2012年04月02日

◆ 産業用電力料金の値上げ

 東電が産業用の電力料金を値上げした。これは困ったことではなく、歓迎するべきことだ。どちらかというと、もっと大幅値上げをするといい。なぜなら現状では、産業用の電力は、変に安い料金となっているからだ。 ──

 前項の記述は間違っていたので、取り消します。
 あらためて本項で記述し直します


 ──
 
 前項では、次のように述べたが、間違いだった
 「産業用の電力料金は、家庭用の電力料金に比べて、6割引」

 実は、これは、従量料金だけである。それ以外に、定額の基本料金がある。そのことは、もともとわかっていたのだが、たいした額ではないと思って、無視していた。しかし、コメントで指摘されたが、この額がとても大きい。次のように。
 電気料金とは、基本料金と電力量料金で計算されていますが、家庭用ではその比率が1:9〜2:8程度、自由化部門では、5:5〜4:6
 確かに、(前項でも示したように)次のページにちゃんとデータがある。
 → 九州電力 業務用電力A
 これで計算すると、確かに、基本料金がすごく高い。基本料金を込みにして考えると、 9円/kWh ではなくて、 15/kWh 〜 18円/kWh ぐらいになるようだ。一方、家庭用では、基本料金を込みにして考えると、 26円/kWh ぐらいになりそうだ。
 というわけで、すべてを込みにして考えると、正誤は次のようになる。
   誤 産業用は家庭用の  6割引
   正 産業用は家庭用の 3〜4割引


 こうなると、「業務用は極端に優遇されたダンピング料金」というよりは、「家庭用に比べていくらか優遇されている」という程度で済みそうだ。あまり大きく目くじらを立てるべきではないようだ。
 ま、実際、産業用の方が優遇されているのは事実だし、「産業用を引き上げて、家庭用を引き下げよ」という前項の趣旨は、方針としては正しいのだが、論拠の数字が大きくズレていたことになる。「産業用はひどく優遇されている」ということはなく、「いくらか優遇されている」という程度に過ぎないようだ。

 以上は、前項の訂正。




 このあとは、より詳しい数字で、正確にはどうであるかを示す。

 基本となる数字は、前項にある。
  → 九州電力 業務用電力A
 これは九州電力だが、他の電力会社の数字も同様で、だいたい基本料金は 1700〜1900時間の従量料金に相当するようだ。これが「使用量に関係なく加算される額」となる。

 ここで次の計算をする。
   8時間/日 × 25日 = 2000時間
 つまり、1日に8時間の使用が月に25日あると、2000時間になる。実際には週休二日制なので、1カ月の稼働は25日でなく22日ぐらいだろう。1割減ぐらい。しかしその分、基本料金の時間換算も2000時間の1割減の 1700〜1900時間ぐらいだ。
 というわけで、基本料金の分は「1日8時間」と換算していい。

 ここから、次の結論が得られる。
  ・ 1日に8時間の稼働ならば、従量制と同額の基本料が加算される。
   合計して、9円/kWh + 9円/kWh = 18円/kWh
  ・ 1日に8時間以上の稼働ならば、超過した分はもはや基本料が不要だから、
   単に 9円/kWh だけがかかる。


 要するに、こうだ。
  ・ 1日に8時間の稼働ならば、家庭向けの3割引程度の料金。
  ・ 1日に8時間以上の稼働ならば、合計額は家庭向けの3〜5割引だが、
   超過した時間帯の分だけは 9円/kWh で、6割(以上)引となる。


 簡単に言えば、こうなる。
 「産業向けの料金は、日中に使っているだけなら、家庭向けの3割引程度であり、たいしたことはない。しかし、工場で2交替勤務などをして、1日8時間を大きく越える長時間稼働をすれば、超過時間帯(日中以外の早朝や夜間)の料金は、6割引以上の激安料金である。また、土日に稼働した分も、同じく激安料金である」


