昨年3月の東日本大震災では、首都圏で約515万人の帰宅困難者が生じた。これを受けて、首都圏の地震対策となる指針が出た。
《 帰宅困難者対策に食料3日分備蓄 首都直下地震で指針 》つまり、三日分の「水と食料を備蓄せよ」というわけだ。「帰宅困難者が出るなら、職場や都心などで宿泊すればいい。そのためには水と食料を用意しておけばいい」というわけだ。
大規模地震で交通機関がマヒすると、駅や道路にあふれてしまうとされる帰宅困難者。国や東京都などでつくる協議会は10日、首都直下地震を想定した対策のガイドライン(指針)をまとめた。「1人あたり9リットルの水、9食分を備蓄」「企業は自治体と協定を結んで一時滞在施設を提供する」などと具体的な対策を求めている。
企業に対しては、帰宅困難者の発生を抑えるため、従業員を社屋内にとどめたり段階的に帰宅を促したりする計画を作っておくべきだと指摘。1人あたりの水や食料の備蓄量を示すとともに、外部の人のためにも1割余分に備えておくよう求めた。
( → 朝日新聞 2012-09-11 )
しかし発想が安直すぎる。
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すでに述べたように、食料ならば、もともとたっぷりとある。ただし、生ものだ。前に別項で述べたので、再掲しよう。
このあと「ガスコンロの備蓄を」と述べた。(上記項目で。)
> 東京都の……副知事は、企業などに食料など3日分の備蓄を
> 求める条例案を来年2月の都議会に提出することを表明。
もっともらしい話だが、考えればわかるように、食糧はもともとある。飲食店やスーパーなどでは、普段から大量の食糧を用意している。
問題は、電気やガスが止まるせいで、調理ができなくなることだ。そのせいで、生ものを食べられないし、放置すれば腐ってしまう。どちらかというと、腐りそうな生ものが大量にあって、腐る心配がある。腐ると、不衛生になり、疫病などの問題が起こる。特に、ゴミ収集車が来ないから、この問題は大きい。
だから、生ゴミを出さないように、生ものをさっさと食べてしまうことが最優先となる。こういうときに「備蓄の乾パンを食おう」なんて考えていると、かえって状況は悪化する。
つまり、東京都のように「備蓄を用意しよう」というのは、状況を改善するよりも、状況を悪化させる。
だが、よく考えると、ガスコンロだけでは足りない。
・ 家庭ならばともかく企業ではガスコンロでは火力不足。
(大量処理ができない。)
・ 冷蔵庫の中の生ものが腐ってしまう。
このような問題を一挙に解決する方法がある。こうだ。
「自家発電を設置する。それによって冷蔵庫を稼働して生ものの腐敗を防ぐ。さらに、電子レンジや湯沸かし器で簡単に調理する」
実は、電子レンジや湯沸かし器ぐらいなら、多くの職場にある。だから、電気さえあれば、あとは何とかなるのだ。
問題は、電気だ。地震のときには、停電になる可能性が高い。その場合、どうするかだが、自家発電があれば何とかなることも多い。(ざっと見て、半分ぐらいの自家発電が生き残る、と見ていいだろう。現実にはもっと多く生き残りそうだ。)
だから、食料の備蓄なんかよりは、自家発電の設備を普及させることの方が、ずっと有効だ。(小さな職場では無理だが、大きなビルならば可能だろう。)
自家発電というと、二つのタイプがある。
・ 非常用の発電機。(屋外設置)
・ 常時稼働の発電機。
どちらも大切だが、私としては、次のようにお勧めしたい。
「短期的には、非常用発電機を普及させる。長期的には、ビルの新築などの際に、次々と自家発電の普及を進める」
特に大切なのは、「燃料電池」や「ガスタービン発電」というタイプだ。これらは、発電すると同時に、お湯を沸かすので、総合的な熱効率がとても高くなる。大量のお湯の使い方に困ることもあるが、あまり大規模でなければ、十分にお湯を使い切ることができるだろう。
また、地震の際には、お湯の使い道があるので、それなりにお湯があると便利だ。
( ※ 衛生上の問題が生じるかもしれないが、地震のときぐらいは特にうるさく言わなくてもいいだろう。どうせお湯ならば殺菌されるんだし。……まさか重金属が大量に溶けているわけでもないだろうし。)
結論。
地震対策としては、水と食料の備蓄をするのもいいが、それよりは、電気のことを考えて、自家発電の設備を設置しておく方がいい。そうすれば、会社は業務をすることもできる。
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ひるがえって、水と食料だけあっても、何にもならない。電気がなければ、会社は機能停止する。また、冷蔵庫が動かなければ、大量の生ものは腐ってしまう。
というわけで、ビジネスの事務所であれ、生ものを使う料理店・肉屋・魚屋であれ、電気のバックアップを用意しておくべきだ。それができないと、腐敗物のせいで、都会は大変なことになりそうだ。
東北地方ならば、土がたくさんあったので、土に埋めることもできただろうが、東京ではそういうこともできそうにない。生ものが腐敗して病原菌が繁殖すると、伝染病で死者がたくさんでるかもしれない。
そういうことを避けるためにも、電気のバックアップが大切だ。東電などの電力会社に任せるだけでなく、それぞれの会社が自力で電力のバックアップを用意しておくべきだ。
( ※ なお、蓄電池では、全然足りない。大量に使うと、1時間もしないうちに、空っぽになる。大規模な電力のためには、やや大きめの発電設備が必要だ。)
【 関連サイト 】
ではどういう発電設備を使えばいいか? そういうことは、Google で調べれば、すぐにわかる。
→ 「業務用 自家発電」でググる (主にディーゼル発電)
→ 「業務用 燃料電池」でググる
→ 「業務用 ガスタービン コジェネ」でググる
→ http://openblog.meblog.biz/article/5976565.html
「地震対策に自家発電を」
それ以上動かせるように、また災害時には「常用」として使用できるような計画をあらかじめしておく必要があると思います。
燃料と燃焼空気と冷却材(水か空気)の供給が続かないと動かし続けられないので。
ガスタービンや燃料電池の場合、燃料供給に難がある場合も考えられます。大量かつ安定的な都市ガス供給が前提となるタイプの発電機では役に立ちません。
また、あらかじめ熱回収の装置を備えておかなければ発電時の熱を利用することはできません。
いつ使うかわからない、ひょっとすると全然使う機会が無いものに対して、建築主は出費(決して少額では済みませんので)を惜しみます。ですから、消火ポンプなどのように、ある程度強制力を持った制度を作ったほうが良いのかもしれません。
まずは公共施設に義務付けるとか。
災害時でも稼働できるように計画されている病院、重要官庁などでは、重油を備蓄したり(単に通常使うよりも大きなタンクを設置しておく)するようです。電気的にも、発電機で賄う回路と使えなくする回路とを分別して計画するのが一般的のようです。