2012年05月24日

◆ 原発事故による死者

 原発事故による死者が次々と出ている。「原発による放射線では人は死なない」というのは事実だが、それにもかかわらず次々と死者が出ている。なぜか? ──
 
 原発事故による死者として、二つの例を示す。

 (1) 事故の十日後の死者

 朝日新聞・朝刊 2012-05-24 「プロメテウスの罠」に、次の話が出ていた。ある息子の例。(一部抜粋)
 父と母は、原発から4キロの双葉町に二人で住む。駆けつけようにも震災翌日の早朝から原発 10キロ圏内に避難指示が出ていて、入れない。
 おれが助けに行くのを待っているに違いない。「人の命に関わる」といえば入れるのではないか。
 だが、周囲からは「小さい子供がいるのに、おまえに何かあったらどうするんだ」と止められた。
 22日に役場に電話した。「自衛隊に頼んでもらえないでしょうか」
 翌23日、役場から電話があった。「二人の遺体がありました」
 父は2階の布団ののなかで死んでいたと聞かされた。津波は2階まで上がっていなかった。検案書には「衰弱死」とあった。死亡推定日は3月21日。10日間は生きていたということだ。
 つまり、10日めまでに双葉町に入れば、父を救い出すことができた。なのに、みんなが「危険だから入るな」と言ったから、双葉町に入らなかった。そのせいで、父親は見殺しにされた。
( ※ 自衛隊のかわりに自分が行けば問題なかった。そもそも、ほんの数時間ぐらいならば、たいした放射線にはならないから、もともと問題ない。問題があるのは、原発の建物に入った場合だけだ。)
( ※ なお、自衛隊は別に放射線防護服を着ているわけではない。放射線防護服なんてものは存在しない。分厚い鉛でもなければガンマ線を遮断できないからだ。……だから自衛隊のかわりに自分が行けば、父を救うことができた。)
 
 記事の写真もある。
  → 記事の写真

( ※ ついでだが、これより前の記事によると、救出されないせいで死んだ被災者はたくさんいたらしい。「放射線地域からの避難」という、生死に無関係のない作業に人手を取られたせいで、「原発近辺でガレキに閉じ込められた人の救出」という、生死に関係のある作業は停止してしまったからだ。)
 
 ──

 (2) 避難者の自殺

 今なお高齢者は、自宅に帰ることを禁止され、避難先で苦しい生活を送っている。そのせいで、うつ病になる人が続出し、一部では自殺者が出ている。
  → 妻が自殺 「何もかも失った」

 死亡率が2倍になっている、という報道もある。
  → 避難の特養高齢者死亡2倍

 ではどのくらいの死者が出ているか? この記事にある。
  → 震災関連死:9割が高齢者 
 この記事によると、「66歳以上が全体の約9割にあたる 1460人」とのことだ。これだけ大量の死者が出ている。(3月31日現在。現時点では 1500人を突破しているはずだ。)

 ──

 結論。

 「原発事故で死者は出ていない」という見解もあるが、それは間違いだ。原発事故では、大量の死者が出ている。
 しかしながらそれは、放射線による死者ではない。
 では何かというと、「放射線は怖い」と思って、過剰に反応することから生じた死者だ。
 比喩的に言うと、枯れ尾花には人を殺す力はないが、人が枯れ尾花を見て、「幽霊だ」と思って、怖がって、大急ぎで逃げ出すと、転んで頭を打って死んでしまうこともある、というわけだ。
 そして、そういう過剰反応による死者が、何と 1500人にも上っている。
 
 人を殺すのは放射能ではなく、放射脳である。今すぐこの状況を改めないと、避難先にいる高齢者がさらに何百人・何千人も死んでしまうだろう。
 これらの高齢者が自宅に戻っても、放射線で死ぬ可能性はゼロに等しい。100mSv以下では死ぬはずがないからだ。一方、自宅から追い出されれば、環境の悪化のせいで、何百人・何千人も死んでしまう。すでに 1500人が死んだのだ。
 政府、および、「逃げろ」と騒いでいる放射脳の人々は、大量殺人をなしている殺人者だ。



