2012年10月24日

◆ 冤罪事件が三つ

 東電OL殺害事件は冤罪だったが、他にも二つの冤罪があった。PC遠隔操作の事件と、飯塚事件だ。 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2012-10-29 です。)


 東電OL殺害事件は冤罪だった。(各紙報道)
 これを見て、マスコミは「検察の体質が問題だ」というふうに指摘して、「反省せよ」と批判しているが、視野が狭すぎる。同じ問題は、他にもあるからだ。つい最近の例も含めて、全部で三つ示す。

 (1) 東電OL殺害事件

 この事件で再審判決が出て、無罪が確定した。ここでは冤罪の問題が指摘されている。
 弁護側は「Xが犯人と考えるのが合理的だ」と指摘。「早い段階で必要な証拠開示がされていれば、もっと早く無実を明らかにできた。今、検察が無罪を主張しても責任を免れず、このような事態を招いた原因を究明することこそ、冤罪(えんざい)を防止することになる」と述べた。
 閉廷後、東京高検は「結果として犯人として長期間拘束したことは誠に申し訳なく思っている」とのコメントを出した。
( → 読売新聞 2012-10-29
 だが、この事件は、ただの「冤罪」ではない。
 多くの人は、「証拠不十分なのに有罪にした」と思っているようだが、実は、証拠の隠蔽があったのだ。ここが本質的だ。
 検察は、被害者の胸から第三者のものである唾液が検出されていたにも関わらず、裁判において証拠開示をしていなかった。この唾液は被告人の血液型B型と異なるO型だった。そのため、弁護側から『判決に影響を与えた可能性があるにも関わらず、証拠を提出しなかったのは証拠隠しだ』という指摘がなされている。
( → Wikipedia
 このように故意に証拠を隠蔽していただけでなく、証言の捏造もなされた。関係する外国人に強要して(このとおり証言しないと国外追放するぞと脅して)、虚偽の証言をさせたのだ。簡単には、下記の通り。
 上述の「鍵を所持していなかった」とする元被告人の供述に関し、元被告人の同居人が、鍵を元被告人から事前に預かって管理人に返したと捜査本部に説明したにもかかわらず、元被告人が返したとする供述調書が作成され、この同居人には不法残留であったにもかかわらず警察が従来以上の月給の仕事を紹介したとされるなど、見立てに従った捜査が進められたとされる。
( → Wikipedia
 このような証拠の隠蔽や証言の捏造が、冤罪の本質である。
 この核心は、次の二件でも成立する。

 (2) 飯塚事件

 福岡県飯塚市で女児2人が殺害された「飯塚事件」で、証拠の捏造があったことが判明した。
 弁護団によると、確定審で提出されたDNA型の鑑定書にはネガの一部分を切り取ったものが使われており、今回特定されたDNA型が写っている場所周辺はカットされていたという。弁護団は「故意に切り取っており、改ざんされ捏造(ねつぞう)されているとしか思えない」と話した。
 福岡地検の佐藤洋志公判部長の話 ネガはこれまでも証拠開示されており、弁護側も見ているはず。DNA型鑑定は間違っていない。
( → 時事通信
 久間元死刑囚の型は、MCT118法で「16-26」型とされている。弁護団によると解析の結果、被害者の遺体などから採取された血液に「41-46」型が見つかった。一方、「16-26」型は、犯人の血液が混じる可能性がない試料からも出ていたり、不鮮明だったとしている。
 弁護団は「ネガは証拠として提出されず、『41-46』型が現れた部分を意図的に除いた現像写真だけが提出された。科警研による隠蔽行為だ」と主張。
 福岡地検は「ネガも証拠として提出している。写真は書面のサイズの問題で一部を切り取っただけで、隠蔽ではない」と反論している。
( → 毎日新聞
 飯塚事件では、裁判所に提出されたプリント写真には「41−46」型が現れた部分が入っておらず、弁護団は「ネガは証拠として提出されていない。科捜研による隠蔽行為」と主張、福岡地検は「ネガも証拠として提出しており、写真は書面サイズの問題で一部を切り取っただけで、隠蔽ではない」と弁明している。ネガが証拠として提出されていたか否かで食い違っているが、仮に提出されていたとしても、地検は自らの立証に都合の良い部分だけをプリントして立証に使っているわけで、「41−46」型が現れている部分を見逃したのであれば科捜研が無能だということになるし、「41−46」型が現れている部分を意図的にカットした、あるいは無視したのであれば、久間さん以外の犯人の可能性に眼を瞑り、久間さんを犯人にでっち上げたということになる。
( → 個人ブログ
 ここでは「ネガの都合のいい部分だけを切り取ってプリントして、いかにも同じ人物の DNA だ」と見せかけている。しかしプリントされなかったところには、別のデータが現れていたのだ。
 図示すると、こんな感じ。 

