古モンゴロイド(南方系)は、一度目の出アフリカのあと、インドから東南アジアへと、海岸伝いに移動していった。これは当然のことだ。海岸伝いに行く方が簡単だし、安全だからだ。特に、魚を獲りながら移動できるので、食物の問題がなかった。また、海岸沿いには必ず川があるので、飲み水の問題もなかった。
一方、古モンゴロイド(北方系)は、どういう経路をたどったか? これまでの考えでは、「カスピ海の東側」というふうに述べて、それまでの経路は問題としなかったが、ここでもう少し考えてみよう。
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経路としては、次の三つが考えられる。
(1) 現エジプト → スエズ地峡 → 現イラク領
(2) 紅海 → スエズ地峡 → 現イラク領
(3) アラビア半島南岸 → オマーン湾 → 現イラン領
(1) は、すでにコーカソイドが住んでいる領域を通過するので、かなり困難だ。ありえないと思う。
(2) は、スエズ地峡までは達することができるが、スエズ地峡の領域は、すでにコーカソイドが住んでいるので、ここを通過するのはかなり困難だ。また、ここを通過したとしても、現イラク領と現イラン領の国境には山岳地帯があるので、超えるのはあまり容易ではないと思える。
(3) は、簡単だ。オマーン湾までは船で簡単に行けるし、そのあとは上陸して、現イラン領を進んで、トルクメニスタンやウズベキスタンを経由して、中央アジアに出ればいい。
以上の点から、(3) の経路が最も妥当だと思える。

Google 地図
さらに言うと、次の重要な点がある。
「オマーン湾よりもさらに東には、西インドがある。ここは南方系の古モンゴロイドであるドラビダ人が、すでに一大領域を形成していた。そこを海岸伝いに東進していくことは、困難だ。ゆえに、ドラビダ人の領域に入る前に、方向を転じる必要がある。その位置が、オマーン湾だ」
つまり、ドラビダ人が一大領域を形成したあとでは、遅れて出アフリカをした人々は、オマーン湾から北上するしかないのである。
あるいは、こうも言える。
「アフリカの角から出アフリカをした人々ではなく、もともと南方にいた(南方系の)古モンゴロイドの一部が、オマーン湾から北上して、北方系の古モンゴロイドとなった」
この可能性も、十分にある。この場合には、(前項にある)系統の図は、次のように書き直される。
↓ デニソワ人との共通遺伝子が消失
北東部人 ━┳┳━┳━ 北東部人
┃┃ ┗━ 欧州コーカソイド
┃┣━┳━ 古モンゴロイド(北方系)
┃┃ ┗━ 新モンゴロイド
┃┗━━━ 古モンゴロイド(南方系)
┗━━━━ オーストラロイド
この可能性も、十分成立する。もしかしたら、こっちの方が正解かもしれない。この場合、二度目の出アフリカをなしたのは、コーカソイドだけのようだ。(彼らは後で、アラビア人や欧州人となる。)
[ 付記 ]
似てはいるが、これは、従来の説とは少し違う。従来の説は、
「南方系の古モンゴロイドが北上して、寒地適応したら、新モンゴロイドになった」
というもの。しかしこれは、遺伝子(ハプログループ)の研究から否定されている。
北方系の古モンゴロイドは、南方系の古モンゴロイドから発展したのではなく、かなり早期に南方系の古モンゴロイド分岐しているのである。
つまり、ドラビダ人の一部が北上したのではなく、ドラビダ人とぶつかる前に、西アジアの手前で北上したのだ。
少なくとも経路については、これで判明したと言えるだろう。
ただ、その出自が、オマーン湾の東にいた南方系の古モンゴロイドなのか、オマーン湾の西にいた人々(アフリカの角から新たに出アフリカした人々)なのかは、はっきりとしない。両者の混血だということもあり得る。(どっちみち古モンゴロイド系の人々だ。)
【 追記 】
以上で述べたのは、出アフリカの直後のことだった。
一方、シベリアを渡ったあとのことについては、次の新情報がある。
→ http://urx.nu/20to (英文)
→ http://urx.nu/20tn (機械翻訳)
趣旨は:
「アメリカ先住民には、三つの波があった。第一波は、1万5000年前のもので、その一部は南アメリカ南端にまで達した。第二波は、アラスカからグリーンランドに達した。第三波は、北アメリカ中部に達した」(図あり)
以上の話だが、詳しくは、原典に当たってほしい。
なお、私の説(前出項目)とは、特に矛盾しない。(私の説では第一波は2万年前というふうになっているが、このくらいの誤差は許容範囲だろう。)
【 関連項目 】
→ 人類の移動 (まとめ)

人種とは見た目の違いのことじゃありません。もっと遺伝子的な違いがあります。たいした違いではないし、境界もはっきりしないのですが、人類の移動経路を知るときには役立つ概念です。
なお、人種と皮膚の色は、あまり関係ありません。いくらかは関係するという程度。
→ http://livedoor.blogimg.jp/copipe_hozondojo/imgs/8/f/8f018e1e.jpg