2012年09月06日

◆ 電力の危機管理 2

 関電はこの夏の電力不足を乗りきった。ならば「原発なしでも大丈夫だった」と言えるか? 実は危機一髪だったことが判明した。 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2012-09-08 です。)

 
 この夏、関西は原発なしでも乗り切れた、ということが判明した。「だったら原発を再稼働する必要はなかった」という見解がある。特に、赤旗と朝日がそうだ。……という話を、先に述べた。
  → 電力の危機管理
 そこでも述べたように、それは「運良く危機を逃れた」というだけのことにすぎない。あくまで運任せだったのだ。

 ──

 一方、朝日新聞が 2012-09-08 朝刊の記事(ネットにはない)で、「やっぱり原発は不要だった」というキャンペーンをしている。特集記事で大々的に煽動している。
 しかし、それは簡単にわかるように、論拠が破綻している。理由は下記。
 「関電では最大需要日でも、3%程度の余裕があったが、それは、外部(九電・中国電など)からの融通電力があったからだ。しかし、融通電力をアテにはできない。なぜなら、気温が高くなれば、融通電力はゼロになるからだ」

 
 朝日新聞はたぶん次のように思っているのだろう。
 「融通電力は常にアテにできる。で、気温が高くなっても、融通電力はあるから、気温が上昇して、消費電力が3%ぐらい増えても、それでもまだ大丈夫」
 これは勘違いだ。気温が上昇して、消費電力が1%か2%ぐらい増えたとき、需要がそれだけ増えるだけでなく、供給は大幅に減ってしまう。たぶんゼロになる。なぜなら、外部(九電・中国電など)では、自社の余裕がなくなり、外部に融通する余裕がなくなるからだ。
 こういう基本認識を欠いたまま、「この夏は原発なしでも全然大丈夫だった。余裕はあった」なんていう嘘を書いているのが、朝日だ。正直に書けば、次のようになるはずだ。
 「運よく外部では電力不足にならなかったから、3%の余裕があった。しかし、外部からの融通を含めても3%しか余裕がなかったということは、きわめて厳しい状況にあったことになる。特に、自社だけではまかなえなくなった、ということは重要だ」

 つまり、朝日が書くべきは、正反対のことだ。

 ──

 実を言うと、さらに危機的な状況にあったことが判明した。今夏において停電が起こらなかったのは、非常にラッキーな幸運のおかげだったのだ。もしこの特別な幸運がなければ、計画停電は起こっていただろう。その理由は、次のことだ。
 「需給面で好条件が重なった」。九電の瓜生道明社長は記者会見で、7月2日から9月7日の平日(8月13から15日を除く)までの節電要請期間をこう振り返った。
 期間中、電力の供給量に占める需要量を示す電力使用率が「やや厳しい」とされる92%を上回ったのは2日。8月の最高気温が10年に比べて低かった上、雨が多く水力発電所の供給力が向上したことが奏功した。
 ただ、ほかの電力会社から供給を受けた電力を除くと、電力需給の厳しさが浮き彫りになる。
 顕著な例が8月20日だ。苅田発電所新2号機(福岡県苅田町、出力37.5万キロワット)の出力が一時19万キロワットに低下、新小倉5号機(北九州市、同60万キロワット)も停止した。
 急きょ九電は、中部電力や中国電力などからの融通を当初予定の45万キロワットから90万キロワットに倍増。さらに、電力会社や新電力(特定規模電気事業者)が参加する日本卸電力取引所(東京・港)から55万キロワットを緊急調達。この余波で、供給量が限られる卸電力の取引価格は2〜3倍に急騰した。
 この日の使用率は87%。しかし、他電力からの融通や電力市場からの調達を除けば96%となる。夏は最高気温が1度上がると電力使用量が40万キロワット上昇する。気温次第では計画停電一歩手前となっていた恐れもある。
 出力が突如低下した苅田新2号機は本来、今年3月末に廃止予定だったが、夏場の電力不足を補うため、5月に急きょ再稼働させた。ほかにも、川内発電所1号機(鹿児島県薩摩川内市、出力50万キロワット)など5基では、定期検査を先送りして、供給力を絞り出した。
 火力の稼働率は通常、40%前後だが、今年7月は70%にまで上昇。過酷な運用や設備の老朽化などが影響して、節電期間中に発生した発電所の緊急停止は10回を数えた。
( → 日経 2012-09-08
 問題は、8月20日だ。この日、九電は他の電力に融通する余裕がなかった。また、他の電力も余裕がなかった。(その証拠に、卸電力の取引価格は2〜3倍に急騰した。)つまり、この日は、関西電力は、融通を受けたくても、融通を受けることができなかった。
 では、この日に関西電力はどうなったか? 電力不足で計画停電が起こったか? 起こっても当然だった。しかし実際には、起こらなかった。なぜか? おそらく、需要があまり多くなかったからだろう。
 そう思って、気象庁のサイトを見る。この日の関西の天候はどうだったか? 
  → 気象: 大阪 2012年8月
 8月20日の気象は? 
  ・ 最高気温は 34.8度であり、普通である。(36度以上の日は5日間もある。)
  ・ 湿度は前後の日に比べて最低の日である。

 暑さは気温と湿度で決まる。そして、この日は、気温は普通だったが、湿度はとても低かった。そのおかげで、蒸し暑さを感じないで済み、比較的しのぎやすかった。だから電力需要はあまり多くならなかった。……そういう幸運があったのだ! ラッキー! 
 もしその幸運がなかったら? たとえば、気温が 36度以上になるとか、湿度が極めて高くなるとか。あるいは、湿度が単に前後の日と同じぐらいであるとか。……そうなったら、電力需要は増え、かつ、電力供給は減る。とすると、計画停電ではなく、「予告なしの突発的停電」が起こっただろう。(予告したくても、九電の発電所の故障までは予想できないから、予告できない。)

