2012年10月07日

◆ ナイル流域の開発

 ナイル川の流域で開発が進んでいる。湿地をなくしてしまえ、という案があるが、植林をしないと、砂漠化の危険がある。 ──

 ナイル川の流域で開発が進んでいる。下流では傾斜が緩やかすぎるので、川が氾濫して広範な領域が湿地になる。水深が浅いまま、広い湖または湖沼地帯みたいになる。そのせいで大量の水が蒸発してしまう。これでは水がもったいない。
 そこで、湿地に運河を掘削して、細長い川にしよう、という案がある。しかしそれにともなって降水量が減って砂漠化するのではないか、という危惧もある。
  → ナイルを下れ -- 朝日新聞GLOBE (トップページ)
  → [Part3]巨大湿地は障害か、可能性か / 南スーダン (該当ページ)
   ※ 紙の朝日新聞 2012-10-07 に詳しい。


 「降水量が減って砂漠化するのではないか」という危惧は、当然だ。私もそう思った。(指摘しようかと思ったが、ちゃんと書いてあったので、感心した。)

sad.gif
現地の写真(提供:スーダン大使館


 ただ、この問題は、次の方針で解決できる。
 「湿地に植林して、森林にする」

 
 この場合には、水分の蒸発量を抑えたまま、広範な地域が豊かな生態系を持つようになる。ただの湿地ならば、風が吹くだけで大量の水が奪われるが、森林にすれば、水のほとんどは植物の育成のために使われる。無駄が消えるわけだ。しかも、森林の保水力のおかげで、気候が穏やかになる。
 だから、正解は、こうだ。
 「運河の建設と同時に、湿地帯に植林して森林を作る」


 一方、次の案はダメだ。
 「運河を建設して、水をすべて下流に流してしまう」

 これでは湿地帯が乾燥して砂漠化してしまう。それはまずい。だから、水の一部は湿地帯で利用する必要がある。
 現状では、水量の半分ぐらいが蒸発してしまっている。ならば、蒸発する5割のうち、1割ぐらいを森林の育成のために使い残りの4割ぐらいを下流に流せばいい。そして、工費は、下流の側(エジプト)が負担すればいい。

 なお、次の案は、非効率で無駄が多い。
 「現状のまま。湿地帯にして、水量の半分を蒸発させてしまう」

 これでは無駄が多すぎる。事実が悪いとは言わないが、放置する人の頭が悪い。



 関連する情報を示す。
 この計画中の運河は、ジョングレイ運河という。検索すると、次の情報が見つかる。

 (1)
 Wikipedia から。
 南スーダンのサッド湿地においては、多目的利用のジョン・グレイ運河建設計画があったが、これは政情不安により途中で工事が中止されている。

 (2)
  → ジョングレイ運河のわきに放置されたままの掘削機の残骸 (画像)

 (3)
 解説記事 から。
 川は無限に広がって巨大な沼沢となる。これがナイル川最大の難所と呼ばれる「サッド(アラビア語で障害・閉鎖)」である。パピルスの島は時に数百メートルにもなり、雨期にはサッドは日本全土の面積にまで広がる。ナイル川はサッドで足止めをくっている間、水量の半分以上を蒸発して失っているという。
 20世紀初頭、この地に運河を作って川の流れを速くし、蒸発する水分を確保しようという計画があがった。運河を作ることにより沼は干上がり、広大な農地や牧草地が出現し、湿原にはびこるマラリアなどの風土病も駆逐できる。また運河の横にはスーダン南部の動脈ともなる道路も作られる。この計画は「ジョン・グレイ運河計画」と名付けられ、1978年に動き出した。しかしスーダン南部でのゲリラ活動が活発化してスーダンの南北内戦へと繋がり、全体の3分の2を掘り終えたところで工事は中止に追い込まれた。そして現在も工事再開の見込みはついていない。しかし独自の生態系を持ち、近代文明を拒みつづけてきたサッドが消失しなかったことは、環境保護者から見れば喜ばしいことであり、アフリカ文化保護の観点から見ても悪いことではなかったのかもしれない。
 農地や牧草地を作る計画だったらしい。これはまずい。金にはなるが、保水力が弱いので、周辺の降水量が減ってしまうだろう。運河の両側ではたくさんの金を得られるが、運河から離れたところでは降水量の低下によって生活のすべを失うことになる。
 総合的な損得は、何とも言えないが、下手をすると、アラル海のようなひどい結果になってしまうかもしれない。

 《 注記 》

 アラル海は、かつては世界4位の大きな湖だったが、今ではどんどん縮小して、ほとんど消失しかけている。というのは、アラル海に流れ込む川の流域で、灌漑のために、水を奪っているからだ。綿花栽培のために水を大量使用するために、川がやせ細り、アラル海に流れ込む水がなくなってしまった。
 「20世紀最大の環境破壊」とも言われている。
  → Wikipedia : アラル海

 ──

 ま、農地ならば、まだわかる。たとえば、トウモロコシ畑にするのならば、保水力はいくらかはあるし、特に水を無駄遣いしているとは言えない。(森林の方がいいけれど。)
 一方、牧草地というのは、全然ダメだ。保水力は弱く、大量の水分が蒸発してしまう。また、草がいくらあっても、動物の餌になるだけならば、人間が利用する量としては効率が悪い。
( ※ 植物を直接食べれば効率はいい。一方、植物を動物が食べたあとで、その動物を人間が食べるのでは、効率が悪い。大量の水を無駄にしていることになる。)
 牧草地というのは、人間が水分を補給しなくてもいい場合にのみ、成立する。それは川の流域のそばでやることではない。川からずっと離れて、降水量の少ないサバンナ地域でやるべきことだ。だから、牧草地は、ダメ。
 
 農業研究家だけでなく、環境研究家(生態研究家)の意見を取り入れて、開発計画を練るべきだ。
 それができていない段階では、開発を進めない方が賢明だろう。アラル海の二の舞にならないように。
posted by 管理人 at 11:08| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