   犯 人の DNA   △◇○▽▼●■
   容疑者の DNA   △◇○▽★◎▲

  
 この二つの DNA で、最初の四つは同じだが、最後の三つは異なる。ゆえに、両者は別人の DNA だ。
 ところが、警察・検察は、最後の三つを切り取って、最初の四つだけを提出して、「両者は同じだから、犯人の DNA と容疑者の DNA は同じである」と結論した。
 つまり、もともと別人の DNA であるとわかっているのに、インチキな証拠を作り出して、容疑者を犯人に仕立て上げた。これは証拠の捏造に等しい。
 
 しかも、ひどいことに、こうして冤罪が証明された容疑者は、死刑囚として、すでに処刑されてしまった。(2008年10月28日、福岡拘置所で。)
 → Wikipedia
 捏造された証拠によって死刑が執行されたのだから、これは公権力による殺人事件だとも言える。
( ※ 死刑のことを「国家による殺人だ」と批判する人もいるが、違う。「国家による殺人だ」というのは、こういうふうに「証拠の捏造」という犯罪をともなう殺人行為のことだ。こっちが正真正銘の「国家による殺人」と言える。)


 (3) PC遠隔操作

 PC遠隔操作の事件では、検察が証言を捏造していた。
 警察自身によるの調査によって、「2秒間で 270字を記入した」というデータが出た。だが、たとえコピペをしても、これはできない。なぜなら、逐次的に入力する欄があるからだ。コピペの箇所は一瞬で済んでも、他の箇所を人力でやれば、とても2秒では済まない。
 にもかかわらず、警察は被疑者(大学生)を犯人と決めつけた。それだけならまだしも、被疑者の知らないはずの情報をたくさん書き込んだ調書を作成した。これは明らかに警察官による証拠捏造だ。
 また、それをチェックできなかった検察も、捏造については共犯同然だ。

 ──

 以上の三つは、最近になって報道された冤罪事件だ。その他、もっと根源的なものに、次の捏造がある。
  → 厚生労働省女性元局長の冤罪事件 ( Wikipedia )
 この事件では、大阪地検が阻止式的な証拠の捏造(偽造)をしていた。
  → 大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件 ( Wikipedia )
 ここでは、「証拠物件であるフロッピーディスクの改竄」というひどい捏造が行なわれた。しかもそれを知った上司は、問題を咎めるどころか、そのまま証拠として提出させた。
 ただ、それで有罪になったかというと、そうではない。真犯人が自白したので、真犯人が逮捕された。結果的に、被告は無罪判決を得た。しかし、無罪なのに、有罪を示す証拠があるのはおかしい。そこで証拠を調べると、現実にはありえない形でデータがあることが判明した。このことから、改ざんがなされていたと判明した。朝日新聞のスクープ。
  → Wikipedia
  
