電子処方箋を使えば、あっさり解決する問題なのだが。
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街中の店が閉店したと思ったら、そのあとに薬局(処方箋薬局)が開店した。呆れた。これでいくつめだろう? たいして大きくもない駅前周辺に、やたらと多数の薬局がある。
で、どれだけ繁盛しているのかと思うと、たいていは客が1人しかいない。その1人の客を相手に、何十分も時間をかけている。えらく非効率だ。
客としても、薬局に入ってから、何十分も待たされるので、腹が立つ。しかも、店員がやっていることは、薬を取り出すことではなくて、パソコンへの入力だ。それを延々といつまでも時間をかけてやっている。腹立たしい。
すべて電子化してしまえば、一瞬で済むことなのに。
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この件は、「処方箋を電子化せよ」という話題で、前に「泉の波立ち」で何度か述べたことがある。
現在、どうなっているか?
「病院で電子化する」→「それを印刷する」→「それを薬局にもっていく」→「それを薬局で人間が再入力して、電子化する」
というふうになっている。つまり、病院と薬局で、二度も手間をかけて同じことを入力している。実に馬鹿げている。
( → 第2章(2001年)
保険証がICカードになっていれば、簡単に解決できる。なのに、そうしないから、患者や薬局でやたらと待たされるし、莫大な人件費が無駄になっているし、健保の赤字が増える。膨大な無駄である。日本全体でどれほど巨額になることか。
( → 2003年3月31日d )
前に何度も述べた「電子処方箋」について、政府がようやく、実現に向けて方針を定めたようだ。(読売・朝刊・1面 2004-02-05 )
( → 2004年3月19日 )
年金情報の消失という問題があったあとで、「データの電子化」という方向が進んだが、住民基本番号制度も個人番号制度もろくに進展していない。電子処方箋もまた同じ。
→ Open ブログ: 公的情報の電子化
で、現在も、相変わらず、手作業でやっている。紙に印刷して、それを人間が再入力する、という原始的な方法。情けないですね。
【 関連サイト 】
→ 膨張続ける調剤バブル (2013/12/22)
【 関連項目 】
本項の続編
→ 薬局が多すぎる 2
と言っても盲目的に再入力しているのじゃ意味無し。
薬の組み合わせと弊害もある程度は判っているのだろうから、とっとと電子カルテにすべきですね。
多分、まずは旧式のOCRを導入(数%の人件費削減)、保険証のICカード化はまだまだ(免許証にまでチップを埋め込んでいるくせに)。
というか、病因が情報をスマホにIRか青い歯でピピっと送ってそれを薬局がピピッと入力してもいいかも。そしたらICカード読み込みというインフラは不要で、レジに通信機能を持たせば良い。Wifiでも良いと思いますけどね。
それでも間抜けな人が出そうだから、物理的に情報を隔離するICカードを使おう、というのが、役人の発想なんでしょう。
私としてはオンラインでいいと思うんですけどね。……ただ、それは、二の次の話題。とにかく電子化するという原則が先決。
(昭和三十九年二月三日厚生省令第三号)
というものがあって、薬局が扱える処方箋枚数の上限は、薬剤師1人あたりで、1日40枚までです。つまり、これ以下の薬局だと、省力化しても、利益なんか出ない。
言い換えると、省力化をするインセンティブがない。
省令はいくらでも変更できるので、政府が音頭とって電子化すればいいだけの話ですが。
それまでの間はQRコードにして処方箋の下にでも印刷すればいいのにって思いました。
法律上は、どちらでもかまわない。ただし、処方箋発行の手数料が、院外処方にすると、若干高くなるだけです。
「院内薬局の経営を分離する」
という方針。
ただ、それとは別に、薬の利幅を大幅に減らすと良さそう。そうすれば、院内薬局を据えるメリットもなくなる。やってもやらなくても儲けにはあまり関係ない、というふうになれば、良心的なところだけがやるようになる。
となると、問題の根源は、医薬品業界や薬剤師業界の癒着体質か。医者と患者は、ほったらかし。
また、在庫コストは、市中薬局の方がずっと高いです。自分のところの施設の医師が処方する医薬品だけ用意すればいい病院・クリニックと違って、市中薬局は、不特定多数の医療機関からの処方箋を応需しなくちゃならないんだから。近所の薬局が、共同で在庫を持っていたりしますが、手元にない薬の処方が来るたびに、取ってこなきゃならない。もちろん、患者は待たされる。
医薬分業政策は、20年くらい前からウォッチしてますが、すでに話は詰んでいて、もはや、救いようがない。
余計なコストを使っているだけの医薬分業政策が一向に廃止されないのは、調剤業界と厚労省が癒着しているというようなわかりやすい話ではなくて、一旦始めた政策の間違いを、途中で認めて引き返すことが、官僚組織では不可能だからでしょう。自分の先輩の面子を潰してしまう。
では、どうして、薬局がどんどん増えるのでしょう? ドトールやマクドナルドが(けっこう客がいても)どんどんつぶれて撤退していくのに、そのあとで薬局ばかりがどんどん増えていく。客があまりいないのに、それでもどんどん増えていく。
いったい、どうしてでしょう?
