2012年08月01日

◆ スマートハウスの愚 2

 家庭に蓄電池を置くスマートハウスが提案されている。その目的は、ピーク電力対策。しかし、蓄電池よりは、古い火力発電所を利用する方がいい。 ──
  
 スマートグリッドの一環で、スマートハウスが提案されている。そこでは「家庭に蓄電池を」と推奨される。その目的は、ピーク電力対策だ。

( ※ このような記事は多いが、読売・朝刊 2012-07-19 では、大々的な特集が組まれた。ネット上にもたくさんある。
   → 関連ページの検索 )
( ※ なお、「太陽光発電の電力を蓄える」という目的もあるが、これは最悪である。というのは、売電で得る高い収益を失うからだ。前項で述べたとおり。)

 ──

 しかしながら、ピーク電力対策として蓄電池を用いるのは、愚策である。それは前項で述べたとおり。再掲しよう。
 「電力のピークシフトのためには、太陽光発電と蓄電池の組み合わせが有利だ」
 という説もある。しかし、それは正しくない。原発ならともかく、火力発電ならば、発電量を可変的にできる。だから、火力発電さえ十分にあれば、蓄電池は不要である。
( → 前項:蓄電池の情報
 これと同様のことは、もっと前に詳しく述べた。
 太陽光発電は、光がないときには発電できない。その弱点を補うために蓄電池を使えばいい、と思う人が多い。しかし、蓄電池は必要ない。発電機があればいい。(特に、火力発電。)
 (中略)……火力発電がある状況では、蓄電池はもともと不要だ。なぜなら、太陽光発電の電力が落ちたときには、火力発電を使えばいいからだ。雨の日であれ、夕方であれ、夜間であれ、火力発電の発電量を上げればいい。夏のピーク電力時間帯に急に雲が増えて太陽光がなくなったら、休止中の古い火力発電所を稼働させればいい。……このようにして、火力発電を活用すればいい。蓄電池も不要だし、非常用電源も不要だ。また、敷地も手間も設備投資も不要だ。
 とにかく、休止中の古い火力発電所を稼働させるだけでいい。そのためには、(燃費効率は悪いが)古い火力発電所の燃料費が一時的にかかるだけだ。これによって、最低のコストで電力をまかなうことができる。
( → 太陽光に蓄電池は不要
 要するに、こうだ。
 太陽光発電とか原子力発電とかは、供給側の事情によって発電量が決まる。しかし火力発電は発電量が可変的であり、需要側の要求に応じて供給量を増減できる。つまり、火力発電は、それ自体のうちに、蓄電池と同等の機能が組み込まれているのである。だから、火力発電があれば、いちいち蓄電池を必要としないのだ。

 ──

 ただし、火力発電にも、難点はある。次のことだ。
 「一年のうちのピーク時に合わせて発電量を決めると、莫大な設備費(火力発電所の建設費)がかかって、きわめて高コストになる」

 そもそも、ピーク電力が必要なのは、一年のうちの数日だけだ。その数日のために、わざわざ火力発電所を建設するのは、滅茶苦茶に高コストだ。蓄電池に比べれば、まだマシではあるが、それでも滅茶苦茶に高コストだ。
 この問題を解決するには、どうすればいいか? それは、次の本を読むとわかる。



ザ・ゴール

 これは数年前のベストセラーだ。とにかく、この本には、「全体最適化と部分最適化」という話が出ている。
 生産効率のアップのためには、すべての箇所で効率を最適化することが必要だと思われているが、実は、そうではない。ボトルネックとなる部分があるので、そこだけを解消すればいい。そのために部分的にはいくらかコストがかかっても、そのことで全体の効率が大幅にアップするのであれば、部分的に高コストをかけても問題ない。
 特に、「古い機械をボトルネックに当てることで、ボトルネックを解消する」という事例に着目するといい。

 この話をピーク電力に当てはめると、次のように言える。
 「ピーク電力のときに電力不足になると、全体の効率が大幅に落ちてしまう。だからピーク電力に電力不足にならないように、ボトルネックを解消するといい。そして、そのためには、部分的に高コストをかけてもいい」

