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先に、「ゲノムの非・遺伝子部分」という項目を書いた。そこでは、次のような話をした。
ゲノムのうちの遺伝子の部分は2%であり、残りの98%は役割がわかっていなかったが、遺伝子の ON・OFF の役割を果たしているとわかった。──
その異常によって起こる病気として、自己免疫疾患のいくつかの例がある。
上の話から連想して、私は次のように思った。
「ひょっとしたら、統合失調症もまた、このような自己免疫疾患ではないか? そして、その根本原因は、『ゲノムの非・遺伝子部分の異常』ではないか?」
そのときは思いつきだった。ただ、あとでいろいろと考えると、この仮説はかなり妥当性が高いと思った。理由は下記。
(1) 統合失調症の原因は、長年の研究を経ても、いまだに「原因不明」である。( → Wikipedia )
とすれば、その原因は、今までの科学では認識できなかった部分にありそうだ。その点、「ゲノムの非・遺伝子部分」に根本原因があるという仮説ならば、「原因不明」だった理由が説明できる。
(2) 原因となる遺伝子は見つかっていないし、また、一卵性双生児でさえ一致率は「いくらか高い」程度でしかない。その意味で、遺伝子が理由だとは思えない。その一方で、原因として遺伝的要素があるとわかっている。以上のことは、「遺伝子ではない遺伝的要素」があることを強く示唆する。それは、本項の仮説に合致する。
(3) 比較的若い年代で突発的に発症することがあることから、遺伝子における何らかの問題があることが推察される。これは「遺伝子の ON・OFF に異常が起こった」という本項の仮説に合致する。
(4) 病気には器質性の問題が生じている。つまり、前頭葉が薄く、また、前頭葉と視床との間の神経線維が細い。( → 報道 ) ……このことも、本項の仮説に合致する。
(5) 脳の一部で局在的に異常が起こるのではなく、かなり広い範囲で異常が起こる。この意味で、交通事故の器質的損壊とは異なり、生理的・生化学的な原因による病理的な症状であるとわかる。このことも、本項の仮説に合致する。特に、「自己免疫」と考えると、強く合致する。
(6) 病気には進行性がある。あるとき突発的に起こってそのまま現状維持となるのではなく、症状はどんどん進行する。器質的にも進行するようだ。……こうしたことは、本項の仮説に合致する。特に、「自己免疫」と考えると、強く合致する。
(7) 医学的な典拠を示そう。実は、「統合失調症と自己免疫」というテーマでは、すでに研究がなされていた。(ネットを検索して気づいたが。)たとえば、下記のようなことだ。
統合失調症の患者には、免疫機能に何らかの異常がある場合が多い。( → 出典 )
統合失調症では免疫系の細胞の振る舞いが一般人と違うという意見がある。( → 出典 )
自己免疫疾患と感染症が統合失調症の発症に関係している可能性がある。( → 詳細情報 ,原論文[英語] )
「統合失調症や自己免疫疾患の関連性」という論文 ( → 英語論文の機械翻訳 )
「統合失調症における自己免疫」という論文 ( → 英語論文の機械翻訳 )
※ 機械翻訳の原文の URL はページ冒頭にある。
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以上のすべては、本項の仮説に合致する。それゆえ、本項の仮説は妥当であるという根拠になる。
[ 付記1 ]
原理を簡単に言えば、次のようになる。
「ゲノムの非・遺伝子部分(たぶんイントロン)に異常が起こったせいで、エクソンの一部が勝手に暴走して、勝手に免疫物質を作って、自己免疫作用が起こる。そのせいで、脳の細胞が攻撃を受けて、損壊していく。それは時間の経過とともに、どんどん増えていく」
「これは機能が失われるということではなく、自己免疫のせいで器質的に脳細胞(神経細胞)が損壊されていくということだ。そのせいで、特定部分の脳細胞が失われていく。長い時間がたつと、脳細胞の縮小が明らかになり、外見からもはっきりと観察されるようになる」
「どうして前頭葉だけが問題となるのか? それは、前頭葉の場合だけが、人格の崩壊をもたらして、極端な異常となるからだ。前頭葉以外の場合にも、同様のことは起こるだろうが、それは単に『脳の部分的な機能低下』『痴呆の一種』と見なされるだけで、深刻な症状とはならない。年を取れば物忘れなどがひどい人も増えるが、深刻な症状とはならない。そのせいで、看過されるだけだろう。前頭葉以外の自己免疫疾患がないということにはならない」
