2013年02月01日

◆ 翼があるのに飛ばない羽毛恐竜?

 新種の羽毛恐竜が発見された。翼があるのに、飛ぶことはない、と見られている。では何のために翼があるのか?

 ──

 まずは記事を紹介しよう。
 《 羽毛恐竜:中国で新種化石発見 最小、全長30センチ 》
 中国遼寧省にあるジュラ紀の地層(約1億6300万年前)から、新種の小型羽毛恐竜の化石が見つかったと、ベルギー王立自然史博物館などの研究チームが22日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)に発表した。これまで確認されている羽毛恐竜の中では最小とみられる。
 この恐竜を「エオシノプテリクス(暁の中国の翼)」と名付けた。

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想像図=IRSNB-KBIN・p.Golinvaux氏提供

 化石の全長は約30センチで、足首の関節が完成していたことからおとなの恐竜と考えられる。また、近い種類の恐竜に比べて後ろ脚や尾の羽毛が少なく、鳥のように飛ぶより地面を走るのに適した姿という。
( → 毎日新聞 2013年01月23日
 ここで、疑問が生じる。
 記事によれば、「空を飛ぶのに適していないから、地面を走るのに適している」ということだ。
 また、朝日新聞( 2013-02-01 )にも、同様の記述がある。
 「翼を持ちながら飛ぶことはなく、地上で動き回っていたらしい」
 「後ろ脚に翼はなく、尾羽も短い。これらのことからチームは、この恐竜は現代の一部の鳥類と同様、地上で暮らしていたと考えている」

 英文ニュースにも、同様の記述がある。
 Based on the dinosaur's small wingspan and bone structure, researchers believe it would have been able to run around quite easily, but likely couldn't whip up enough of a wing-beat to fly. The dinosaur also sported toes that would have been suitable for walking along the ground, the researchers added.
( ※ 三つのソースで、三つとも同一の文章だった。ゆえに出典は容易に見つかる。たとえば これ。)

 いずれにしても、地上で暮らしていたことになる。しかし、空を飛べずに地上で暮らしているのだとしたら、何のために翼はあるのか? 大いなる疑問である。
  
 「空を飛ぶだけの筋肉が翼にはない」ということであれば、滑空するタイプの羽毛恐竜もいた。しかし今回の羽毛恐竜は、翼がいっそう貧弱であるので、滑空するわけでもないと見なされているようだ。

 そこで、「羽毛や翼は、実用性はなくて、性的アピールのためだ」という解釈まで出る始末だ。
  → 産経の記事
 しかしこれはいかにもご都合主義である。

 結局、報道された記事を読んだだけでは、事情はまったくわからない。

 ──

 そこで、私なりに考える。
 「地上で暮らした」
 という説が上記にあるが、これは成立しない、と私は考える。理由はこうだ。
 「地上には、ネズミぐらいの小さな哺乳類三錐歯目など)が住んでいた。とすれば、これらの敏捷な哺乳類と競合して、たちまち食い殺されてしまったはずだ。ゆえに、地上で小鳥のようなものが生き延びる可能性はない」

 ──

 しかしながら、現在でも地上で生き延びる鳥はいる。キジ類がそうだ。
( ※ キジ類は原始的な鳥類であり、ダチョウのような大柄な地上性の鳥類[走鳥類]から、カモのような実際に空を飛ぶ鳥への、過渡的な鳥類である。 → 鳥と恐竜(進化)

 キジやニワトリなど、現在でも地上で生き延びる鳥はいる。これらはどうやって、地上で生き延びることができたのか? 換言すれば、犬や猫といった獣に襲われるとき、どうやって逃げるのか?
 
 それについては、すでに別項で述べた。こうだ。
 「獣に襲われたときは、少しだけ飛ぶ。キジならば、数十メートルを飛ぶ。ニワトリならば、翼でジャンプして、樹上に逃れる」
  → 樹上性/地上性(飛ぶ前)

 これで一応、説明が付いたように思える。つまり、
 「地上で暮らしながら、獣に襲われたときは、樹上にジャンプする」
 というわけだ。

 しかしながら、これは理屈が通らない。そんなふうに樹上にジャンプするくらいなら、最初から樹上で暮らしていた方が有利だからだ。
( ※ すぐ上の「樹上性/地上性」という区別を参照。これは重要な区別だ。)

 では、樹上でどうやって暮らすか? 樹上には、果実があったか? いや、この当時はまだ、果実のある植物(被子植物)は出現していなかった。
 しかしながら、樹上には、虫がいた。虫を食べることで、樹上性の恐竜が生き延びることができた。(小型であれば。)

 ──

 以上のことからして、私としては、次のように考える。
 「小型の羽毛恐竜は、樹上性であった。樹上で虫を食べながら生きていた。移動するときは、枝から枝へと、ジャンプした。その際、翼があると有利なので、翼を持つ羽毛恐竜が発達した。それが今回の羽毛恐竜だ。普段は足でピョンピョンと跳ねたり、歩いたりするが、ときどき翼を開いて、滑空する。下方に滑空するだけでなく、ジャンプしながら上方に滑空することもある」

 
 この発想が妥当であることの根拠はある。化石の時期だ。
  ・ 今回の羽毛恐竜 …… 1億6300万年前
  ・ アンキオルニス …… 1億5500万年前 ( → 出典


 後者は、今回の羽毛恐竜に比べて、時期が遅くて、かつ、翼が発達している。滑空がいっそう上手にできていると推察される。
 つまり、800万年の時間差を経て、滑空の仕方がいっそう上手になった(進化した)、と解釈できるわけだ。
 それというのも、「両者は樹上性の羽毛恐竜だ」と解釈したからだ。

 一方、「今回の羽毛恐竜は地上性だった」という認識では、話が全然整合的でない。
 
 今回の羽毛恐竜について、「地上性だ」という研究チームの判断と、「樹上性だ」という私の判断がある。どちらが正しいか、決定的な証拠があるわけではないが、論理的な整合性で考えるならば、私の判断が正しいと考えていいだろう。
 
( ※ なお、「何のために翼があるのか?」という冒頭の質問に答えれば、「樹上でちょっとジャンプして滑空するためだ」と答えられる。ちょっとムササビの行動に似ていますね。)
( ※ 大事なことは、地上に比べて樹上はずっと安全な場所だった、ということ。そこには競合者がほとんどいなかった。だからこそ、「新しい領域」として、進化の実験が可能になった。……これが進化論的な論理というものだ。)
 


 【 関連項目 】

 → 樹上性/地上性(飛ぶ前)
 → 鳥型生物の2系統
 → 恐竜と鳥の系統図

 最後の系統図を見ながら、2系統について考えると、事情がよくわかるだろう。
posted by 管理人 at 21:08| Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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