隕石がロシア上空で大爆発を起こした。
→ ロシアに墜落して激突した隕石(動画)
→ ロシア“隕石”落下で500人けが(NHK)
後者のニュース(動画)によると、今回の隕石は、「数メートルの大きさで、天体望遠鏡で見えるギリギリの大きさであり、衝突の予知は非常に難しい」とことだ。
とすれば、今後もこのくらいの隕石が来ることは考えられる。その際、上空を横に飛ぶのではなく、上の方からまっすぐに落下してくることも考えられる。その場合には、人的な被害もあるかもしれない。
過去の例はどうだっただろうか? 次の二つの例がある。
→ ツングースカ大爆発
→ ユカタン半島の隕石衝突
→ 解説記事
ツングースカ大爆発の方は、今回と同様で、空中を横に走った末に、隕石が爆発したらしい。その規模は今回をはるかに上回る。ただし人的な被害はなかった。(無人地帯だった。)
ユカタン半島の隕石衝突は、地球の気温低下を招いて、恐竜を絶滅させた。これは非常に大規模なものだ。隕石の大きさは直系 10km ぐらいもあったようだ。ものすごく巨大だ。こんなものがまたあったら、恐竜が絶滅したように、人類が絶滅しかねない……という懸念も湧いている。
では本当に、人類が絶滅する可能性はあるのか?
──
(1) ジャイアント・インパクト
まず、人類絶滅の可能性として、最も危険なのは次のことだ。
→ 月の誕生(ジャイアント・インパクト)
これは、火星ぐらいの天体が、地球に衝突して、地球の外殻部を削って、宇宙空間にばらまいた。その粉々になった大量の破片が結集して、月になった、というものだ。
こんなことが起こったら、人類はひとたまりもない。もし起こったら、人類は絶滅するだろう。
ただし、である。それが起こったのは、地球が形成された直後のことだ。つまり、46億年前。太陽系の形成期とも言える。そんな大昔のことが、再現する可能性は、まったくない。火星クラスの天体に衝突するとしたら、とっくに起こっているので、今後また起こる可能性は皆無と言える。
ゆえに、ジャイアント・インパクトについては心配はいらない。
(2) 恐竜絶滅
恐竜絶滅をもたらした隕石のようなことが、また起こるだろうか?
起こるかもしれない。が、起こったとしても、どうってことはない。
まず、恐竜絶滅のときには、恐竜は絶滅したが、哺乳類は絶滅しなかった。せいぜい気温がいくらか下がる程度のことにすぎない。どうってことはない。
恐竜が絶滅したのは、恐竜が爬虫類であった(体温調節が利かなかった)からだ。別に地球全体が凍結したわけじゃない。
このときよりももっとひどい気温低下は、以後の氷河期には何度も生じてきた。このような氷河期がまた来れば、どっちみち恐竜は生きながらえなかったはずだ。
→ 地球の気温変化 (図1)
哺乳類はこのような気温低下を生き延びてきた。また、熱帯の爬虫類や、温帯の水生爬虫類(亀など)も、地球規模の気温低下を生き延びてきた。だから、恐竜絶滅をもたらした隕石のようなことが、また起こったとしても、特に大規模な絶滅が起こることはないだろう。
ただし、それが直撃した地域だけは、大被害が起こる。たとえば、ユカタン半島のかわりに日本を直撃したら、日本は完全に破壊されるだろう。(水爆 百万個の規模だ。) また、周囲にも大きな津波が起こるので、中国やアメリカにも大きな被害が及ぶ。
が、それでも、人類が絶滅することにはならない。アフリカやヨーロッパに移住しておけば、それで済む。空が粉塵で真っ暗になり、太陽光が遮られ、食料生産が激減するだろうが、それでも、人類全体の絶滅は免れる。しかも、いつどこに落ちるかは、完全に予想ができる。
従って、対策は可能だ。「前もって別の地域に移住しておくこと」── これだけでいい。別に、地球外の惑星に移住する必要はないのだ。
( ※ 地球外に移住してから、ガンダムやザクで……というような話は不要。 (^^); )
(3) ツングースカ
ツングースカ大爆発クラスの隕石が再来したら? しかも、今度は直撃したら?
