ちょっと古い話題だが、東電はスマートメーターを強制配備する予定らしい。
東京電力(TEPCO)が2019年3月までに次世代電力計「スマートメーター」1700万台を顧客世帯に設置し、電力使用の効率化を目指す。政府もこれを後押ししている。
( → AFPBB 2012年01月22日 )
経産省がスマートメーターの普及を急ぐのは原発への依存度を下げることに伴い、電力需要を抑える必要があるからだ。普及が進めば刻々と変わる使用量を利用者と電力会社の双方が把握できる。電力会社は時間帯ごとに違う料金体系を組み、利用者に時間帯を意識した電気の使い方を促すことが可能だ。しかしながら、東電のいうスマートメーターとは、まともなスマートメーターではなく、ただの時間別の電力計測器らしい。池田信夫が指摘している。
東電は二二年度までに、中電は二三年度までに全契約者へのスマートメーターの設置を終えることを目指す。切り替えは通常十年に一度のメーターの交換時期を利用する考え。
スマートメーターの価格は一台あたり欧米では一万円程度といわれ、現行のメーター(約七千円)より高い。電力会社は費用を電気料金に上乗せして回収する仕組みだ。
ただ、太陽光パネルなどとつなぎ家庭内の電力を制御するHEMS(家庭用エネルギー管理システム)とスマートメーターを組み合わせることでさらに省エネを進めることができる。
( → 東京新聞 2012-03-13 )
技術が東電の独自規格で、電力使用量を30分ごとに東電に送る機能しかないことだ。このように遠隔検針だけのために2000億円以上かけてメーターを取り替えるのはナンセンスだ。大事なのはこの機会にスマメをHEMS(住宅エネルギー管理システム)などの中枢と位置づけ、住宅やビルの電機製品を情報化することだ。実は、「東電が強制普及させるというスマートメーターは、技術的に遅れている」という話は、私は前に述べたことがある。
( → 池田信夫ブログ 2012年03月26日 )
→ スマートメーターの強制普及 (2012年02月28日)
これは 2月28日の記事だが、その後に判明したところでは、「技術的に遅れている」どころか、「技術的には何もない」に等しいことが判明したわけだ。ただの時間別の料金メーターなのだから。
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ただし、である。前項でも述べたように、「時間帯別の料金制度」は好ましいことだ。また、そのような測定器を配備することも、好ましいことだ。
では何が問題か? これを「スマートメーター」と呼ぶことが問題だ。これはスマートメーターじゃなくて、ただの「時間帯別の料金計測器」であるにすぎない。そう理解するべきだ。
そして、そう理解すれば、どうするべきかもわかる。こうだ。
「強制配備はしない。希望者のみに配備する。配備した場合には、時間帯別の料金を設定し、同時に、計測器の費用を基本料金に含めて値上げする」
これは何かというと、次のことと等価だ。
「時間帯別の料金制度というプランを用意して、それをお好みで選択できる」
つまり、「時間帯別の料金制度」を選択したい人は選択する。選択すれば、そのような料金プランが導入される。昼間に節電して、夜間に電力消費をすれば、その人は料金が割引になる。ただし、計測器の配備が必要なので、計測器の分、基本料金は上がる。
一方、選択したくない人は、選択しない。現状維持となる。
このようなプランを設定することは、それはそれで好ましいことだ。確かに節電を推進することになる。
ただし、である。そのようなプランは、すでに用意されている。
→ 電化上手(季節別時間帯別電灯)
見ればわかるように、基本料金がかなり高い。「夜間は安くて、昼間は高い」という点ばかりを強調しているが、「基本料金が高い」という側面もある。そして、それは、メーターの料金があるせいだろう。
結局、東電のやろうとしていることは、「スマートメーターの配備」を名目に、「時間帯別の料金制度」というプランを強制導入して、「そのためのメーターの料金」という名目で、「基本料金の大幅引き上げ」を狙っているものだ。
つまり、「省エネ」という名目で、どさくさにまぎれて、「基本料金の引き上げ」を狙っている。これが真相だ。
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このような馬鹿げたスマートメーターもどき(?)なんかを強制配備する必要はない。その点では、池田信夫が 3月26日に述べたとおり。「こんなのよりも HEMS のスマートメーターにしろ」というふうに。
だが、私は 2月28日に、次のように述べている。
「 HEMS なんてのはもともと時代遅れである。そんなものよりも、もっと先進的なスマートメーター(いわば超スマートメーター)を配備せよ。ただしその規格はまだ決まっていないから、その規格を決めるのが先決だ」
では、その規格(いわば超スマートメーター)はどんなものか、と言えば、次の項目で示したとおり。
→ スマートグリッドと家電(HEMS)
