2012年12月01日

◆ 太陽光産業の現状

 太陽光産業の現状は? 生産量は大幅に上昇し、価格は大幅に低下している。では、それは、素晴らしい状況か? ──

 太陽光産業の現状はどうか? 生産量は大幅に上昇し、価格は大幅に低下している。日経の記事から引用しよう。
《 太陽光発電システムの価格が低下、設置容量は急拡大へ 》
 世界全体でみても太陽光発電システムの需要は旺盛である。欧州太陽光発電協会(EPIA)の発表によると、2011年の太陽光発電システムの世界設置容量は27.7GWに達した。

     図:設置容量は急拡大
     図:価格は急低下

 世界全体で太陽光発電システムの需要が旺盛な背景には、大幅な価格下落がある。2008年には1Wあたり4米ドルしていた価格が、2011年末には1米ドルに近づいている(図3)。2012年には1米ドルを下回ってもおかしくないほどだ。
( → 日経 2012/4/2
 リンク先ページの図を見れば明らかなように、「量は急拡大」「価格は急降下」というふうになっている。
 この現状を見ると、賛成論者は大喜びだろう。「量は大幅に増えたし、価格は大幅に下落した。望みがすべて実現した.万歳!」と。
 しかし、そういううまい話ばかりではない。たしかに「買い手にとっては最高の状態」だが、反面、「売り手にとっては最悪の状態」になっているのだ。
 賛成論者の発想ならば、「売り手にとっても最高の状態」つまり「売上げは大幅に増えて、利益も最高」となっているはずだが、現実にはそうではない。売り手にとっては「売上げはかえって減少しており、利益は黒字どころか赤字となっている」のである。
 需要は過去最高を更新するほど伸びているが、メーカーの売上高は増えていない。中国メーカーの売上高を見ると、2009年と2010年は各社とも売上高を好調に増やしたが、一転して2011年は下落基調になった(図4)。これは中国企業に限った話ではない。日本メーカーや台湾メーカー、欧州メーカーも同様である。そして、ほとんどのメーカーが赤字に転落するほど市場環境は厳しくなっている。
( → 上記サイト
 結局、「量は急拡大」「価格は急降下」という状況があり、それは「素晴らしいこと」と見えた。だが、それはあくまで、「買い手にとっては最高」であるだけで、「売り手にとっては最悪」であるのだ。ここでは、「価格は急降下」というのは、技術の進歩によって起こったというよりは、「供給過剰」という市況によって起こっているのだ。

 このような状況では、「急拡大する市場を制覇したものが有利」ということにはならない。「急拡大する赤字市場を制覇したものが、最も大損した」というふうになるだけだ。市場の制覇者であるサンテックは、最大の勝者ではなくて、最大の敗者なのである。「宝の山を最もつかんだ」と思ったら、実は、「赤字の山を最もつかんだ」ということになる。


takara.gif


 上記の記事は、こう結んでいる。
 2011年は中国など海外メーカーが日本市場に参入し、日本メーカーのシェアを奪ったが、2012年は逆に日本メーカーが中国へ進出し、シェアを奪い返すチャンスである。コストで勝てないからという理由で最初からあきらめていては、この先二度と日本メーカーが復活することはないだろう。)
 しかしながら現実は、その逆になった。市場を制覇したサンテックは、最大の赤字を抱えて、実質破綻している。Qセルズはとっくに破綻している。
 ゴミの山をいくら独り占めしても、それは決して勝者となることを意味しないのである。

 では、真の勝者は? 
 愚か者がことごとく自滅したあとで、その焼け野原で、新たに参入したものが勝者となる。その意味は? 
 太陽光発電は、今後しばらくは、価格低迷が続くだろう。そのなかでは勝者は現れまい。すべてが敗者となる。しかしその後、画期的な技術革新が生じて、太陽光パネルは現在の数分の1の価格になる。そのとき、真の普及が生じる。それは、「赤字販売による価格下落」ではなく、「技術革新による価格下落」によって起こった普及である。そのとき勝者が生じる。
 その意味で、真の勝者とは、「技術革新をなし遂げたもの」である。それは決して、「大量の設備投資によって市場を量的に制覇したもの」ではない。「最高の技術によって市場を質的に制覇したもの」である。
 進化論的に言えば、「最も増殖能力の高いものが最も増殖して、種内で比率をどんどん増やす」のではなくて、「質的に優れた新種が突発的に出現して、旧種を淘汰してしまう」のである。
 従って、企業が今なすべきことは、大量の設備投資をすることではなくて、次世代の新技術を開発することなのだ。そして、そのことを理解できないまま、大量の設備投資ばかりをしていた企業は、Qセルズやサンテックのようになる。それが今の現状だ。
posted by 管理人 at 09:41| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
御高説全う至極です。
投資家からの要求は短期間での利益確保。新技術開発の原資確保は難しいですね。
・技術・研究開発は投下費用が小さいと効果はない。
・それでいて短期に結果が出るとは限らない。むしろ出ない。
・短期利益を求める投資家への説明が難しい。
・投資へのリターンとは別に研究開発費を利益から捻出する考えは将来への自己投資として投資家が納得できる様に説明しやすい。
・十分な研究開発費を捻出するためには利益総額を大きくする必要がある。
・そのためには薄利多売で市場シェアを拡大する戦略が社内外に説明しやすく、そしてわかりやすい。
・意匠的ブランド価値の差別化が難しい製品は低価格品の供給量増大戦術が手っ取り早い。(高級ブランド品の少量販売による利益確保はこの手の商品では難しい)
・供給量増大のために設備投資を行い、価格競争力を高め、我慢較べに参加する。

しかし、供給量過剰になって価格の暴落。これはご指摘内容。
ここの生存競争に勝ち抜いたと思われるサンテックは離島に漂着して数を増やしすぎたヤギやシカみたいなものでしょうか。適切な規模になるまで縮小するのか、それとも食い尽くして絶滅するのでしょうか。現状、後者のようですが。次にその離島へ漂着するのは一体なになのかは誰にもわかりませんが、そこへ行こうとする意志がなければ漂着できないのでしょう。抽象的表現となりました。

結局、研究開発費の捻出手段をきちんと考えないと自滅するという事につながるんですね。上記で述べたようなわかりやすい、どこかに書いてあるような戦略では結局食いつくして自滅になるのでしょう。

自己完結コメントになりました。いずれ高効率太陽光発電は光合成の改良でできるでしょう。案外植物をそのまま使う方がローコストかもしれません。植物発電とかw
季節の移ろい、新陳代謝。生命の対応力を考えると人間の太陽光発電なんて、生命の無い所(砂漠)でしか意味が無いような気になりました。
Posted by 京都の人 at 2012年12月02日 10:16
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