その場合も、事前に逃げることはできる。当時とは違って、今は観測技術が発達しているから、このくらいの隕石は予測が可能だろう。あらかじめ逃げることは、十分に可能だ。
また、たとえ逃げられなくても、この程度ならば、人類絶滅からはほど遠い。大騒ぎするほどのことはない。人類の戦争の方がずっと危険だ。はっきり言って、北朝鮮の核ミサイルの方がずっと怖い。その心配をする方がマシだ。
(4) 科学による回避策
衝突する前に、隕石の軌道そのものを変えてしまえ、という発想がある。この場合は、落ちてくる前に軌道を変えるのだから、「落ちる石」つまり「隕石」ではなくて、「小惑星」と呼ばれる。
ペイントボールの弾を、小惑星に命中させる。弾の中には反射性の塗料を入れておく。院生Sung Wook Paekの研究によると、小惑星の全表面がその塗料によって光を反射するようになったら、太陽からの光子の圧力が増し、それによってコースがそれる。とのことだ。
( → 反射性の塗料で小惑星の衝突から人類を救う )
ま、あまり大きくなければ(しかも十分に時間の余裕があれば)、この方法で何とかなりそうだ。
(5) 小惑星の捕捉
それとは逆に、小惑星をあえて地球のそばに引っ張り込もう(そして地球の周回軌道に乗せて衛星にしてしまおう)という案もある。小惑星泥棒みたいなものか。
→ 小惑星を捕えて月の軌道まで移動させる計画:NASA
これを実行しようとしたら、ミスをして、軌道が変わってしまい、地球を直撃してしまう……という笑い話もある。
こいつの可能性が一番高いかもね。
[ 付記1 ]
オマケでもう一つ。次のアイデアもある。
「 核ミサイルによる小惑星の破壊」
近づいてくる小惑星があるなら、核ミサイルによって破壊してしまえ……という荒っぽいアイデアだ。昔から SFでは話題になっていたが、映画にもなった。
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学術的に研究して、専用の宇宙船まで考えられている。
→ 地球に迫る小惑星を迎撃する計画
だけど、たとえ実現しても、無効だという話がある。破片がまた重力で結集してしまうからだ。
→ 核爆弾で破壊しても、再びすぐにくっついてしまう可能性
→ 核爆弾で回避可能? - ナショナルジオグラフィック
ここには次の記述もある。
小惑星の爆破に伴って大量の破片が散弾のように地球へ降り注ぎ、広範囲に被害をもたらすのではないかという懸念である。これだと、逃げることもできなくなり、かえって被害が拡大してしまう。本来ならば太平洋にデカい穴があくだけで済んだかもしれないのに、世界中の陸地に隕石が落ちて人がたくさん死んでしまうかもしれない。「余計なことをしたせいで被害が拡大」という感じ。
また、仮に何とかなるとしても、その対象は、比較的小さくてスカスカな隕石に限られるようだ。しかし、このようなスカスカな隕石ならば、もともと空中で爆発してしまうかもしれない。爆破すると軌道が変わるせいでかえって被害が増えかねない。
また、対象がデカすぎると、核爆弾ではもはや手に負えないかも。「地球上にある核ミサイルをすべて動員しないと間に合わない」ということにもなりかねない。すると、米国とロシアと中国その他の核爆弾が皆なくなってしまい、残るのは北朝鮮の核ミサイルだけとなり、北朝鮮が世界を支配する……というふうになりかねない。
だんだん荒唐無稽になってきますね。 (^^);
[ 付記2 ]
もっと荒唐無稽でいいというのなら、巨大隕石が衝突するという架空のシミュレーションがある。SF だけど、おもしろい。
【 関連サイト 】
→ 天体衝突とはどのような災害か
※ 本項と似た話題を扱っている。別視点で。
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それで「大変だ」と騒ぐ向きもあるが、騒ぐべからず。
隕石のエネルギーのほとんどは運動エネルギーである。それが大気圏に入ると、減速につれて運動エネルギーが熱エネルギーになるが、その際、非常に長い距離で弱い熱が分散される。だからそれぞれの場所における熱エネルギーは小さい。
一部の熱エネルギーは、大気ではなく隕石に残る。この熱エネルギーが最終的には、「一瞬で爆発」という形になる。ただし、注意。
爆発のときには、熱エネルギーは一箇所で放散されるが、熱エネルギーで爆発するわけではないし、光が放射されるわけでもない。光が放射されるのは、爆発のときじゃなくて、運動しているときだ。
原爆ならば、一瞬に光と熱が放射されるが、隕石の場合には、光も熱も長い距離です押しずつ放射される。爆発のときに生じるのは、主として運動エネルギーだ。これは衝撃波をもたらすこともあるだろうが、光や熱が爆発的に放射するわけではない。
というわけで、エネルギーがいくら巨大でも、爆発的なエネルギー放射があるわけじゃない。この点、勘違いしないようにしよう。
なお、いくらかエネルギー放射があるとしても、それは高度2万メートルの上空(成層圏)にある.その高さは、普通の飛行機も届かない。普通の戦闘機も届かない。大気圏の外側の話だ。
あまり心配しないでいい。