2012年11月20日

◆ 消えるインクのコピー機(ループス)

 消えるインクを使うことで、紙を何度も繰り返して使えるコピー機(複合機)が開発された。用紙コストが8割減。 ── 
  
 これを使うと、用紙の費用が8割減。おまけに、エコだ。すばらしい新商品……と見える。
 《 印字を瞬時に消せる複合機 東芝テック、世界初の実用化 》
 東芝テックは、印刷した文字や画像を一瞬で消し、紙を再利用できる複合機「ループス」を開発した。文具大手のパイロットコーポレーションと共同開発した特殊インクを使い、加熱すると透明になる仕組み。紙は5回ほど繰り返し使えるという。
 同じ紙を5回使った場合、インクを消すのに使う電力量を考慮しても、二酸化炭素排出量は従来より約6割抑えられる計算という。紙をつくる時に使う電力量を節約できるからだ。
( → 朝日新聞 2012-11-20
 
 新製品は、コピー装置と印刷された用紙を加熱して消色する装置の2台セットで使用する。消色装置は、A4用紙30枚の印刷物を1分間で消せる。
 東芝テックによると、従来品と比べ用紙の購入・廃棄費用を約8割削減でき、再利用による二酸化炭素排出も57%削減できるという。
 希望価格は専用複合機「ループスLP30」が111万円で、専用消色装置「ループスRD30」が30万円。
( → 産経 2012-11-12

 実にうまい話のように見える。だが、よく考えると、そうではない。

 (1) コスト

 用紙コストが8割減だとしても、初期投資が 141万円だ。これではよほど大量に使わないと、元が取れない。たぶん、元を取る前に、機械が壊れる。だったら無意味。
 おまけに、大量に印刷したり消去したりしていたら、順番待ちができる。それでは業務能率が大幅に低下する。紙代を節約しても、その他の人件費などが大幅に持ち出しとなる。トータルコストはかえって増えてしまう。

 (2) エコ

 それでも、エコならばいいか? 
 「インクを消すのに使う電力量を考慮しても、二酸化炭素排出量は従来より約6割抑えられる」
 ということだが、その程度だったら、たかが知れている。というのは、現状でも、次の方法があるからだ。
 「紙をリサイクルして、古紙として再利用する」

 この場合も、かなりの程度、エコになる。
 一方、今回のシステムの場合、用紙ではエコだとしても、機械の製作のために、大量の資源を必要とする。 141万円にもなる機械というのは、製作のために大量の電力や資源を使うはずだ。そっちも考えると、たいしてエコではあるまい。

 ──

 結論。

 この新商品は、一部分だけを見れば、低コストで省エネだと見える。
  ・ 機械購入を無視して用紙コストだけ見れば低コスト
  ・ 機械製作を無視して運用だけを見れば省エネ

 しかし機械のことまで考えれば、低コストでも省エネでもない。おおむねトントンだろう。しかも、それは、大量に使用した場合に限る。途中でやめれば、初期の投資が莫大なので、大幅に足が出る。壮大なる無駄になる危険がある。
 肯定的な評価はできない。

 ──

 では、どうすればいいか? こうだ。
 「単純に古紙にして、リサイクルする」

 これでいい。

 特に、シュレッダーなんかにはかけない方がいい。シュレッダーにかけると、繊維が分断されるので、古紙としてリサイクルすることができなくなる。
 製紙メーカーはシュレッダー古紙を原料として使用する際、未離解、禁忌品の混入、歩留りの低下等の問題があり、積極的に利用しようとする動きはありません。個別には、家庭紙工場での利用が最も多く、板紙工場も受け入れてはくれますが、洋紙工場での受け入れは限定的で、古紙の品質が保障されている場合のみとなっています。
( → 古紙四方山話 -  シュレッダーにかけられた紙
 というわけで、エコを考えるなら、「シュレッダーを使わない」というのが、一番効果的なのだ。

