2012年08月09日

◆ デニソワ人との混血はなかった

 デニソワ人との混血はなかった、ということの証拠が出た。新たな遺伝子解析の結果。 ──
    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2012-09-03 です。)


 デニソワ人の遺伝子の詳細な解析が出た。これを見ると、「デニソワ人との混血があった」という説は完全に破綻した。そして、「デニソワ人との混血はなかった」という説が裏付けられた。

 以上は結論である。以下では詳細を示す。

 ──

 まず、ニュースの概要は、次の通りだ。
 ロシア南部アルタイ山脈のデニソワ洞窟で見つかり、5万〜3万年前と推定された「デニソワ人」の小指の骨について、ドイツ・マックスプランク研究所などの国際研究チームが改めて細胞核DNAを抽出し、高い精度で解読し直した。
( → 時事通信 2012-08-31
 さらに詳しい記事は、次の翻訳がある。(一部抜粋)
 またデニソワ人やネアンデルタール人と現生人類のゲノムを比べることで、これまでの研究で示されてきた、現生人類は両者と共通の遺伝子を持ってい るという結果を再確認することとなった。例えば、東南アジアの人々はデニソワ人と共有する遺伝子を持ち、東アジアや南アメリカの人々はヨーロッパの人々よ りも多くのネアンデルタール人と共有する遺伝子を持つ。
( → 科学ニュースの森
 これの元記事では、次のようにある。
 Their findings confirm a previous study according to which modern populations from the islands of southeastern Asia share genes with the Denisovans. In addition, the genomes of people from East Asia, and South America include slightly more genes from Neandertals than those of people in Europe: “The excess archaic material in East Asia is more closely related to Neandertals than to Denisovans, so we estimate that the proportion of Neandertal ancestry in Europe is lower than in eastern Asia,” the Leipzig researchers report.
 最後の “ ” 内の部分は、翻訳されていない。ただ、この部分は事実ではなくて、研究者の個人的な推測だから、無視してもいい。(実はただの間違いなので、無視した方がいい。)
 肝心のことは、次の事実だ。
  1.  デニソワ人やネアンデルタール人は、現生人類との共通遺伝子を持つ。その共通遺伝子の割合は、デニソワ人もネアンデルタール人も、どちらも同程度である。ただし、若干の差もある。
  2.  その差は、次のことを示す。
    1.  東南アジアの人々はデニソワ人と共有する遺伝子を多く持つ。
    2.  東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く持つ。
 これは非常に重要な事実だ。ここから、以下のことが結論される。

 ──

 (1) デニソワ人とネアンデルタール人の共通性

 デニソワ人やネアンデルタール人は、現生人類との共通遺伝子を持つ。しかも、その差はわずかでしかない。これは何を意味するか? 

 混血説に従うならば、次のことを意味するはずだ。
 「デニソワ人やネアンデルタール人は、南北アメリカやオーストラリアを含む地球全域に展開しており、各地でほぼ均等に現生人類と混血した」

 しかし、これはありえない。デニソワ人はアジアの一部分に少数がいただけだし、ネアンデルタール人は欧州と西アジアにいただけだからだ。地球全域にデニソワ人やネアンデルタール人がいた、というのは事実に反する。

 では、別の説のように、次のことが成立するのか? 
 「非アフリカ系の人々が、出アフリカした直後に西アジアで混血して、それが全世界に展開した」

 しかし、これも駄目だ。なぜなら、つぎのことがあるからだ。
 「オーストラロイドは西アジアを経由せずに東アジアに到達した」

 この件は、別項で詳しく述べた。
  → ネアンデルタール人との混血はなかった

 さらに言えば、次の大問題が発生する。
 「混血することがあったとして、その混血の程度が、デニソワ人とネアンデルタール人で同程度であった、という一致性が説明できない」

 仮に混血があったとしても、その混血の程度が同程度であるということは、説明できない。「偶然そうなった」ということですら、説明ができない。なぜなら、デニソワ人の人口は、ネアンデルタール人の人口よりも、はるかに低かったからだ。(化石の残る度合いが圧倒的に少ない。)
 仮に混血があったとしたならば、次のようになる必要がある。
 「共通遺伝子の割合は、ネアンデルタール人との方が、デニソワ人との方よりも、ずっと高い」

 これが論理的な必然だ。ネアンデルタール人の方がずっと人口が多かったからだ。
 ところが、現実には、両者の割合はほぼ一定である。このことから、「混血があった」という説は、完全に破綻する。

( ※ 一方、私の説ならば、何ら矛盾なく説明される。共通遺伝子は、混血によって新たに獲得されたものではなく、もともと存在していたからだ。ただ、ネグロイドはその共通遺伝子を失ったので、非ネグロイドでは新たに獲得されたように見えるだけだ。 → 説明:ネアンデルタール人との混血はなかった


 (2) デニソワ人とネアンデルタール人の差

 現生人類との共通遺伝子を持つとしても、デニソワ人とネアンデルタール人には差がある。次のように。
 (a)東南アジアの人々はデニソワ人と共有する遺伝子を多く持つ。
 (b)東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く持つ


