B787 のバッテリー出火があった。リチウムイオン電池が出火して、煙を出して、黒く焦げてしまった。
第一報を聞いたときは、「どこの会社の電池かな? 日本製なら、GSユアサだろう」と思ったら、案の定、そうだった。
どうして私がそう思ったかというと、NEC・日産や、パナソニック・サンヨーならば、もっと高品質なので、こんな事故を起こすとは思えないからだ。どうせ大手会社以外だろう、と思って、GSユアサだろうと推定したわけだ。そうしたら、やはりそうだった。
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では、責任は GSユアサにあるのだろうか? 事故にともなう多大な損失は、GSユアサが賠償責任を負うのだろうか? ……そう考えたすえに、「ノー」と結論した。理由は、次の通り。
そもそも、このような問題が起こるとしたら、事前のチェックが不足していたからだ。そして、事前のチェックは、ボーイングが基準を示して、GSユアサはその基準をパスした。とすれば、事前のチェックが甘すぎたことになる。従って、不十分なチェックしかやらなかったボーイングに第一義的な責任がある。GSユアサの方は、ボーイングの示した基準をパスする品質の製品を出したのだから、特に責任を負わない。
事故の直接の原因については、次の報道がある。
同電池は異常時に発熱・発火しやすい特徴があり、制御装置とともに金属製容器に入れられている。
同委の航空事故調査官が 16日夜に機体を調べたところ、容器は内部から漏れたとみられる電解液が付着して黒く変色し、電解液は機体の床にも落ちていた。
バッテリーを製造したGSユアサ(京都市)によると、同電池の電解液には石油系の溶剤が使われ、過充電や過放電によってバッテリーが過熱すると電解液が沸騰し、液漏れする可能性があるという。
( → 読売新聞 2013-01-17 )
リチウム電池は燃えやすい素材。特に航空機では気圧の変化で膨張や収縮を繰り返し、発火につながる恐れがあったこれらの報道を見ると、リチウムイオン電池については、かなり過酷な条件でテストする必要があったようだ。
( → zakzak 2013-01-17 )
・ 過充電や過放電
・ 気圧の変化
こういう過酷な条件でいろいろとテストする必要があったはずだ。しかしながら現実には、もっと甘いテストだったのだろう。
・ 過充電や過放電はなく、規格条件内でのみテスト。
・ 気圧の変化のないままテスト。
そして、そのテストにパスしたのが、GSユアサなどの製品であり、そのなかでも GSユアサのものが最も安価だったのだろう。
簡単に言えば、「安全の手抜き」をして、コストダウンをしたのが、GSユアサの製品だったのだ。そして、それが採用されたのは、ボーイングが甘いチェックをしたからだ。「過充電や過放電」「気圧の変化」という条件を省いたまま。
要するに、ボーイングの安全意識が希薄だったことが原因だ。GSユアサは、規格を満たさない欠陥商品を作ったのではなく、甘い規格を通るだけの安物を提供しただけだろう。
一般に、安物部品を使って故障しやすい製品を作ったなら、その責任は、安物部品を作った会社にはなく、安物部品を購入した会社の方にある。
さらに言えば、「過充電」ということからして、容量ないし個数も足りなかったはずだ。(つまりボーイングは、購入する個数をケチったわけ。)
以上が、今回の事故の原因だろう。私としては、そう推定する。
( ※ 現時点での推定である。正しいかどうかは、将来の調査待ち。私としては、早めに推理をしておいた。「安全」について考察するのは、本サイトの主要な柱の一つです。)
[ 付記 ]
ボーイングはどうするべきだったか? 本来ならば、安全性を重視して、高価な NEC・日産製のリチウムイオン電池を使うべきだったのだろう。これは、ラミネート製だから、液漏れ事故を起こしにくい。
→ Google 検索
なお、ラミネート製のリチウムイオン電池は、液漏れを起こしにくいが、コストがかかる。そのせいで、日産自動車も、安価な(低価格な)電気自動車については、自社製ではなく、日立製の電池を使うそうだ。
→ 日産エコカーは日立製電池…系列NEC製使わず
ボーイングみたいな超高価な飛行機の場合には、リチウム電池の費用なんてタカかが知れているんだから、高価なラミネート製のリチウムイオン電池にしておけばよかったのにね。そうすれば、今回のような事故は起こらなかったはずだ。(コストはかかるとしても。)
あと、個数も重要だ。個数をケチったんじゃ、どうしようもないね。「軽量化」「経済性」ばかりをめざして、「安全性」をないがしろにした、という典型かも。
【 追記 】
個数よりは、「過充電の防止」という装置が抜けていたのかも。……いや、安物にだって、それはあるから、「抜けていた」ということはないだろう。
