2013年02月17日

◆ タカ・ハト・ゲームとは

 (前項 の補足) タカ・ハト・ゲームについて、簡単に解説しておく。 ──

 タカ・ハト・ゲームについては、前に言及したことがある。
  → 戦争とタカ・ハトゲーム
  → ニュースと感想  (2004年4月14日c)

 詳しい話は、後者のソースに(コメント記号で)埋め込んでおいて、「知りたい人はそれを読め」というふうに書いておいた。しかし、そんなのを読むのは面倒だろう。そこで、その部分を抜き出して、以下に記しておく。(内容は以前のままだ。約9年前の記述。)

 ──

《 もともと表示していた文章 》

     ( ※ 時事ネタ部分は削除して示す。)

 「戦争とゲーム理論」について。
 「テロに屈するな」という主張については、ゲーム理論が適用できる。例の「囚人のジレンマ」に似ている。いわゆる「タカ・ハト」ゲームだ。

 今、相手が「タカ」という選択をしている。
 ここで、自分が「ハト」という立場を取ると、「相手だけに大きな利益を与える(自分は小さな損をする)」となる。それはシャクだ。
 そこで、「ハト」という立場を取らない。つまり、「タカ」という立場を取る。すると、双方が、ともに「タカ」となるので、「タカ」と「タカ」の組み合わせになり、双方が大きな損をする。
 ここで、双方がともに「ハト」という立場を取れば、双方がともに小さな利益を得る。だから、それが最善だ。
 ただし、そのためには、どちらかが一方的に「ハト」を取るのではダメであり、双方が同時に「ハト」を取る必要がある。
 結局、賢者と賢者が向かいあえば、双方が協議して、ともに「ハト」を取る。逆に、愚者と愚者が向かいあえば、「自分はタカだが、相手はハトだから、自分がタカを取れば、自分だけすごく得をする」と思い込んで、「タカ」を取る。かくて、双方がともに「タカ」と「タカ」となって、双方が大損をする。
 この愚者とほぼ同じ立場を取るのが、「相手だけに利益を与えるな」(相手がタカなら自分はハトになるな)という立場である。その一例が、「テロに屈するな」という昨今の立場だ。
 結局、「相手がタカなら自分はハトになるな」という理由で、「ハト」を拒むのは、話の論理が狂っているのだ。論理が狂っているせいで、最悪の道を選ぶわけだ。

( ※ 双方が賢者となるためには、その前提として、「信頼」の醸成が不可欠である。そのために必要なのは、金を与えることよりは、愛を与えることだ。自衛隊が給水をするのも、その意味でなら、いくらかは効果がある。ただし、人質となった高遠さんのように、孤児に愛を与えることは、給水なんかよりも、はるかに効果がある。あなたも相手の立場になって考えればいい。あなたは乞食のように金を恵んでもらって感謝するか? 通常、相手を乞食扱いしても、たいして感謝はされないのだ。……ついでに言えば、相手をどんどん殺しながら金を与えても、感謝されるどころか、憎まれるだけだ。「信頼」でなく「憎しみ」を醸成する。これが愚者の歩む道である。)
( ※ 余談だが、「南堂はハトだな」と思う人がいたら、とんでもない勘違いである。「常にハト」というのは、タカに食い物にされるだけだ。私は「ハトになれ」と主張しているのではない。「賢者になれ」と主張しているのだ。)

 [ 付記1 ]
 「タカ・ハト」ゲームは、進化論の分野で、工学出身のメイナード・スミスが「ESS理論」として研究した。彼はこの功績で、京都賞を受賞した。


《 もとは表示していなかった文章 》

 ESSは「進化的に安定的な戦略」の略。
 信頼の醸成が必要な理由は:さもないと、双方が「ハト」で安定した状態で、一方が「タカ」を選ぶと、「タカ」だけが得をするので、裏切りを招きやすいからだ。そして、裏切りが生じると、裏切られた方が反発して「タカ」になるので、双方が「タカ」となり、最悪の結果となる。……というわけで、裏切りのないように信頼を醸成することが必要となる。
 信頼醸成のない場合には、どうなるか? 一般に、動物同士では、信頼などはない。ESS理論によれば、タカとハトは一定の比率[だいたい半々]で安定する。全員がタカばかりとか、全員がハトばかりというのは、安定的でない。たとえばハトばかりのなかにタカが一つ登場すると、タカがハトを食い物にできるので、タカが有利であり、タカが増える。ほぼ半々になるまで。
 とはいえ、これは、生物の場合。人間の戦略や政治の場合には、タカとハトを切り替えることができる。生物のように、ポリシーが先に決まるのだとすれば、上記の比率(半々)で安定する。この場合、相手と遭遇するたびに、そのポリシーを示すわけだ。一方、戦略や政治の場合には、相手の出方に応じて、ポリシーを変えることもできるし、相手と相談して、双方のポリシーを変えることもできる。
 かくて、人間の場合には、信頼を築くことで、ハトたちばかりで平和を保つことができる。それでも、たまには(ブッシュやヒトラーやフセインのような)愚かな人間が出て、信頼を破壊し、ハトたちの世界のなかで急にタカを選ぶから、戦争が起こるわけだ。ある意味では、戦争は、不可避である。
 結局、どうすればいかというと、双方が信頼し合って、双方がハト同士になることを約束することだ。換言すれば、愛があれば平和になり、エゴイズムがあれば戦争になる。エゴイズムの世界では正解はない。世界を愛で満たすのが先決。……こういう事情は、私の「クラス進化論」( http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/biology/ )と同じ理屈。そちらのページの、愛と進化の話を参照。