 このうち、(a)は前回の研究で判明したことだ。ただ、「東南アジア」というのは、「メラネシア」ないし「パプアニューギニア」のことだろう。それはそれで問題ない。この件は「ネアンデルタール人との混血はなかった」で述べたとおりだ。

 一方、(b)は今回の研究で判明したことだ。これが重要だ。
 「東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く持つ」
 ……(*
 ということだが、これはおかしい。
 これを説明しようとして、上記の研究者は、次のように述べている。
 “The excess archaic material in East Asia is more closely related to Neandertals than to Denisovans, so we estimate that the proportion of Neandertal ancestry in Europe is lower than in eastern Asia,”
(大意:東アジアではデニソワ人よりもネアンデルタール人との関係が強い。だからネアンデルタール系の先祖の人口は欧州では東アジアよりも低かったのだろう。)

 しかしこれは、あまりにも馬鹿げたことだ。
 第1に、ネアンデルタール人は欧州と西アジアだけにいたのであり、東アジアにはいなかった。
 第2に、この解釈では、南アメリカで共通遺伝子が多いことを説明できない。(南アメリカにもネアンデルタール人がたくさんいたことになる。)

 だから、(*)のことは、混血説では説明できないのだ。混血が現地(世界各地)で起こったと考えれば、各地にネアンデルタール人が展開していたことになるので、矛盾。かといって、西アジアで混血が起こったと考えても、(*)は説明できない。また、西アジアで混血が起こったと考えれば、「ネアンデルタール人との混血はなかった」に示した矛盾にぶつかる。
 こうして、混血説は破綻してしまった。

( ※ 一方、私の説ならば、何ら矛盾なく説明される。詳しくは [ 付記 ]

 ──

 結局、上の (1)(2) の点で、混血説は完全に破綻してしまった。つまり、混血はなかった、と証明されたことになる。それが今回の研究からわかったことだ。(特に (2)の(b)が重要だ。)



 [ 付記 ]
 (2)の(b)では、次のことがあった。
 「東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く持つ」
 ……(*
 このことは、私の説ならば、何ら矛盾なく説明される。次のように。
 
 「人類の移動 (まとめ)」の説明に従えば、(*)のことはきちんと説明される。
 東アジアや南アメリカの人々というのは、古モンゴロイドや新モンゴロイドである。彼らは欧州のコーカソイドよりも、出アフリカの時期が早い。その分、共通遺伝子を多く保有している。換言すれば、欧州のコーカソイドは、古モンゴロイドや新モンゴロイドよりも、出アフリカの時期が遅い。そのせいで、共通遺伝子を多く失った。


          ↓ 共通遺伝子が消失
   北東部人 ━┳┳┳┳━ 北東部人
         ┃┃┃┗━ 欧州コーカソイド
         ┃┃┗┳━ 古モンゴロイド(北方系)
         ┃┃ ┗━ 新モンゴロイド
         ┃┗━━━ 古モンゴロイド(南方系)
         ┗━━━━ オーストラロイド

   ※ 北東部人は、アフリカ北東部人。アフリカ系コーカソイド。
     共通遺伝子とは、デニソワ人・ネアンデルタール人との共通遺伝子。


 わかりやすく言おう。
 「東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く持つ」
 という事実がある。
 この事実は、次のことを意味しない
 「東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも多く獲得した」 
 かわりに、次のことを意味する
 「東アジアや南アメリカの人々は、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を、ヨーロッパの人々よりも失う量が少なかった」 
 換言すれば、次のようになる。
 「ヨーロッパの人々は、東アジアや南アメリカの人々よりも、ネアンデルタール人と共有する遺伝子を失う量が多かった」 

 では、どうして失う量が多かったのか? それは「偶然で」という説明で十分に足りる。
 そもそも、私の説では、失われた遺伝子は、「(現生人類にとっては)あってもなくても差し支えない不要な遺伝子」である。それは中立説に従って、消失する量が偶然的に変動する。今回の若干の差は、そういう偶然で説明できるレベルだ。それだけで済む。

 ただ、次の説明を取ると、よりいっそう説明される。
 「古く分岐したものほど、古い形質をよく残している。そのせいで、モンゴロイド系の人々は、古い現生人類の形質をよく残している。おそらく、エチオピア人も同様だろう。一方、欧州のコーカソイドは、西アジアのあたりでかなり変異したらしいので、変異(分岐)の時期がかなり新しい。その意味で、古い形質をあまりよく残していない。かくて、古人類(ネアンデルタール人やデニソワ人)との共通遺伝子を、あまりよく残していない。
 これできちんと説明されるだろう。

 ──

 事実としては、ネアンデルタール人は欧州にいたのだ。
 とすれば、混血説によれば、欧州ではネアンデルタール人との混血の量が大幅に多く、他の地域ではネアンデルタール人との混血の量がずっと少ないはずだ。
 ところが研究の結果は、そうではなかった。欧州ではネアンデルタール人との混血の量が、大幅に多いどころか、他の地域よりも少なかったのだ。

 というわけで、混血説は完全に否定された。一方、私の仮説はその補強となる事実が得られたのである。……それが今回の研究の成果だ。
 


 【 関連項目 】

 → ネアンデルタール人との混血はなかった
posted by 管理人 at 19:18| Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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