 このような「超過時間帯の料金を激安にする」ということに、根拠はあるか? 次の二点では、根拠がある。
  ・ 原発は夜間でも発電するので、その分は低価格でも販売したい。
  ・ 夏季は昼間の最大電力だけが問題であり、夜間の電力は低価格でいい

 しかしながら、これらはもはや成立しなくなっている。
  ・ 原発はもはや稼働していない。火力発電は夜間に止めることが可能。
  ・ 夏季もまた、火力発電は夜間に止めることが可能。


 だから、需要がない時期(夜間や土日)には、火力発電は特に安値販売する必要はないのだ。正しいコストは、次の通り。
 「固定費の分を除いて、燃料費の分だけ」
 なぜか? 昼間の電力は、最大需要電力をもとに設備投資が必要なので、固定費(発電所建設費)の負担が必要だ。しかし、夜間や土日の電力は、余った設備を使うだけだから、固定費(発電所建設費)の負担が不要だ。つまり、燃料費の負担だけがあればいい。
 燃料費の負担は、原発ではゼロに近いほどの少額だが、火力発電所ではコストの大部分を占める。ざっとみて、8〜9割だろう。とすれば、夜間や土日の料金もまた、8〜9割の価格にするべきなのだ。その料金が気に食わないと思う企業があれば、夜間電力を買わなくて結構。東電はその分、単に発電を止めればいい。(火力発電はいつでも止められる。)
 ま、あまり殿様商売をすると、企業がみんな日中だけの電力を求めるようになるかもしれないし、それだと火力発電所の建設が大変だから、現実には、夜間や土日の料金を、8〜9割よりももっと安くした方がいいだろう。たとえば、7割程度。
 元は「家庭向けに比べて3割引の7割」であったから、「7割の7割」で 49%となる。つまり、概算して5割引だ。これが正当な価格だ。(夜間と土日の分)

 さて。先に述べたのは、次のことだった。
 「1日に8時間以上の稼働ならば、超過した時間帯の分は 6割(以上)引」
 しかし、この価格は、値引きのしすぎだ。正しくは、次のようになる。
 「1日に8時間以上の稼働ならば、超過した時間帯の分は 5割引」
 つまり、従量料金は、 9円/kWh ではなくて、12円/kWh 程度が妥当である。
 逆に言えば、 9円/kWh と 12円/kWh との差額である 3円/kWh が、企業向けに過剰に優遇されている分(ダンピングの分)となる。
 
 ──  

 結論1。

 産業向けの料金は、家庭向けの料金に比べて、優遇されている。
 では、その額は、どれだけか?
 前項の「9円/kWh と 23円/kWh との差額」というのは、基本料金を無視した額だったので、間違いだった。 
 正しくは、「9円/kWh と 12円/kWh との差額」である。(基本料金は別途で定額)
 
 結論2。

 東電は、料金値上げをするとき、一律に料金値上げをするべきではない。
 基本料金は、現状維持にするか、引き下げるといい。
 その一方で、従量料金(9円/kWh)を、かなり大幅に上げるといい。従量料金が低すぎるのは、エネルギーの浪費に結びつきやすく、好ましくない。もっときちんと原価計算をすれば、従量料金を大幅に高めた方がいいとわかる。(原発が停止しているので。)

 結論3。

 「9円/kWh と 12円/kWh」というのは、「基本料金と従量料金をほぼ同額にする」という原則の下での数値だ。「基本料金と従量料金をほぼ同額にする」のであれば、従量料金を 12円/kWh ぐらいにするべきだろう。
 しかし、結論2で述べたように、「基本料金の割合を引き下げて、従量料金の割合を引き上げる」というのが好ましい。この方針の下で、「基本料金を大幅に引き下げた上で、従量料金 を 15円/kWh ぐらいにする」というのが妥当だろう。
 なお、夏季の最大需要への対策は、「需給調整契約」などを別途用意して充実させればいい。
  
