2012年09月14日

◆ 混合診療の是非

 医師会は「TPP反対」の名分として「混合診療が解禁されるから」と述べているが、混合診療は悪いものか? 混合診療は是か非か? ──
 
 混合診療の是非というのは、賛否両論があって、なかなか判断しづらいところがある。門外漢の私としては、議論の行方を見守るばかりで、特に論じてこなかった。
 これまでのところでは、次のような見解が有力だ。

 《 反対論 》

 → 混合診療:日本医師会はこう考えています
 → (徳島県)医師会はなぜ混合診療解禁に反対するのか
 《 賛成論 》

 → 池田信夫「医師会はなぜ混合診療をいやがるのか」
 → 混合診療の“原則”禁止を求めます (部分解禁論)
 《 解説 》

 → 混合診療のメリットとデメリット
 → 日本医師会が混合診療解禁に反対する理由

 以上で、いくつかの見解を紹介した。しかし私としては、特にどれかを支持することはしなかった。見守るばかりで、判断保留だった。
 ところで、このたび、高齢者医療や抗ガン剤の有効性について考えるうちに、考えがまとまったので、以下で見解を示す。

 ──

 私の基本認識としては、次のことがある。
 「上記の反対論も賛成論も、いずれも勘違いしている」

 どういう勘違いかというと、次のことだ。

 (1) 医療費総額の減少

 医師会は、混合診療解禁によって、医療費総額が減少することを恐れているらしい。
 混合診療を全面解禁すれば、将来的には保険診療は縮小されると予測される。これが日本医師会が混合診療解禁に反対する一番大きな理由ではないかと私は推測する。
( → 上記サイト
 たぶんその通りだろう。しかし、このような医師会の懸念は間違いだ。なぜか? 日本の医療費総額は、高齢化社会の進展にともなって、どんどん増加していくことが予想されるからだ。

zaimusho1.jpg
  → 出典 (財務省) 

 医療予算は、2011年の34兆円から、2025年の53兆円へと、急増するはずなのだ。
 医師会は、「混合診療が解禁されると、医療費総額が削減される」と思っているようだが、そうではなくて、混合診療が解禁されようがされまいが、医療費総額は大幅に増えるのだ。混合診療によって、「総額の伸びが抑制される」ということはあるかもしれないが、「減ってしまう」ということはない。
 この点で、医師会の恐れは、「オオカミが来る」という嘘を信じているのも同然だ。「福島の放射線が怖い」と信じる放射脳と同レベルである。
 だから、医師会が「医療費総額が減るだろう」と予想しているのだとしたら、放射脳と同様の狂気を帯びていることになる。精神科を受診した方がいいだろう。きっと正しく診断してくれるはずだ。「あなたは不安神経症ですよ」というふうに。(薬剤を処方されるかどうかは知らないが。)
 ともあれ、医師会には、大きな錯誤がある。

 (2) 診療報酬減

 高齢化社会の進展と同時に少子化が進む。つまり、社会保障の費用は増えるが、それを負担する人々は減ってしまう。となると、どうなるか? もちろん、医療予算の総額は増やせなくなる。
 ここで、「混合診療の反対」というような名分によって、「薬剤費の増加の歯止めをかけない」(どんどん薬剤費をかける)ことにしたら、どうなるか? 結果はただ一つ。薬剤費以外の分を削ることだ。
  医療費総額 = 薬剤費 + 薬剤費以外

 ここで、「医療費総額」はあまり増やせないのに、「薬剤費」はどんどん増やす。となると、薬剤費以外を削るしかない。
 では、具体的には、何を削るか? 検査費用を? まさか。削れる部分はただ一つしかない。医師の診療報酬だ。
 したがって、「医療費総額の大幅増加の抑制」という大前提のもとで、「混合診療の禁止」を主張するのであれば、「医師の診療報酬の削減」を取るしかない。
 だから、医師会の方針は、「医師の診療報酬の削減」(かわりに薬剤費の増大を認めること)を意味する。
 もちろん、医師会としては、それには大反対するだろう。しかしながら、医師会の言う「混合診療の廃止」は、論理的には「医師の診療報酬の削減」を結果するのだ。
 そこを理解していないという点で、医師会は大いなる錯誤をしている。
( ※ 医師の診療報酬を守りたければ、むしろ薬剤費の削減に努力するべきなのだが。)

