2012年08月23日

◆ ネアンデルタール人はどこで誕生したか?

 ネアンデルタール人はどこで誕生したか? 欧州でだろうか? アフリカでだろうか? 常識的には「欧州で」だが、「アフリカで」と私は考える。その理由は遺伝子だ。 ──
 
 ネアンデルタール人が現生人類と分岐したのは、およそ 50万年前だ。
 では、彼らはどこで誕生したか? 欧州でだろうか? アフリカでだろうか?
 常識的には「欧州で」となる。なぜなら、化石は欧州ばかりで見つかっており、アフリカでは見つからないからだ。

neanmap.jpg
出典:Wikipedia

 次の説明もある。
 ネアンデルタール人の化石は、現時点で西アジア〜ヨーロッパで数多く見つかっていますが、アフリカでは見つかっていません。彼らは埋葬の習慣があった為、比較的見つかりやすい化石の一つ。にも関わらずアフリカで見つかっていないため、ネアンデルタール人はアフリカにはいなかったものとされています。
 ネアンデルタール人の祖先はホモ・ハイデルベルゲンシスといわれています。ハイデルベルゲンシスの化石はアフリカ、ヨーロッパ両方で見つかっていますが、こちらもどちらで発生したのかはまだ決着がついていません。
 アフリカかヨーロッパで生まれたハイデルベルゲンシスのうち、ヨーロッパにいたハイデルベルゲンシスがその後ネアンデルタール人になり、アフリカにいたハイデルベルゲンシスが我々の直接の祖先であるホモ・サピエンスに進化した様です。
( → 知恵袋
 しかしながら、「化石が見つかっていないから存在しなかった」という主張は、論拠として弱い。実際、近年ではさまざまな新しい化石が発見されることで、さまざまな新しい事実が判明している。「化石が見つからない」ということは「存在しなかった」ということを意味しない。単に「大量には存在しなかった」ということを意味するだけだ。あまり多くなければ存在していた可能性は十分にある。特に、時代が古ければ、なおさらだ。
 ちなみに、ホモ・サピエンスやネアンデルタール人の化石は、20万年以上前の地層からは見つかっていない。だからといって「20〜50万年前にはホモ・サピエンスやネアンデルタール人は存在しなかった」と結論することはできない。
 そもそも、ネアンデルタール人の化石が見つかるといっても、ここ 10万年ぐらいの化石ばかりだ。「 30万年前の化石が欧州だけで見つかる」というのならともかく、30万年前の化石が見つかっていないのだから、30万年前にネアンデルタール人がアフリカにいなかったと結論することはできない。10万年前の化石の有無で、30万年前の事実を結論できない。
 だから、上記の「欧州で誕生」という推論は、推論としてはあまりにも論拠不足なのだ。論理的に成立しないほど論拠不足。あまりにもあやふやな推論。ほとんどヤマカンに近い。

 ──

 そこでこのあと、私が論理的に考えよう。
 化石がなければ、遺伝子で考えるしかない。では、遺伝子からは、何がわかるか? 冒頭にも述べたとおり、次のことだ。
 「ネアンデルタール人が現生人類と分岐したのは、およそ 50万年前だ」
 このことから、次のことが推定される。

 「現生人類に最も近縁の種は、ネアンデルタール人であり、ホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)ではない
 …… (*
 これは、化石的には明らかだろう。
 
  → ハイデルベルク人の画像一覧
  → 下の写真の出典

heider.jpg
ハイデルベルク人の一種であるホモ・
ローデシエンシスの化石( replica )

 
 上の写真を見ればわかるが、あまりにも原始的であり、ほとんど猿のようですらある。ホモ・サピエンスからは、あまりにも遠い。ここから一挙にホモ・サピエンスが誕生したとは、とても思えない。
 当然だが、遺伝子的にも、違いの大きさは、調査しだいで明らかになるだろう。(ミトコンドリアDNAならば調査できそうだ。)
 
 一方、次のことが成立する。
 「仮に、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の共通祖先がホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)だとすれば、ホモ・サピエンスに最も近縁の種は、ホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)であって、ネアンデルタール人ではない」 …… (**

 この (*) と (**) は、たがいに矛盾する!
 つまり、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が、ともに共通祖先であるホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)から分岐したのだとすれば、ホモ・サピエンスに最も近縁の種は、ホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)であって、ネアンデルタール人ではないのだ。このことは、(*)と矛盾する。

bunki.gif

    共通祖先とネアンデルタール人は、近い。
    共通祖先とホモ・サピエンスは、近い。
    ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、遠い。
    (共通祖先を経由する分、2倍の距離。)

 
 とすれば、論理的には、結論は次のことでしかない。
 「ホモ・サピエンスに最も近縁の種がネアンデルタール人であるからには、ホモ・サピエンスはホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)から分岐したのではなく、ネアンデルタール人の祖先から分岐した」
 つまり、図示すれば、こうなる。


     原ネアンデルタール人 ━┳━ ネアンデルタール人
                 ┗━ ホモ・サピエンス


 もう少し詳しく書けば、ホモ・エレクトスを加えて、次のようになる。


 ━┳━ ホモ・エレクトス(ハイデルベルク人)
  ┗━ 原ネアンデルタール人 ━┳━ ネアンデルタール人
                 ┗━ ホモ・サピエンス


 この図ならば、次の三つが矛盾なく成立する。
 (i) ホモ・サピエンスに最も近縁の種は、ネアンデルタール人である。(ホモ・エレクトスではない。)
 (ii)ホモ・サピエンスと後期のネアンデルタール人は、共通祖先(原ネアンデルタール人)を持つ。
 (iii)ホモ・サピエンスは、後期のネアンデルタール人から進化したのではない。

