもらいたいですね。
Posted by やまくらげ at 2013年03月05日 00:44
> 賞味期限切れの商品を返品する

 そうじゃなくて、賞味期限まで3分の1になった時点で、返品されて、廃棄されます。もったいないですね。そういう趣旨。
Posted by 管理人 at 2013年03月05日 00:52
えーっ?!!
そんな実態があったとは・・・。あきれて物が言えない。何所の小売屋かは
知らないが、自分たちの莫迦さ加減を全く自覚していない。信じられない!!

まっ、私の、実態の把握不足は認めます。
小売側も、さっさと見切ってでも売りつくせばいいのに。
自分たちの能力不足を棚にあげて、他人に尻拭いをさせる、それは絶対おかしい、というのが私の
言いたい事です。
先生の趣旨には全く同感です。
Posted by やまくらげ at 2013年03月05日 20:37
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