「自動車で省エネの車種に補助金を出す」というエコカー補助金の期限が近づいている、ということが話題になっていた。
→ エコカー補助金 申請いつまで?
これは6月末の記事だが、最近の記事では、7月の販売台数はたいして延びていないそうだ。昨年のエコカー補助金のときに需要の先食いをしてしまったので、今さら特に増えることはなかった、ということのようだ。
→ エコカー、静かな補助金商戦 7月販売、前月比1.5%増
※ これと同趣旨の記事は、読売(朝刊 2012/08/02 )にもある。
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さて。このエコカー補助金だが、どのくらいの車種が恩恵を受けているのか? 実は、一部だけではなく、大半である。
→ エコカー補助金対象車の割合73.6%…6月
こうなると、もはや「エコの推進」という本来の目的は消えて、「自動車販売の増加をもたらす、販売拡張策」になってしまっている。
実際、エコカー補助金は、需要の先食いの効果があったせいで、期限が切れると、売れ行きがかなり落ちそうだという。
→ トヨタ、国内1割強減産へ エコカー補助金終了で
ともあれ、曲がりなりにせよ、「エコの推進」や「販促」(需要の先食い)という効果(メリット)が、いくらかはあったことになる。
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以上は、物事をメリットの面だけから見た話だ。
一方、デメリットもある。それは「大幅な税収減」である。国民が「消費税増税」なんていうひどい目に遭うのも、エコカー減税で莫大な収入源があるからだ。
簡単に言うと、「エコカー補助金に金を出すために、消費税を増税するハメになる」というようなものだ。
( ※ 全面的にそうだというわけではないが、ある程度はそうである。)
その意味は、どのくらいか? ちなみに、高級車にどのくらいの補助金が出るか、調べてみるといい。
10万円? 20万円? いや、それをはるかに上回る。
→ シーマのエコカー減税 …… 519,000円
→ レクサスLSのエコカー減税 …… 741,600円
→ ベンツのディーゼルの減税 …… 772,000円
いずれにしても、50万円を上回る減税(補助金)だ。たった一台で、これほどにも莫大な金をもらえる。大金持ちが高級車を何台もそろえると、その何倍もの額の補助金をもらえる。何ともまあ、不公平なことか!
( ※ 生活保護の不正にも似ている。金持ちほど、莫大な金をもらえる。……ただし、ここでは、合法的。)
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さらには、法の穴を利用するような形で、ずるい補助金をもらう例もある。それは、「名ばかりのハイブリッド」「なんちゃってハイブリッド」と呼ばれるものだ。(正式名称は「マイクロハイブリッド」または「マイルドハイブリッド」)
→ 新型セレナ搭載の「マイクロハイブリッド」とは?
→ 免税(100%減税)のハイブリッド車「セレナ S-HYBRID」
このハイブリッドは、一応はハイブリッドなのだが、ごく小さなシステムしか搭載していない。そのおかげでコストはたったの4万円しかかからないが、効果もわずかで、たったの 4%弱しか燃費が向上していない。(14.6km/リットルから 15.2km/リットルへ。改善幅は0.6km/リットル。)
ま、このシステムは、「4万円のコストで燃費が4%弱の改善」だから、特に良くも悪くもないだろう。ただ、これに対して「100%減税」というのは、やりすぎだ。プリウスみたいなまともなハイブリッドに対して 100%減税ならともかく、こんな「名ばかりのハイブリッド」に 100%減税なんて、とんでもない。
こんなの、ズルでしょ!