( ※ なお、このように料金制度を変更するのは、「原発が停止して、火力発電の量が圧倒的に高まった」という事情による。発電所の事情が変われば、料金制度も変わるのが当然なのだ。「夜間も電力を使う」という企業が優遇されたのは、「夜間も発電する」という原発があったときの制度だ。今や事情は変わったのだから、制度も変わるべきだ。それが本質。)



 [ 付記 ]
 細かいことを言うと、次のような諸点も気にする必要がある。
  ・ 企業は契約電力の最大量を常に使っているわけではない。
  ・ 燃料の市況上昇の分の加算(燃料費調整額)がある。
  ・ 長期契約の割引がある。

 こういうのは、プラスマイナスがいろいろとあって、細かく修正すると、面倒臭い。細かい点は無視して、基本だけを本項では指摘した。
 細かい点を気にすれば、若干のズレは生じるだろうが。それは今のところはどうでもいい。細かい数字は今の時点では気にしないでいい。
 
 [ 余談 ]
 本項の結論は、「基本料金を大幅に引き下げた上で、従量料金 を 15円/kWh ぐらいにする」だ。
 一方、前項の結論は、「大幅に値上げするべきだ。たとえば、「15円/kWh」ぐらいにするべき」だ。
 結論部だけを見ると、本項も前項も、ほとんど違いはない。前項で述べたことは、まるきりの間違いというほどでもないようだ。
  


 【 追記 】
 本項で示した結論の通りにすると、企業は次の方向を取るだろう。
 「夜間や休日の安い電力を使おうとはしないで、昼間だけで工場を稼働するようになる」
 その結果、電力会社は、次のようにするだろう。
 「昼間に稼働するための発電所を増設し、その一方、夜間や休日には火力発電所を止める」
 これは悪いことではない。火力発電所というものは、次の特性を持つからだ。
 「建設費は安価だが、運転コスト(燃料費)は高額だ」
 だから、「設備はたくさんで、夜間や休日の稼働時間は減らす」というのは、妥当なのだ。また、この方向を取れば、「万一の時の対策」としての余裕の設備量も増える。それなら、先の大地震のようなことが起こっても、計画停電のようなトラブルも減らせる。(そのときだけ、工場は夜間・休日稼働をすればいい。ちょうど昨夏のように。)
 なお、実際には、上記の方針を取った場合には、電力会社が発電所をたくさん作るよりは、工場が自家発電をたくさん作るだろう。前項でも述べたとおり。)……実は、それこそが、本項の本当の狙いだとも言える。あえて誘導するというよりは、自然にそうなるだけだが。

( ※ なお、「昼間に工場が稼働し、夜間や休日には稼働しなくなる」という傾向が強まれば、その分、一般の人々の労働環境は良くなる。また、雇用される人々も増えるだろう。それはそれで好ましいことだ。これはまあ、副次的な効果だから、どうでもいいが。……ただ、現状のように、「あえて夜間・休日労働が増えるように誘導する。そのために、電力料金を歪める」というのは、好ましいことではない。)

 


 【 関連項目 】
 
 → 産業用電力の価格を上げよ

 ※ 夏季の分についてのみ、産業用電力価格の大幅値上げを提案している。
posted by 管理人 at 20:56| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本項では、前項を訂正したが、訂正しなくても良かったようだ。前項の話は正しかった。本項で言う定額料金の分は考慮しなくていいらしい。
 というのは、東電は大手企業向けには料金を激安で提供しているからだ。下記に記事がある。

 → http://www.news-postseven.com/archives/20120404_99142.html

 全般的に6〜7割引らしい。ただし内緒にして、公開しないそうだ。
 建前と実態とが違っているわけだ。
Posted by 管理人 at 2012年04月12日 19:13
貴重な日記に感謝します。

私も脱原発運動に参加しています。
電力企業の矛盾点は、単に原発が危ないという論点だけではなく、多岐に亘る論点も必要と考えています。
Posted by 順哉 at 2012年05月12日 02:37
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