2012年04月10日

◆ 日本の電器産業の没落

 日本の電器産業の各社が、テレビ事業の不振のせいで、とんでもない没落状態になっている。その理由を探ると、冗談みたいな意外な真相がわかる。 ──
  
 電器会社がリストラの嵐だ。詳しい話は記事にあるが、一部だけ抜粋しよう。
 ソニーとパナソニック、シャープはテレビ事業の不振で24年3月期に合計1兆3千億円もの最終赤字に沈む見通しだ。パナソニックはこれまでに3万人超の人員削減を進め、シャープも労働組合に5月からの賃金カットを提案した。
 3社はいずれもテレビ事業への集中投資が裏目に出た共通項を持つ。
 この10年間、日本企業が行ったリストラで多くの技術者がサムスン電子などの韓国企業に流出した。結果的に韓国エレクトロニクス産業は世界の頂点に立ち、次の覇権を狙う中国企業も「日本の技術者に照準を定めている」(業界関係者)という。その場しのぎのリストラを繰り返すだけでは、再び貴重な人材を失う危険性が高まりかねない。
( → 産経 2012-04-09


 どうしてこういうひどいことになったか? すぐ上の話を読めばわかる。これだ。
 「3社はいずれもテレビ事業への集中投資が裏目に出た共通項を持つ」


 ここで言う「テレビ事業への集中投資」とは、何か? もちろん、地デジ用のテレビ設備だ。地デジ開始にともなって、大量のテレビ需要が出るというので、各社とも集中投資をした。で、政府が地デジ補助金を出たこともあり、2010年秋には品不足になったし、その時期には各社ともボロ儲けだった。
 ところが、補助金がなくなると、需要は急激に縮小した。さらには、2011年7月に地デジが開始したあとでは、もはや需要一巡となり、誰も買わなくなった。その後は、過剰設備で、価格は暴落。大量の設備が無駄に残った。かくて、上記のような言葉が出るに至った。

 ここまで見れば、状況悪化の理由はわかる。
 「政府が地デジを 2011年7月にこだわって、需要を集中させたから」

 どうせなら、時期をもっと延期すれば良かった。また、「アナログ廃止」なんかしないで、「アナログ放送も当面は延長」にすればよかった。そうすれば、需要が集中することもなかったし、過大な設備投資がなされることもなかった。それなら、今回のように、大量のリストラも起こらなかった。
 
 要するに、今回の大量のリストラ(およびそれをもたらした大赤字)は、政府の地デジ政策だったのだ。政府があれほどにも地デジを推進したから、需要が一時期に集中して、こういう馬鹿げた結果になった。
 で、メーカーも、それに反対すればいいのに、「テレビ需要が増えるから大歓迎」と賛成していた。実際には、人々が買うテレビの量は決まっているから、一時に需要が増えれば、その後は需要が急減するだけだ。需要の総量は変わらないまま、一時期に集中するか平準化するかという違いがあるだけだ。なのに、メーカーはそのことに気づかないまま、「地デジのおかげで買い換え需要がうんと増えるぞ。これで大儲け」とほくそ笑んで、歓迎した。で、2010年秋には、もくろみ通り、大儲けした。しかしそのあとで、当然のことながら、需要がなくなって、大赤字となった。

 以上のことを一言でまとめれば、こうだ。
 「朝三暮四の猿

 政府も愚かだが、それに輪をかけて愚かなのが、猿どもだ。経営がどうのこうのと考える前に、まずはその猿知恵を何とかするのが先決だろう。
  

     「おいしい実を上げます」
     「くださーい」
     「1時間ごとに、ひとつずつ上げます」
     「ヤダー、そんなのヤダー」
     「朝にいっぺんに全部上げます」
     「わーい、嬉しい、ばんざーい」
 
     「夜になりましたが、夕食はありません」
     「えー、ヤダー、そんなー。餓死する!」




 【 関連項目 】

  → 先端技術の国外流出

  ※ 日本企業は技術流出によって、「自分で自分の首を絞めている」。
    その愚を指摘する。その根源はどこにあるか? 貧すれば鈍す、かな。
    かくてますます「自分で自分の首を絞めている」というふうになる。
    自殺ですね。……で、企業は本項で示したとおり、どんどん没落する。
posted by 管理人 at 00:25 | Comment(3) | コンピュータ_03 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
技術者だけではなくノウハウの流出は稚拙な特許戦略も寄与しています。
設計、構造特許は侵害立証が容易ですが、先行技術との差異は困難です。しかしレシピとなるノウハウ特許は製品からの侵害立証が困難ですが、特許は書きやすいと相反します。
技術者へ課した特許出願ノルマはノウハウの流出を誘起しました。
特許登録されたノウハウを使ったことを製品から立証する事が不可能なので日本の特許を読む事さえできればばノウハウの宝庫を探しあてたようなものです。
国内の競争だけなら影響は小さかったでしょうが、海外との競争となれば話は変わります。

テレビの戦略はリーマン後、それに乗らざるを得なかった事情もあります。豊作貧乏になることはわかっていても参加しないと退場するしかない背水の陣でした。
これからはG20に打って出るしかないでしょう。
いずれ冬の時代です。
Posted by 京都の人 at 2012年04月10日 06:37
参考記事。
  → http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120410/212211/

「SDPは第10世代工場を運営する生産子会社であり、設計や開発などの機能を持たず、IP(知的財産)なども所有しない。シャープにとっては、「資金だけ入れてもらい、技術は流出しない」という枠組みとなっている。シャープには非常に有利な条件と言える。」
Posted by 管理人 at 2012年04月12日 12:05
>京都の人
>ノウハウの流出は稚拙な特許戦略も寄与
全くの同意です。
特許は単なるノウハウの公開場になっています。
ノルマに追われた設計者が戦略もなしに
実際に使っているノウハウをそのまま特許として書いてしまうからです。
枝葉の話は出願しても、幹の部分は秘伝にしておくべきです。
というのも、これからの競争相手は
特許を守らない輩(会社単位ではなく国ごと)が相手なのですから。
Posted by M at 2012年04月12日 22:49
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