2013年02月21日

◆ 医療機器の開発支援(組織論)

 医療機器の開発支援をしよう、という政府の方針があるが、うまく機能していない。その問題点は? ──

 医療機器の開発支援をしよう、という政府の方針がある。
 《 新薬や医療機器の開発支援、政府が組織改編方針 》
 政府は20日、内閣官房の医療イノベーション推進室を「健康・医療戦略室」と改組し、体制を充実させる方針を固めた。
 最先端の医療技術を実用化する医療イノベーション(革新)を安倍政権の成長戦略の一つに位置づけ、医療産業の国際競争力を高める司令塔としての機能を強化する。
( → 読売新聞 2013-02-21
 読売の朝刊(同日)には、特集記事がある。また、以前の社説もある。
 《 医療機器入超 承認の遅れは競争力を殺ぐ 》
 日本の医療機器メーカーの国際競争力を強化させたい。優れた機器の普及へ、障壁を取り除く政府の役割は重要だ。
 日本では現在、医療機器の開発から厚労省による承認まで平均3年程度かかり、米国と比べて約2年も長い。大幅な承認遅れだ。
 これが、国内メーカーの競争力を殺(そ)ぐ要因となっている。高い技術力がありながら、製品化に時間がかかり、新商品開発や市場参入に二の足を踏むからだ。
 厚労省の今回の決定は、民間機関の認証対象を比較的リスクの高い製品にも拡大する内容だ。
 MRI(磁気共鳴画像装置)などに限られている対象をコンタクトレンズ、歯のインプラントなどの後発品に広げる。
( → 読売新聞・社説 2013年2月5日
 このように政府や読売は推進しているのだが、なかなか進まない。読売の朝刊(同日)の特集には、次の解説がある。
 推進室は民主党政権下の 2011年に設置された。初代室長には……教授が就任したが、1年足らずで、「省庁間の縦割りに無力を感じた」として辞任した経緯がある。
 このように、組織上の問題があるようだ。
 では、それはどんな問題か? 

 ──

 私の推定では、次のことだ。
 「各省庁の出向者が、出身省庁の意を受けて、権限の委譲に反対する。権限を委譲すれば、業界を監視することができなくなり、天下り先を失うからだ」

 この問題を解決するには、どうすればいいか? 私は次のように考える。

 政府のように、該当分野の推進をするだけのプロジェクトチーム方式は、妥当ではない。それでは、政策推進と監督官庁とが分離するので、たがいにアクセルとブレーキの関係になり、両者が対立して、まともな動きが取れなくなるからだ。
 そこで、かわりに、政策推進と監督官庁を一体化した新規部門を創設するといい。「医療機器担当局」という部門だ。この部門で、政策推進と、関連分野の監視を、同時に行う。職員は、出身省庁からの出向ではなく、半永続的な専属とする。

 ま、比喩的に言えば、「環境庁」をつくったようなものだ。ここで新たに独立的に業務を担当するわけだ。ただし、庁レベルの組織は必要なく、総務省の外局にするだけでいい。

 ──

 さらに言えば、この方式を、あらゆる新規政策に適用するといい。福祉とか、医療とか、ITとか、少子化とか、そういう政策ごとに、次々と担当局を創設するといい。
 その一方で、従来からあるような「少子化担当相」なんてのは、ただの大臣として設置するだけでなく、きちんとした担当局のもとで政策推進をするといい。(大臣ではなくて専属官僚が実行するべきだ。)
 福島の復興なども、本来は、復興庁なんていう新規組織を1年もかけて作るよりは、さっさとと担当局をつくって業務を実行するべきだった。

 このように、「政策ごとの担当局」という方針で、ピラミッド型の従来型組織を越えた、新たな組織構造を得ることができる。
  


 【 関連項目 】
  → 首長は何をするべきか? ( nando ブログ )
 
 自治体レベルでの一般業務についての話。
 本項のような特定の課題についてではない。
posted by 管理人 at 20:02 | Comment(6) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>政策推進と監督官庁を一体化した新規部門

原子力委員会をまた作りますか?

原子力安全委員会を無力化したように


天下り全面禁止のほうが良いように思いますが
Posted by 百目 at 2013年02月21日 22:02
「また作る」んじゃなくて、「まともなものを作る」んです。
 何を作ろうが、担当者が全部、業界に買収されていたんじゃ、どうしようもないのは、当り前。組織論以前の問題。
Posted by 管理人 at 2013年02月21日 23:24
天下り全面禁止のほうが良いように思いますが
Posted by 百目 at 2013年02月21日 23:47
天下り全面禁止は、大切でしょうけど、公務員の能率アップ(組織が利口になること)とは、別のことでしょう。
 つまり、マイナス点をいくら削っても、プラスが生じるわけじゃない、ということ。
 人間で言えば、欠点をいくら削っても、オリンピックで優勝できるような長所は生じない、ということ。
 両者は別のことです。
Posted by 管理人 at 2013年02月22日 00:15
いずれにしても、公務員は(省益ではなく)国民の利益にどれだけ貢献したかで評価される、という大原則が確立してからの話ですね。
そうでないかぎり、どんな組織を作っても骨抜きになる、というより、有効な組織であればあるほど公務員の抵抗にあって設立できないでしょう。
Posted by T.M. at 2013年02月22日 18:32
公務員を牛耳るには、ポストを増やして与えればいい……というのが従来の方針だったが、実はもうすぐ変わりそうだ。というのは、天下りがなくなりそうだからだ。
 どうしてかというと、公務員の定年延長もどきで、65歳まで雇用されるから。これなら天下りの必要はなくなる。

 ※ 本来は定年延長の予定だったが、「再任用」という形になったそうだ。
 → http://www.asahi.com/job/news/TKY201203210741.html
 ま、どっちみち、天下りの必要性はなくなる。
Posted by 管理人 at 2013年02月22日 18:59
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