シャープが巨額赤字を出したすえ、定昇廃止を打ち出している。定昇廃止は、「昇給をやめること」ではなくて、「給料の後払い制度」という約束を破ることであり、「賃金総額の減少」をもたらす。これは実質的には、「倒産寸前に近い」ということを意味する。
ひどいものだ。「目のつけどころがシャープでしょ」どころじゃない。「どこに目をつけているんだ」と経営者に怒鳴りつけてやりたい社員もいるだろう。
では、その理由は?
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朝日新聞(朝刊 2012-03-15 )によると、「液晶一本足打法が駄目だ」ということだ。つまり、多角経営とは正反対の「液晶だけ」という単品主義の経営が致命的だった、ということだ。
しかしこれはちょっと変だ。以前は、逆の言い方で、シャープを褒めていたからだ。「液晶に絞ったことで世界一の技術水準を達成した。集中と選択が好業績をもたらした」というふうに。
まったく、マスコミというのは、ご都合主義の二枚舌だ。
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「液晶一本足打法が駄目だ」というよりは、「液晶生産そのものが、日本ではもはや時代遅れになった」と言う方がいい。
液晶は、かつては画質が悪かった。そのころには、最先端の技術を必要としたので、優秀な技術を持つ会社が差別化できた。
しかし今ではどの液晶も十分な画質を備えている。あとは価格だけだ。とすれば、台湾や韓国メーカーが技術的に追いついた時点で、もはや技術的に差別化できなくなって、人件費のデメリットが残るだけとなる。……こうしてもはや「液晶生産」は、日本企業の役割ではなくなったのだ。(かつての衣料品生産みたいなものだ。途上国のための産業になった。)
シャープがどうしても液晶生産をしたいのならば、海外生産するしかなかった。脱日本。空洞化。それしかなかった。そして、そうすれば、海外に工場を持つ多国籍企業として生き残れただろう。(海外に工場をもつサムスンと同様だ。)
ところがシャープはその逆だった。「液晶はもはやハイテク製品ではなくなった。技術よりも価格が重要になった」ということに気づかずに、「亀山工場はすごい」なんて思って、「亀山工場製」なんていうブランドを付けて売ろうとした。まったく、自惚れというか、唯我独尊というか。ソニーも顔負けの厚顔無恥。……で、そうやって国内生産にこだわったあげく、高コストになり、台湾や韓国とのコスト争いで負けてしまった。かくて撃沈。それが現状だ。
シャープは「液晶はもはや先端産業ではない」という認識をするべきだった。なのに、「自社は優秀だ」と自惚れていた。それは、「目のつけどころがシャープでしょ」というキャッチフレーズからもわかる。だから、シャープが業績悪化した理由は、「目のつけどころがシャープでしょ」というキャッチフレーズのせいだ、とも言える。 (^^);
シャープが業績悪化したことには、もう一つ理由がある。それは、太陽光発電の収益性が非常に悪化したことだ。以下に解説文を引用しよう。
シャープ……決算が……大幅な下方修正となっています。要するに、市場は拡大しているが、安価な中国製ばかりが伸びており、日本メーカーの出る幕じゃない。いくら「太陽光パネルの市場が伸びている」と言っても、無意味なのだ。
下方修正の主因は「液晶パネルの不調」としていますが、太陽電池事業についても、売上は前年度同期比で 78.4% 、営業利益にいたっては、第3半期累計でマイナス 147億円とセグメント別で最大の赤字になっています。
中国製太陽光パネルの台頭
安価な中国製製品の台頭があります。……国内メーカーはかなりの苦戦を強いられているようです。
脱原発の流れから、再生可能エネルギーへの転換を打ち出し、補助金による各家庭への導入促進、今年 7月1日から再生可能エネルギー全量買取制度も始まり、本来であれば盛り上がる一方のはずの太陽電池需要。しかし、国内メーカーは苦戦しています。
太陽電池は機能としては、太陽光で発電するだけなので、製品ごとの差がつきづらいと考えています。変換効率などは違いますが、違うといっても数パーセントであり、……どうしても安価な製品に流れてしまうことになります。
2004年頃までは、太陽電池のシェアは日本製が全世界で50%を超えていました。革新的な技術で日本製品がかつてのようなシェアを取り戻す日がくるのでしょうか。
( → http://solar-generation.org/column/sharp.html )
この件は、私が前に述べたとおり。
→ 太陽電池と中国製品
実は、昔は先端技術が大切で、シャープなどが有力だったが、今では中国メーカーも同様に作れるようになった。というのも、「太陽光パネルの製造装置」を、日本企業が中国に販売しているからだ。その製造装置を買って稼働させれば、中国メーカーだって一流品を作れる。しかも、電力や資材などの価格は、為替のせいもあって大幅に安いから、どうしたって中国製の方が圧倒的に安くなる。
この件は、3年前に私が指摘した。
→ 太陽電池産業の育成
こういう状況だから、もはや太陽光パネルは先端技術品じゃないし、日本企業が生産するべきではないのだ。(3年前に指摘したとおり。)
なのに、シャープは「目のつけどころがシャープでしょ」と自惚れた。それだけじゃない。「太陽光電池の価格を1年で半額にします」と楽観して発表したりした。(もちろん実現しなかった。)
→ 太陽光発電の支援とコスト
→ 太陽光発電のコスト計算
こんなデタラメなことを信じて、太陽光事業に突っ走れば、将来的には倒産するだろう……と私は予言した。それも、何度も。
→ サイト内 検索
結局、私の予言通りになっただけだ。文字通りに倒産したわけではないが、大幅な業績悪化になったのだから、言っている内容としては予言通りになったと見なしていいだろう。
【 関連項目 】
本項には、続編があります。
→ シャープの経営悪化 ( 2012-07-24 )

今は「目指してる、未来がちがう」そうです。
最近の迷走具合を見ると、なるほど、たしかに違うなと感じます。
http://freefairy.blog84.fc2.com/blog-entry-167.html
おもしろい。
「台湾企業がシャープの事実上、筆頭株主に」
→ http://j.mp/HbpRgI