次のページが話題になっている。(元は週刊現代に掲載された記事。)
→ シャープ元幹部が実名で明かす 日本のテレビが韓国製に負けた「本当の理由」
「日本企業が敗北した理由は『投資戦略』と『自前主義』だ」という結論。
投資戦略については、次のように述べている。
日本のメーカーの行動原理は、「利益が出た翌年には設備投資を行うが、赤字になったら絞る」というもので、リスクを嫌うサラリーマン社長的な発想でした。しかし、これはおかしい。投資戦略の失敗は、2006年ごろまでだ。そして、そのころは、まだ日本企業も大敗してはいなかった。
それに対して韓国メーカーは、営業損益の状況にかかわらず安定的に設備投資をしてきました。特にサムスン・グループでは、李健熙会長が長期的なビジョンに基づき、液晶事業に集中投資していました。
こうした投資戦略の違いは、シェアに如実に表れました。'97年には日本は液晶で約80%のシェアを握っていましたが、'06年には12%へと急落したのです。これがまさに、日本の家電メーカーのほとんどが、薄型テレビ向け液晶ディスプレイの競争から転げ落ちた瞬間でした。
そうした中で、日本で唯一気を吐いていたのが実はシャープでした。'98年に社長になった町田勝彦氏が「'05年にはシャープのテレビをすべて液晶にする」という明確なビジョンを打ち出したのです。
そもそも、「投資不足」が理由だったならば、「供給不足で高値販売」が可能だったはずだ。現実にはそうではなく、「作っても売れない」という状況だった。
根本的には、「供給不足」ではなく、「低コスト化技術の不足」が理由だった。
「日本企業は、高品質化の技術ばかり狙っていて、低コスト化の技術が不足していた」
というのが真相である。業界の常識。
なのに、この人は、「自社の技術が劣っていた」ということを認識したくないので、あえて真実から目を逸らしている。困ったことだ。
 ̄ ̄
実は、低コスト化技術が劣っていたということは、この人の話にもあれこれと実例が出ている。次のように。
急激な価格低下に対して、シャープの市場予測は脆くも崩れます。そもそも堺工場が得意とする大型ディスプレイは、十分な収益が上がるほどの規模に市場が育っていなかったのです。世界的な液晶パネルの価格下落もあり、堺工場の稼働率は50%ほどという惨憺たるものになってしまっています。これらの実例を見れば、
従来の3原色のディスプレイを進めて、4原色とした「クアトロン」テレビを発売したのもこのころです。それまで以上の高品位な画像が実現できる、という触れ込みでした。しかし実際にその映像を見ても、液晶のプロである私でさえ、3原色から4原色に変わったことでどれほど画質がよくなったのか分からなかった。このとき私は「顧客志向」の研究・開発が出来ていないと感じました。すでにこの頃は、顧客は品質にほぼ満足し、価格でテレビを選んでいたからです。
「日本企業は、高品質化の技術ばかり狙っていて、低コスト化の技術が不足していた」
とわかるはずだ。
なのに、そういうふうには認識できずにいる。かわりに、上記の例を挙げて、次のように結論している。
部材から最終製品まで全て国内工場で生産するという垂直統合モデルは、「自国至上主義、自前主義」に固執したもので、グローバル時代に適合しなくなっていたのです。このように、自前主義が理由だ、というふうに結論している。
技術戦略にも問題がありました。
しかし、そうじゃないでしょ。正しくは、「過剰品質による高コスト化」のせいで、「世界市場から見放された」ということが理由でしょ。
もうちょっとわかりやすく言えば、それは「ガラパゴス化」だ。ケータイと同様に、日本市場における「品質向上」ばかりをめざして、世界市場における「コスト低下」を見失っていた。そこが本質だ。
ケータイであれ、IT製品であれ、ガラパゴス化していた。つまり、世界市場のトレンドを見失っていた。
一言でいえば、こうだ。
「ジョブズと正反対だった」
ジョブズは世界市場を見通して、市場が何を求めているかを見抜いた。人々がパソコンやケータイで満足しているときに、スマホや iPad のような、高性能で軽量なモバイル機器が求められていると、見抜いた。市場よりも一歩先を読んでいた。2年先、5年先の市場を見抜いていた。
なのに、日本企業は、将来の市場を見抜けなかった。常に、「現在の市場で勝つこと」だけを求めており、「明日の技術」「来月の技術」ばかりを求めていた。「2年後、5年後」の市場を見抜く力がなかった。
だから敗北したのだ。
──
以上のことを、より簡単に示せば、次のように言える。
「技術のことを理解する経営者がいなかった」
このことは、次の項目で、詳しく記している。
→ 家電各社が総崩れ
簡単に言えば、
「経営者がアホだから企業が衰退する」
ということだ。比喩的に言えば、
「ベンチがアホやから野球がでけへん」
ということだ。
だから、シャープの幹部が何かを反省するとしたら、
「自分が馬鹿だったから負けたのだ」
というふうに認識するべきだ。そして、そういう認識ができないところに、馬鹿の馬鹿たるゆえんがある。
( ※ いじめっ子が自分がいじめをしても「いじめだ」と認識できないのと同じ。真実を認識できない。自分の間違いを認識できない。目が曇っている。)
ともあれ、詳しい話は、上記の項目を読むといい。
[ 付記1 ]
「経営者がアホだから企業が衰退する」
ということは、Yahoo にも成立する。そのひどい歴史は、下記に紹介されている。面白いので、読むといい。
→ ヤフーがどのようにFlickrをダメにしたのか?
