2012年10月12日

◆ iPS細胞 嘘事件を推理する

 前々項・前項の事件(iPS細胞の臨床応用に成功というのは嘘だった)は、なぜ起こったか? そのミステリを推理する。 ──
  
 iPS細胞の臨床応用に成功というのは嘘だった、とほぼ判明したようだ。犯人(?)は逃亡した模様。
 では、この事件は、なぜ起こったか? 
 
 ネットを探ると、次の三つの情報が見つかった。
 (1) ベンチャーキャピタルから研究費を1億5000万円を集めているので、その釈明に迫られた。( → j-cast
 (2) 今回の国際会議では審査なしで誰でも発表できる。
 ウェブで参加登録をした研究者は誰でも、ポスターを示して研究成果を説明することができるといい、審査などはないという。
( → 朝日新聞 2012-10-12
 (3) ハ−バ−ド大云々という経歴を詐称して、東京大学先端科学技術研究センターの客員助教授・特任助教授になってきた。(現在は特任研究員)
  → 東大のプロフィル
  → Wikipedia
 
 ──

 以上の状況証拠を見た上で、私としては、次のように推理する。

 (1) 思惑

 「ベンチャーキャピタルから研究費を1億5000万円を集めて研究をしてきたが、成果が上がらないまま、研究費を使い果たしてしまった。このままではさらに研究費を集めることができなくなる。そこで、アドバルーンを上げることにした。幸い、無審査で発表できるところがあるから、そこでこっそり発表しよう。ここで発表という実績を作れば、また出資者から金を集めることができるだろう。どうせバレっこないさ。これまでだってバレなかったし、今回もバレないだろう」

 (2) 予想外の事件

 「あれ? iPS細胞がノーベル賞をもらってしまった。こいつは予想外だ。計画が狂ったな。こっそり目立たずに発表するつもりだったのに。おや。読売まで取材に来たぞ。ま、取材を受けておこう。紙面に小さく記事が出れば、それはそれで、ハクがつく。その小さな記事を投資家に見せよう。それでますます信頼してもらえるだろう」

 (3) 現実

 読売新聞が特ダネ扱いで1面にデカい記事にする。3面でも特集記事を書いて、夕刊でも続報。各社から多数の問い合わせが来る。
 意外ななりゆきに焦る。
 「どうしよう? こんなに騒がれるなんて、まったくの計算違いだ。仕方ない。こうなったら、しらばっくれるしかないな。しかし、どうしらばっくれたらいいんだろう? まったく考えてもいなかった」(汗)

 ──

 ネット上には、「嘘をつけばバレる決まっているのに」という見解が多いが、これまでは嘘はバレなかったのだ。だから今回も嘘はバレないと思っていたわけだ。
 ところが、あまりにも注目を浴びたせいで、予想外の方向に進んで、バレてしまったわけだ。
 仮に iPS細胞にノーベル賞という事件が起こらなければ、今回の嘘(詐欺)は、露見しなかっただろう。彼はそのまま嘘をつき通して、出資者をだまして、金をまた集めただろう。
 結局、「iPSへノーベル賞」という事件が、今回の嘘(詐欺)を発覚させたわけだ。

 天網恢々 疎にして漏らさず。
 


 [ 付記 ]
 これは、「ES細胞で成功」という嘘研究(捏造)を発表した、韓国人学者(黄禹錫)に似ている。だが、あれとは全然異なる。
 あの事件は、「論文の捏造」という学者の事件だった。一方、今回の事件は、論文を発表していない。「学会誌に投稿した」と本人は言っているが、学会誌の方は「受理していない」(応募はなかった)と言っている。つまり、学術的には、事件は何も起こっていない。嘘研究も存在していない。単に、国際会議の会場でポスターを貼っただけだ。(そのあとで取材が来て事件になったが。)
 
 私が思うに、この嘘つき男は、「 iPS細胞の臨床応用に成功」というのが、いかに巨大な成果であるのかを、理解できなかったのだろう。「ちょっとカッコいいことをやろう」と思っただけで、それがいかに巨大な業績になるかを理解できなかったのだろう。かくて、「ちょっとした嘘」をついたつもりが、「ものすごい大ボラ」となったあげく、世間の耳目を集めてしまったわけだ。
 嘘をつくなら、本当らしい嘘をつけばいいもののを、あまりにも大ボラを吹くから、すぐにバレてしまう。
 詐欺師としても二流だった、ということか。
posted by 管理人 at 20:16| Comment(6) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
朝日新聞によると、当人が朝日にメールしたのは9月30日。
 読売新聞によると、当人が読売にメールしたのは9月19日で、10月1日にも論文草稿メール。その後、記者が10月4日に取材。
 ノーベル賞の受賞が10月8日。

 以上からして、当人が連絡したときには、ノーベル賞受賞になるとは思っていなかったのだろう。あるいは、これほどの大ニュースになるとは思っていなかったのだろう。
 あるいは、本人の頭がすごく弱すぎたのかもね。
 医科歯科大というと、医学部は東大理科1類と同レベルだが、看護学科ならばかなり易しいので、頭の悪い人でも入れるのかも。

 調べたら、医科歯科の医学部は偏差値71で、看護は 57.5 だった。そういうレベルに見えますね。
Posted by 管理人 at 2012年10月13日 11:08
森口氏は山中教授の論文をコピーした(盗用した)ことがある、という証拠が上がっている。
  → http://logsoku.com/thread/engawa.2ch.net/poverty/1350079566/

 これまでずっとバレなかった前歴は、たくさんあるようだ。
 調子に乗っていたようだ。
Posted by 管理人 at 2012年10月13日 14:20
本人は毎日新聞にも売り込んでいたという。時期は九月下旬。
 → http://mainichi.jp/select/news/20121013k0000m040107000c.html
 → http://mainichi.jp/select/news/20121013k0000m040107000c2.html
Posted by 管理人 at 2012年10月13日 20:55
森口氏は2009年にiPSへ巨額の研究費が配分されたことに対して、クレームをNature誌に寄稿し、Natureや新聞各紙に掲載されたという前歴がある。

山中氏がiPSで注目されることに対し、非常に大きなジェラシーを持っていたというのも背景であろう。

PubMedでは森口氏の業績は、Hepatorogy誌へのクレームばかりである。興味深い、
Posted by とおりすがり at 2012年10月13日 21:54
日経にもメールで売り込みがあったそうだ。8月中と、9月下旬。しかし日経は不掲載。
  → http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1303E_T11C12A0CR8000/

  ──

 本人は嘘を認めたが、別の嘘で自己正当化しようとする。
 → http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY201210130608.html
 → http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1304J_T11C12A0000000/
Posted by 管理人 at 2012年10月14日 05:53
事件の背景に、新聞社のずさんな体質があることを指摘する。
  → http://j.mp/TvtLSU
 事実としての研究よりも、日本人研究者という点にのみ着目して、論文も読まずに報道する、という体質。タブロイド紙みたいな体質。
Posted by 管理人 at 2012年10月18日 07:16
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