ゲノムの非・遺伝子部分には、重要な役割があるとわかった。
→ ゲノムの非・遺伝子部分
ゲノムのうち、遺伝子の部分は2%で、残りの 98%は非・遺伝子部分だ。そちらの方が圧倒的に多い。そこを無視することはできない。
ここで重要なことがなされている証拠に、ここの機能が損なわれた場合の疾患がある。それは「自己免疫不全」の疾患として知られている病気だ。ぜんそく,紅斑性狼瘡,多発性硬化症など。
一方、統合失調症もまた、このようなタイプの自己免疫疾患である、と見なす仮説が成立する。
→ 統合失調症は自己免疫?
ここでは「遺伝子のエラーの修復を不全にする睡眠不足が発症の因子となる」という仮説を示している。
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さて。Wikipedia の「ゲノム」には次の記述がある。
(ゲノムの)ノンコーディング領域については、その一部が遺伝子発現調節等に関与することが知られていたものの、大部分は意味をもたないものと考えられ、ジャンクDNAとも呼ばれていた。現在では、遺伝子発現調節のほか、RNA遺伝子などの生体機能に必須の情報が、この領域に多く含まれることが明らかにされてきている。ここでは「遺伝子発現調節」という語のほかに、「RNA遺伝子」という語がある。この語をネットで調べると、次のサイトが見つかる。
( → Wikipedia )
→ 国立遺伝学研究所<プレスリリース>
一部抜粋すると、次の文章がある。
なぜこのような「働かないコピー」が多数存在するのか長年の謎であった。……この「働かないコピー」の役割について、それらはDNAにできた傷を修復するための因子の足場となり、リボソームRNA遺伝子及びゲノム全体の安定性の維持に重要な役割を担っていることを解明した。ここで話が結びついた。
・ ゲノムの非遺伝子的な部分
・ リボソームRNA遺伝子の「働かないコピー」
・ DNAにできた傷を修復するため
この三つが関連しているのだ。そして、これらのことがうまく機能しなくなると、何らかの遺伝子的な疾患が発症すると推察される。その一つが(睡眠不足などに帰因する)統合失調症であろう、と推察される。
……以上のように考えると、統合失調症についても、かなり考察が進んだことになる。
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それだけではない。「ゲノム」というものについても、認識を新たにする必要がある。
ゲノムというのは、遺伝子の総体ではない。遺伝子の総体はたったの2%しかない。残りの 98% にも重要なものがある。それらは決してジャンクDNA ではなくて、イントロンや、リボソームRNA遺伝子の「働かないコピー」など、いろいろなものがあるのだ。それらは、「遺伝子発現調節」のほかに、「ゲノムのエラーの修復」もなしているのだ。
考えてみれば、遺伝子が発現するためには、mRNA も必要だ。遺伝子はそれ単独では機能しない。mRNA などといっしょに一連の回路のような過程をたどることで、遺伝子の機能が発揮される。だから「遺伝子だけ見ていればいい」というものではないのだ。「遺伝子がいかに機能するか」という、その過程の全体を見る必要があるのだ。そして、そのためには、ゲノムの非・遺伝子部分に着目する必要があるし、また、mRNA にも着目する必要がある。
そういう全体的な認識がないと、統合失調症のような疾患については正しく理解できない。「遺伝子を見れば統合失調症は解明されるだろう」というような見方は成立しないのだ。
なるほど、アルツハイマー病ならば、「遺伝子を見れば疾患は解明されるだろう」という見方は成立した。しかし、その見方が常に成立するとは限らない。統合失調症はその例外となる。
繰り返すが、遺伝子というものは、ゲノムのうちの2%にすぎない。その2%だけを見て遺伝情報のすべてがわかるというわけではない。ゲノムというものは、これまで信じられていたことよりも、もっと豊かな内容を含むのだ。したがって、
「生命の本質は遺伝子だ」
というような認識は、全面的に変更される必要がある。
【 関連項目 】
→ ゲノムの非・遺伝子部分
→ 統合失調症は自己免疫?