読売新聞 2012-11-09 に、山中教授へのインタビュー記事がある。要旨を示そう。
・ iPS細胞の応用は、再生医療と創薬だ。
・ 基礎科学者だけでは駄目で、周辺の協力者も必要だ。
・ 研究所のスタッフは 200人だが、正規雇用は1割。
・ 国の支援は計 20億円以上だが、期限がある。
・ 安定した雇用のための資金が足りなくて困っている。
・ そこでマラソンをしている。
・ 「マラソンよりも研究を」と言われるが、雇用も大切。
・ 雇用確保のためには年間80回もマラソンを走ることが必要。
「年間80回もマラソン」だったら、プロのマラソンランナー以上となる。 (^^);
現実にはそれはありえないが、それほどの危機的状況だということだろう。
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そこで私が提案するのは、こうだ。
「創薬部門に絞って、製薬会社からの委託研究員を受け入れる。彼らは製薬会社に正規雇用してもらい、将来的には製薬会社で働けるようにする。ただし、退社して大学に戻ることも可。しかし他の製薬会社に移ることは不可。」
このような形で正規雇用されるのであれば、たいていの若者は応募すると思う。非正規雇用で月収 20万円以下であるよりは、製薬会社の社員としてきちんと雇用される方が、ずっと嬉しいに決まっている。身分が不安定では結婚もできないが、製薬会社の社員ならば結婚もできる。
で、実際にやる仕事は、どっちも大差ない。基礎部門か応用部門かというぐらいの差は、少しぐらいはあるだろうが、創薬という目的に関する限りは、ほとんどどっちも同じだ。どっちにしろ、該当の細胞を作ることだけが目的だ。たとえば、腎臓の臓器の細胞。
こうして、創薬部門に限っては、製薬会社からの莫大な資金を受け入れることができて、創薬のための研究がどんどん進む。現状では、心筋細胞と肝臓細胞ぐらいしかできていないらしいが、今後はさらに次々と多くの細胞が作られるだろう。
そして、ここが大事なのだが、少しでも早く細胞を入手した会社が、製薬に関しては圧倒的に優位に立つ。スピードこそが重要なのだ。その点、最先端の部門に委託研究員を派遣することは、製薬会社にとって多大なメリットとなる。
現状ではすでに、武田薬品が慶應大学に協力して、アルツハイマー病のためのiPS細胞を開発しているそうだ。他にもいくつかの例がある。
■iPS細胞に関連する各社の取り組みしかしこれは、企業規模に比べて、あまりにも小規模すぎる。
社名 主な取り組み
川崎重工業 iPS細胞を自動培養する装置の開発
ニコン iPS細胞の品質を見極める装置の開発
武田薬品工業 患者由来のiPS細胞から病気の細胞を作り、アルツハイマー病の病態を解明する慶応大との共同研究など
大日本住友製薬 病気が進行するメカニズムを解明する京都大iPS細胞研究所との共同研究など
リプロセル iPS細胞から作った肝臓・心筋・神経の細胞の販売など
タカラバイオ 製薬会社などから提供を受けた細胞を用いたiPS細胞の作製代行など
( → MSN産経ニュース )
武田薬品工業も売上高1兆5500億円、最終利益は1550億円の増収増益見込み。エーザイは売上高6100億円、最終利益590億円の減収増益見込み。アステラス製薬は(以下略)
( → 製薬大手7社の中間決算 )
(武田薬品工業は)2007年(平成19年)3月期決算では連結売上高1兆3千億円超、連結純利益3千億円超。これほど巨額の利益を得ているのだから、もっと iPS の研究のために金を払えばいいのだ。たとえば、各社が年間で平均5億円ずつ6社が払えば、合計で 30億円となり、それだけで国家による支援総額に匹敵する。
( → Wikipedia )
とはいえ、日本国内の製薬会社は、そのくらいの金を払うつもりはないだろう。ケチだから。
とすれば、山中教授は、外国からの委託研究を受け入れるべきだ。特に国内企業に限る必要はない。研究は日本のためにやるのではなく、世界のためにやるからだ。
教授がもし日本のためにやるのであれば、特許を取って、特許料金を高額に設定して、日本企業だけに特許代を免除すればいい。そうすれば、(駄目な)日本企業に下駄を履かせることができるので、(駄目な)日本企業が優遇されて、日本のためになる。
しかし教授はその意図はあるまい。日本のためにやっているのではなく、世界のためにやっているはずだ。ならば、(駄目な)日本企業を優遇する必要はない。彼らが「金をケチりたい」という愚かな判断をしたいのであれば、そうすればいい。かわりに、「金をいっぱい払います」という企業から、金と研究員の委託を受け入れればいい。そしてその企業といっしょに創薬研究をすればいい。
たとえば、ロシュ社やグラクソ社と共同研究して、次々と新たな iPS細胞を開発して、さまざまな臓器における創薬に役立てればいい。
もちろん、基礎研究そのものは公開されるから、どの製薬会社もその研究成果を利用できる。ただし、タイムラグがある。他の会社がその研究成果を利用できるころには、ロシュ社やグラクソ社が新たな iPS細胞を利用して、創薬に利用して、新薬を創出しているだろう。(遅れてやって来た者には、果実はない。先行者が食い散らかしたあとの残骸があるだけだ。)
こうして、ケチで愚かな国内企業(武田薬品など)は、ケチった報いとして、先行者が食い散らかしたあとの残骸だけを受け取ることになる。5億円をケチって、千億円以上の果実を失う。それもまた当然の結果だ。
一方、ロシュ社やグラクソ社は、10億円程度を払って、千億円以上の果実をいただく。お利口ですね。
ただし、一番の利益の享受者は、世界の人々だ。ロシュ社やグラクソ社は、千億円以上の果実をいただくが、世界の人々は、病気を治す新薬を得ることで、千億円をはるかに上回る貴重な生命を救われる。そして、それこそが、教授のめざしていることであるはずだ。
日本企業が儲けようが、外国企業が儲けようが、そんなことはどっちでもいい。大切なのは、世界の人々の生命が救われることだ。そのとき武田薬品が儲け損ねたことなど、まったく無視していいことだ。
というわけで、企業から委託研究費と委託研究員を受け入れることを提案する。
( ※ 山中教授は、マラソンを走るより、企業を行脚した方がいいと思う。ノーベル賞をもらったんだし。どの企業だって歓待してくれるはずだ。そのあとでビジネスの話をすればいい。おたがい、win-win の関係になれる。)
( ※ それでも日本企業だけはケチるだろう。だけど、あとで後悔させるために、とりあえずはお誘いをした方がいい。そして、それを写真にして撮影しておくといい。そのあと数年たったら、「実はあのとき武田が断ったから、今回の成果はロシュ社のものになったんですよ。武田はケチって損しましたね」と嘲笑ってやればいい。……シャープであれ、パナソニックであれ、私の忠告を聞かずに、大失敗した。それと同じ大失敗を、武田もやるはずだ。だから数年後に「儲け損ねたな」と嘲笑できるよう、今のうちにていねいにお誘いをしておくといいだろう。後悔させるために。 (^^); )
[ 余談 ]
この方針には、特に異論はないだろう……と思えたが、異論を言いそうな人がいた。トンデモマニアだ。
「専門家でもないくせに口を出す奴はトンデモだ!」
こう語って、上記の提案を妨害しようとするだろう。きっと。
あるいは、最後のジョークを理解できずに、「この売国奴め!」と非難するかもね。 (^^);