http://mimiyamed.exblog.jp/10594445/
院内処方と院外処方とでは、調剤報酬が違います。余計なコストをかけても、院外調剤が儲かる水準に、調剤報酬の保険点数が設定されてるんです。
また、処方する医師の報酬も、院外処方をすると、ほんの少し高くなります。
つまり、処方する医師の報酬も、調剤する薬剤師の報酬も、院外調剤の方が高くなるんです。
法律的にはどちらでもいいが、経済的な誘因をかけて、院外処方を誘導してきたのが、この30年くらいの医薬分業の歴史です。
この余計なコストの正当性を、厚労省と薬剤師会は、以下のように説明します。
1.過剰処方の是正 これはすでに成り立たない
2.薬剤師による処方鑑査 院内調剤でもやってる
3.複数医療機関から処方された場合のバッティング防止 お薬手帳にシールを貼って、処方時に医師に見せればいい。実態としては、病院前の門前薬局で調剤してもらう場合がほとんどで、かかりつけ薬局なんて、まったく普及してない
4.薬剤師による説明 プリントアウトして渡すだけです。そもそも、薬には複数の適応があり、処方箋だけでは処方目的がわからないので、適切な説明はできない。
強いて言えば、薬剤師を常駐させていない零細クリニックが院内処方をする場合だけ、院外処方にした場合に、途中に薬剤師が噛むことになるので、安全性が向上すると言えなくもないですが、零細クリニックの処方って、いつも決まりきった内容で、処方する医師も、薬を出す事務員やナースも、間違えようがない。リスクの高い薬を出すような場合は、病院に紹介してしまう。
逆に、院外処方の方が危険な例として、小児科の薬の処方があります。錠剤として粒で数えるんではなく、原末を測って、乳糖やシロップで希釈して出すので、単位とか希釈倍数を間違えやすい。こんなものは、顔を見たこともない院外の薬剤師よりも、院内で熟練した薬剤師にやらせた方がいい。
薬局の利益 = 薬の売値と仕入れ値の差額(薬価差益)
だと思ってるんだけれど、実態は、
薬局の利益 = 調剤報酬(保険点数)
なんですよ。薬価差益や差損はもちろんありますが、大した額じゃない。
調剤報酬で、院内と院外にハンデをつけて、コストの高い方に誘導しているのに、はっきりしたメリットを示せないのでは、何のための医薬分業かという話になるでしょう。
医薬分業のあと、支払総額が増えたので、困ったものだと思っていましたが、やはり、処方箋料などの固定的なコストがずいぶん増えているんですね。
元に戻してほしいと思っていましたが、よくわからずにいたのですが、今回の説明とリンクでよくわかりました。
医療費総額が同じだと仮定すると、薬の業界に巨額の金が流れる分、医の業界に入る金が少なくなる。診療報酬の引き下げなどの形で、病院経営が赤字化する。医者としては「薬の料金が上がるから儲かるな」と部分的には思っているのだろうが、結局は利益を薬局と製薬業界に奪われるばかり。
「医者の診療報酬を引き上げて、薬局の処方箋関係の料金を引き下げよ」
と日医は提言するべきでしょう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1773?page=1
収支差が病院の0.5%に比較して、保険薬局は10%もあるんだから、引き下げの余地はあるだろうって話。
でも、通らない。行政刷新会議で言っても一蹴される。
細かいことは端折って、結論だけ言うなら、栄養士が外来患者に栄養指導をしているように、理学療法士がリハビリをしているように、薬剤師が、患者に情報提供や服薬指導をするのはアリだと思うし、それに保険点数がつくのも仕方がないでしょう。処方鑑査も、IT化でほとんど片がつくけれど、それが整うまでは必要でしょう。しかし、院内でできるのに、コストをかけて、患者を院外に誘導する必要はどこにもない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1773?page=2
> こうした提案を行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」に対して行ったところ、当局から「多くの薬局の継続が困難になる可能性がある」との回答が返ってきた。
だって。笑っちゃいますね。本項で示した現実と対比すれば、多すぎるのをどんどん閉鎖させるべきなんだが。
健康保険適用のため本人は1割負担。家族が3割負担。しかも大多数の人々(特に勤労世代)は医者にあまりいかない。結局少々薬代が高くても気にならない。だから気がつかない。今のうちにぼったくってやれという薬業界の寝技なんですね。リンク先の医師の嘆きが気になります。このままじゃ医師が居なくなってしまいます。
医療業界には秘密はないですが、制度が複雑で、かつ、頻繁に変わるので、素人には有効な批判ができません。難しい理屈はないが、話が長い。
→ http://nakoyusa.iza.ne.jp/blog/entry/1426193/
→ http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1018971350
→ http://blogs.yahoo.co.jp/mymomomi/38247038.html
→ http://d.hatena.ne.jp/Re-birth/20120325/1332640186
→ http://logsoku.com/thread/ikura.2ch.net/campus/1332732339/