ただし Yahoo は、そのことに気づいたらしく、Google の若手重役を社長に招いた。
→ Googleの顔、マリッサ・メイヤーが米Yahooの新CEOに就任
この人は、美人であるだけでなく、技術開発リーダーの実績が十分にある。ジョブズみたいだ。
→ マリッサ・メイヤー - Wikipedia
今までの Yahoo の経営者は、技術音痴ばかりだったようだが、マリッサ・メイヤーならば、先端技術にも詳しい。こういう人が経営者になれば、会社もまともになるだろう。
ひるがえって、日本企業はどうか? ソニーは文系の老人を外国から招いて、衰退した。他の企業も、技術のことをわかっていない老人ばかりだ。キヤノンに至っては、いったん引退した会長が復帰した。
ひどいものだ。老害のかたまり。……これこそが、日本企業衰退の、本当の理由だ。
( ※ 例外は、ゴーン社長のいる日産か。彼はずいぶん若いころから日産の社長をやっている。)
[ 付記2 ]
開発した技術の流出を防ぐことも大事だ(そのためには技術者の優遇が大事だ)とも述べた。
→ 先端技術の国外流出
実は、この問題(国外流出)は、とても大きい。日本企業が衰退した最大の理由は、これだろう。
なぜか? 日本企業は、欧州や米国の企業には負けていない。韓国や台湾や中国の企業に負けているだけだ。そして、それらの国がかつ理由は、優れた技術を開発しているからではなく、優れた技術を盗んでいるからだ。
日本は、韓国や台湾や中国の企業に負けているのではない。自分自身の技術に負けているのだ。ゆえに、日本企業がどれほど技術開発しても、それは勝利を意味しない。逆に、その技術を盗み取った韓国や台湾や中国の企業の勝利を意味する。
そして、そうなることの根源的な理由は、日本企業の「技術者軽視」なのである。自業自得。
日本企業がいかにして技術流出させているかは、次のページを見るとわかる。
→ サムスン・現代が狙う先端技術 虎の子守れぬ日本
→ 韓国サムスンが日本人技術者引き抜き加速
サムスンが引き抜こうとしても、たいていの人は断るだろう。ただし、日本企業が社員をクビにした場合は、別だ。
→ NEC、40歳以上対象に希望退職募集
→ パナソニック、本社社員半減へ=数百人規模の早期退職も検討
こんなことをやっていれば、技術者は否応なく、韓国企業に勤めざるを得なくなる。
日本企業は自分で自分の首を絞めているようなものだ。「何とかして助かろう」と思って、技術者をクビにするが、その技術者のせいで、ますます自分は苦しくなる。
「本当は経営得者の首を切るべきだ」
ということを理解できないせいで、日本企業はどんどん衰退していく。病気の病巣を切らないで、健康体の部分ばかりを切っていくからだ。
【 関連項目 】
「日本のIT企業はなぜ衰退したか」という問題については、前に何度も述べた。
「経営者がアホだったから」「経営方針が駄目だった」ということについては、下記でも述べた。
→ エリートの不在(日本企業の不振)
→ エルピーダ倒産の理由は?
→ シャープの赤字はなぜ?