「その意味では、アルツハイマー病も、同様の疾患であると見なせるかもしれない。脳の全般的な縮小が見られることからも、その疑いがある。ただ、アルツハイマー病は、遺伝性がはっきりとしていて、遺伝子の異常によるとわかっているので、ゲノムの非・遺伝子部分を理由とする本項の仮説とは合致しない」(アルツハイマー病は、すでに遺伝子による病気だとして、原因は判明している。統合失調症とは事情が異なる。)
[ 付記2 ]
非遺伝子部分(イントロン?)に異常を起こす理由は何か? 統合失調症の原因となる因子は、次のところで見つかる。
→ http://urx.nu/1UCH (機械翻訳)
あまりにも雑多ではあるが、「 DNA に異常を起こしそうな不健康の原因」というふうに理解できなくもない。
それで思うのは、睡眠不足との関連だ。ちょっとした睡眠不足ならば問題ないだろうが、それが慢性的に継続して、脳の機能に問題を起こすほどになると、実際にどこかがおかしくなる。その症状が、統合失調症の症状にそっくりだ。
( ※ 数十年前、アメリカの放送番組で「不眠の実験」をして、数十日間の不眠を続けた人がいるが、彼は脳がおかしくなり、人格の崩壊を起こして、二度と元の人間には戻らなかった。その症状や顔つきが、統合失調症にそっくりだった。)
このことから、睡眠不足と統合失調症の関連が強く疑われるが、ネットを探すと、実例が見つかった。普通の人が睡眠不足のすえに、統合失調症を発症した。
−発病時期と原因−
発病の発端は、会社勤務時代の睡眠不足と不安神経症が起因と思われます。
その後、徐々に仕事等でストレスが溜まり、不眠と睡眠障害により頭痛が生じ、 脳神経がぐちゃぐちゃにかき回されるような状態が生じました。
−発病時の症状−
ストレスによる不眠と睡眠障害による頭痛を薬では抑えられなくなり、徐々に幻聴・幻覚をみるようになり、 遂に発狂して病院に入院することになりました。
( → 統合失調症と私(体験談) )
[ 付記3 ]
上のことから逆算して、次の推論を得ることもできそうだ。
「睡眠の役割は、ただの肉体的な休憩ではない。脳が異常を起こさないように、脳の非遺伝子的な部分のエラーを補修しているのだ。睡眠不足が重なると、この補修ができなくなり、エラーが蓄積する。そのせいで統合失調症のような疾患が発症することもある。
この件については、次項でも考察する。
[ 付記4 ]
統合失調症の原因は、睡眠不足か、自己免疫か? ちょっと混同するかもしれないが、上記の話を素直に読めば、次のことだとわかる。
「統合失調症の直接的な原因は自己免疫だが、その引き金を引くのが睡眠不足だ」
具体的には、こうだ。
「睡眠不足のせいで、エラーの補修ができなくなる。そのせいで、非遺伝子部分のエラーが蓄積して、非遺伝子部分の調節機能が暴走する(勝手に ON 状態になる)。そのせいで、自己免疫物質が生産されて、そのせいで脳に損壊が起こる。その損壊領域が、他の部分ならば、特定の機能の喪失で済む。しかし、前頭前野の部分が損傷すると、特定の機能の喪失では済まず、全人格が崩壊する。これが統合失調症だ」
( ※ 特定機能の喪失の場合には、部分的な「感覚麻痺」や「運動障害」と認識されるだけなので、特に大問題とはならない。また、症状ごとに病名が分散されるので、統一的に認識されることはない。)
[ 付記5 ]
本文の (7) では、統合失調症と自己免疫の関連性を示す専門的な研究をいくつか示した。このことから、この関連性は十分にあると見ていい。それは、私の独自の見解というよりは、すでに医学的に常識となりつつある。
では本項は何を示すか? 「関連性がある」という統計的な事実を示すのではなく、「発症の原理」を理論的に示したことだ。(物理学で言えば、観測事実に対して、法則となる原理を示したことだ。)……それが本稿の意義である。
[ 付記6 ]
本項の仮説は、妥当性は高いが、決定的に証明されたというわけではない。決定的に証明するには、具体的な調査が必要となる。本項はあくまで仮説の段階だ。
ただ、研究の方向性を決めるメドになる。また、私の予想では、最終的には「正しい」と証明されると思える。
【 関連項目 】
→ ゲノムの非・遺伝子部分
→ ゲノムの非・遺伝子部分 2
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