美人の市議 が当選無効になった。
「超美人過ぎる市議」として話題の新人議員が異例のダメ出しを食らった。2月に行われた埼玉県新座市議選で初当選したタレント、立川明日香市議(27)が20日、市選挙管理委員会から当選無効との決定を受けた。これについて、賛否両論が見られる。
公職選挙法が定める「3カ月以上の居住実態」が認められず、選管が当選無効の決定を下した。選管によると、立川市議は、昨年9月20日に東京都内から同市に転入。だが、今年2月まで電気や水道の使用はほとんどなかったことなどから、「居住実態がない」と判断した。
( → zakzak )
→ 「居住の実態」は必要だと思う?
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しかし、私の見解を言えば、以下の通り。
電気や水道の使用はほとんどなかったことを、どうやって証明するのか? 次のいずれかだ。
・ 選管が自主的に証拠を入手する
・ 本人に証拠提出を命じる
そのいずれにしても、問題がある。
(1) 選管が自主的に証拠を入手する
この場合には、選管が勝手に個人情報を取得したことになる。警察でもない選管が、(捜査権のないまま)勝手に個人情報を入手することは、明らかに違法だろう。
ちなみに、そこらの誰かが、「前田敦子の電気や水道の使用量を知りたいから、その情報を得る」としたら、違法だ。前田敦子はその個人情報を漏らされない権利がある。その権利を侵害することは、警察でなければ、違法である。
したがって、選管が自主的に情報を入手したなら、選管は違法行為によって証拠を入手したことになるので、その証拠には証拠能力がない。ゆえに、選管の決定は無効となる。
(2) 本人に証拠提出を命じる
本人に証拠提出を命じる場合には、あらかじめ「その証拠は不利に扱われることもあります」と告知しておく必要がある。さもないと、自発的に提出したことにならない。
今回の場合には、本人はそのことを理解していなかったから、明らかに条件を満たしていない。選管は「だまし討ち」によって証拠を入手したことになる。だまして何かを得たなら、詐欺も同様だ。その場合、その証拠には、証拠能力がない。ゆえに、選管の決定は無効となる。また、得た情報を勝手に公開することは、個人情報の侵害に当たるから、それ自体が違法行為である。
結局、(1)(2)のいずれの場合にも、選管の決定は(法的に)無効となる。ゆえに、今回の例では、市議は「当選無効」を「取り消せ」と訴えることができる。裁判になれば、勝訴するだろう。
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では、選管は、どうすれば良かったか? あらかじめ選挙の前に次の方針を示せば良かった。
「3カ月間の居住実態が必要です。それを証明するため、3カ月間の電気・水道料の領収書を、立候補のときに添付してください」
このようにあらかじめ明示しておけば、その条件を満たさない場合に、「当選しても無効」という裁決を出すことができる。
一方、今回のような事例では、事後的に違法に証拠を入手したので、(1)(2)のいずれでも、選管の決定は無効となる。
今回の場合、選管の決定が有効になるとしたら、次の条件を満たす場合だけだ。
「市議が自発的に、自分の領収書を提出して、『私は条件を満たしていないので、当選を失格にしてください』と申し出た場合」
このように自発的に申し出た場合には、当選を取り消すことができる。
一方、それ以外の場合には、選管には権限がない。証拠を事前に(合法的に)入手していなかったからだ。
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結論。
事件の是非や、違法性の有無を考える前に、「個人情報の秘匿」という大条件を尊重するべきだ。この大条件を、人々はないがしろにしすぎる。そのせいで、違法な方法で、個人情報を入手したりする。「正しいことのためであれば、違法に証拠を入手してもいい」というふうに。
そんなことではいけないのだ。たとえ正しいことのためであっても、証拠の入手は合法的になす必要がある。違法行為を摘発するために、自らが違法行為をなす、というようなことであってはならないのだ。
Google であれ、選管であれ、人々は「個人情報の秘匿」というものをないがしろにしすぎる。もっと「個人情報」というものを尊重するべきだ。……特に、現代のように、スマホから個人情報がやたらと漏れてしまうような時代には。
※ 特に Android はひどい。個人情報のダダ漏れだ。
→ Google 検索1
→ Google 検索2
[ 付記1 ]
そもそも、「居住実態の有無を調べる」というようなことは、プライバシーの侵害に当たるから、選管はそんなことを事後的にいちいち調べる権利はない、と思える。
それを調べるのだったら、全議員について、いちいち居住実態を調べるべきだろう。探偵を使って、本当に居住しているかどうか、生活実態を調査するべきだ。しかし、そんなことは、明らかにプライバシーの侵害であり、許されまい。