 (3) ドラッグラグ

 「保険の範囲内でドラッグラグをなくす」という主張もある。しかし、これも無理だ。
 なるほど、理想的には、そういうふうに「保険の範囲内でドラッグラグをなくす」ということが好ましい。しかし、「保険の範囲内でドラッグラグをなくす」というのは、「先端医療を保険でまかなう」ということだから、「保険による負担の急増」を招く。つまり、財政破綻だ。冒頭でも述べたように、医療費の総額は急増しつつあり、これを抑制することが大事なのに、逆に増やそうというのでは、方向が逆だ。
 下手をすると、日本人は、働く金の総額を終末期医療に費やすようになり、若い人々がみんな破綻してしまう。そうなったら、国が滅びる。金の卵を産むガチョウを食いつぶすようなものだ。
 金は無尽蔵ではない。下手をすると国家が財政破綻しそうなときに、医療予算を限度なく使おうとするような策は無意味だ。
 「ドラッグラグをなくそう」というのは、「金は無尽蔵だ」「金は天から降ってくる」という錯覚をしていることになる。

 (4) トンデモ医療は?

 むやみやたらと混合診療を認めると、ホメオパシーやらミネラル水やら、有効性が疑わしいインチキ療法にも部分的に保険負担が認められてしまう……という懸念がある。
 しかしこれについては、問題は少ない。次のようにすればいいからだ。
 「混合診療を認める範囲については、許可制にする。許可を得られない療法については、これまで通り、混合診療を認めず、自由診療のみとする」
(部分解禁案)
 だから、トンデモ医療については、特に心配しなくていい。

 ──

 では、以上のことを踏まえて、どういうふうに結論するか? 混合診療については、どういう姿が好ましいか?
 これまでの話を読めば、次の原理が大事だとわかる。
 「混合診療というものを一律に処理しない。二つのものに分ける。
  ・ 高齢者における抗ガン剤の治療
  ・ それ以外の一般的な治療
 この両者を区別した上で、次のように対処する。
 前者については、高額療養費制度の適用からはずす。
 後者については、高額療養費制度を厳守する」

 現状では、高額療養費制度があるので、一定金額以上の負担がない。そのせいで、どんなに高額な薬剤でも、たいして大きな効果が見込めないまま、どんどん乱用される。そのせいで医者不足となり、医療制度は破綻しつつある。実際、医者不足のせいで、救急医療や夜間医療は、すでに崩壊しかけている。
 しかし、上記のように制度を改めれば、ろくに効果のない終末期の医療は病院からは除かれて、ホスピスなどの対応となる。そこでは医者はあまり多くなくて、介護士が多くなる。
 一方、都会では、終末期医療から解放された医者たちが、救急医療や夜間医療に回される。おかげで若い人たちの人命が救われる。また、無駄な予算がかからなくなるので、医師への報酬は現状よりも高額になる。また、医師の勤務時間も、現状よりは減る。(特に勤務医はそうだ。なぜなら勤務医が増えるから。)

 ──

 結局、混合診療は、「70歳以上の高齢者の抗ガン剤」という形では、範囲を拡大して導入するべきだ。また、保険診療の範囲も大幅に削減するべきだ。
 ただし、終末期のガン患者をほったらかしにするのではなく、ホスピスに回す。副作用のある抗ガン剤で薬漬けにするかわりに、すごくおいしい食事をたくさん食べさせて上げる。薬剤費よりも食費に金をかける。また、都会の病院の建物に閉じ込めるかわりに、馬や草原に囲まれた自然の豊かな場所で楽しく過ごすようにする。別荘暮らしみたいに。温泉に浸かって。……それでも費用はかえって安くなる。(高額な抗ガン剤に比べれば。)
 その一方で、都会の救急医療と夜間医療を、大幅に充実させる。特にそのための勤務医を増やす。そのために、勤務医の診療報酬を大幅に上げる。同時に、開業医の診療報酬を減らす。日医のお望み通りに。
 以上を私の提案としたい。

( ※ 何だったら、日医のお望み通りに、開業医では混合診療を禁止して、薬剤費を青天井にして、その分、診療報酬を大幅に引き下げるといい。その一方で、大病院では、終末期医療を大幅に制限して、薬剤費を大幅に引き下げ、その代わり、医師の診療報酬を大幅に引き上げればいい。こうすれば、私の見解と、日医の見解が、両立する。日医は診療報酬が引き下げられても、自業自得だから、「おれたちの主張が守られたぞ」と喜べばいい。……イヤミですけど。  (^^); )



 [ 付記1 ]
 抗ガン剤の有効性の評価については、下記に専門家の解説がある。
  → 抗がん剤の有効性と危険性 (国立がん研究センター)