 [ 付記1 ]
 ただし私は、
 「高齢者を今すぐ自宅に戻せ」
 と叫んでいるのではない。
 「戻りたい高齢者は自由に戻れるようにせよ。各人の判断に任せよ」
 と叫んでいるのだ。
 人は自分で安全なところに済む権利がある。わざわざ危険な避難先に済むことを強制されるいわれはない。なのに、放射脳の人々は、高齢者を危険な避難先に強制移住させようとする。困ったことだ。

 なるほど、原発事故直後なら、強制疎開はやむを得なかっただろう。しかし、それはなるべく早く解禁するべきだった。そしてまた、取り残された人々への配慮もするべきだった。
 生きながら見捨てられて死んだ高齢者が哀れでならない。水もなく食べ物もなく、ひたすら衰弱して死ぬ、という目に遭うとは。
 
 [ 付記2 ]
 老人の死亡者が多いのを見て、「自然死(老衰死)では?」と疑う人も多いだろうが、そうではない。現在の避難者は、ひどい状況に置かれているせいで、体調を崩している人がたくさんいるのだ。こういうふうに「体調を崩した人がたくさんいる」という状況では、死者がたくさん出るのも当然だとわかる。
 なお、ひどい環境というのは、冷暖房が不備だったり、すきま風がひどかったり、風呂の追い炊きができないせいで冷たいお風呂に入ったり、寝床がひどくて眠れなかったり、……というふうな、あれこれの事情がある。うつ病患者が増えているのもうなずける。
 ま、人為的な虐待による殺人みたいなものです。
 
 [ 付記3 ]
 双葉町の避難者は、みんな仮設住宅に住んでいると思ったら、大間違い。いまだに避難所で共同生活を送っている人がたくさんいる。
  → 双葉町避難所・旧騎西高校
  → 埼玉県加須市の避難所
  → 埼玉県加須市が双葉町に乗っ取られそう
  


 【 関連サイト 】
自殺者の記事のリンクは、前にも記したので、ふたたび記そう。
  → 計画的避難区域で自殺者が続出
 


 【 関連項目 】

→ 避難所を閉鎖せよ
 ※ 避難所生活がいかに非人間的であるかを示している。
 
→ 復興の幻想を捨てよ
 ※ 「いつか除染が済んで復興する」という幻想のせいで
   死者が続出している。幻想を捨てるべし、という趣旨。
 


 【 関連書籍 】



プロメテウスの罠

posted by 管理人 at 21:48 | Comment(2) |  放射線・原発 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
上記で引用した記事のコピペ。

 ──

震災関連死:9割が高齢者 3月末時点1632人

毎日新聞 2012年05月11日

 復興庁は11日、東日本大震災で被災し避難所で体調を崩すなどして亡くなった「震災関連死」の3月31日時点の人数を1632人と発表した。4月末のまとめより14人増えた。初めて示した年齢層の内訳では、66歳以上が全体の約9割にあたる1460人を占めた。また約8割にあたる1324人は震災発生から3カ月以内に関連死と認定されており、発生から間もなく高齢者を中心に関連死が集中したことも分かった。

 関連死の原因・対策を検討する関係省庁の初会合で報告された。65歳以下の年齢層別の内訳は▽21歳以上〜65歳以下が168人▽20歳以下は4人−−となっている。

http://mainichi.jp/select/news/20120512k0000m040109000c.html
Posted by 管理人 at 2012年05月24日 21:58
見捨てられて死んだ夫妻の写真(生きていたころ)は、24日 現在、朝日のサイトで見られる。

 → http://digital.asahi.com/articles/list/prometheus.html
Posted by 管理人 at 2012年05月24日 22:44
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