とにかく、やるとしたら、彼女だけでなく、全議員を対象にするべきだ。特定の個人についてだけ調べるなんて、美人に対するやっかみとしか思えない。
最初に選管に訴えたのは、市民であるようだが、選管はそんな訴えを却下するべきだった。2ちゃんねらーみたいな DQN が訴えたからといって、選管は DQN の言うことを聞く必要はない。もし聞くなら、選管自体が DQN になってしまったことになる。
とにかく、全議員でなく美人に限ってプライバシー調査をするなんて、選管によるストーカー行為だ。あまりにも馬鹿げている。ストーカー選管。
[ 付記2 ]
そもそも、「居住実態がどうのこうの」というのは、選挙権者があちこちに出向いて二重投票をすることを阻止するために生じた条項だ。
被選挙権者の場合は、二重立候補はありえないのだから、「居住実態がどうのこうの」というのを厳密に調査する必要はない。実際、市長や知事や国会議員ならば、選挙区内の居住は必要条件とされない。
「居住実態がどうのこうの」というのは、あくまで二重選挙権を防ぐためのものなのだから、本件のような場合には、もともと居住実態なんかはどうでもいいことなのだ。仮に居住実態が大事なことなのであれば、市長や知事や国会議員もまた居住実態を要件とするべきだし、その場合、ほとんどの国会議員は失格となる。(東京の議員会館などに居住しているので。)
形式的な資格条項に目くじらを立てると、物事の本質を見失う。仮に法を杓子定規に適用するなら、公務員に対して残業手当を支払わないという、野田首相や橋下市長を逮捕することの方が、先決だろう。
[ 付記3 ]
さらに言うと、「居住実態」云々は、「住民票だけを移した」という「ペーパー転居」を否定するためにある。今回の場合は、実際に住居があるのだから、ペーパー転居ではない。
とすれば、そのあとは、生活の大部分が他の場所であってもなくても、どっちでもいいのだ。「ペーパー転居」ではない、ということが判明しているのだから。
「ペーパー転居」は明らかな違法行為であるが、実態としての住居があるのならば違法性はない。なのに、それ以上の生活実態を調査するのは、プライバシーの侵害でしかない。覗き見趣味。ストーカー。
[ 付記4 ]
似た例で、次の例もある。
「学生が、地方から都会に出たあとで、住民票を移さずにいる。そのまま、地方で選挙権を行使する」
これもまた、「居住実態が無い」という理由で、違法行為だ、ということになる。(選管の理屈によれば。)
しかしここでは、何ら実害がない。というのも、「二重投票を防ぐ」という本来の目的は達成されているからだ。それ以外は、地方で投票しようが、都会で投票しようが、本人の勝手なのだ。
今回の事例も同様だ。「二重投票を防ぐ」という本来の目的が達成されていれば、居住実態ががどこにあろうと、たいして差はないのだ。だからいちいち咎める必要はないのである。
( ※ 別に社会に害悪をなしているわけではない。その点、「ペーパー転居」という不正行為とは異なる。これはほとんど二重投票に近い。)
【 関連サイト 】
興味深い情報がある。引用しよう。
選管委員による証人尋問は、公選法に基づき嘘をつけば偽証罪に問われるほど重いもの。その中で、立川さんの夫と義理の母親の「新座市に住み始めたのは当選後」という証言が信憑(しんぴょう)性が高く、採用されたという。法的に言えば、家族の証言は、証拠能力を持たない。だから選管は家族の証言を却下するべきだった。その逆で、家族の証言に基づいて決定するというのは、とんでもないことだ。
「家族の証言との整合性はどうなるのか?」
こう尋ねたとき、彼女はは少し言葉を詰まらせたが、意を決したように話し始めた。
「実は…。今、夫と離婚調停中なんです。夫は子供の親権を主張している。だから義理の母も、私にとって不利な証言をします。このことは選管に事情を聴かれたときに何度も訴えたのに、悲しいです」
たとえ離婚調停中であっても、自分の夫や義理の両親には子供を会わせてあげたい。そんな彼女の優しさから出た行動が新座と練馬の二重生活だった。新座では生活実態が薄いものになり、選管は選挙のルールとして彼女の二重生活を認めなかった。
( → MSN産経 )
( ※ ともあれ、選管のやっていることは、あらゆる点でデタラメであり、違法であるか違法スレスレだ。このような選管こそ犯罪的なので、市議は選管を逆に告発するべきだろう。「違法な証拠収集とプライバシーの侵害」という理由で、警察に出向いて、選管を告発するべきだ。そうすれば選管が「ごめんなさい」と謝るかもしれない。)
[ 余談 ]
蛇足で言えば、この美人市議は、騒ぎを奇貨として、他の都市で立候補した方がいいかも。すでに「美人すぎる市議」で名を売ったのだから、どこでも当選できそうだ。
ただ、それまでは、「ストーカー選管と戦う市議」として、本項の内容で正義を訴えた方がいいだろう。
おそろしやぁ〜