 文書中では「社会的なコンセンサスを得るべき」というふうな結論が記してあるが、それは責任の丸投げだろう。むしろ、「医学的にはコンセンサスを得られません」とはっきり表明するべきだ。
 そして、その上で、「コンセンサスを得られていない部分については、健保の対象とはせず、超過分は自費払いとする」(つまり混合診療にする)というふうにするべきだろう。

 [ 付記2 ]
 ただし、それだと、「ガン患者を見捨てるのか!」という批判が来そうだ。そこで、それへの対策として、次のようにするといい。
 「超高額な抗ガン剤を保険でまかなえるように、癌保険を整備する。民間または公的な保険を整備する。その保険がほしい人は、保険料を払って、癌保険に加入すればいい」
 これならお望み通りだろう。加入したければ加入すればいい。料金を払って。
( ※ ただし現実には、「保険料は払いたくないが、給付だけは受けたい」という人が大多数だろう。こういう低脳な連中が「金を払わずに給付を受けたい」と主張するせいで、日本の保険制度はムチャクチャになってしまう。そのうち日本全体がご臨終になるかもね。)

 [ 付記3 ]
 参考:癌保険に加入するべきだろうか? 

 癌保険の実例を見ると、70歳男性の場合、10年加入で、こうだ。
 「料金は月1万円で、癌になったときの給付金は 100万円」
 これを見て、「ほう、月1万円か。それなら加入しよう」と思う人もいるだろう。
 だが、10年間に月1万円を払うと、合計の支払額は 120万円プラス利子となる。これじゃ、足が出てしまう。だったら最初から貯金した方がマシかも。
 要するに、癌保険というのは、「癌にならなければ丸損」というだけでなく、「癌になったときでさえ損をする」というふうになりがちだ。得をするには、8年目ぐらいまでに癌になる必要がある。また、癌になっても、払った金より少し多めの金をもらえるだけだ。(交通事故の生命保険みたいな巨額の金をもらえるわけではない。払った金を返してもらえる程度、と思った方がいい。)
 なお、100万円程度じゃ、高額な抗ガン剤はまかなえない。せいぜい健保の範囲をまかなうぐらいだ。高額な抗ガン剤をまかなうとしたら、月5万円ぐらいはかける必要がある。しかし、そんなことをしたら、たいていの高齢者は生活の質が大幅に下がってしまうだろう。
 癌保険に入った方がいいのは、金持ちだけだ。だが、金持ちならば、癌保険に入らなくても、自分の貯金でまかなうこともできる。
 あれこれ考えると、癌保険というのは、保険会社を儲けさせるぐらいの意味しかなさそうだ。公的制度を整える必要もなさそうだ。どうせ加入者はごく限られれている。人々が「癌保険がほしい」というのは、あくまで「料金を払わないで」という前提のもとでだ。料金を払ってまで多額の癌保険に入りたがる人は、少数に限られるだろう。そんなのは民間の保険会社に任せてもいい。
( ※ それでも、癌の公的な任意保険は、ないよりはあった方がいい。ただし、他の問題に比べると、かなり小さな問題だ。)



 [ 余談 ]
 ついでだが、「多すぎる薬局を減らせ」ということもある。この件は、別項で述べた。
  → 薬局が多すぎる
 
 薬局の処方箋料についての参考情報は、下記で得られる。
  → 処方箋の内訳(数字で示す)

 「薬漬け」については、次の情報がある。
  → 医療費に占める薬剤費の比率は31%と、米国の3倍近い。

 医療機器も割高だという指摘もある。CT がやたらと多すぎる、という指摘もある。CT による検査でガンマ線を浴びるせいで、かえって癌が増えてしまう、という説もある。
 ……これらの件は、別途、勝手に調べてほしい。ググればわかる。
posted by 管理人 at 19:43| Comment(2) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に [ 付記1 ][ 付記2 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2012年09月14日 20:56
田原総一朗のブログから引用。
──
がん治療をめぐる問題は、もうひとつある。それは「混合診療」だ。
日本で認められていない抗がん剤を日本国内で使う場合、健康保険は適用されない。 そこまでは仕方ないだろう。 ところが、この認可されていない抗がん剤の治療以外の診療までもが、健康保険の 対象外となってしまうのである。 もし日本で未承認の抗がん剤を試そうとすると、その患者のがん治療で健康保険が まったく適用されなくなる。莫大な治療費になってしまう。
結局、多くの患者は、その治療をあきらめるしかない。
→ http://www.taharasoichiro.com/cms/?p=907
Posted by 管理人 at 2012年10月23日 04:59
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