( ※ 前項 の続きです。) ──
原発や太陽光など、さまざまな発電方式がある。どれを選ぶべきかで、侃侃諤諤の議論が続いている。「原発再稼働に賛成/反対」とか、「太陽光発電を推進せよ/推進するな」とか。
とてもまとまりが付きそうにない。そこで、私が名案を出そう。こうだ。
「夏場以外に原発を稼働させるかどうかは、国民の一人一人が自分で決める」
つまり、ドイツの「グリーン電力制度」と同様に、各人が好きな電力(原発・太陽光など)を選べるようにする。安い原発や火力でも、高い太陽光でも、お好きなものを選べばいい。
具体的には、こうだ。
- 原発を稼働させる方がいいという人は、原発の電気を使って、原発電力の料金を払う。 23円 /kWh
- 原発を稼働させない方がいいという人は、火力の電気を使って、その割高な料金を払う。 30円 /kWh
- 特に太陽光発電を推進したい人は、太陽光発電の推進費用を払う。 60円 /kWh
- 原発を稼働させる方がいいという人は、23円 /kWh という低い料金で、安定的な電力を得られる。
- 原発を稼働させない方がいいという人は、「国民のすべてがこの意見に賛成すれば原発は止まる。原発停止が実現するので、これでいい。 30円 /kWh という割高な料金は、国民全員が合意するだろう」と思う。仮に全員が合意しなくても、賛同者が増えれば、原発の稼働は全国でたった一つだけ、というふうにすることもできる。
- 太陽光発電を推進したい人は、「太陽光発電の推進費用ならば、 60円 /kWh という馬鹿高値を払っても構わない」と思って、大喜びする。
だから、「各人が自分で決める」という制度を制定したあとは、それぞれの論者は「賛同者を増やそう」とするだけでいい。もはや「どの道を取るべきか」という論争は起こらない。単に自分の支持者を増やせばいいだけだ。
仮に、国民の声がどれか一つに集約すれば、その一つの道が取られるようになる。
・ 原発稼働で、低コスト (安全性はやや低い)
・ 火力発電で、やや高めのコスト (安全性は高い)
・ 太陽光発電で、超高値のコスト (環境に有利)
どれを取ろうが、それは国民の勝手だ。とにかく、「どれを取るか」ということで、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を続ける必要はない。単にその意見の賛同者を増やすだけでいい。
というわけで、 どれを取るかは、国民の一人一人が決める」という制度があれば、それで済むのだ。万事解決の名案。
( ※ ただし、あまりにも名案すぎて、実現性の可能性はほとんどない。なぜなら日本人は、「各人が勝手に決めていい」「自分のことは自分で決める」という方針を、嫌がるからである。その点、アメリカ人とはまったく異なる。)
[ 余談 ]
もしこの制度が導入されたら、どうなるか? 私の予想では、こうなるはずだ。
(1)「原発反対」と言っていた人は、「自分だけは原発稼働で原発料金」というのを選ぶはずだ。「他人は原発を使うべきではないが、自分だけは原発の安い料金を使いたい」というふうに。
(2) 「太陽光発電の推進」と言っていた人は、「自分だけは原発料金か火力の料金」というのを選ぶはずだ。「他人は太陽光発電を推進するべきだが、自分だけは原発や火力の安い料金を使いたい」というふうに。
というわけで、建前と本音が別れるので、国民の意見は「原発」と「火力」に集約されるだろう。原発は現状の半分を少し上回るぐらいが稼働するようになるだろう。
「どうしても原発はイヤだ」
という人も、いくらかは存在するだろうから、その人たちが高い料金を払うことで、いくらかの原発は停止することになるだろう。
ただし、そういうふうに本音をさらす人が多すぎるから、この制度は、実現性の可能性がほとんどない。
「原発反対」と言っていた人は、「あなたは原発で安い料金を、自分で勝手に選べますよ」と言われると、安い原発の料金を取ってしまうだろう、とわかっている。つまり、自分で自分を信用できない。だから、自分のことを政府に決めてもらいたがるのである。
幼児みたいなものです。
母 「どれでも好きなのを選びなさい」
子 「僕、わかんない。お母ちゃん、決めて」
[ オマケ ]
大阪の人のためには、もう一つ、別項目もメニューに加えたい。それは、
・ 原発停止と計画停電