国民にとっては必要ないが、薬局にとっては必要があるのでしょう。暴利の源泉なので。
その暴利を守るためにさんざん献金しているようです。
https://sites.google.com/site/harano2011/mu-ci/yakuzaishikaikenkin
http://www.asyura2.com/0406/senkyo5/msg/118.html
http://ww3.tiki.ne.jp/~jmaruya/news001.htm
利権のすべてが不公正なレントではなく、公正な政府支出が大半ですが、それでも不釣合いに利益供与は多い。
つまり、「金と票」で、利権を買うにしたら、価格が安すぎる。
たぶん、厚労省は、政治とは無関係に、独自の判断で、医薬分業政策を進めてるんです。
そりゃ、天下りのことに決まっていますね。薬剤師会の理事か何かかな。
気持ちは分からなくはありません。病院でも薬局でも待たされ金も別々にとられる。ややこしい制度の裏であいつらたんまり儲けてやがるんだろうなあ…
まあ世間様の見方はそんなもんでしょう。
薬学教育4年制だったころは、「医者には頭が上がらないがナースよりは偉い」という意識や、「医師免許に比べれば4年で済む分お買い得」とか、「人と接することが苦手だけど薬を渡すだけならできる」という、今では笑うに笑えない理由で薬学に進学する人も居ました。そういう輩は薬剤師とは呼ばず「袋詰め」とでも蔑んでやってください。現在でも絶滅せずに生き残ってはいますね。薬学教育が6年制になったのは、専門分業化をしないととても医療の高度化についていけないため実務実習を強化したというのが最大の理由です。単純にそれだけと言ってもいいです。病院での患者への服薬指導や調剤薬局での接客も重要な実習課題です。今や「対人が苦手だから」とか「ナースよりは偉い」という意識でできる仕事ではありません。修学期間のお買い得感もなくなりました。
それでもなおこの仕事を選ぶ若い人に、儲かるとか安泰とか言うことはあまりに失礼だと思いませんか?
省庁の思惑等の気持ちもわかりますが、行政であれ薬剤師会等の組織であれ、医療・福祉方面に携わる人は権謀術数を振りかざしてどうこうしようとするよりも、基本的に素直な人が大多数です。行政側も理想家肌というかいわゆる良い子というか、頑張った分だけ報われるようにという気持ちが強く複雑怪奇な制度に走りがちなところはあるけれど、根本的な行動原理がある意味子供っぽいピュアさにあると見てもらえれば、幾分かは腹も立たないのではないでしょうか。
新薬の承認も、海外より遅い遅いと言われ続けてスピードアップのために医薬品医療機器総合機構が厚労省から独立組織となって10年近くになります。学者肌の人が増えたせいか審査期間はいっこうに短くなりませんが、これも過去の薬害経験から政治的な判断よりも科学的客観性を最も重視するようになった一側面です。このあたりにも医薬行政のピュアさがうかがえると思います。加えて、慢性人手不足です。
特に年配者に多いのですが「海外に比べて…」は聞き飽きた常套句ですね。具体的なソースといわれるとちょっと手元にないのですが、承認は以前からそれほど遅かったわけではないのです。薬害が出てからの禁止が遅い傾向はありましたが。また、承認審査を国際的に調和するために治験や製造の国際的に標準化することで承認速度を上げようというICHに日本ももちろん参加していますが、思ったより人種間の差異が大きく、海外治験データがそのまま使える例は見込みより少なかった、とか。政治的な思惑よりも科学的なファクトのほうが優先される分野です。管理人氏が理系であればこそ、下手な思惑よりも重い背景があることはご理解いただけると思います。
医薬分野に関しては、行政・教育よりも民間のほうが薄汚いですね。今や製薬企業はメーカーとは呼べません。ただの商社です。資本主義社会である以上、儲けと効率は重要です。皆の方向性がそちらにそろった結果がこの20年でどうなったかでよくお分かりだとは思いますが、経験ではなく歴史に学べる人は意外に少ないものです。
長文にて失礼しました。
現状の医薬分業政策の致命的欠陥は、「薬剤師が調剤に関与すること」ではなく、「薬局を病院から分離すること」に対して、割増報酬が出ていることです。そのことについては?
2.実務とあまりにかけ離れた教育
このカリキュラムの意義を説明できるんだったら、してみてください。薬学教育モデルコアカリキュラム
http://www.pharm.or.jp/kyoiku/pdf/mdl_1408.pdf
3.実習は、卒業後にやった方が効率的
松木則夫教授が、大学のWebで書いてた話ですが、学生の身分で、ままごとみたいな実習をさせても無駄だから、さっさと国家試験を受けさせて、仮免許を与えた上で、実務に就かせた方がいい。必要な費用は政府が補助すればいい。
卒業前に実習をさせた方が、大学経営的にはプラスですが、社会的には損失が大きい。
4.薬剤師に処方チェックさせるよりも、医療情報電子化の方が先。
処方箋のチェックは、まず、処方箋電子化から始めるべきでしょう。それで足らない部分があったら、人間が関与すればいい。圧倒的にコストが安い処方箋電子化は後回しで、薬剤師を大量にカウンターに配置して、手作業でチェックさせようというスタイルは、非効率的です。
→ 膨張続ける調剤バブル (東洋経済)
http://toyokeizai.net/articles/-/26640