 結論。

 詳しく調べればわかるように、関電で停電が起こらなかったのは、幸運がいくつも重なったラッキーさに頼っている。もし、気温が上がったり、湿度が上がったり、他の電力会社の故障が増えたりすれば、たちまちにして、「突発的停電」が起こったはずだ。そして、それは、少しも不思議ではないのだ。
 つまり、「津波が寄せれば福島の原発は暴走する」というのと同様に、「いざとなれば危機的事件が起こる」状況にあったのだ。そして、そうならなかったのは、単に「運が良かったから」にすぎない。(福島でも何十年も事故が起こらなかった幸運のように。)
 しかし、「幸運のおかげで事故が起こらなかった」というのを見て、「事故の対策はまったく不要だった」と思うのは、とんでもない勘違いだ。あくまで「運のおかげで、たまたま危機的事件が起こらなかった」と胸をなで下ろすだけにした方がいい。
 その意味で、朝日の記事は、あまりにも能天気すぎる。非科学の極み。
( ※ 前回と同じ結論。)



 【 補説 】

 以上では危険性についてのみ言及したが、コストの問題もある。
 一般に、原発を停止しても、原発のコストはほとんど変わらない。燃料としてのウランの購入費がいくらか減るが、それはごくわずかにすぎない。また、ウランはすでに購入済みだから、今すぐコストが減るわけでもない。つまり、原発を停止しても、ちっともコストダウンにならないのだ。
 一方、原発を停止すれば、その分、火力発電のコストがかかる。原発の占める割合は、3〜4割であるが、関電は高めの4割ぐらいだったようだ。とすると、その分を火力に置き換えることにより、コストは4割ぐらいアップすることになる。
 さらに加えて、石油燃料価格のアップも1〜2割ぐらいはある。全部合わせて、5〜6割のアップとなる。さらには、太陽光発電の補助金の加算分もある。6割程度のアップは不可避となる。……しかし、そんなに高額の電気料金値上げに、人々は耐えられるのか? ただでさえデフレで苦しいし、おまけに消費税アップもある。震災復興のための特別な負担もある。あれやこれやと生活が苦しいときに、電気代の6割アップを甘受できるのか? 

 朝日新聞はこう答えるだろう。
 「はーい。大丈夫です。原発がなくても、この夏は電気料金値上げがなしで済みました。だからこれからも、原発なしで、電気料金値上げは無しで済みます。そうでしょ? だから当社のアンケートでも、原発なしにするかどうかと質問したとき、『原発なしで電気料金値上げ』というふうには書かなかったんです。『原発なしで料金据え置き』が前提ですからね。そういうわけさ。大丈夫」
 しかし、朝日が「大丈夫」と言っても、あらかじめ「こんなこともあろうかと」と対策しておいたわけじゃない。何も考えずに、勝手に「大丈夫」と思っているだけだ。脳天気。

 朝日は「この夏は電気料金値上げがなしで済みました。だからこれからも、原発なしで、電気料金値上げはなしで済みます」と思っている。しかし実際には、この夏は、電力会社は大赤字だった。
  → 電力不足対応で1250億円 今夏、火力再稼働費用など
 では、その赤字分は、どうしたか? 借金でとりあえずまかなっていただけだ。だから当面は値上げをしないで済んだだけだ。
 この話は、どこかに似ていますね? どこに? そうです。ギリシャです。
 「実際には大赤字なのに、赤字を隠蔽した。大赤字で借金をしたまま、大丈夫だと思って、花見酒経済で、お気楽に贅沢をしていた。ところがあるとき、ゴマ化しがバレて、赤字が発覚した。すると、国家が破綻した」

 要するに、朝日が狙っているのは、「日本をギリシャにすること」である。そのために、赤字を隠蔽して、「赤字はありません。大丈夫です」というふうに虚偽を広める。その虚偽を広めようとして、人々を洗脳するキャンペーンを広げる。
 朝日の狙っているのは、日本を破滅させることなのだ。

 そこで私が警鐘を鳴らす。こうだ。
 「朝日の洗脳キャンペーンにだまされるな! 原発を止めている間に、日本には赤字がどんどんたまっていく。この赤字を止めるには、電気料金を大幅アップするしかない。関電ならば、6割アップするしかない。そのことを正直に告げるべきだ。なのに、朝日はそのことを告げず、『原発なしでも大丈夫』という嘘を広めようとしている。朝日は日本をギリシャ化しようとしている。朝日の言葉に従えば、日本は破滅する。だまされるな!」
posted by 管理人 at 09:25| Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まったくおっしゃる通りです。

電力会社間の電力の融通は、電力会社管内の予備供給率が3%を切った場合、他の電力会社に電力を供給しなくてもいいと言う指針があるとのことです。
Posted by TM at 2012年09月08日 13:45
次の記事もある。
 ──
  「火力発電所は(供給力確保のため)定期検査を何度も延期し酷使しているが、大飯3、4号機の再稼働で(供給力に余裕が生まれ)週末に修繕することができた。再稼働は今夏の需給安定に必要不可欠だった」

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO45881110Y2A900C1LDA000/
Posted by 管理人 at 2012年09月08日 15:46
原発停止分を賄う為の火力発電の燃料代を原油産出国へ上納するのではなく、その一部でも代替エネルギー開発に廻すべきでしょう。
微々たる額と言われそうですが、技術開発の進展、雇用確保に貢献できるでしょうね。
シリコン系太陽電池の普及に使うとアホですが。
Posted by 京都の人 at 2012年09月08日 21:26
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