根本原因は、経営の人材システムの問題だ。これは、前項で述べたとおり。
一方、それとは別に、いくつかの理由も考えられる。それぞれ別個の理由だが、並列的に列挙する形で説明しよう。
分社しないこと
迅速な決定のためには、担当部門が独自に経営判断するべきだ。なのに、日本企業では、会社全体の決裁を必要として、そのために多大な時間が浪費されてしまう。これではまったく外国の会社と太刀打ちできない。この問題を回避するには、事業部門を分社する必要がある。分社しなくても、フレキシブルな会社ならば、特に問題ないとも言える。(たとえばジョブズのアップル。)……しかし、日本企業には、そんな柔軟性はない。とすれば、分社する以外、迅速な決定はできないだろう。もちろん、最適行動などもできないだろう。結果的には、老人経営者がやたらと「不許可」ばかりを下す、時代遅れの恐竜みたいになるだけだ。
合併しないこと
各社が部門を分社したあとでは、それぞれの小さな会社が合併してシェアを増やすべきだ。エルピーダではいくつかの会社の DRAM 部門が合併したが、それと同様のことを、他の部門でもやるべきだ。現実には、液晶であれ何であれ、日本には似たような会社がたくさんある。そして、束になっても、サムスン1社に負けてしまう。ドングリの背比べをしているミニ部門ばかりがあるのだから、そのままではとうていサムスンに太刀打ちできるはずがない。
典型的な例は、ケータイだ。富士通と東芝が一緒になって頑張ったが、レグザたんなんていう、どうしようもないほどひどい製品を生み出した。呆れるしかないね。
日本企業はいっぺん、ガラガラポンをして、再構成をするべきだ。で、それができないから、前項で述べたように、家電各社は総崩れ状態となる。
マーケッティング
技術力以前に、マーケッティングができていない。つまり、市場の要望を見間違えている。典型的な例は、途上国の現地の要望を聞いていないことだ。サムスンでは現地の要望を聞いて、「現地仕様」の製品を出す。そのために、担当者をたくさん用意している。
日本企業は、そうではない。「世界統一」仕様という名の「日本仕様」を押しつけて、結果的にはガラパゴス化して、世界市場から拒否され、世界各地からも拒否される。比喩的に言えば、韓国企業が「キムチ仕様」の製品をゴリ押しして、日本市場で拒否されるようなものだ。それと同様のことを、日本企業は世界各地でやらかしている。そのあげく、市場を失う。
デザイン
日本企業は、デザインもひどいことが多い。自動車では、現代自動車が優れたデザインを出している。というのも、「自社では野暮ったいデザインしか作れないから、ドイツにデザイン研究所を設立して、ドイツ人デザイナーに任せる」という方針を取ったからだ。
→ 日本車 vs 韓国車
一方、日本車メーカーは、ひどいものだ。トヨタあたりはひどいデザインの車を出し続けている。
日産はいくらかマシと言える。米国のデザインセンターを使って、エリュールみたいなカッコいい車を、ときどき発表する。これに基づいてデザインした新型サニー(ヴァーサ)は、中国や米国では大人気だ。また、次期アルティマも、これと似た傾向になるようだ。
日産には、ひどいデザインの車も多いのだが、一部では米国人デザイナーを使って、まともなデザインをしている。そのせいか、今の日本の自動車メーカーでは、日産が最も有望だ。特に、海外で伸び率が高い。
では、どうして? それというのも、社長が外国人であるせいだろう。また、日産はルノーの子会社であり、日本の会社ではない、というのも理由だろう。 (^^);
[ 付記1 ]
まともな例を示す。それは孫正義だ。
孫正義は、太陽光発電についてはデタラメの極みだが、本業ではとても頑張っている。
(1) Yahoo を日本で始めた。本国の米国 Yahoo 以上に成功している。
(2) ボーダフォンを買って、見事に事業を成功させた。莫大な利益を稼いでいる。
(3) iPhoneをすばやく入手した。それというのも、日本の経営者には珍しく、先見の明があったからだ。人々は3年ぐらい前になって iPhoneのことを大騒ぎしていたが、孫正義はずっと前から iPhoneのようなスマホに着目していた。孫正義は、スマホがない時点で、「スマホがほしい」と思って、ジョブズのところへ行った。「ケータイじゃ足りないので、スマホというものがほしい。それを作れるのは、アップルだけだ。だからアップルが、こういう商品を作ってほしい」と。
それを聞いたジョブズは、「イエス」と答えたか? いや、違う。こう言った。
「面白い。実はそいつはうちの会社ですでに開発中だ。で、当社にそれを作ってくれと言ってきたのは、おまえが初めてだ」( → 出典 )
こうしてジョブズと孫正義は意気投合した。おたがい、先見の明があることに、意気投合したのだろう。
( ※ 実は、このころ、私もケータイでなくてスマホみたいなものを欲しがっていた。私も一緒にいたら、私も意気投合していたかもね。)
( ※ ただし、私が当時望んでいたのは、キーボード付きのケータイだった。液晶画面のタッチ式でやるスマホというのは、私は考えていなかった。脱帽。)
(4) そこまで考えるとわかるが、孫正義がボーダフォンを買ったのは、ケータイ事業を買ったのではなくて、スマートフォン事業を買ったことになる。
あの当時は、「ケータイ電話なんか買ったのかあ」というふうに思えたが、実は、「無線式のハンドヘルドコンピュータというIT機器を買った」というのが本質だったわけだ。
この点では、孫正義には、素晴らしい先見の明があった。シャッポを脱ぎます。
日本の経営者は阿呆が多いが、孫正義だけは例外だと言える。……ただし、会社のなかで出生したのではなく、自分で独力で会社を興したのだが。
その意味では、「救い」にはなりませんね。「例外」扱い。
[ 付記2 ]
恒例で、池田信夫の話題。 (^^);
池田信夫は例によって、ピンぼけの話を書いている。。
まずはこれ。
→ 池田信夫 blog : iモードの成功と失敗
ここにある話は全然ピンぼけだ。「 iモードを発展させれば成功した」というようなことは成立しない。
そもそも iモードは、制限された条件のなかで成立した、歴史的な一段階であるにすぎない。一時的には栄えるが、時間がたてば消滅するのが当然だ。
で、それを見抜いた孫正義と、いつまでもしがみついたNTTとの差がある。
ともかく、ジョブズもそうだが、先を見抜く目が大事だ。
もう一つはこれ。
→ イノベーションは予知できない - 池田信夫・アゴラ
「イノベーションは予知できない」というが、話が正反対だろう。「予知できた人(見抜いた人)がイノベーションを起こす」というのが正しい。
ジョブズを見よ。ジョブズは「イノベーションを予知できなかった」と言うべきか? いや、違う。将来の姿を見抜くことができた。だからその将来の姿としての iPhone や iPad というものを産み出した。将来の姿を見抜いた人こそが、イノベーションを起こすのである。
→ ジョブズとシステムデザイン
関連する話は、次にもある。
→ 天才の思考過程(イノベーションの本質)
→ ジョブズが求めたものは?

→ http://www.gizmodo.jp/2012/03/post_10103.html
富士電機→富士通→ファナック
その後は、分社するほどの有力分野が見いだせなかったのか停滞してますが。