2012年10月06日

◆ 天皇断絶と男系維持

 女性宮家の創設について議論が沸いている。ただ、「男系維持」という方針は、「天皇断絶」につながる。 ──
  
 女性宮家の創設について議論が沸いている。
  → 政府“女性宮家 創設検討すべき” NHKニュース (系図あり)
  → FNNニュース:「女性宮家創設」について (系図あり)

 これに関して、保守派の人々は、「男系維持のために、女性女系天皇につながるような、女性宮家の創設には反対する」と考えている。たとえば、自民党の保守派や、産経新聞。
  → 女系天皇に繋げぬ配慮を (産経)

 ──

 ただし、「男系維持」は「天皇断絶」につながる。そのことを理解しよう。

 現在の皇室の構成員の年齢を見ると、次のようになる。(朝日新聞 2012-10-06 による。敬称略。)
  ・ 高齢 …… 省略
  ・ 中年 …… 皇太子・秋篠宮
  ・ 若年 …… 9名(うち女性8名)


 若年者では、男性は悠仁(6歳)だけだ。女性は8名いるが、昭和天皇直系は、愛子・眞子・佳子の3名。うち、愛子(10歳)はともかく、眞子(20歳)、佳子(17歳)は、結婚年齢が近い。また、直系でないのは、三笠宮系列に女性が5名いるが、いずれも適齢期であり、まもなく嫁ぎそうだ。

 まとめて言おう。
 男系維持という方針を取る場合、候補者は悠仁という一人しかいない。今後、さらに増える見込みもない。となると、万一の場合(事故や病気の場合)には、候補者がいなくなることも考えられる。したがって、「男系維持」を取るなら、その場合には「天皇の断絶」に結びつく。
 これを避けるには、「女性女系天皇」を許容するしかない。しかし、女性8名のうち、愛子以外の7名はもうすぐ結婚して皇籍離脱することになる。そうなると、女性女系天皇の候補者も、愛子だけになる。
 
 ──

 結論。

 女性宮家の創設に反対した場合には、十年後には、次の二人しか候補に残らない。
  悠仁(6歳)
  愛子(10歳)

 たった二人しか候補者がいないとなると、万一の場合には、候補者が一人もいなくなる。その場合には、天皇の断絶になる。
 
 要するに、「女性宮家の創設に反対する」ということは、「万一の場合に備えてのバックアップ体制を用意することを拒否する」ということだ。つまり、「天皇断絶を起こしやすくする」ということだ。
 産経新聞や自民党保守派は、「男系維持」を唱えているつもりで、「天皇断絶(を起こしやすくすること)」を唱えているのだ。
 このことをはっきりと理解しよう。
 


 [ 付記1 ]
 万一の場合に備えてのバックアップ体制を怠るとどうなるか……ということは、先の原発事故ではっきりとしたはずだ。津波のときの非常用電源というバックアップを用意しておかなかった、という、たったそれだけのことのせいで、あれほどにも大規模な原発被害が起こってしまった。
 非常用電源を設置するぐらい、千万円ぐらいのコストで済む。たったそれだけのことを惜しんだから、あれほどにも大規模な被害が起こってしまった。
 万一に備えてのバックアップを無視すると、そういうことが起こりがちなのだ。
( ※ 万一の場合に備えよ、ということを、私は何度も繰り返して主張する。しかしたいていの人はそれを無視する。だから原発事故も起こってしまった。)
 
 [ 付記2 ]
 「男系維持」をどうしても主張するのであれば、天皇がいなくなったあとの事態も考えておくべきだろう。
 現在の日本の政治制度では、天皇が内閣総理大臣を任命する。他にも任命や認証する役職がある。
  → 「天皇が任命する」と「天皇が認証する」
 もし天皇がいなくなると、日本は内閣総理大臣の交替ができなくなる。その場合、内閣総理大臣が辞職したあとでは、違法な状態が続くことになる。最善の場合でも、憲法違反の内閣総理大臣がいるだけだ。最悪の場合には、内閣総理大臣が不在のまま、日本が脳死状態になり、そのあと、戒厳令が布告されて、軍司令官が日本を統治することになる。(この場合は戒厳令が憲法を停止するので、とりあえずは統一性が取れる。ひどいありさまだが。)
 「男系維持」を主張するというのは、こういうひどい状態を意味するのだ。
 
 [ 付記3 ]
 「男系維持のため」という理屈は、全然、理屈になっていない。「女性宮家の創設」と「女性女系天皇」とは、全く別のことだからだ。「女性宮家の創設」をしたからといって、「男系維持」が阻害されるわけでもない。
 日本の伝統を考えると、「女性女系天皇」は、男性がいる限りは、まずありえない。賛成する人もいないだろう。何より、女性である本人が嫌がるだろう。
 ありもしない事態に怯えて、天皇断絶に結びつくことをするのは、愚の骨頂だ。
 
 [ 付記4 ]
 そもそも、男性の子孫がいなくなれば、「男系維持」はしたくてもできない。そのとき、どうしても「男系維持」にこだわれば、天皇断絶に結びつくしかない。
 私としては、「天皇断絶」よりは、「女性女系天皇」でもいいと思う。「女性女系天皇」よりは「男系維持」の方がいいが、「天皇断絶」よりは、「女性女系天皇」の方がいいに決まっている。そもそも、「男系維持」なんて、たいしてメリットはないからだ。
 この件については、下記で詳しく述べた。
  → Y染色体の継承
 


 [ 余談 ]
 本項では敬称を省略しました。これは非礼にしようという意図ではなく、対象が人間ではないからです。
(本人という人間を扱っているのではなく、名簿のリストにある氏名を扱っているだけです。本項では人間としての本人を扱っていません。)




 【 関連サイト 】

  → 皇室の構成図 - 宮内庁
posted by 管理人 at 08:29 | Comment(2) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マスメディアを含め、このテーマでなぜ旧皇族復帰論を含めないのか疑問に思います。
Posted by shino at 2012年10月07日 21:35
旧皇族復帰論が馬鹿げているからです。その理由は、下記。
  → http://openblog.meblog.biz/article/40909.html

 比喩的に言うと、あなたに息子がいなくて娘しかいないとき、あなたの全財産を娘に譲るか、それとも、千年前の先祖が共通する男性(実質的には赤の他人)に譲るか、という問題。自分の娘と、赤の他人の、どちらを愛するか、という問題。
 旧皇族復帰論の人は、たいてい、「娘? 女なんかクズだ」と思っているのでしょう。
Posted by 管理人 at 2012年10月07日 23:33
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