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たぶん業界は、「エコのためなんだから当然だ」と思っているのだろう。しかし自動車というのは、もともと「反・エコ」なのである。
その反・エコの度合いが皆無になったというのならともかく、1割か2割程度(あるいは4%弱だけ)改善したというだけで、莫大な金をもらえる。
しかも、特別に頑張った場合だけでなく、(ちょっとだけエコなのも含めて)大半の場合で(少なくとも半額ぐらいは)免税となり、金をもらえる。
こういうのは、不公平すぎる。で、そのツケを払うのは、国民全般だ。特に、自動車を利用しない、高齢者などだ。彼らは車道から追い出されて道脇に追いやられるだけでなく、車道のための土地代と舗装費と修繕費を負担することになる。まるでカツアゲされるいじめられっ子みたい。
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ちなみに、自動車に比べて、ほぼ完全にエコと言えるものがある。それは、電動アシスト自転車だ。多少は火力発電の電力を使うとは言え、使用する外部エネルギーの量は僅少だ。自動車並みにガソリン換算して「*** km/L 」という値を出すとしたら、自動車の 「10 km/L 」に対して、百倍ぐらいの「1000 km/L 」ぐらいの値を取れそうだ。
燃料消費量が百分の1になるとしたら、もはやゼロ同然と見なしてもいいだろう。とすれば、このような機会にこそ、莫大な補助金を出すといい。50万円でも 100万円でも出せばいい。
しかるに現実にはどうか? 電動アシスト自転車への補助金は、国の制度としては、ないようだ。例外的に、一部の自治体が少額を支出している。
→ 磐田市の補助金 (商品券 1万円分)
→ 豊橋市の補助金 (4分の1、上限 15000円)
→ 鹿児島市の補助金 (3分の1、最大2万円)
何ともまあ、みみっちい額だ。どうしてこうなんでしょうねえ。
[ 付記 ]
電動アシスト自転車の紹介。Amazonで一番人気のもの。
RUNFUN(ランファン) 6段変速
こういうのが普及すると、津波の被災地でも、高台と海岸とを行き来するのが便利になる。自動車を運転できないお年寄りでも、電動アシスト自転車なら簡単に乗れるだろう。しかも、安全だ。(速度が遅いので。)
これからの高齢化社会では、高齢者向けに、電動自転車の補助金をどんどん出すといいだろう。自動車に莫大な金を出すより、はるかに道理が通っている。
※ 子持ちの母親も対象とするといい。少子化対策。
【 関連項目 】
→ エコメーターで燃費向上
エコカー補助金に何十万円も出すより、エコメーターの設置に2万円程度の補助金を出す方が、はるかに合理的だ。同じ効果を、ずっと低い金額で達成できる。オマケに排ガス浄化の効果もあるから、エコノミカルであるだけでなく、エコロジカルでもある。
燃費が悪くても乗り続けるほうがエコ。
だから自動車メーカーはメンテナンスでも十分に儲かるビジネスモデルを作ればいいのに。
自動車用の鉛蓄電池とモータで駆動する小さな乗り物が、どうして、あんな大きな軽自動車なみの価格になるのかをメーカに尋ねたところ、「量産効果が出ないから」だそうです。
元半導体技術者の湯之上隆さんのレポート。
中国では、低速ローコストの電動自動車モドキが、数千万台規模で走り回っているという話。鉛蓄電池だからローコスト、低速だから車体に強度は必要がなく、安全装備も簡便なものでいい。
彼は、これこそが、破壊的イノベーションであり、次世代の電気自動車だと書いてますが、小型低性能の自動車モドキが、日本の公道を走り回ったら、大変なことになると思います。道路の構造や交通法規を改正しないと、日本では許可されない。
→ http://openblog.meblog.biz/article/1504504.html
→ http://openblog.meblog.biz/article/1413723.html
→ http://openblog.meblog.biz/article/1151950.html
以下、Wikipedia から。
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人力と電力補助の比率は最大1対2(10km/h以下)。10km/hから24km/hまで徐々に比率が下がり、24km/hで補助は無くなる[5]。最大出力は規定されていない。
当初この補助比率は最大1対1(15km/h以下)だったが、2008年12月1日より引き上げられ[6]、低速度で坂道を登る際により楽になった。この法改正の背景には国民以外にも、自転車タクシーとして使う自治体の要望も寄せられていた[7]。
→ http://j.mp/OyqaF8
(6年前はチャリは居ましたが電動スクータは見かけませんでした。)
老若男女ノーヘル、無灯火、三人乗りOK、チャリ扱いなので歩道OK。そこそこ機動力があるから車道もOK(50km/hは出てる)。なぜか登録証は必須。
警察(公安)による違反者の取り締まりは見かけませんでした。(速度違反とか、二人乗りとかで捕まりそうですが・・・)事故の心配は誰もしてません。シートベルトの義務もありません。車道を縦横無尽に歩行者が渡る国ですから自己責任が徹底されているのかもしれませんが。
現地の方に聞くと、電動スクーターはそこらで盗電し、性能劣化したバッテリーはその辺に捨てているとの噂です。
なお、電気自動車もどきは見かけませんでした。むしろここ2-3年にデビューした普通の自動車が多かったです。
ローエンドという指摘ですが、人間の欲望を考えるとゴルフ場のカートが少し良くなった程度のモノが売れるか疑問です。タタのナノが良い例と思います。
「速度は出ないが、道路を選ばない。」「歩道の移動が楽になる(セグウェイ、キックボード付スーツケース等)」は売れる様な気がしますが。
原題に戻って、電気アシスト自動車(ハイブリッド)もエコではなくエゴな感じです。エコなら軽四かせいぜいリッターカーにすべきでしょう。
しかし、法的問題がそれを許さない。技術ではないです。道路行政をどうするという、かなりめんどうな問題で、ステイクホルダーも多く、合意を形成するのは容易ではない。