《 注記 》 最後に 【 訂正 】 があります。
太陽光パネルが半額になる、という新技術が開発された。
立命館大理工学部の村田順二助教や谷泰弘教授たちのグループが開発した。太陽電池の基板を製造するコストを半減することが期待できるという。──
シリコン基板は、結晶の大きな塊から切り出す。主にダイヤモンド粒子を付けた鋼のワイヤでのこぎりのようにして切断しているが、切断面が荒くなる。
グループは、ワイヤにダイヤモンド粒子を付けず、シリコンを溶かす硝酸とフッ酸の混合液を切断面に流し込む手法を開発した。ワイヤの直径を現在の120マイクロメートル(マイクロは100万分の1)から最小で20マイクロメートルにすることができ、削られるシリコン結晶の部分を大幅に削減できる上、切断面が滑らかでひびが入りにくく、基板の厚さを従来の100マイクロメートルから半分の50マイクロメートルにすることが可能という。
グループは、本年度内にクリスタル光学(大津市)とともに切断装置の試作機を開発し、来年度に販売を開始したいとしている。
( → 京都新聞 2012-06-13 )
コストが半分というが、どのくらいの値か? 現状を見るには、次の記事がわかりやすい。
英政府は5月24日、太陽光発電の固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ、FIT)の改定案を発表した。この記事にあるとおり、英国では「1キロワット時、約20円」という水準だ。しかも、記事の後半には、次の文句もある。
8月1日から、家庭用の小規模太陽光発電設備が設置されている場合に支払われる金額は発電量1キロワット時当たり21ペンス(約26円)から16ペンス(約20円)に引き下げられ、その後も3か月ごとに引き下げられる。ただし太陽光発電市場が減速した場合は据え置く。
全種別の支払い価格は引き続き消費者物価指数と連動して決まる。太陽光発電の余剰電力を売電した場合の買い取り価格は1キロワット時当たり3.2ペンス(約4円)から4.5ペンス(約6円)に引き上げる。
( → AFPBB News 2012-06-11 )
「投資金額に対して6%の収益が得られる」
「新しい価格は他のどの国と比べても恵まれており、高い収益をもたらす」
これが世界的な考え方だ。なのに、日本では「 1キロワット時、約42円」なんていう馬鹿高値にするんだから、笑ってしまいますね。
で、あまりにも馬鹿高値なので、参入予定の企業が続々と押し寄せている。今度は NTT まで参入するそうだ。
→ NTT、太陽光発電事業に参入=3年間で30カ所
NTT は大手だから報道されたが、他にも「金儲けをしたい」という、うさん臭い連中がわんさと押し寄せているそうだ。下記記事に詳しい。
→ 往年の大スターが太陽光発電事業に大集合
※ 「大スター」というのは「詐欺師」の皮肉表現。
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で、これを見て、「おれもちょっと儲けよう」と思う人も出てきているようだ。ま、その考え方が悪いとは言わないが、そのツケ払いを誰がするのかも、考えた方がいいだろう。結局は、詐欺師の利益の分は、国民がツケ払いする。少なくとも、政府が予想した「月 100円以下」という予想は、上記のように大量の詐欺師の参入で、もはや砂上の楼閣だ。予想の何倍もの金を払うことになりそうだ。ひどくなれば、月5万円だ。前に述べたとおり。
→ 太陽光の負担金が月5万円
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ところが、この余分な金は、すべて無駄な金である。なぜなら、こんなに補助金を出しても、それによる効果は皆無だからだ。旧式の技術をいくら普及させても、時代の流れに乗り遅れるだけで、何の意味もない。むしろ、新式の技術を採用するべきなのだ。それが、冒頭の新技術だ。
だから、今なすべきことは、「待つ」ことだけである。現状の技術は、英国からもわかるように、20円である。これが半額になれば、10円だ。こうなれば、火力発電と完全に対抗できる。(発電の不安定さを除いて、コストだけ考ええば。)
何もしないでただ待つこと。── これが正解だ。そして、2年ぐらいたって、新技術が普及したら、その新技術の太陽光発電装置を大量に普及すればいい。そのときのために、今は金を貯めておけばいい。
ちなみに、次のシナリオを考える。
(1) 日本は太陽光発電の補助金として、月 200円程度になるコストを、毎年加算していく。1年目は 200円、2年目は 400円、3年目は 600円、4年目は 800円。それだけやっても、旧式の技術なので、普及率はほとんどゼロ同然だ。(長年やって来たドイツでさえ、いまだ3%程度に過ぎない。)
(2) 別の国(たとえば韓国)は、そうしなかった。3年間は何もしなかった。そして4年目に一挙に新式の太陽光発電を普及させた。コストは 8円なのに、買い取り価格は 12円。利益率は何と 33%というボロ儲け。ものすごく大量の参入者が来て、あっという間に大量の太陽光発電が普及した。それでいて、国民の費用負担はたったの 4円だから、( 42円で買い取る)日本のように莫大な負担をするわけじゃない。……結局、費用負担は小さく、普及率は高まる、というふうに、いいことずくめ。それというのも、新技術を使ったからだ。そして、新技術を使えることができた理由は、「待った」からだ。
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結論。
賢明な人は、待つ。
馬鹿な人は、あわてる。あわてる乞食はもらいが少ない。
詐欺師は、馬鹿につけ込んで、馬鹿の金をすくい取る。
ここは一つ、「待つわ」という歌でも聴いてほしいものだ。 ♪
【 訂正 】 ( 2014-03-02 )
「半額なのは、パネルではなくて基板だ」という指摘があった。コメント欄( 2014-03-02 ) を参照。
もうずいぶん古い記事だし、本文やタイトルをいちいち書き直すのは面倒なので、ここに注記しておくにとどめます。
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太陽エネルギーの利用には賛成だが、FITは欧州で行なわれて失敗した実験。PVはまだ実用段階ではないので、実装ではなく研究開発に政府が投資すべきだ――と太陽光にも風力にも投資しているビル・ゲイツは言っている。 http://t.co­/zyAuT6qj
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ふうん。ゲイツも私と同じことを言っているんだ。私は 10年前(2002年)から、ずっと言っているけどね。
→ http://openblog.meblog.biz/article/4519785.html
勘弁して欲しいです。
補助金出されても太陽パネルは部品が10年しか持たないと聞きますがどうなんでしょうね。
屋根の負担にもなりそうだし、うちは南に隣家があるので反射光問題が出そうです・・。
実際にはパネルになるのにセル加工やパネル化加工費がかかるため、基板コストが半額になったところで価格は5〜10%程度しか下がりません。
管理人さんの誠実さを期待して、修正を希望します。