 また、次のこともある。
 「トイレットペーパーは、現状では、古紙よりもパルプ 100%の方が圧倒的に多い。この現状を変えて、原則として古紙にする」

 これだけで相当、資源の節約になる。そうするべきだろう。何だったら、パルプ 100%のトイレットペーパーは、高率の課税をしてもいい。
 
 一方、オフィス用のコピー氏は、再生紙がかなり増えた。「エコのため」という理由だが、まったくお勧めできない。黒い点々が入って、可読性が落ちるからだ。また、白色度が下がるので、「インクを薄く印刷する」ということもできにくくなる。むしろ、紙の白色度を上げて、インクを薄くする方が、ずっとエコで低コストになる。
 パソコンのプリンターで印刷するときに、再生紙を使うことは、エコであると思われている。しかし実は、エコではない。白色度で劣るせいで、インクを多用するからだ。
( → プリンターの再生紙はエコでない
 だから、プリンタ用紙は、再生紙を使わない方がエコなのだ。
 複合機でもインクジェットプリンタでも、どちらでもインクをなるべく薄くするといい。そのことで、エコと低コストを同時に達成できる。紙よりもインクで節約するべきなのだ。

 今回の東芝の製品も、同じ傾向がある。紙の節約ばかりを考えていて、機械という別の側のコストやエネルギーをろくに考えていない。そのせいで、トータルではかえって高コストでエネルギー浪費となってしまっている。
 一点ばかりに目を奪われ、他の箇所を失念している。頭隠して尻隠さず、みたいな。



 【 追記1 】
 あとで気づいたが、この「消えるインク」は、ものすごく高価であるはずだ。通常の何倍にもなるはずだ。(下記の「消えるインクのボールペン」に似ている。)
 記事にはコストが書いてないが、実際には、こうなるはずだ。
 「用紙代を節約できるが、その何倍もインクコストが上昇する。トータルでは大幅なコストアップ」

 
 危うく引っかかってしまうところだった。本項を書いて1時間ちょっとで気づいたので、だまされていた時間は1時間ちょっとということになる。危ない、危ない。
 詐欺師に引っかかるな、というのがモットーの私にしては珍しく、引っかかってしまうところだった。ペテンが一つだけでなく、何重にもあるので、一つ見つけただけで安心してしまっていたのが、やばかった。ペテンの本体は、インク代にあったのだ。ああ、危なかった。冷や汗。
 
 それにしても、東芝は気づかなかったのかな? 「紙代は節約できてもインク代は節約できないし、かえって高価格になる」と。
 「素人の気づくことぐらい、専門家ならば誰だって気づいているよ」
 というのがトンデモマニアの口癖だ。もしそうだとしたら、東芝はわかっていて、それをやっていたことになる。意図的な詐欺。
 だったら、消費者庁に訴えて、摘発してもらう方がいいかも。「インク代を隠すな」と。
  
 なお、東芝のページに行ったら、詳細な価格表が示してあるが、どういうわけか、トナー(インク)価格だけが記してない。本気で隠蔽工作を行なっているな。
  → 東芝のページ

 おまけに、次の文句があった。
 「平成23年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰(技術開発・製品化部門)を受賞しました」

 げげげ。国が(環境省が)詐欺師のお先棒を担いでいる。

 教訓。

 エコの分野は、詐欺師ばっかり。引っかかる人が続出。(私ももうちょっとで……)
 
 【 追記2 】
 あとで調べてわかったが、そもそも紙を節約する必要はない。なぜなら大量の間伐材が余っているからだ。紙を節約すると、森林の伐採量が減るのではなくて、間伐材が紙にならないままゴミとして腐るだけだ。
 森林の伐採を防ぐためであれば、紙の使用量を減らすのではなくて、アフリカなどの途上国でとしての森林伐採を防ぐことが大切だ。日本で紙の使用量をいくら減らしても、それはエコにはならない。
 どちらかと言えば、「紙の使用量を増やしましょう。その分、植林しましょう」と言う方が、森林の量は増えるし、二酸化炭素の吸収にもなる。
 森林の植樹は大切だが、その逆の、森林の伐採は(必ずしも)悪いことではないのだ。伐採のあとに植林するのであれば、単純に木の交替があるだけであり、森林の減少にはならない。持続的な森林利用と、森林の消滅とは異なる。環境省や東芝は、そのことを理解できていないようだ。
 