 ──

 以上が私の説だ。
 さて。この説に従うと、次のことが結論される。
 「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、共通祖先である原ネアンデルタール人から分岐した。とすれば、その時点では、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは、同じところに棲息していた」


 これは重要なことだ。
 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは、分岐した時点では、同じところに棲息していたのである。それがアフリカであれ、ヨーロッパであれ、とにかく、同じところにいたのだ。
 とすれば、次のことは成立しない
 「ホモ・サピエンスはアフリカで誕生したが、ネアンデルタール人は欧州で誕生した」

 これは論理的にありえないのだ。
 ホモ・サピエンスが原ネアンデルタール人から分岐した場所がアフリカであるならば、そのときは「原ネアンデルタール人 → ネアンデルタール人」という系列はアフリカにいたことになる。この時点でネアンデルタール人が「欧州にはいたがアフリカにはいなかった」ということは、論理的にありえないのだ。
 
 だから、ホモ・サピエンスが誕生した時点(約 50万年前)では、ネアンデルタール人はアフリカにいたことになる。たとえ化石が存在しないとしても、そのときホモ・サピエンスがアフリカにいたからには、ネアンデルタール人もまたアフリカにいたはずなのだ。論理的にそうなる。

 ただし、反論として、次のことは論理的に成立する。
 「両者が同じ場所にいたのだとすれば、そこはアフリカでなくて欧州でも良かった。ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、どちらも欧州で誕生したのだ」 …… (
 これは論理的には成立する。しかし、化石的には、まずありえない。さまざまな猿人の化石はアフリカで見つかっているし、ホモエレクトスの化石もアフリカで見つかっている。今日では、「ホモエレクトスはアフリカで誕生して、ユーラシア大陸に拡散した」というのが定説だ。
  → 図と解説
 ( ※ このページは、私と同じようなことを扱っているな。)
 だから、「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、どちらも欧州で誕生した」という説()は、論理的には成立しても、化石的には成立しない。理論的には成立できても、事実としては成立できない。(ただし [ 付記2 ] を参照。)

 というわけで、二者択一の形で、次のことが結論される。
 「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、どちらもアフリカで誕生した」

 これが結論だ。つまり、ネアンデルタール人の誕生の地は、アフリカである。
 こうして、最初の問題に、回答を得られた。

 ──

 【 オマケ 】

  アフリカだとしても、アフリカのどこか? 
  たぶん、エチオピアである。(そこ以外には、生存可能性のある土地はろくにない。 → 前出 :人類の進化(総集編) 2



 [ 付記1 ]
 本項の結論を読んで、「そんなこと当り前だろ」と思う人もいるだろう。
 だが、常識では「ネアンデルタール人は欧州で誕生した」というふうになっている。つまり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスについての「多地域進化説」である。
 これに対して、本項は「どちらもアフリカだ」と唱えているので、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスについての「アフリカ単一起源説」を唱えているわけだ。(論理的にそれしかありえないのだから。)

 [ 付記2 ]
 「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、どちらも欧州で誕生した」という説()は、論理的には成立しても、化石的には成立しない。……と述べた。
 だが、よく考えると、成立する可能性もある。それは、「ハイデルベルク人の化石が欧州でも見つかった」ということに由来する。ハイデルベルク人の化石が欧州で見つかったのであれば、「ハイデルベルク人 → ネアンデルタール人」という進化が、欧州で起こった、という可能性払う。
 ただ、ハイデルベルク人の化石は、欧州のほかに南アフリカでもたくさん見つかっている。
  → 図と解説
 この南北の二つの地域の中間にあるのは、アフリカ中央部だ。とすれば、やはり、エチオピアが誕生の地だと見なしていいだろう。(エチオピアから大地溝帯をたどれば、南北に拡散することができる。それ以外の土地からでは、南北に拡散することが困難だ。)

( ※ 南アフリカや東アフリカで見つかったホモ・ローデシエンシスを、ハイデルベルク人とは別の種と見なす見方も成立しそうだが、まずありえない。そっくりの種が別々の土地で独立的に発生するということは確率的にありえない。)

 

 【 関連サイト 】

 この件について、フランス語版 Wikipedia に、下記の図がある。

rhodesi.png

 この図は、「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは無関係に独立的に誕生した」という発想を取る。「ホモ・サピエンスの近縁種は、ネアンデルタール人ではなく、ホモ・エレクトスである」という発想。
 本項は、これを否定している。
 


 【 関連項目 】
 
  → 人類の進化(総集編) 1
  → 人類の進化(総集編) 2
posted by 管理人 at 21:32| Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
次の記事がある。(転載)
 ──
 野心的な研究が進んでいる。ネアンデルタール人のゲノム、つまり30億に及ぶ塩基対の配列をすべて解読しようという試みで、今年11月に完了する予定だ。
 化石骨に残されたDNAの痕跡は、かすかなものだ。しかも、ネアンデルタール人と現代人のDNAはとてもよく似ている。
http://nationalgeographic.jp/nng/magazine/0810/feature02/_04.shtml
 ──
 これは 2008年の記事だが、いまだに全部解明はできていないようだ。
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%9C

 かわりに、次の記事がある。
  → http://globe.asahi.com/feature/110501/side/01_03.html
  → http://globe.asahi.com/feature/110501/02_2.html
Posted by 管理人 at 2012年08月26日 21:22
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