 さらに、次のように言える。
 「ここで言う高コストとは、ランニングコストのことであり、設備費のことではない。短期間であれば、ランニングコストは高くてもいい。ただし、設備費はかけるべきではない。そのためには、予備用の低能率な中古品を用いるといい」

 これを具体的に当てはめれば、次のように言える。
 「ピーク電力対策としては、古い火力発電所を用いればいい」


 古い火力発電所というのは、効率が低くて、発電コストが高い。燃料も多く食うし、保守費もかかるので、ランニングコストが高い。それでも、設備はすでにあるので、(新規の)設備費はゼロで済む。
 だから、古い火力発電所を用いることで、ボトルネックの解消(ピーク電力対策)ができるのだ。

 ──

 ひるがえって、蓄電池を用いるというのは、愚策だ。次の理由で。
  ・ ランニングコストは低いが、設備費が馬鹿高い。
  ・ 一年のうちの数日のために多額の投資をするのは愚策。


 そもそも、「ピーク電力対策」と言うと、「夜間の電力を昼間にもってくることで、昼間のピーク電力の不足に対応できる」と思っている人が多いが、間違いだ。
 実は、そのようなことが成立するのは、一年のうちの数日だけだ。その限られた期間でだけ、「電力の供給不足」という問題が発生する。一方、それ以外の大部分の期間(1年のうちの 360日ぐらい)では、「電力の供給不足」という問題は発生しない。当然、その期間には、「夜間の電力を昼間にもってくる」ということは必要ないのだ。
 ここを多くの人は誤解している。「蓄電池があれば、普段でも、夜間の電力を昼間にもってくることができる」と。しかし、それは無意味だ。普段ならば、もともと「電力の供給不足」という問題は発生しない。もともと火力発電だけで足りている。火力発電だけで(コストなしに)調整できるのだから、わざわざ莫大なコストをかけて蓄電池を用意する必要はないのだ。仮にそんなことをするとしたら、「まったく必要のない目的のために、莫大な蓄電池を購入する」ということになるから、「無意味な目的のために大金をかけること」つまり「金をドブに捨てること」を結果する。……要するに、「蓄電池によるピークシフト」というのは、「金をドブに捨てること」と同等なのだ。
 そして、唯一、無駄ではない目的(一年のうちの数日だけのピークシフト)のためには、蓄電池よりも、古い火力発電所の方が、はるかに優れているのだ。そのことが、上記の本(ザ・ゴール)からわかる。



 [ 付記1 ]
 「ピーク電力対策が必要なのは、一年のうちの数日だけだ」
 と述べた。これに対して、次の反論が来るかもしれない。
 「もっと供給不足 or 需要過剰になれば、一年のうちの数日だけでなく、一年のうちの十数日〜数十日になるかもしれない。その場合には、どうすればいいのか?」

 答えよう。その場合には、供給量がもともと不足していることになる。したがって、国全体の発電量そのものを大幅に伸ばすことが必要となる。(あるいは国全体のピーク電力需要を大幅に抑制することが必要となる。)
 いずれにせよ、その問題は、ピーク対策ではなく、基盤電力の問題となる。基盤電力の側で対処するべきだ。たとえば、次のように。
  ・ 供給対策 …… 火力発電所の大幅増設
  ・ 需要対策 …… 大幅な需要抑制策(料金値上げなど)

 このような方法を使えば、基盤電力の側で対処することになるので、問題ない。
 一方、この問題を蓄電池で対処するとしたら、途方もないコストがかかる。だいたい、次の比較に相当する。
  ・ 発電機 … LPG発電で23万円 ,ガソリンで9万円
  ・ 蓄電池 … 車載用のリチウム電池で 230万円

 発電機のかわりに蓄電池を使えば、家庭レベルでさえ、10倍以上のコスト差が付く。

 しかも、現実には、火力発電所は、はるかにコストが低い。というか、古い火力発電所ならば、設備費はゼロだ。だから、国全体では、次のような感じになる。
  ・ 古い発電所 …… 設備費はゼロ
  ・ リチウム電池 … 設備費は××兆円


