2012年10月12日

◆ 前項は誤報か?

 前項(iPS細胞の臨床応用に成功)は、誤報であったらしい。 ──
 
 前項では、「iPS細胞の臨床応用に成功」という記事を見て、「それでは日本が米国に負けたことになる」と記した。
 だが、もともとの記事が大誤報だったらしい。というか、研究者がうそつき(ペテン師)であったらしい。びっくりだ。
  ・ 医師の所属するハーバード大が否定した。
  ・ 治療の行なわれた(?)マサチューセッツ総合病院が否定した。
  ・ 本人の資格・経歴(ハーバード大講師)は虚偽。
  ・ 本人は医師ではない。(看護学を学んだだけ。)
  ・ 学界の発表の場に登場しなかった。


 「ES細胞で成功」という嘘研究(捏造)を発表した、韓国人学者(黄禹錫)に似ている。ただ、あれはすごく練ったインチキで、信用性が高かったが、今回は稚拙というほどの「口から出任せ」に近く、信用性がゼロに近い。学会発表すらしていないのだ。研究成果そのものが存在しないのだ。「成功しました」というポスターを貼って、読売新聞が報じただけだ。ただの誤報に近い。
 ちなみに、あちこちの新聞では「成功したらしい」とか「疑義が広がっている」とか書いてあるが、朝日新聞は何も報じていない。未確認情報に疑義を感じたのかもしれない。「成功するはずがない」と見抜いていたのかもしれない。すごい。偉い。シャッポを脱ぐ。あっさりだまされた私と違って、朝日の医療部門はすごいみたいだ。(抜群に頭のいい高橋真理子・編集員がいるせいかも。)

 ──

 以下は参考情報。(いずれも一部抜粋。特に有料記事は一部に限定。)
 初の臨床応用をしたとの森口尚史氏の説明に対し、米マサチューセッツ総合病院とハーバード大は11日「森口氏に関連した治験が承認されたことはない。現在、両機関とも森口氏と関係はない」との声明を発表、正規の手続きを経た臨床応用が行われたことを否定した。
 森口氏はハーバード大客員講師を名乗り、総合病院で臨床応用を実施したとしていた。
 森口氏はロックフェラー大で開かれているトランスレーショナル幹細胞学会で治療の内容をポスターで発表したが、学会は「内容に疑義がある」として、ポスターを撤去した。
 ハーバード大は、森口氏が1999年11月末〜2000年初めにかけ1カ月ほど在籍したが、その後の関わりはないとしている。森口氏は東京医科歯科大で看護学を学び卒業、医師の免許は持っていないという。
( → 報知新聞 2012-10-12

 森口氏が客員講師を務めた米ハーバード大と、患者への治療を実施したとされる米マサチューセッツ総合病院は同日、「森口氏の一切の臨床試験は、我々が承認したものではない」との声明を発表した。
 森口氏は、米ニューヨークで10日から開かれていた国際会議で、iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞を移植する治療を実施したとポスターで展示した。この治療は、ハーバード大の倫理委員会の「暫定承認」を受けたと説明。読売新聞が、この発表内容を報じたことに対して、国内外の研究者から疑問の声が上がった。
 森口氏は11日、研究内容をまとめたポスター展示の場で、詳細を報告する予定にしていたが、主催する米財団によると、予定の時間に森口氏は現れなかった。その後、主催者は会場からポスターを撤去。理由について「研究内容の正当性に疑義が呈されたため」と述べた。
 ハーバード大学は11日、森口氏について声明を発表した。それによると、森口氏は「99〜00年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」としている。
( → 毎日新聞 2012-10-12
 以上はネットにある記事だが、読売の朝刊が配達されたので、その一部を転載する。(ネットにはないようだ。)
 《 iPS移植 発表中止 》
 森口尚史氏は11日、成果の発表を予定していたロックフェラー大学での国際会議の会場に現れず、発表は行なわれなかった。
 予定されていた発表のポスターは一時、貼り出されていたが、会議事務局によると、ハーバード大の連絡を受け、口頭説明によるポスター発表は取り下げられ、掲示されたポスターは剥がされた。
 ハーバード大学は同日、「…(略)…」との声明を発表した。
( → 読売・朝刊・1面 2012-10-12 )
 上の (略) の部分は、報知・毎日の記事と同内容。

