震災の直後に、「仮設住宅をどんどん作れ」という見解がマスコミをにぎわしたが、私は「仮設住宅はダメだ」と指摘した。
→ 仮設住宅を建設するな
→ 仮設住宅は人を殺す
→ 震災復興の無駄遣い
それから一年半たって、ようやく国も無駄遣いに気づいたようだ。莫大な金を浪費したあとで、「浪費でした」とようやく気づく。会計検査院の調査で。
検査院は岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、長野の7県を対象に、プレハブの仮設住宅のほか、「みなし仮設」となった賃貸住宅が被災者にスムーズに提供されたかを調べた。仮設住宅は 628万円、賃貸は 約183万円だから、大差がある。しかも、それだけではない。
7県で今年3月末までに提供された仮設は約5万3千戸なのに対し、賃貸は約6万1千戸。仮設1戸の建設費用は、建設後の防寒工事なども含めると約628万円だったが、賃貸は1戸あたり2年間で約183万円と安く済んだ。
岩手の場合、震災直後の昨年3月中に賃貸は304戸提供されたが、仮設はゼロ。4月末時点でも仮設226戸に対し賃貸は1262戸が供給され、賃貸の方が素早く対応できていた。
国土交通省と厚労省は、将来の災害で賃貸住宅の活用を進める方針だ。
( → 朝日新聞 2012-10-05 )
賃貸の場合は、大家が地元の人だから、地元に 183万円が入る。しかもこれは純所得だ。まるまるの所得である。
一方、仮設住宅は 628万円だが、そのすべてが地元に入るわけではない。しかも、この金は純所得ではなく、9割以上がコストだから、実際に所得となる分はかなり少しでしかない。また、コストとなった分は、他地域に金が流出する。震災を利用して、多地域の人々の仕事が増えるが、肝心の被災者の支援にはならない。
つまり、仮設住宅はやたらと多額の金がかかる割に、被災地復興の効果が薄い。コストがたっぷりとかかるからだ。その分、無駄も多い。
一方、賃貸ならば、政府の出した金が 100%、大家の懐に入り、その地域にいる大家の懐を経由して、経済効果が出る。しかも、(追加となる)コストがゼロだから、とても効率がいい。無駄はゼロだ。
──
そもそも、原理的に考えよう。次のどちらがいいか?
・ すでにある空き室・空き家を利用する。
・ 空き室・空き家を放置したまま、新規建設する。
どちらがいいかは、自明である。次の比喩で考えるといい。
・ 自動車が一台あるので、それを使う。
・ 自動車が一台あるが、それをガレージに入れっぱなしにして、
もう一台、新たに追加で買う。政府のお金で。
後者は政府の金で無駄遣いをするだけだ。無駄の極致。
それと同じことを、政府は仮設住宅でやったわけだ。
で、その馬鹿らしさを、ようやく今になって、検査院が指摘した。ただし、検査院の指摘を聞いても、どこがまずいのか、政府はいまだに理解できない。反省ゼロ。
[ 付記 ]
こういう国だから、「新潟で原発の事故」という話が起こったあとでも、「想定外でした」と弁解するだけで、根本的な対策を取らなかった。そのせいで「福島で原発の事故」というのをやらかすわけだ。つまり、小事故が起こっても反省できないから、別のところで大事故を起こすわけだ。
懲りない人々。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20121002/237532/?P=1
この記事では、現金給付だと、貧困層も富裕層も区別なしに金が渡ってしまうため、ミーンズテストを行う必要を指摘してます。プレハブ住宅給付なら、富裕層は利用しない。
被災直後の救援活動なら、コスト度外視も仕方がないが、ある程度、状況が落ち着いた時点なら、生活保護を含む通常の福祉制度をそのまま利用してもらえばいいじゃないかと思います。ミーンズテストは入ってるから。
──
別に必要ないですね。2DK ぐらいの狭い家ならば、金持ちは入りませんから。家賃に上限を付けるだけで済む。その方が簡単。
> 現金給付だと、貧困層も富裕層も区別なしに金が渡ってしまう
被害に応じて払うんだから、貧困層・富裕層は関係ない。家がなければ、一律に払えばいい。というか、家を持っていた人ほど、被害が大きい。家を持っていなかった人は、どっちみち賃貸だから、補償する必要はない。対象が富裕層ほど、多く払うべき、となります。(かもね。)
朝日の記事によると、家賃補助は、いちいち調査する手間が莫大で、事務処理が追いつかないそうです。一律に払えば簡単なのに、こまかな状況をいちいち調べているから、無駄な確認作業に莫大な手間が必要となる。そのせいで復興も遅れる。
無駄ばかり。
すべてにわたって政府が支援をすることはできないので、ミーンズテストで一定以下の人にだけ支援をして、福祉の効率を高めようという考え方は正しい。地震被害だけを特別扱いする理由はないです。
ミーンズテスト自体に費用がかかるのは事実だけれど、必要な費用でしょう。見舞金を数十万円くらい配るならともかく、数百万円単位で金を配るなら、ミーンズテストは必要でしょう。
支援を一定以下で区切ると、境界付近で再分配後の所得が逆転することがあるので、累進課税みたいになめらかにつながるようにすべきですが、ミーンズテスト自体がナンセンスってことはない。
それはそうですし、一般の場合はおっしゃるとおりですけど、今回は地震被害に特化した話題です。
本当ならば、地震被害者ばかりを優遇するべきでなく、水俣病の被害者や原爆被害者の方を優遇するべきだ、というのが私の考えです。別項で述べたとおり。
→ http://openblog.meblog.biz/article/11138124.html
だけど今回は復興に限った超特大予算だし、そこでは特に大金持ちがいるわけではなく、逆に、資産家ほど資産額に比例して被害が大きくなっている。
だから、所得に着目するミーンズですとよりは、被害額に着目する方が妥当だ、というのが私の見解。
地震以外と、地震とを、区別するべきなんです。災害の場合には、被害額に応じた補償が妥当であり、所得に応じた補償は不適切です。何を尺度にするかという問題。
災害補償は、純然たる福祉政策とは違います。