原発停止のコストアップは、どのくらいか? 池田信夫は推算値で「4兆円」と示した。これに対して橋下が「そんな数字は一つの見解であり、信じることはできない」と否定的に扱った。
池田氏は原発を止めるとコストが4兆円増なると言うが、それは池田氏の見解。そのコストを確かめるために、政治家は検討委員会を作り、そこにメンバーを集め意見集約する。池田氏は原発を止めれば4兆円増と言うが、これから原発を維持することの方がコスト増だという見解も山ほどある。 posted at 21:36:53これは橋下が逃げているようだ。いくら何でも「これから原発を維持することの方がコスト増だという見解も山ほどある」というのは、おかしい。原発はすでにできているのだから、それを建設する費用は勘定しないでいい。
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今の段階で池田氏の4兆円増を前提とするわけにはいかない。結局、電力供給体制を変えるのか変えないのか、変えるとなれば、言葉だけを吐いていては変わらない。エネルギーを込めた政治運動が必要となる。そして変えるという方向になれば、専門家が具体策を詰めて行く。 posted at 21:38:33
( → twilog )
比喩的に言うと、いったんベンツを 1000万円で買ってしまったら、ベンツを使わなくてもベンツのコストはかかっている。「使わないから金を返せ」と言うことはできないのだ。また、売りたくても、風評被害のあるベンツは売れない。こうなったら、ベンツを使うのがコスト安だ、という計算も成り立つ。「ベンツを維持する費用がかかるから、新品のクラウン(500万円)を買う方がいい」というような計算は成立しないのだ。
( ※ 廃炉の費用を含めても、原発の方がずっと安い。原発の費用のほとんどは、維持費ではなく、建設費である。それを抜きにして考えれば、原発停止よりは原発稼働の方がずっと有利だ。追加コストはごく小額で発電できるからだ。)
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ただし、橋下の計算がおかしいからといって、池田信夫の計算が正しいということにもならない。池田信夫の4兆円という数字に当たってみよう。
みずほ総研の調べによると、2011年の燃料輸入額は21兆8000億円と、前年から4兆4000億円も増えた。GDP(国内総生産)の0.9%が燃料に消えたことになる。言っていることがおかしい。まず、
( → 池田信夫 Newsweek )
「GDP(国内総生産)の0.9%が燃料に消えたことになる」
というのは誤記だろう。「燃料に」ではなくて、「燃料費用増加に」である。(燃料代がたったの 0.9% ならば、ありがたすぎて、涙が出てしまう。)
肝心の点で言うと、「2011年の燃料輸入額は21兆8000億円と、前年から4兆4000億円も増えた」というが、これは燃料価格の上昇を含む額だ。石油価格を調べると、かなり変動が多いのだが、だいたい1年間で1割前後上昇しているようだ。( WTI 価格とスポット価格 → 出典 )
21兆8000に対して、1割のアップなら、2.2兆円だ。これを 4兆4000億円から引けば、2.2兆円へと半減する。この分が「原発停止」にともなう正味の分だろう。(概算で)
ただし、次の要因もある。
・ 3月10日までは、原発は停止しなかった。
・ 事故以後は、産業活動が低下したので、燃料消費量そのものが減っている。
これらの量は、計算しがたい。自動車産業の例で言うと、最初は生産量が激減したが、年の後半には回復しているので、生産台数はほとんど低下しなかった。
ともあれ、いろいろと計算しがたい量があって、「どれだけ増えたか」という額は、かなり曖昧になる。2〜3兆円程度、というふうに概算できそうだが、かなり誤差が大きそうだ。
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池田信夫式の計算は、あまりにも当てにならないので、一切、捨ててしまおう。私なりに、独自の計算で、精確な値を推算する。
・ 日本の電力会社の売上高の総額を求める。
・ 今後に予定される 17%の値上げを織り込む。
これによって、
売上げ高 × 17% = 負担増加
というふうにして得られる。かなり正確だろう。
そこでデータを得よう。まずは東電のデータ。
→ 東電の売上げ高 …… 5.3兆円程度 (2011年3月期)
→ 東電の発電量と他社の発電量 …… 東電は全体の 28%
この二つから推算して、日本全体の電力の売上げ高は
5.3兆円 × 100 / 28 = 18.9兆円
これに対して 17% を乗じると、
18.9兆円 × 17% = 3.2兆円
これが結果だ。
結論。
電力会社は今年中に 17%の値上げを見込んでいる。これによって電力会社の売上げは 3.2兆円伸びる見込み。
この 3.2兆円という額が、「原発停止にともなうコストアップ」の額である。
( ※ ただし、燃料価格の上昇分(1割程度)を含んでいるかどうかは、不明。たぶん、含んでいないはずだ。というのは、今回の値上げの名目は、「原発停止にともなう、火力発電の費用増加」であるからだ。また、17%という値は、前にもいろいろと推算された値にほぼ一致する。まず間違いない値だろう。……若干の誤差を除いて。)
[ 付記 ]
結局、池田信夫も橋下も、どっちも計算がデタラメすぎる。
喧嘩慣れした両雄の対決だが、「トラとライオンの戦い」というよりは、「バカとアホの無意味な争い」に近いようだ。漫才みたいなものですかね。
[ 余談 ]
前項では、橋下が次のツイートをしていた。
池田氏の自信も凄いな〜 自分以外は全てバカ。おかんに教わったことを思い出す。他人をバカだと言う本人が一番バカだと。そう言えば僕も週刊誌にバカの連呼をしたな〜二人とも同様ですね。言葉が自分自身に降りかかる。
そう言えば、前に、橋下が記者会見で、「バカ」を連発していたことがあった。これだったかな?
→ http://www.youtube.com/watch?v=dQG77j7uvqs
あ。……私はその、別に、二人のことをバカと呼んでいるわけじゃないんだからねっ。

→ 「すべての原発停止なら…年間3兆円以上の負担増」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110607-OYT1T01068.htm
家庭向けの価格は 24円ぐらいだし。
企業向けの価格は 9円+定額料金で、約 15〜18円ぐらいだし。(別途、大口割引あり。)