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 以上のように、三つ プラス 一つ の事件を示してきた。そのいずれにも、冤罪という事件があったが、その根源は、証拠の捏造であった。
 だから、「検察は反省せよ」というふうに語るのであれば、「証拠の捏造をやめよ」というふうに語るべきなのだ。
 また、その点を重視することで、遠隔操作事件の問題も「警察・検察による捏造」という点を重視するべきなのだ。
 なのに、「一番悪いのは遠隔操作の犯人だ」なんて語っている人もいる。(朝日新聞・夕刊・コラム「窓」の著者)
 呆れた話だ。「悪いのは犯罪者だ」なんて批判しても、何の解決にもならない。東電OL事件であれ、飯塚事件であれ、遠隔操作事件であれ、「一番悪いのは真犯人だ」なんて語っても、何の意味もない。
 大事なのは、この世には犯罪がある、ということだ。そして、それに対して、「真犯人を突き止める」という努力が警察に要請される。ところが、その要請を見失って、「犯人であれば誰でもいいや」と思って、無実の人を逮捕して犯人にでっち上げる。……こういう警察の体質が問題となっているのだ。とすれば、問題の解決のためには、警察の「証拠捏造」という体質を決定的に改めなくてはならない。ここが核心だ。
 この時点で、「警察の体質を改めよ」と言うかわりに、「一番悪いのは真犯人だ」なんて語っているマスコミは、あまりにもピンぼけすぎる。それは「警察と犯罪者を同列に並べる」という発想だ。馬鹿馬鹿しすぎる。警察はいつから犯罪者になったのか?
 警察と真犯人のどっちが悪いかを比べても意味がない。大事なのは、「警察は犯罪をするべきではない」ということだ。
 ここが一番肝心なことだ。なのに、マスコミのほとんどは、そのことを見失っている。それでいて、「冤罪をなくすために努力しよう」なんていう寝言を言っている。むしろ、
 「警察は犯罪をするな」
 と一言でいえばいいのだ。そしてさらに、
 「PC遠隔操作事件では、警察の犯罪(証拠捏造による冤罪)こそが、最も重要な点だから、警察を指弾せよ」
 と語るべきだ。なのに、マスコミは、腰が引けているから、警察の犯罪を指摘することができない。……かくて日本では、いつまでたっても、冤罪が続くわけだ。(警察とマスコミが結託しているからだな。馴れ合い体質と言うべきか。)



 [ 付記1 ]
 遠隔操作事件についての対策としては、
 「県警レベルでなく全国レベルで専門的な技術者の組織に担当させよ」
 というのが私の提案だった。
  → 朝日の謝罪と読売の謝罪 【 追記 】

 一方、現実は、県警レベルでやっているのかと思ったら、実は、もっとひどくて、警察署単位だそうだ。
  不正アクセス事件などのサイバー犯罪は、各都道府県警の生活安全部門に専門部署が置かれている。しかし、犯罪予告による脅迫事件などは、パソコン(PC)の解析作業などを情報技術部門が支援するものの、署の刑事部門や本部の捜査1課などが担当している。
( → 毎日新聞 2012年10月26日
 あまりにも低レベルなので、呆れる。

 [ 付記 ]
 IPポイントだけで容疑者を逮捕する、という手法について、警察は自己弁護している。
 「掲示板に予告した秋葉原殺人事件の再発を防がなくては」
 と思っているそうだ。
 ( → 読売新聞・朝刊 2012-10-29。検証記事の特集 )

 しかし、秋葉原殺人事件では、掲示板に予告されたわけではないのだ。たしかに掲示板に書き込みはあったが、あれは犯罪の予告ではなかったのだ。強いて言えば、ただのメモである。この件は、下記で示したとおり。
  → 掲示板の犯罪予告を無視せよ

 「掲示板への予告」ではないものを、「掲示板への予告」だと思い込む。……ここには「掲示板とは何か」という点で、IT知識が欠落している。
 こういう愚かな認識が、「掲示板への悪戯書きの犯人を逮捕すれば、殺人事件を阻止できる」という勘違いに結びつく。
 馬鹿馬鹿しい。殺人事件を阻止したいのであれば、一番有効なのは、「いじめ」をなくすことだ。
  → 「川に飛び込め」泳げない少年水死…強要で逮捕
 いじめをあらかじめ阻止すれば、事後的に殺人犯を逮捕するのでなく、事前に殺人を予防できる。
  → いじめと元警察官

 警察がやるべきことは、悪戯書きの犯人を逮捕することじゃない、とはっきりわきまえるべきだ。
posted by 管理人 at 19:11 | Comment(0) | コンピュータ_03 | 更新情報をチェックする
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