パナソニックが本社人員を半減するという。
パナソニックは2012年度中をメドに、本社の従業員約7000人を半減する方向で調整に入った。配置転換や希望退職を募り、3000〜4000人を削減する。ネットでは大騒ぎだ。「日本はどうなるの?」と。
削減対象となるのはパナソニックの国内従業員約10万人のうち、本社部門に所属する約7000人。調達や品質保証、情報システムなど事務部門4000人と研究開発部門2000人、生産技術部門1000人が主な対象になる見通しだ。
( → 日経 )
これと似た話は、前にも論じたことがある。「ソニー、パナソニック、シャープが大赤字だ」という話。
→ 家電各社が総崩れ
→ 日本企業の不振の原因
→ シャープの赤字はなぜ?
→ 日本の電器産業の没落
「赤字だ」と騒いでいるうちはまだよかったが、「大幅な人員削減」となると、高みの見物というわけには行くまい。
では、どうすればいいか?
──
私なりに対策を示そう。
まず、次の話を紹介する。
ジェトロと電気メーカー各社が、アフリカで商談会を開いた。何かの小話みたいだが、同じ話はしばしば聞く。
「日本製の携帯電話は、電話通話だけでなくネットも出来る。メールも出来る。ナビ機能など最新技術が満載だ」
すると、アフリカ各国の首脳は言った。
「わが国では、24時間電気の安定供給が無い。ネット環境も整備出来ていない。宝の持ち腐れだな」
ここで、韓国政府・韓国系電気メーカーが言った。
「わが社の携帯電話は、通話に特化している。値段も安い」
結局、この国々では「日本勢は韓国メーカーに惨敗」しています。
( → 教えて goo )
「サムスンは商品の現地化を大幅に進める。現地に開発要員を置いて、現地向けに特化した商品を開発する。そのための人員がたくさんいる。一方、日本は、日本向けの高機能な商品ばかりを開発するが、それは海外では受け入れられない」
このことは、(ニュアンスは違うが)「ガラパゴス化」という言葉で要約できる。
そして、その対立概念は、「グローバル化」ではなくて、「(さまざまな)ローカライズ」である。
たとえば、インド向けの高級冷蔵庫だ。日本企業は、さまざまな高機能を装備したものを提供した。一方、サムスンは、現地の声を聞いて、「カギの付いた冷蔵庫」を提供した。それは「メイドが勝手に食品を盗み食いしないように」という目的だった。そして、結果的に、サムスン製ばかり売れて、日本製は売れなかった……という話。
( ※ これは事実かどうか確認していない。小話かもしれない。ま、小話でもいい。同様の例は、枚挙に暇がないらしいから。)
──
以上の話を理解すれば、なすべきことはわかる。こうだ。
「高度な機能を開発するための技術者は大幅に減らしていい。一方、現地化(ローカライズ)のための技術者を、大幅に増やすべきだ。また、現地の声を聞く(マーケッティング)担当者も、大幅に増やすべきだ」
これを一言でいえば、
「技術者(など)の海外派遣」
である。つまり、技術者を解雇するかわりに、海外派遣すればいいのだ。当然、海外での工場建設も付随する。
──
この件は、経済学的には、次の箇所で述べた。
→ 空洞化とIT化
つまり、こうだ。
「円高になって日本は空洞化する」という心配が高まっているが、別に心配することはない。たしかにこれまでのような状況は続かないし、これまで得ていた市場を途上国に奪われていくだろう。
しかしながら、新興国では、新たな市場が誕生している。その新たな市場を食っていけばいい。今までの市場を途上国に食われるとしても、途上国に生じた新たな需要を食っていけばいい。
さて。この方針が妥当だということは、日産自動車の例からわかる。日産は、国内生産の比率をどんどん下げているが、海外での工場建設をどんどん増やして、グローバルでの生産量をどんどん増やしている。それは、新興国の市場を食っているからだ。
では、日産は、いかにして新興国の市場を食ったか? そのポイントは、二つある。
一つは、(前述のように)製品のローカライズだ。日産は各国の状況に合わせて、各国向けの仕様にした自動車を提供している。つまり、ローカライズをどんどん進めている。(サムスンが電気商品でやったことと同様だ。)
もう一つは、経営の現地化だ。多くの日本企業が、日本人の経営者を据えているのに対し、日産は現地人の経営者を据えている。それどころか、日産自体の社長が、外国人である。日産の経営者も外国人がたくさんいるし、会議も英語を使っている。「やりすぎ」と思えるぐらいだ。……だが、それだからこそ、各地の工場で「現地化」がどんどん進んだのだろう。
ひるがえって、日本企業のほとんどは「ガラパゴス化」だ。
・ 製品は日本仕様だけというガラパゴス化
・ 現地経営者も日本人というガラパゴス化
後者のひどい例は、次のページに書いてある。
→ ひどい日本人支社長たち
こんなこと(ガラパゴス化ばかり)では、とうてい、生き延びることはできない。「経営が苦しくなったから従業員の首を切る」というのは、方向が正反対だ。首を切られるべきは、まともな経営ができない経営者である。
一方、本社の社員は、「削減」ではなくて、「海外派遣」のための貴重な戦力だ。これらの戦力を海外に派遣するべきだ。(2年間ぐらいの海外赴任。)
と同時に、海外戦略のための戦力として、外国人を社員にするべきだ。(日産に中国人社員の成功例がある。後述。)
──
結論。
・ 家電企業が衰退したのは、経営判断のまずさが理由だ。
・ 人員の削減は、状況をさらに悪化させる。倒産への道。
・ 新興国の新たな市場を狙って、「海外進出」するべきだ。
・ 海外向けの製品の開発目標は、「現地化」だ。
・ 本社人員は「海外進出」「現地化」のために使え。
・ 企業そのものをグローバル化(脱ガラパゴス化)せよ。
・ そのための戦力として、外国人社員を増やせ。
【 関連項目 】
→ 空洞化( nandoブログ の各項)
【 関連サイト 】
日産自動車における中国人社員の成功例。
→ 先輩へのインタビュー:NISSAN
→ なぜ日産は中国で一人勝ちしたのか
→ 日産の中国人社員 (2012年04月28日 be)
→ 日産自動車 銭祝慧 - Google 検索
[ 余談 ]
Wikipedia 「赤の女王仮説」から。
「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)」という台詞から、種・個体・遺伝子が生き残るためには進化し続けなければならないことの比喩世界は大きく変動していくのに、日本企業は変化(進化)の度合いがあまりにも不足していた。そのせいで、激しい流れのなかで、取り残されてしまったのだ。
しかし、その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならないのだ。日産自動車のように。