つまり、スマートメーターだけで規格を定めるのでなく、家電の側と協調するようにシステム全体を統合的に決めるべきだ。
簡単に言えば、スマートメーターは、家庭における電力機器をネットワークでつないだときのコントロールセンターであるべきだ。だから、単に電力消費を監視するだけのようなメーターでは不十分だし、電力の川上と川下の間で情報連絡をするだけでも不十分なのだ。むしろこれらの全体を統合的に処理する必要がある。
そして、そのためには、多大なソフト開発が必要だ。それは今後、急激に進むだろう。そして、そのようなソフト開発もないまま、単にハードだけを配備しても、ハードはただのゴミになるだけだ。
【 関連サイト 】
東電のスマートメーター導入を「利権」の面から批判する見解。
→ 目的は参入障壁 小口利益確保
池田信夫の見解
→ 東電のスマートメーター「国際入札」は延期して見直せ (上記)
→ スマートメーターのゼネコン構造
【 関連項目 】
池田信夫は上記項目(最後)で、「リアルタイムの計測が必要だ」と述べているが、私はこれには批判的だ。前項で述べたとおり。
→ スマートメーターで節電? (本文とコメント)
つまり、家庭は、こまめに指示を受けて節電する必要などはない。メーターなんかいちいち見る必要もないし、夏のピーク電力時にいちいち節電する必要もない。節電するべきなのは、家庭ではなくて、企業である。
何か話を勘違いしている人が多いようだが、ピーク電力の問題を回避するには、家庭が少しぐらいクーラーを節電したって、無意味だ。焼け石に水にすぎない。ピーク電力の問題を回避するには、企業の側が節電するしかない。企業が海のように莫大に浪費しているときに、家庭がバケツ一杯の努力をしても無意味なのだ。
家庭が節電のための努力をするとしたら、それは、ピーク電力の回避のためではなくて、「温暖化ガスの削減」のためだ。で、そのために、少しはスマートメーターが役立つかもしれない、というだけの話。
なお、「太陽光発電や風力発電の電力変動を減らすため」という目的のためにも、スマートメーターが有益と見なされるが、これはむしろスマートグリッドの問題だ。この件は、前に示した。
→ スマートグリッドという幻想
→ スマートグリッドと家電(HEMS)
また、「太陽光発電や風力発電の電力変動を減らすため」については、次項でも示す。
→ 超スマートメーター (次項)
[ 付記 ]
すぐ上で示した、スマートグリッドに関する二つの項目の話をまとめると、次のように言える。
・ 家庭の需給調節のために人間が努力する需要抑制は無効かつ有害。
・ 家庭の需給調節のために機械が自動制御する需要抑制は有効。
そんなことよりも広報が「明日のピーク予想」を毎日出し、その時間帯は冷房・冷蔵庫等の必要最低限の電化製品以外の電源を切れば充分だと思います
スマートメーターは電力自由化を阻む「トロイの木馬」 2012.03.15(木)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34773
東電のスマートメーターは、天下りした役員のいる子会社に、不当な利益を稼がせるための構造になっている。(東電本体では過剰な利益を得ることができないので、高価なスマートメーターを東電が購入することで、利益を子会社に移転する。その利益を、役員たちが分けあう。)
この目的のために、次の措置を取った。
・ 国際標準とは異なる、独自規格。(ガラパゴス規格)
・ 単価は異常に高い。
・ 規格決定から入札まではごく短期間。
(応札できるのは情報を得ていた子会社だけ。)
・ 無線LANを使えば低コストなのに、独自の光ファイバーを
使うという、すごい高コストな独自路線も推進。
最後の件については、孫正義が指摘して、池田信夫が紹介した。
→ http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51793076.html
話は上記で紹介したとおり。詳しくは、週刊ポストを参照。
→ http://www.news-postseven.com/archives/20120703_125887.html
以下、引用。
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東京電力などは、通信機能を持った次世代の電力計「スマートメーター」の導入計画を見直す方針を明らかにしました。
東電は、通信機能を備えて電力の使用状況をきめ細かく管理できるスマートメーターを2023年までに管内の全2700万戸に導入する方針です。このメーターは東電独自の仕様とする計画でしたが、これを改めてコストが安い型を採用できるようにするほか、東電以外の新規参入業者も使いやすいようインターネットの標準的な通信規格を採用します。
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→ http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5079185.html