しかしその装置が機能不十分だったのかもね。だとしたらやはり「チェック不足」ということになる。
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> 過充電にならないよう同じ容器内と機体側に二重の制御装置が組み込まれ、充電容量が100%に達すると供給が止まる仕組み。GSユアサの広報担当者は「バッテリーが炭化するトラブルは初めて聞いた。原因はすぐにはわからない」と話した。
http://mainichi.jp/select/news/20130118k0000m040081000c.html
> 過充電や過電流などが原因とみられ、運輸安全委などは同日、第三者機関で鑑定するため、メーンバッテリーを機体から取り外した
http://jp.wsj.com/article/JJ12351898429669284114817851128671075346388.html
 ̄ ̄
> ボーイングのチーフエンジニア、マイク・シネット氏は
> 同氏は、787型機では、過充電を防止し、バッテリー火災を阻止するようシステム設計がされている、と指摘。
> 同氏は、日本航空機の火災については詳細には触れず、バッテリーに欠陥があったのかどうかについては、分かっていないと述べた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE90904O20130110
> ボーイングは過充電を防ぎ、バッテリー火災を封じ込め、煙が客室に達する前に吸い上げるための複数のシステムを設計したと説明している。
> ボーイングによると、B787に搭載されたバッテリーは車のバッテリーの2倍の大きさで、実験室でも実際の使用環境でも広範なテストが行われた。米国家運輸安全委員会(NTSB)によると、1月7日にボストン・ローガン国際空港に駐機中のB787で発火したAPU用バッテリーは、重さ63ポンド、サイズは19インチ×13インチ×10.2インチ。
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR201301170114.html
──
> 過充電などを防ぐ保護システムに不具合があった可能性のあることが運輸安全委員会などへの取材でわかった。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130118-OYT1T00779.htm?from=ylist
本項の最後に記した予想が当たった形だ。
私の方が1日早く、真相を見抜いていた。
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上のページには、こうある。
> 過充電や過放電などによる過熱を防ぐ機能を持つ「管理装置」とともに金属製容器に収納されていた。また、機体側にも過充電などを防ぐ制御装置もあった。
> しかし、同委がバッテリーの容器内を調べたところ、収納されている8本の電池と管理装置はいずれも炭化しており、保護システムが十分に機能していなかった可能性が出てきた。
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呆れる。保護システムがバッテリーと同じ容器にあるなんて。
福島の原発で、肝心の発電装置が津波で水没した、というのと、同じ図式だ。事故が起こったときに、事故対策の安全装置そのものが事故によって駄目になってしまう、というシステム。頭隠して尻隠さず、みたいな。
これは、ユアサとボーイングの、双方の設計ミスですね。
(少なくとも温度、電流/電圧の入出力管理が必要)
なので、同容器内にある事自体は正しいです。
問題は容器外にあるはずのもう一つの保護回路が正しく動作していたのかということでしょう
不十分な検証のまま引き渡した
という説もありますが
どうなんでしょうね
> 「ボーイングによる最終組立における、配線のミス」である可能性が高いと考えます。
→ http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2013/01/post-519.php
しかし、機内に大量のリチウム電池の持ち込みは禁止されてるのに、大型のリチウム電池が搭載されているって言うのがなんとも。。
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「厳しい安全チェックを何度も繰り返し、改良に改良を重ねた。自然に発火するはずがない」。B787に搭載されるすべてのリチウムイオン電池を納入する「ジーエス・ユアサコーポレーション」(京都市)の広報担当者は強調する。
