生物の発生の過程では、胚発生における文化を制御する物質としてアクチビンがある。 ──
iPS 細胞はあらゆる臓器に分化増殖できる万能細胞だ、と言われる。とはいえ、iPS 細胞があれば、それがただちにお好みの臓器に変化するわけではない。iPS 細胞から臓器へと至る道は、かなり長い。
では、その長い道は、まったく未解明か? いや、その長い道は、1990年ごろには解明されている。次のように。
「アクチビンという制御物質が、胚発生におけるホルモンを調節して、胚発生における臓器への分化を制御する」
このことは、1988年に浅島誠がアクチビンを分離・同定したことで、研究が大幅に進んで、よく解明された。
具体的には、アクチビンの濃度を調節することで、さまざまな臓器が形成される。
それはどういうことかというと、生物にはもともと遺伝子があるのだが、その遺伝子の発現を行なうホルモンを、アクチビンが制御している、ということだろう。
実際、動物の胚やES細胞を使って、アクチビンを入れることで、さまざまな臓器を形成することに成功している。詳しくは、本人が説明する下記 PDF を読むといい。詳細が記してある。(かなり長い。)
→ 動物の発生の仕組みを探し続けて 40年 [PDF]
この延長で、人間の臓器を作ることも可能だろう。
つまり、iPS 細胞から人間の臓器を作ることは、決して遠い夢物語ではない。すでにマウスの腸や、人間の肝臓を作ることにも成功している。
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iPS 細胞については誰もが知っているだろうし、山中伸弥の名前も広く知られている。しかしその一方、アクチビンや浅島誠については、あまり広く知られていない。だが、この両者は、同じぐらい大きな重要性を持つのだ。
[ 付記1 ]
この重要性ゆえに、浅島誠はノーベル賞の有力候補となっているそうだ。(ググればわかる。)
山中伸弥と浅島誠は、いっしょにノーベル賞をもらう可能性もある。
[ 付記2 ]
実を言うと、iPS 細胞は、学問的な重要性では、ES 細胞と大差はない。ただ、ES 細胞には倫理的な問題があり、iPS 細胞には倫理的な問題がない。だから実用性の点では、iPS 細胞の方が圧倒的に重要だ。
とはいえ、学問的には、ES 細胞でも同様だし、その ES 細胞はもともとアクチビンといっしょに研究されていた。その ES 細胞とアクチビンの研究が、今になって iPS 細胞の上で利用されているわけだ。
【 関連情報 】
読売新聞(2012-09-27 夕刊・科学面)に、浅島誠についての詳しい人物紹介が掲載されている。
研究についての詳しい情報は、上記の PDF に記してある。
2012年09月27日
過去ログ
(1) 恐怖体験とアクチビン
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100323/index.html
(2) 恐怖体験の記憶抑制実験
http://www.gizmodo.jp/2012/09/post_10933.html