2012年11月03日

◆ 人を死なせても罰金 25万円

 京都府亀岡市で集団登校中の児童が死傷した事件があった。この事件で(主犯以外で)共謀していた連中は、最高でも罰金 25万。他はそれ以下。 ──

 この集団登校の事件は、前に述べたことがある。
  → 集団登校は安全か?

 その後日談。
 直接的に運転で事故を起こした主犯は、少年院に送致された。一方、自動車の持主や、交替で無謀運転していた共犯者は、最大でも罰金 25万円となった。
 記事を引用しよう。まずは事故の概要。
 京都府亀岡市の府道で4月23日午前8時ごろ、集団登校中の市立安詳(あんしょう)小の児童ら10人が無免許運転の軽乗用車にはねられ、児童2人と妊娠中の保護者の計3人が死亡し、児童7人が重軽傷を負った。
( → 毎日新聞
 京都府警は26日、無免許で運転していた亀岡市の無職少年(18)=自動車運転過失致死傷容疑などで送検=が事故を起こす前、計8人で亀岡、京都両市内をドライブしていたと断定。
 所有者の男性(18)から参考人として事情を聴いたところ、男性は事故前の状況について「自分も少年が運転する軽乗用車に乗っていた」「8人で車2台に分乗してドライブした」などと供述したという。
( → MSN産経
 車は現場の制限速度を超えた時速50キロ程度で走行していた可能性があることが24日、捜査関係者への取材で分かった。
 自動車運転過失傷害の疑いで現行犯逮捕された亀岡市の自称無職少年(18)が「ふっと意識がなくなり、気付いたら人をはねていた」と供述していることも判明。府警は少年が寝不足のまま運転を続け、居眠りをして事故を起こしたとみている。 ( → 共同通信
 それから半年たって、車の保有者に罰金刑が出た。
 裁判官は「少年は反省し、父親が指導監督を約束している」などとして、罰金25万円(求刑・懲役1年)を言い渡した。
 検察側は「少年の犯行が死傷事故を引き起こした」として法定上限の懲役1年を求刑したが、入子裁判官は「事故時に行動を共にしていないなど事故との関連性が乏しく、検察側の求刑は重すぎる」と指摘した。
 小谷真緒さん(当時7歳)を亡くした父親・真樹さん(30)は「執行猶予付きどころか罰金だなんて……。真緒にどう報告すればいいのか」と憤った。
( → 読売新聞
 事故を巡っては、少年3人が起訴され、同3人が保護処分になった。判決は初めて。
 判決によると、所有者少年は事故前日の4月22日未明、遊び仲間とドライブ中、土木作業員少年(19)=中等少年院送致=が無免許と知りながら運転を依頼し、車を貸した。
 その後、所有者少年が下車後も他の少年らが交代で運転し、無職少年(18)=自動車運転過失致死傷などの罪で公判中=が事故を起こした、とされる。検察は「車の貸与がなければ事故は起きなかった。結果は重大」として、同罪で上限の懲役1年を求刑していた。
 入子裁判官は、土木作業員少年の後に運転した無職少年が200キロ以上も走行後に事故が起きたことから、「(車の貸与と事故は)時間的にも距離的にも相当離れている」と指摘し、「求刑は重きに失する」と述べた。
 「事故との関連性は乏しく、量刑に及ぼす影響は極めて限定的」とし、罰金25万円(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。弁護側が求めていた執行猶予付き判決をも下回る量刑となった。
( → 毎日新聞
 これを読むと、車の所有者と、無免許者との関係はあるが、車の所有者と、事故を起こした主犯とは、あまり関係がないように見える。だから裁判官は「事故との関連性は乏しく、量刑に及ぼす影響は極めて限定的」と考えたのだろう。
 しかし、それでは何か本質を見失っていないか? 次の報道もある。(冒頭の記事と同じ。)
 少年と道交法違反(同)幇助容疑で逮捕、送検された同乗の専門学校の男子生徒(18)=亀岡市=と大学1年の男子学生(18)=同府南丹市=の3人は、23日朝に亀岡市内で事故を起こすまでに一晩中、無免許でドライブをしていたことがすでに判明している。
 府警が軽乗用車の所有者の男性(18)から参考人として事情を聴いたところ、男性は事故前の状況について「自分も少年が運転する軽乗用車に乗っていた」「8人で車2台に分乗してドライブした」などと供述したという。
 捜査関係者によると、3人と所有者の男性を加えた4人は、別の4人の友人と携帯電話で連絡を取り合ってボウリング場やコンビニの駐車場などで集合し、2台の車に分乗。亀岡市や京都市を中心に2台に乗るメンバーを入れ替えながら走行していたとみられる。
 また、少年はドライブから帰る途中、友人の1人を京都市山科区で車から降ろした、と供述。府警は、少年が幇助容疑で送検された2人と一緒にこの友人を山科区まで送り届けた後、自宅へ向かう途中で事故を起こしたとみている。
 一方、送検された少年ら3人が、平成22年に道交法違反(集団暴走)容疑で府警に摘発され解散した暴走族グループ「亀人会」の中心メンバーだったことが判明。府警は、少年とドライブをした友人らも同グループのメンバーとみており、少年らがグループ解散後も日常的に集まってドライブを繰り返していたとみて調べている。
( → MSN産経
 読めばわかるように、ここでは暴走族としての活動があった。8人の集団で2台に分譲して、200キロ以上も走行した。
 とすれば、このような暴走ふうの行為自体に事故の原因があったと言える。したがって、事故の理由は、「自動車保有者が無免許者に自動車を貸与したこと」ではなくて、「8人の集団が危険走行をしたこと」であり、それに参加した全員が危険行為に加担していたことになる。自動車所有者は、そのなかでも責任が最も大きい。