 というわけで、基盤電力の一部を蓄電池に置き換えようとすれば、あまりにも高コストになってしまうのである。蓄電池をピーク対策に使うぐらいならまだしも、蓄電池を基盤電力の一部に使おうとするのは滅茶苦茶すぎる。

 [ 付記2 ]
 「太陽光発電と蓄電池」という組み合わせは、さらにひどい。というのは、太陽光発電は、雨や曇りで使えないからだ。
 例。太陽光発電が4割になると、雨の日にはその4割が消えてしまうので、日本中で大停電が起こる。この場合は、基盤電力が変動するというより、基盤電力そのものが4割も消失してしまう。蓄電池ではとうてい対応できない問題だ。(蓄電池で対応したくても、蓄電池に充電する電力が足りない。梅雨時に雨がしばらく続けば、すっからかんの蓄電池があるだけ、となりそうだ。)

 [ 付記3 ]
 「スマートハウスに対抗するのが、古い火力発電所だ」
 というのは、話の次元が違っているように見えるかもしれない。ただ、役割上は、そうなのである。
 「スマートハウスに蓄電池を設置しよう」なんて考えるぐらいなら、「古い火力発電所を使おう」と考えるだけでいい。そして、そのことは、考える必要もなくすでに実現されている。
 だから、「スマートハウスに蓄電池を設置しよう」なんて考える暗いなら、何も考えないで、何もしないでいいのだ。
 下手の考え休むに如かず。それが結論だ。
 


 【 関連項目 】
 本項と強く関連するのは、下記項目。(上掲)
  → 太陽光に蓄電池は不要

 スマートグリッドやスマートシティやスマートハウスの愚劣さについては、似たような話をすでに書いた。
  → スマートグリッドの失敗
  → スマートハウスの愚
  → スマートシティの愚
  → サイト内検索 「スマートグリッド」
posted by 管理人 at 19:06| Comment(4) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
資源問題・温暖化問題などマクロの問題(懸念含む)を除くと火力発電便利ですけどね(^^;。

とりあえず、太陽光発電などのメリットは私的自治(市場経済・有志のみ)で事が進められることかな・・という部分はあります。

ということなので、強権で太陽光発電を普及させようという風潮には僕も反対です。
補助金で設置させるのには反対、設置費を所得控除する政策には賛成(自分で稼いだり原資を調達できる人がつける場合の課税考慮措置は正しい)・・という感じです。
Posted by K at 2012年08月02日 10:40
蓄電池が高いのは現時点での話でしょう。
技術開発、普及が進めば安くなります。

火力発電は燃料の調達に難があるかと思います。
国際情勢に左右されます。

純国産エネルギーの原発の将来が暗い以上、代替とする自然エネルギーの普及を進める必要があります。
自然エネルギーは時間や気候による発電量の変動が激しいため、ピーク時に電力不足とならないためにも蓄電池に溜めておく必要があると思います。
Posted by 通りすがり at 2012年08月03日 23:51
技術開発といっても、コストを百分の1にするのは、そう簡単ではない。私としてはキャパシタが有望とみている。普通の化学式の蓄電池ではコストを百分の1にするのは遠い先の話。ほとんど夢想。
 コストが百分の1になってから考えましょう。少なくとも、現段階で考える話じゃない。それが私の言いたいこと。
 コスト的に不可能なことを、夢想だけで追い求めることの愚かさを、私は太陽光発電のテーマで何度も指摘しています。
 夢と現実との区別をしましょう。……と言っても、技術音痴には無理ですね。夢と現実を混同するのは、朝日新聞など、文系の人の特徴だ。
Posted by 管理人 at 2012年08月03日 23:56
結局現在社会の産業基盤そのものが化石燃料の大量消費によって成り立っていると考えると、代替燃料を使って同じ社会を維持しようとするよりも、代替燃料にふさわしい社会に移行しなければならなくて、そのためには今の化石燃料大量消費社会は絶対に衰退する運命にある...とすると古い設備を動かしつつそれでも足りなくなれば需要減で対応する、というのは王道かと思います。
まあ問題はそうするとエネルギー「産業」にならないってとこなんでしょうが...
Posted by ponta at 2012年08月04日 08:21
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