→ 日本の電器産業の没落
→ 日本企業の衰退
その延長で、技術開発の重要性も述べた。
→ IT化時代の企業経営
> 私は、日本の家電メーカーがテレビ市場で復権する一つの道は、100インチ程度の超大型テレビを、低価格で売り出し、新しい市場を創造することだと考えています。米国で既に90インチのテレビが発売されました。
これはどうかなあ。50型も100型も同価格だったとしても、私は50型を買います。部屋に入らないもの。
すでに、テレビの大型化、高精細化方面の品質は飽和していて、いまさら付け加えることはないです。3Dはソフト貧乏でダメ。
大型液晶パネルに需要があるとしても、サムスンなどの中韓企業よりも、安く製造するノウハウがあるならともかく、単純に、巨大工場を作って、ラインを増やして、量産効果で安くしようとかいうのでは、尼崎工場や亀山工場の二の舞です。同じ失敗繰り返してどうするんだ。「亀山ブランド」みたいな空疎なブランドイメージで売れるとでも、思ってるのか。
私が今のテレビに望んでるのは、オンデマンドです。ハイビジョン画質はいらない、SD画質でいいから、あらゆるコンテンツを、ボタン一発で見れるようなテレビが欲しい。
有料画像配信サイトは充実しつつありますが、一つのサイトですべてのコンテンツが見られるわけではなく、どれにもひっかからないものもあります。
商業作品として、DVD/BD化されているコンテンツなら、オンデマンドでいつでも見られるという安心感があれば、毎日、あくせくとレコーダで放送を録画し、チェックして、いらないものを消し、いるコンテンツをディスクに焼くという作業を、止めることができる。
VHSの頃から30年くらい続けてきた習慣ですが、いい加減に、うんざりしているのです。ビデオライブラリの収集、整理なんて作業は、アウトソーシングしたい。そのためなら、月5万円までなら、払ってもいい。
やめた方がいいです。「将来必要になるだろう」と思ってやるわけですけど、将来になって見たくなることはほとんどありません。今の興味と将来の興味は異なる。たとえば、今はアニメオタクの人も、何十年もたてば、そんなものは見たくなくなる。
一般的には、将来はもっといいコンテンツができている。昔のコンテンツなんか見たくなるはずがない。……いや、見たくなることはあるだろうが、必要性はすごく薄くなっている。楽しむというよりは、懐かしむだけ。
保存した方がいい動画は、子供の成長記録だけです。アニメよりずっと健全だし。
SGTが世界的に見ても国内レースとしてそこそこの観客動員集められているのもやはり完全独自レギュレーションのガラパゴスカテゴリーで世界最速のGTを名のれ、他にはないものを見れたから。
もちろんGTAの'えぐい’規制によるシリーズのコントロールの影響もあるが。
欧州のシャーシコンストラクターからシャシー調達せずあくまで3大ワークスが作る事によって現代のレースシーンの技術からの遅れず常に最先端でいられた。
しかし14年のレギュレーションはなんだ?
完全に外交下手なGTAがDMTに丸め込まれただけ。
国内カテゴリーすらシャシー設計他国に任せてどうする。
この点からしてもGTA、具体的には坂東その人がコストダウンとスポンサーシップしか眼中に無く長期的な目線で見れていない事は最早明白の理である。
そもそもトヨタもホンダ第3期も自社社員だから独自技術だと宣っているが結局は
欧州のF1経験者に頼り切っただけでリーマンショックによりあっけなく撤退しその結果はチーム解体による元々持っていた技術の放出である。
結局この国は目先の物質しか捉えられずそれを改良したりするのは得意だが真の最先端の部分ではいつまでたっても太刀打ち出来ない。
日本人向けのユーザインタフェースを史上のものだとして外国人に押しつけてる。外国人にとっては決して使いやすいものではないのに。
は、核心をついていますね。適任でない人が経営者になると悲劇です。
スティーブ・ジョブズは、
「常にテクノロジーとリベラル・アーツの接点に立とうとしてきた」と述べていた。彼は、仕事の効率化などの次元でなく、人類を発展させ文化・文明を築くことを目標にしていた。
そのようなジョブズの骨格を、養父ポール・ジョブズが形成した。父は、器用な町のエンジニアで、車のリフォームや家のフェンスも何でもやった。父はフェンス作りを手伝うジョブズに「例え、誰も見ないとしても正面と同じように背面もきれいに作らないと駄目だよ」と諭した。
人間力が、やはり大事だということでしょう。それには心を育てる環境と教育が不可欠です。
例えば、テレビなら、そこにどういう心躍る夢の未来を描けるか? 描けないか? で、適任者かどうか判別できるのでは。
軽自動車がガラパゴス化しています
国内でしか売れない軽自動車に開発リソースを振り向けざるを得ない状況ですから
さっさと軽自動車枠を撤廃すべきです