 ──

 これらの記事を見る限り、前項の報道は誤報だったと見なすしかないようだ。
 読売はペテン師に引っかかったらしい。経歴も見ずに信用して、学界発表がなされないうちに舌先三寸を信じて、一面に大々的に記事にしてしまった。大間抜け。
 しかし、それを信用した私も、間抜けだったな。見抜けなかった点で。(朝日新聞は見抜いていたらしい。夕刊でも後追い記事を書かなかった。偉い。)

( ※ なお、読売には、上記の続報があるが、前項の記事が誤りだったという訂正やお詫びは掲載されていない。ただし、記事そのものは削除されているので、リンクをクリックするとエラー表示になる。)
 


 [ 付記 ]
 さて。それでは、臨床応用は、まったくの夢なのか? いや、そうでもない。山中教授が臨床応用に向かって研究を進めている、という報道がある。こちらは確実だ。
 《 治療用iPS、来年提供へ 山中教授、がん化克服へ改良 》
 山中伸弥教授は11日、ヒトの治療に使える高い品質のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を、来年早々にも外部の研究機関に提供し始める方針を明らかにした。朝日新聞の単独取材に答えた。
 現在、理化学研究所や慶応大などで臨床研究に向けた準備が進んでいるが、山中さんは「臨床に使えるレベルには達していない細胞で研究されている」と指摘。医療に使える品質のiPS細胞を改めて提供する必要があると述べた。
 がん化を防ぐためにも、細胞に万能性を持たせる「初期化」を完全にすることも欠かせない。このため受賞理由につながった手法から一部変更し、当面は計六つの遺伝子素材を使ってiPS細胞を作製していく方針も示した。
( → 朝日新聞 2012年10月12日

 [ 付記 ]
 ついでに蛇足として、ノーベル賞の受賞基金の使途について。
 《 「賞金、将来の研究に」 山中教授、基金化を検討 》
ノーベル医学生理学賞を受ける京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥さんは、受け取る賞金をひとまずためておく、と明らかにした。これまでの数々の賞についても蓄えているという。もし、研究所のやりくりに行き詰まったときは使えるように、というのが理由だそうだ。
( → 朝日新聞 2012年10月12日
 泣ける話。というか、日本国民としては、情けないというか。……
 


 【 関連サイト 】
 臨床応用についての体制がどうのこうの、という話が、下記にある。読売の報道(前項:紙の新聞)の二番煎じみたいな内容だが。
  → iPS細胞使った治療が米国で実現 「暫定承認」で心不全患者が回復

 【 追記 】
 下記に参考情報がある。興味深い。
  → 2ちゃんねるによる関連情報の調査
posted by 管理人 at 05:57| Comment(3) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京大学先端科学技術研究センターのサイト
   http://www.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/

 には、森口氏の名前が見られる。(三番目が重要)
  http://www.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/member/
  http://www.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/en/research/topindex.htm
  http://www.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/member/moriguchi/moriguchi_01.htm

 このページには、こうある。
「1995年 東京医科歯科大学大学院医学系研究科卒業後、(財)医療経済研究機構 調査部長及び主任研究員として活動し、1999年度7月より現職。現在、ハ-バ-ド大学医学部マサチュ-セッツ総合病院 消化器内科教室リサ-チフェロ-及び東京医科歯科大学医学部非常勤講師を兼務。」

 嘘ばっかりの経歴だが、チェックしなかったのだろうか? 
 嘘つきの詐欺師でも東大の研究部門の客員助教授・特任助教授になれるわけだ。ニセ医師みたい。
 どうなっているんでしょうね。ずさんというより、信じがたい。

 ──

 参考:
 ニセ医師の記事
  http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121011-OYT1T01041.htm
Posted by 管理人 at 2012年10月12日 12:43
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