2013年02月06日

◆ 石炭火力の是非

 東電は新発電所の建設の入札で、石炭発電を導入しようとしている。そのせいで炭酸ガスが大量に排出されそうだ、という懸念がある。だが…… ──

 東電は、新発電所の建設の入札で、とても低い価格を設定している。これを満たすのは石炭発電だけだ。(他の発電はもっとコストが高い。)つまり、実質的に石炭発電に絞っている。
 しかるに、石炭発電は炭酸ガス排出量が多い。(以下は1kWh あたりの二酸化炭素排出量。単位はグラム。)
  ・ LNG複合 …… 376
  ・ 石油   …… 695
  ・ 石炭   …… 864 (最新設備だと 810)
  ・ IGCC  …… 700程度 (開発中)

    
 つまり、東京電力の導入しようとしている石炭発電は、810〜864 なので、石油の 695よりもかなり多いし、LNG複合に比べると2倍以上だ。それほどにも炭酸ガスの排出が多い。
( → 以上は、朝日新聞・夕刊 2013-02-06 から。)

 そこで、「炭酸ガスの排出が多いのは問題だ」という指摘がある。特に、経産省に対して、環境省が反発しているようだ。政府内で協議・調整しているらしい。
  → 火力発電所建設の入札延期求める 環境省、東電に
  → 石炭火力発電所:東電の新増設巡り環境省と経産省が綱引き
  → 経産相、東電火力入札で環境省と協議

 ──
 
 以上は、報道内容だ。このあと、私の考えを述べる。

 (1) 火力発電所の休止

 石炭の炭酸ガス排出量は多いが、それを額面通り受け取る必要はない。なぜなら、火力発電所は、休止している時間が長いからだ。
 一日のうちでも、ピーク時間以外は何割かの火力発電所が休んでいる。特に夜間は、たいていの火力発電所が休んでいる。また、昼間でさえ、かなり多くの火力発電所が休んでいる。(東電の最大発電量は 5000万kW らしいが、それを発電する日は夏のピーク日だけだ。春や秋には、最大発電量は 3000万kW 程度に留まっている。つまり、このころには、多くの発電所が昼間でさえ休んでいる。
 とすれば、石炭発電所を導入したとしても、それがフルに稼働するわけではない。1日の大半は、LNG や 石油 の発電所が稼働して、夏のピーク時や冬のピーク時にのみ石炭発電所が稼働する……というふうになりそうだ。
 とすれば、「石炭発電所は炭酸ガスを2割も多く出す」というふうに騒ぐのは妥当ではない。稼働時間が(他に比べて)25%だとすれば、「2割×25% = 5%」だから、5%しか排出量は増えない。たいして騒ぐ必要はないのだ。

 (2) 排出権取引

 それでも懸念はあるだろう。
 「コストが低い石炭発電ばかりで発電して、コストのかかるLNG発電の発電を減らすのでは? 金儲け主義で」
 と。ま、それはもっともだ。だが、それならそれで、経済財的原理で済むようにすればいい。つまり、「炭酸ガスの排出量が多ければ排出権の価格が高くなる」というふうにすればいい。そうすれば、自動的に、石炭発電の発電量(つまり稼働時間)が減るようになる。
 だから、上の懸念があるのならば、排出権取引で取引価格を高くすればいいのだ。そっちをいじる方が先決だ。「石炭発電はけしからん」なんていう道徳観ばかりを喚いても無駄だ。道徳観を実現したいのであれば、そのための経済原理を導入するべきだ。
 そして、現実には、排出権取引の価格が低いとしたら、それは、そのようなシステムに問題がある。東電だけを責めても仕方がない。

 (3) 自動車の排ガス

 なぜシステムをいじる必要があるかといえば、公平性のためだ。
 ちなみに、自動車の方は、大いに優遇されている。消費税の引き上げにともなって、自動車だけは大幅に減税される。「消費税が上がると自動車の消費税も上がるから」という滅茶苦茶な理屈で。
( ※ 自動車だろうが食料品だろうが家電だろうが、消費税にかかる税率は同じなのだが、自動車メーカーはそのことを理解できないようだ。単に額だけを比較している。仮にこの理屈が成立するなら、「金持ちは消費税をたくさん払うから所得税を免税にせよ」という主張が成立してしまう。)
 自動車は、免税になって、特にガソリンをたっぷりと食う大型車が大幅免税となる。こちらではエコに反するものが大幅に減税となる。その一方で、庶民が暖房のための電力を使うと「電気代値上げ」というのでは、筋が通らない。
 要するに、「炭酸ガス廃止」という方針を取りたいのであれば、どの分野であっても、等しく負担するべきだ。「特に発電会社だけが」というような偏った方針は不公平すぎる。

 (4) 太陽光発電の普及

 最も重要なのは、太陽光発電の普及だ。朝日のようなエコ偏重マスコミの主張によれば、2020年以後は太陽光発電が大幅にコスト安になって大々的に普及することになっている。
 だったら、一日の大半は、太陽光発電で済ませればいい。オマケで、風力を使ってもいい。そうすれば、石炭ガス発電は、ただのバックアップ発電所にすぎなくなり、ほとんどの時間は稼働しないでいることになる。
 「雨が降っても太陽光発電所からたっぷり発電できます。風がなくても風力発電所からたっぷり発電できます。火力発電所なんかなくても大丈夫。未来はエコ発電でバラ色です。必要なのは、蓄電池とスマートグリッドだけです」
 こういう夢(ホラ?)を振りまいているのだから、勝手にその方針を信じていればいい。そこでは、火力発電所の出番はないはずだ。たいていの時間は眠っているはずだ。だったら、炭酸ガスの排出量が多くても全然問題ないはずだ。実際には発電もしないし、炭酸ガスも出さないのだから。
 だから朝日は、「石炭発電所は炭酸ガスをいっぱい出す」と心配するよりは、「将来的には太陽光発電とスマートグリッドが大幅に普及するので、石炭発電所は、あったとしても、休眠状態になるでしょう」と語ればいいのだ。
 「バラ色の太陽光発電」という自説を信じるなら、40年後についていちいち心配して騒ぐ必要はないのだ。
  


 [ 付記 ]
 で、私は実際に石炭ガスを推奨しているかというと……そうじゃない。というのは、次の情報があるからだ。
  → 東電がシェールガス年200万トン確保、調達3割安に
 
 やっぱり、LNG の方がいいみたいですね。将来的にはどんどん価格が下がりそうなので。  (^^);
  
 しかし朝日は、LNG がいいなら LNG がいいと言えばいいのだ。なのに、普段は「太陽光・風力」とばかり唱えている。その「太陽光・風力」は、不安定で、ちょいちょい発電停止する。雨が降るだけでも駄目だ。雪の日も、太陽光発電の発電量は激減する。……結局、朝日は、理想とんと文句だけを言って、現実的な建設的提案をできない。夢見る書生ですかね。
posted by 管理人 at 19:25| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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