 なお、上記ではタカとハトの比率を「おおよそ半々」と示したが、この比率は、被害の大きさに依存する。双方がタカのときの被害が中ぐらいなら、おおよそ半々になる。しかし、双方がタカのときの被害が非常に大きいときには、タカを取ることのリスクが非常に大きくなるので、大部分がハトとなる。その実例は、核の恐怖だ。核戦争になれば、双方が滅亡する危険があるので、双方がハトにならざるをえない。……こうして、戦争と平和の理論が、ESS理論で説明される。(ただし、戦争と平和の理論のことは、私が解説しているのであって、ESS理論にそう書いてあるわけではない。ESS理論は、進化論の話である。)
 ESS理論では、「ブルジョワ戦略」というのも、最適解の一つとなる。「自分の領域ではタカ、他人の領域ではハト」という戦略だ。
 この場合、それぞれの領域を区別する境界を常に明示することが必要となる。そのために、鳥はさえずりをするし、犬はションベンをするのである。



 【 関連サイト 】
 ネットで情報を探したところ、より具体的に説明しているページも見つかった。私は面倒臭くてはしょったが、数字を使って説明している。一部引用しよう。
 <ゲームの得点>
●タカ派とハト派が戦うケースでは、必ずタカ派が勝つ(10点)
●ただし、敗者のハト派は引き下がるのでダメージを受けない(0点)
●タカ派同士、ハト派同士が戦うケースでは勝率50%になるが、タカ派同士は徹底的にダメージを与えるので負ければ(-50点)、勝てば(10点)
●ハト派はダメージを受けないので負けても(0点)。勝てば(10点)
●そのかわり、なかなか決着がつかないので、ハト派は時間的ロスが生じる(-3点)

以上の条件で、それぞれの派がどのような得点を得るか計算してみます。
集団中のタカ派の割合をP(0<P<1)とすると

※タカ派の得点
タカ派に出会った時=(10-50)÷2=-20点
ハト派に出会った時=10点
タカ派の平均得点=(-20点×P)+10点×(1-P)=10-30P

※ハト派の得点
ハト派に出会った時=(0+10)÷2-3=2点
タカ派に出会った時=0点
ハト派の平均点=2点×(1-P)+0点×P=2-2P

両者の割合が平衡状態になるのは、平均得点が均しくなったときだから、

10-30P=2-2P ∴P=0.28 →(タカ派28%、ハト派72%)

以上の計算でタカ派が3割弱、ハト派が7割強を占めるときが安定状態になります。
 これからわかるように、ESS理論では、「集団における安定的な比率」というものが存在することを教える。
 一方、前項で述べた例は、1対1の2者によるゲームだ。その意味で、タカ・ハト・ゲームにはなっているが、ESS理論には合致しない。(集団の例ではないからだ。)

