二つの議論を紹介する。
(1) 湯之上隆
湯之上隆の見解は、前にも紹介したが、下記にある。
→ エルピーダよ、2度目の敗戦を無駄にするな
また、次の一覧もある。
→ JBpress 一覧
ただ、この人は、著作もある。(絶版だが)
その著作が、次のページで要約されている。
→ アゴラ DRAMの「敗戦」は装置産業化が原因ではない
このページでは、湯之上隆という名を出さず、「著者」というふうに紹介するだけだ。こういうふうに、誰の意見であるかをぼかした紹介というのは、不適切な紹介だと思う。それでも、紹介された内容自体は、有意義だ。その一部を抜粋しよう。
日本の半導体研究所には、設計段階におけるコスト目標が存在しないというのである。半導体は、いったん試作され、生産工程が決められると、量産段階で、いくらコスト削減努力をしても、ほとんど安くならない。設計、試作段階で、大半のコストが決まってしまう。それなのに、設計部門は、高品質、高精度の製品を作ることばかりを考えていて、コストなど問題にしない。このような問題がいろいろとあるそうだ。長い本を短くまとめただけあって、内容が濃い。一読をお勧めする。
( ※ なお、コメント欄のやりとりを見ると、湯之上隆の意見が、紹介者の意見だと見なされて、紹介者が称賛されている。「名前も出さずに紹介する」という、紹介の仕方が不適切なせいだろう。)
( ※ なお、「経営者のせいだ」という結論は、私の結論と同様なので、賛同する。賛同するというより、もともと私が先にそう言っているのだが。)
(2) 池田信夫
上の紹介を読んで、池田信夫が自分の見解を出している。
・ 「技術者が優秀なのに経営者が無能」なのではなく、「技術者が
優秀だから経営者が無能」になるのである。
・ 会社が「つぶれる」ことを恥とみなして政府が救済することをやめ、
資本市場による企業再生や人材の流動化を促進すべきだ。
しかし民主党政権は、労働契約法改正案にみられるように
「正社員」の既得権を守る家父長主義を捨てることができない。
何言っているんですか、この人は。(1) を読んで、上記のような結論を出すとは、見当違いも甚だしい。
第1に、技術者の優秀さと経営者の優秀さは、独立した事項であり、(正または負の)因果関係などはない。当り前でしょうが。いちいち議論するのも馬鹿馬鹿しい。
第2に、「つぶれたあとでどうするか」ということは、企業がつぶれるかどうかとは関係がない。「駄目な企業をつぶせば、解雇された人材が有効に生かされるので、優秀な企業が生じる」というのは、先に述べた愚論の再来だ。
→ 企業倒産と進化論
駄目な企業を倒産させれば優秀な企業が誕生する、ということはない。そのことは上記で示したとおりだ。
ところが池田信夫はいまだにその愚論を信じている。「エルピーダを倒産させれば、生き残った人材が優秀な企業で生かされる」と。
馬鹿丸出し。エルピーダがつぶれたからといって、その技術者を雇用するDRAM企業が新たに誕生するわけじゃない。その技術者が他の分野で有効に生かされるわけでもない。単に失業するだけだ。
( ※ ちなみに、米国では金融不況のあとで、年収数千万円〜数億円だったアナリストが、タクシー運転手で年収 300万円ぐらいになっている。知的技能が他の分野で生かされることはないのだ。)
似た例は、GM の倒産でも見られる。池田信夫は「GMをつぶせ」と述べたが、政府が救済したからこそ、短期間で再生されて、知的労働者の技能は有効に生かされるようになったのだ。仮に、「GMがつぶれたせいでエンジン技術者がタクシー運転手になっていた」というふうになっていたら、国家的には大損害だっただろう。
まともな話を読んでも、何でも我田引水したあげく、頓珍漢な結論を出す人もいる、ということだ。
【 関連項目 】
池田信夫の頓珍漢な議論については、前にも紹介した。
→ エルピーダ倒産の理由は?
エルピーダについての私の見解は、次でも述べた。
→ エルピーダ倒産の教訓
→ エルピーダ再建の方法
→ エルピーダとシグマ

彼が頓珍漢なことをいってるのも確かですけど。
記事を書こうとした分野で偶然池田氏が謎な意見を出してるからですかね。
本人に粘着しているんじゃなくて、彼の議論が興味深いので、彼の議論を論じているだけです。
彼の議論は変ですけど、扱っている内容は適切ですよ。「目の付けどころがシャープでしょ」と言ってもいいと思う。
では、なぜ他の人を扱わないか? 誰も論じていないからです。池田信夫は私の好敵手になるけど、他の人は論じるにも値しない。というか、もともと論じていない。日本の経済学者はみんなサボっている。
その点、きちんと精力的に論じている池田信夫は、たいしたものだ。私がいちいち批判するに値する。それ以外の人は、無に等しい。批判したくても、批判に値することを何も書いていない。
ついでですけど、早川とか上杉とかいうアホは、私は相手にしません。アホは無視するというのが私の基本的態度。池田信夫は決してアホではない。とても頭がいい。だからこそ批判に値する。
なお、池田信夫以外にも、いちいち何か述べている人がいたら、紹介してください。思うに、これほど精力的に述べている人は、私と池田信夫しかいないと思う。
本職である経済学以外にも、整理法、知的生産術、文化論、政治論、「風の谷のナウシカ」など、あれこれ一家言あるマルチコメンテイター。
昔の立花隆
今は膀胱癌で元気がない。
彼の経済論は前に論じたことがありますが、あまりにもひどすぎるので、論じるのに飽きた。「馬鹿は相手にしない」の一環。
>整理法、知的生産術、文化論、
それは私とは重ならないことが多いので、たいていは言及しない(関心外)。ただし前にいくらか論じたこともある。
→ http://goo.gl/Koa5g
> 「風の谷のナウシカ」
私の関心外です。
> 昔の立花隆
昔は良かったですね。私も参考にさせていただきました。自説を述べるより、きちんと調べて紹介するタイプだったので、私とは次元が違っています。
──
上の二人と比べると、私と池田信夫は論じる舞台がとてもよく似ている。思考法や結論は正反対のことが多いが。
→ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19283
→ http://sierblog.com/archives/1531541.html#