 次の情報もある。
 パルプ材は国産材・輸入材ともに利用される木材は、製材残材や、他には使い道の少ない木材、人工林材などが中心である。
( → 日本製紙連合会 | 製紙産業の現状 | パルプ材
 つまり、日本だけでなく世界的に、使い道のない木材が余っている。それを紙にしているだけだ。したがって、紙の使用量をいくら減らしても、それはエコにはならない。単に木材が腐るだけだ。

 どうせエコを考えるなら、いったん紙にした上で、古紙をエネルギーとして熱利用すればいい。この件は前に述べた。
  → 古新聞を燃やすストーブ
 場合によっては、古紙をバイオチップとしてエネルギー源にした発電をしてもいいだろう。それならエコな発電となる。(再生エネルギー発電にもなる。)

 また、新聞社は、エコを考えるならば、自社の古新聞の回収を考える方がいい。
  → 古紙リサイクルと新聞社
 これを書いたころとは違って、最近では朝日も古新聞のリサイクルを始めている。私が書いたことの効果があったかな?
 ついでに、オフィスの紙も、シュレッダーにかけないでリサイクルするよう、キャンペーンを張ればいいのにね。

 まとめ。
 紙をいくら節約しても、エコにはならない。エコが目的ならば、使い道のない木材を紙にしてから、古紙の再利用をする方がいい。それならば本当のエコになる。
 


 [ 付記 ]
 それとは別に、ボールペンの「消えるインク」というのは、なかなか意義がある。私も使ったことがあるが、これはこれで十分に価値がある。通常のボールペンや鉛筆とは違う価値がある。替え芯のインクを使えば、コストも低い。
 誰にでもお勧めするというわけではないが、既存の商品にはない独自のジャンルを確立しているので、用途によっては最適だと言える。

     

消えるインクのボールペン(一覧)
posted by 管理人 at 19:16| Comment(6) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半に 【 追記1 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2012年11月20日 20:43
後半に 【 追記2 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2012年11月20日 23:26
リターナブルペーパーを使いたいなら、羊皮紙を使えばいいんです。あれは、表面を削ったりインクを脱色することで、何度も使えます。

紙をワンスルーでしか使わなくなったのは、製紙法が改良されて、紙が安くなったからであり、資源制約がきつくなったら、自然と再利用するようになります。

江戸時代には、便所の紙ですら、再利用してました。
Posted by 井上晃宏 at 2012年11月21日 18:58
井上さんも冗談を言うようになったんですね。モテるかも。   (^^);
Posted by 管理人 at 2012年11月21日 21:07
結局、再生紙にも漂白剤とか要るから、
インクだけ消してリユースした方が良いと思う。
ただ、消えるインクの製造やそのインクの消去にかかる環境負荷が、
既存のインクの不使用や紙の節約によるメリットより大きければ、
確かにかえって悪いということになるだろうけど。

あと、大量に余っている間伐材の用途としては、
紙以外にも薪やバイオ燃料など他にもあるだろう。

機械については既存のものと同じくらいの数を
同じくらい長く使えば良いだけで、
「途中でやめる」意味がわからない。

インク代が高いというが、普及と技術革新が進めば
そのうち安くなる可能性もあるのでは?

東芝がライフサイクルアセスメントか何かして、
全ての要素について評価した上でエコだと
言っているのなら良いのだが、
それでもこのブログでの議論で
詐欺だと決めつけるのも早いと思う。
Posted by 詐欺師 at 2013年04月30日 15:28
> 機械については既存のものと同じくらいの数を
> 同じくらい長く使えば良いだけで、

 普通のコピー機は 10万円程度(家庭用ならば3万円程度)なんだから、今回の 141万円とはコスト的に大きな違いがあります。
 コスト差がこれほど大きいということは、環境負担も同様にいっぱいかかっているということです。

> 「途中でやめる」

 事業が破綻すれば、インクの発売もなくなるので、途中でやめるしかありません。
 WindowsXP を3年前に買った私みたいに、たったの4年間でサポート打ち切りということもある。
 あと、利用枚数が少ないと、141万円を回収するには、十年以上かかるでしょう。それまでに機械が錆びて壊れるかもね。
Posted by 管理人 at 2013年04月30日 15:57
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