 前項のように1対1の2者によるゲームは、「チキン・ゲーム」と呼ばれることもある。これについては、下記を参照。
  → Wikipedia 「チキンゲーム」
 


 【 後日記 】( 2013-02-18 )
 文中に、次の箇所がある。
 かくて、人間の場合には、信頼を築くことで、ハトたちばかりで平和を保つことができる。それでも、たまには(ブッシュやヒトラーやフセインのような)愚かな人間が出て、信頼を破壊し、ハトたちの世界のなかで急にタカを選ぶから、戦争が起こるわけだ。ある意味では、戦争は、不可避である。
 ここでは、すでに予告されているわけだ。「(ブッシュやヒトラーやフセインのような)愚かな人間」とは、金正恩である。彼が「核ミサイルの配備」という道を選ぶから、戦争は起こる。それまでハトだった国が、一方的な屈服を拒否するからだ。
 前項でも述べたように、北朝鮮が「核ミサイルの配備」という方針を貫く限り、戦争は不可避である。(平和を望めば、全面屈服するしかないが、それはありえないからだ。)
 とすれば、あとは、「核ミサイルの配備のに戦争をするか、に戦争をするか」という二つの選択肢しかない。そのことをはっきりと理解しておこう。
( ※ 簡単に言えば、ヒトラー・ドイツが拡大するに戦争をすれば第二次世界大戦は避けられたが、ヒトラー・ドイツが拡大したに戦争をすれば第二次世界大戦になる、ということ。)
posted by 管理人 at 19:11| Comment(4) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『「テロに屈するな」という主張については、ゲーム理論が適用できる。例の「囚人のジレンマ」に似ている。いわゆる「タカ・ハト」ゲームだ。』
とありますが、囚人のジレンマとタカハトゲームが同じもののような印象を持ちますので書き方を注意された方が良いと思います。

あと、タカハトゲームのESSは利益とコストに応じて「タカのみ」もしくは「タカとハトの混合」です。
もし、コストが利益に比べて無限大に大きければ集団は、管理人さまのおっしゃる通り『大部分がハト』になります。

もっとも、私は核兵器の配備はタカハトゲームではなく、囚人のジレンマであり、規制がなければ全ての国家が核兵器もしくはそれと同等の戦力を保有するようになると思います。
Posted by k at 2013年02月20日 14:09
文中では、

> 「囚人のジレンマ」に似ている

 と表現しているので、同じものだと思うことはないはずです。AとBが似ているとしたら、AとBは同じものであるはずがありません。違うからこそ、「似ている」という表現を使う。

 ただ、ゲーム理論では、ほぼ同じ図表を使いますね。特質は同様。戦略の名称が違うぐらい。
 ESS 理論は、文中にもあるように、行為者がたくさんの場合です。したがって別の名称を使いたいのであれば、「囚人のジレンマ」よりは、「チキン・ゲーム」の方が適切でしょう。

 あと、冒頭に記してあるように、これはあくまで「簡単に説明」しただけです。まともに知りたいときには、きちんと本を読んで学ぶべきでしょう。(近ごろは本を読まずにネットで済ませようとする人が多いが、それじゃ駄目です。)

 ESS理論はメイナード・スミスが京都賞を受賞する理由になったもので、非常に大切で有名な理論です。学ぶときにはきちんと学ぶだけの価値があります。

http://www.inamori-f.or.jp/laureates/k17_b_john/ctn.html
Posted by 管理人 at 2013年02月20日 19:03
>(近ごろは本を読まずにネットで済ませようとする人が多いが、それじゃ駄目です。)
には道同感です。もっとも、ネットの情報すらちゃんと読まない人も多そうですが。

私の書いた、
『あと、タカハトゲームのESSは利益とコストに応じて「タカのみ」もしくは「タカとハトの混合」です。』
という部分はいかがでしょうか。管理人さまは前項で
『双方が合理的であるならば、双方が「ハト」を選択して、破滅を避ける。……このように、これまでは考えられてきた。国家というものは合理的であるはずだからだ。』
と書かれていますが、これは私のコメントと矛盾します。「双方がハトを選択して破滅を避ける。」とは誰に考えられてきたのでしょうか。少なくともゲーム理論を知っている人間ではないと思いますが。
前項のこの部分はタカハトゲームと関係があるのでしょうか。


『「テロに屈するな」という主張については、ゲーム理論が適用できる。例の「囚人のジレンマ」に似ている。いわゆる「タカ・ハト」ゲームだ。』
という分は「AにはBが適用できる。例のCに似ている。いわゆるDだ。」となっています。これで雑な例文を作るとしたら
「この形には雲の形の理論が適用できる。例の積乱雲に似ている。いわゆる入道雲だ。」
などでしょうか。
管理人さまがおっしゃっているのはAとCの関係ではないでしょうか。これらが違うということは分かります。
私が気にしているのはCとDの関係です。
Posted by k at 2013年02月23日 16:24
頭を働かせればわかるはずのことなので、回答は省略します。いちいち書くのが面倒臭いし、私が書かなくでも、たいていの人はわかるはず。わからない少数の人向けにサービスするほど暇じゃないので。
 まあ、文章が素直に読みにくい点があるのは認めますが、もともと非公開を前提にした文章(それを昔のページから復活させて公開しただけ)なので、わかりにくければ、無視してください。「もともとこれはなかったもの」を思えばいい。
 そもそも本項は、初心者向けの簡易な紹介です。わからない点があれば、専門書を読みましょう。本項は何となく漠然とわかるだけでいい。
Posted by 管理人 at 2013年02月23日 17:02
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