同社によると、B787は民間航空機としては初めてバッテリーにリチウムイオン電池を採用。人工衛星や電気自動車などのバッテリー開発で実績のあった同社が受注した。補助動力装置や非常用のバックアップ電源など1機につき、4セットの電源モジュールをフランスの軍事産業大手「タレス」に納入。タレス社が配線などを組み上げて、米ボーイング社に納入する。
→ http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130116/dst13011623440030-n1.htm
 ̄ ̄
仮に配線ミスが原因だとしたら、他の飛行機でも配線ミスが見つかることもありそうだ。
すでに燃えてしまったバッテリーだけでなく、まだ燃えていないバッテリーも、チェックした方が良さそうだ。
http://response.jp/article/2013/02/04/190329.html
ボーイング、787型機のバッテリー問題、前から知ってた
http://www.gizmodo.jp/2013/02/787_4.html
元ネタ(NY times)
http://www.nytimes.com/2013/01/30/business/boeing-aware-of-battery-ills-before-the-fires.html?pagewanted=all
ボーイングでの接続不良について述べています。
Boeing officials said that improperly connecting a battery can also render it unusable.
案外この辺で落ち着かせるのかもしれません。
787の電池メーカーに品質問題は無かった。(NY times)
http://www.nytimes.com/2013/01/29/business/global/boeing-787-batteries-pass-inspection-in-japan.html?ref=787dreamliner
http://www.gizmodo.jp/2013/02/787_4.html
によれば、バッテリーの異常はずいぶん多発しているらしいので、バッテリーだけをたくさん設置して、地上でテストすれば、異常を再現させることは容易だと思えるんだが。百個ぐらい並べて、さまざまな条件でチェックすれば、いくつかは発火しそうだ。それらについて、個体の問題か、条件の問題か、調べることができるはずなんだが。
何やっているんでしょうね? いや、何もやっていないんだか。(目で見るだけで実験しないのかも。)
→ http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2926833/10254719
「9日、B787型旅客機「ドリームライナー(Dreamliner)」のバッテリー発火問題の調査の一環として、同型機の試験飛行を実施した。」
ちょっと飛ばしただけじゃ、まだまだわからないだろうけどね。火が出るまで飛ばしましょう。
「突発的な大規模な過剰電流に対して、保護回路が十分に働かなかったこと」
このような負荷を与えるだけでも、けっこう事情が判明しそうだが。
単に再現を求めて長時間の飛行をしても、無駄だと思うですよね。
こういう試験の規格はIECが決めているはずなので、それを超えた負荷を与えた破壊試験を与えれば良いでしょう。
負荷を与えた第一段階で保護回路が壊れ、その次の負荷で電池が発火すれば保護回路が役に立っていないと考えられます。
ベンチテストは電池だけではなく、充電システム全体でやらないとだめでしょう。
さらに電池は充電されながら電流を放出する状態とか・・・。
まさか条件を考えてたらめんどくさくなって飛行機飛ばしたって事は無いと思いますが。
どうやら、ボーイングの配線ミスです。
ユナイテッドの機体検査で分かりました。
そして長時間耐久試験へ移行します。
不具合再現試験でも大体同じやり方を踏襲します。それでわからないのなら異常なロットとして部品管理、行程不具合から攻めるしかありません。異常ロットは品質管理の問題であり、基本設計とマージンから切り離すものです。
事象の再現性が確認されれば、対策立案とその実効性に期待が持てます。
私的には温度サイクルと与圧サイクル試験の複合条件が必要だと思います。
(電池というモノが密閉容器内での電気化学的制約からは逸脱しないからです)
さすがに低温での充電というようなお粗末なことはないと思いますが、析出物が出やすくなりますのでやらかした可能性は否定できないと考えています。
> http://www.news-us.jp/article/324170513.html