 これに該当する法律は、次のものがある。(どちらも同じらしい。)
  → 共同危険行為
第68条
 2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は、道路において2台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為をしてはならない。

第117条の3
 第68条(共同危険行為等の禁止)の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
( → 道路交通法,(略)道交法
 これだけでも懲役2年にはなる。大量の死傷事故ならば、上限に達してもいい。
  
 さらに言えば、「危険運転致死傷罪」もあるのだが、検察はこれを見送った。
 京都府亀岡市で集団登校中の小学生ら10人が軽乗用車にはねられ死傷した事故で、京都地検は16日、運転していた亀岡市の無職少年(18)=検察官送致=について、罰則の重い危険運転致死傷罪の適用を見送り、勾留期限の17日に自動車運転過失致死傷と道交法違反(無免許運転)の罪で起訴する方針を固めたもようだ。
 地検は少年らに加え、新たに後続車の運転手からも事故の経緯や状況を聴取するなど、適用条件を満たすか否かを詳細に検討。その結果、少年は無免許でもハンドル・ブレーキ操作などの運転技能があり、こうしたケースは法律解釈や判例上、適用条件の一つである未熟運転にはあたらないと判断したとみられる。
( → MSN産経
 何ともまあ、甘い判断だ。「未熟運転ではない」という判断らしいが、未熟運転は関係ない。暴走族ふうの共同危険行為が問題なのだ。のなのに、その認定をしない。
 こうして、せっかくの法律があっても、検察のせいで骨抜きにされる。

 ──

 結論。

 日本の検察や裁判官は、無実の人を長期にわたって拘束して、虚偽の自白に追い込み、冤罪による犯人をでっち上げることにはすごく熱中する。
 しかし、真の悪党である真犯人を逮捕しても、法律の適用をとことん甘くする。人を3人を死なせても、首謀者は罰金 25万円で、他の同乗者は無罪放免。自分が運転さえしていなければ、危険な暴走行為によって大量の死傷者を出しても、お咎めなし。
 日本の検察や裁判官は、悪の味方なのだ。だからこそ、一般の市民を冤罪ででっち上げることに、熱中する。
 


 [ 付記 ]
 ちょっと注釈しておくと、犯人は未成年だ。だから罰は軽くなる。
 とはいえ、これほどの被害をもたらす悪をなしながら、罰金 25万円または無罪放免なんて、ひどすぎる。
 しかも、法律はちゃんとあるのに、検察が勝手に適用を免除する。
 さらには裁判官が、どんどん罰を値引きする。
 よってたかって、法律を曲解して、悪をのさばらせる。

 悪がいっぱいのさばりすぎるから、その分、善が縮小しちゃうんです。かくて検察によって、善人が逮捕される。
  
 [ 余談 ]
 それでもまあ、「検察は正しい」と思う人もいるだろう。それは、トンデモマニアだ。
 「検察は専門家だから、彼らは正しい。一方、冤罪で逮捕された人は、素人だから、トンデモだ。専門家と素人の意見が食い違っているときには、常に専門家の方が正しい。ゆえに、冤罪の市民を、豚箱に入れて死刑にしろ!」
 何だか中国みたいだ。



 【 関連項目 】
 
 → 集団登校は安全か?
 → サイト内検索「冤罪」
posted by 管理人 at 14:37 | Comment(2) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関連サイト。

 
非行少年少女を重犯罪刑務所に連れて行き、囚人たちに怒涛の説教を食らうという更生プログラム
  → http://karapaia.livedoor.biz/archives/52106631.html
Posted by 管理人 at 2012年11月03日 15:26
ちょっと書き落としたことを書き足す。
次の項目を書いた。
  → PC 遠隔操作犯を逮捕するな 
    http://openblog.meblog.biz/article/11997151.html
 つまり、たかが掲示板の悪戯書きぐらいは無視すればいいのだ、という趣旨。

 これに対し、はてブのブコメでは、犯人を逮捕すべきだ、という声が強かった。
 だが、たかが掲示板の悪戯書きぐらいに、捜査員 140人もかけて大操作するのは、馬鹿げている。それは、「警察のメンツがつぶされたから」という、メンツの問題にすぎない。
 それよりは、もっと大切な重大事件がある。その例が、本項だ。3人を死なせて、さらに重症者多数。それほどの事件なのに、いい加減な操作をしているから、共同謀議の犯人が、「主犯ではないから」というだけの理由で、罰金25万円または無罪釈放。

 たかが掲示板の悪戯書きと、3人以上の死傷者の、どっちが重要なのか? 特に被害者は、年端の行かない子供たちだ。かわいそうに。

 掲示板の悪戯書きの犯人なんかに熱中して騒いでいる連中を、問い詰めたい。小一時間ほど問い詰めたい。   (^^);
Posted by 管理人 at 2012年11月04日 12:45
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