だ。これが好きなら、これでもいい。死にたい人は勝手に死んでもいい。……だけど、死にたくなくても、橋下のせいで死ぬハメになるかも。これは個人では選択できませんね。橋下が選択するんだから。
ただ、よく考えたら、これはメニューには入らない。「夏の原発再稼働」はすでに既定の方針だからだ。本項で話題になっているのは、「夏場以外の時期における発電方式の決定」である。これは生死の問題ではなく、金の問題だから、どう決めてもいいのだ。(前項で述べたとおり。)
【 関連項目 】
「国民の各人が自分で料金を決める」
という制度は、すでにドイツで導入されている。
→ 電力購入を自由化せよ(グリーン電力制度)
この項目で示したように、「好きな電力を買える」という制度がある。次のようなものから好きに組み合わせて買える。
・ 太陽光
・ 風力
・ 地熱
・ 小型水力
・ バイオ
・ その他
ちなみに、環境保護団体のグリーンピースの例では、6割がコジェネで、3割が小型水力で、太陽光はたったの3%弱である。
グリーンピースでさえ、超高額な太陽光なんか買わない。「自分で好きなものを買え」と言われれば、太陽光なんか誰も買わない。(お茶を濁す程度の少量を除けば。)
http://www.michinokutrade.jp/battery/
太陽電池と組み合わせると家庭用なら十分まかなえます。電力会社要らずにできますね。
既にソーラーパネルを設置している家庭へも売り込めます。
ビジネスチャンスだと思いますが、どうでしょうか。^^;
国内外のグリーン電力制度(プログラム) に関する調査
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/images/040903green.pdf
グリーンPPS検討会
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g51116a01j.pdf
なお、これらは消費者に選択肢を提供するという点では面白いのですが、全面的な電源選択に適用しようとすると無理があります。
【太陽光を選ぶ人が少数の場合】
→全体の需給バランスは火力などで取れるので、太陽光と火力燃料費の差額(+30円/kWh程度)だけ払ってもらえば供給可能
【全員が太陽光を選んだ場合】
→需給バランスを取るのに膨大な蓄電池や揚水発電などが必要になるため、価格は少なくとも10倍以上。
ま、もちろん実際には消費者はそんな行動はとらないわけですけどね(^^);。
野暮な話ですが、自由化や電源選択の手法に“これですべて解決”というなんてものはありません。これまで15年以上世界的にそうでしたし、多分この先も何十年かは。もどかしくても折衷案と見直しでいくしかないのが現実だと思います。
その分、彼等は屁理屈をこね回して猛反対するでしょうが。(笑)
> 2.原発を稼働させない方がいいという人は、火力の電気を使って、その割高な料金を払う。 30円 /kWh
> 3.特に太陽光発電を推進したい人は、太陽光発電の推進費用を払う。 60円 /kWh
上記のように提言されている選択肢ですが、原発事故発生時の補償費用や発電後に出てくる放射性廃棄物処分費用が含まれているようには見えません。
その場合、1を選択した人は、事故が起きなければ儲けは自分の懐に、事故が起きれば福島第1の時の様に補償は国に、というずいぶん身勝手なことになってしまいます。
(廃炉費用やそれまでの放射性廃棄物処分費用については、全員がそれなりの便益を受けたものとして算定から除外)
そこで、南堂様が去年の今頃に述べていた大幅に料率を上げた原発保険料を追加するというのはどうでしょうか。
その場合、少なくとも10〜20円ほど増加することになりますが、より妥当になるかと思います。
危険な原発は別項で示したとおりで、これは再稼働しない。
それ以外の原発は、保険料の上乗せがあっても、1〜2円で済みます。廃炉費用やそれまでの放射性廃棄物処分費用も、かなりの額になりますが、火力の燃料費増加分(年間3兆円)にくらべると、かなり小額で済みます。また、将来的には、ロボット技術で低コストの処理が可能になるでしょう。
なお、私の方針は、「水棺の安全装置」が前提です。
ある料金を安くしすぎると、会社が損します。
ある料金を高くしすぎると、他社に市場を奪われます。……政府は近年中に、電力市場を自由化する見込み。